判例検索β > 平成30年(行ケ)第10088号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号平成30(行ケ)10088
事件名審決取消請求事件
裁判年月日平成31年3月26日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-03-26
情報公開日2019-03-27 16:00:30
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平成31年3月26日判決言渡
平成30年(行ケ)第10088号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

平成31年2月5日
判決原告X被告
特許庁長官

指定代理人

山村和人同堀川一郎同久保竜一同関口哲生同阿曾裕樹主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2017-9005号事件について平成30年5月21日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1
特許庁における手続の経緯等

(1)

原告は,平成27年10月13日,考案の名称を格納容器収納式フライホイール一体型垂直軸風車発電機とする考案について,実用新案登録出願(実願2015-5499号。以下本件基礎出願という。)をし,同年12月16日に実用新案登録(実用新案登録第3201957号。乙2)を
受けた後,平成28年9月12日,発明の名称を格納容器収納式フライホイール一体型垂直軸風車発電機とする発明について,上記実用新案登録に基づいて特許出願(特願2016-192194号。以下本願という。乙1)をした。
原告は,本願について同年12月21日付けの拒絶理由通知(乙3)を受けたため,平成29年2月20日付けで,特許請求の範囲,明細書及び図面について手続補正(乙5)をしたが,同年5月11日付けで拒絶査定(乙6)を受けた。
(2)

原告は,平成29年6月5日,拒絶査定不服審判(不服2017-900
5号事件)を請求した(乙7)。
原告は,同年10月4日付けの拒絶理由通知(乙8)を受けたため,同年11月17日付けで,
特許請求の範囲及び明細書について手続補正
(乙10)
をした後,さらに,平成30年1月31日付けの拒絶理由通知(乙11)を受けたため,同年3月6日付けで,特許請求の範囲について補正(乙13)をした(以下本件補正という。乙13)。
その後,特許庁は,同年5月21日,本件補正を認めた上で,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年6月9日,原告に送達された。
(3)

原告は,
平成30年6月29日,
本件審決の取消しを求める本件訴訟を提

起した。
2
特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を本願発明という。乙13)。
【請求項1】
垂直軸風車の主軸の下部位に発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つフライホイールを装備し,且つ,同風車より同要求トルク以上のトルクを同フライホイールに転送することを以って,大容量(1000kW以上)の発電出力を可能としたフライホイール一体型垂直軸風車発電機3
本件審決の理由の要旨

(1)本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。
その要旨は,本願発明は,①本件基礎出願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3195023号公報(以下引用例1という。乙15)に記載された発明又は特開2004-297892号公報(以下引用例2という。乙16)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることはできない,②本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて,本願明細書という。)の発明の詳細な説明の記載が,同法36条4項1号に規定する要件(以下実施可能要件という)を満たしていないというものである。
(2)

本件審決が認定した引用例1に記載された発明(以下引用発明1とい
う。),引用例2に記載された発明(以下引用発明2という。),本願発明と引用発明1の一致点及び相違点,本願発明と引用発明2の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

引用発明1
主軸の下部位にフライホイール1が装備され,風車自体によって生み出
された回転トルクが主軸を通して前記フライホイール1に伝達され,回転トルクが負荷側(発電機側)に放出される,大容量(MW級)出力のフライホイール付き垂直軸風車発電機。

引用発明2
風力を受ける複数枚の風車(ブレード)2を有し,各ブレード2は,ア
ーム3を介して回転軸4に所定角度間隔で固定され,前記複数枚の風車
(ブレード)2と発電機8との間である,前記回転軸4の下部位にフライホイール44を設け,前記フライホイール44を大径とした,垂直型の風力発電装置。

本願発明と引用発明1の一致点及び相違点

(一致点)
垂直軸風車の主軸の下部位にフライホイールを装備し,且つ,同風車より同要求トルク以上のトルクを同フライホイールに転送することを以って,大容量(1000kW以上)の発電出力を可能としたフライホイール一体型垂直軸風車発電機である点。(相違点)
本願発明は,フライホイールが発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つのに対し,引用発明1は,フライホイール1が持つスケールが特定されていない点。

本願発明と引用発明2の一致点及び相違点

(一致点)
垂直軸風車の主軸の下部位にフライホイールを装備し,且つ,同風車より同要求トルク以上のトルクを同フライホイールに転送する,フライホイール一体型垂直軸風車発電機である点。(相違点)
本願発明は,大容量(1000kW以上)の発電出力が可能であって,大容量(1000kW以上)の発電出力を得るために発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールをフライホイールが持ち,垂直軸風車より同要求トルク以上のトルクを同フライホイールに転送するのに対し,
引用発明2は,フライホイール44が大径であって,前記複数枚の風車(ブレード)2が発生するトルクが前記フライホイール44に転送される
ものではあるが,発電出力が特定されておらず,前記フライホイール44が持つスケール及び前記複数枚の風車(ブレード)2より前記フライホイール44に転送されるトルクの大きさも特定されていない点。
第3当事者の主張
1
取消事由1(引用発明1に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について(1)

原告の主張
引用発明1の特許法29条2項所定の前項各号に掲げる発明該当性の判断の誤り
本件審決は,本願発明は,引用例1に記載された発明(引用発明1)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた旨判断した。
しかしながら,特許法29条の2は,後願の特許請求の範囲に記載された発明と先願の当初明細書等に記載された発明又は考案が同一であるときは,後願の特許請求の範囲に記載された発明は特許を受けることができないが,先願の発明者等又は出願人が後願の発明者又は出願人と同一の者である場合には,この限りではない旨を規定している。
しかるところ,本願の発明者及び出願人と引用例1に係る実用新案登録出願の考案者及び出願人は,いずれも原告であって,同一人であるから,このような同条の趣旨に照らせば,先願の引用例1に係る実用新案登録出願をもって後願の本願を排除できないと解すべきである。
そうすると,引用例1は,同法29条1項3号の特許出願前に頒布された刊行物としての適格性を欠くというべきであるから,
引用発明1は,
同条2項の前項各号に掲げる発明に該当しない。
したがって,当業者が引用発明1に基づいて本願発明を容易に発明することができたとした本件審決の上記判断は誤りである。


相違点の容易想到性の判断の誤り
本件審決は,引用例1記載の大容量(MW級)出力のフライホイール付
き垂直軸風車発電機において,フライホイールの持つスケールを定めるにあたり,発電機が要求するトルク以上のトルクに見合った運動エネルギーを蓄えることができる大きさとすることは当業者が容易に想到し得る事項であって,前記フライホイールが,当該発電機が要求するトルク以上のトルクを放出可能であることは明らかであるとして,引用発明1において相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得る事項である旨判断した。
しかしながら,本願発明は,1000kW以上の大容量の発電出力を得ることを目的とし,その手段として,フライホイールをスケールアップして運動エネルギーの貯蔵機能を高めることにより,風車より大運動エネルギーを転送し,そのエネルギーを大トルクとして放出し,大容量の発電出力を可能とした発明であるのに対し,引用発明1は,風力エネルギーの電気エネルギーに対する変化率の効率化を目的とし,その手段として,風車の羽根車の改良(“V”字型ブレードの採用)及び案内羽根(ガイドベーン)の装備をした発明であるから,引用発明1と本願発明は,目的及び手段が全く異なるものである。
そうすると,当業者は,引用発明1に基づいて,フライホイールが発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つ構成(相違点に係る本願発明の構成)とすることを容易に想到し得たものといえない。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。

小括
以上のとおり,本願発明は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとした本件審決の判断は誤りである。

(2)

被告の主張
引用発明1の特許法29条2項所定の前項各号に掲げる発明該当性
の判断の誤りの主張に対し
特許法29条の2は,引用発明1が同法29条2項の前項各号に掲げる発明に該当するか否かを検討するに当たり,
適用される規定ではない。
したがって,原告の主張は理由がない。

相違点の容易想到性の判断の誤りの主張に対し
引用例1の記載事項(【0005】等)によれば,引用例1には,フライホイールに貯えられる運動エネルギーが増大することが示されているから,フライホイールを当該増大した運動エネルギーに見合ったスケールを持つものとすることは,当業者が当然に考慮する事項である。
そうすると,引用例1には,発電出力の増大に応じてフライホイールのスケールを大きなものとすることが示唆されているといえるから,引用発明1と本願発明は,目的及び手段の点で共通しているといえる。
加えて,引用発明1は,発電機が要求するトルク以上のトルクをフライホイールに転送するものであること,引用発明1は,回転トルクが主軸を通してフライホイールに送られて同フライホイールが運動エネルギーを貯えるものであることによれば,引用発明1において,フライホイールの持つスケールを定めるにあたり,発電機が要求するトルク以上のトルクに見合った運動エネルギーを貯えられるものとすることは,当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって,引用発明1に基づいて,相違点に係る本願発明の構成とすることを容易に想到し得たものである。


小括
以上によれば,本願発明は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。

2
取消事由2(引用発明2に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について
(1)

原告の主張
本件審決は,
引用例2には,引用発明2において,
フライホイール44を大

径としたのは,大きな慣性エネルギーを蓄積することを目的としたものであることが記載されていること(【0080】),1000kW以上の発電出力が可能である風力発電機は,本件基礎出願の時点において既に実現されていること,発電出力の向上は,一般的な技術課題であり,また,風力発電機の発電出力を具体的にどの程度とするかは,当該風力発電機が設置される地点の風況等に応じて当業者が適宜定めるものであることなどからすると,当業者は,引用発明2において,相違点に係る本願発明の構成とすることを容易に想到し得たものであるから,本願発明は,引用発明2に基づいて,容易に想到することができた旨判断した。
しかしながら,引用発明2の直線翼型垂直軸風車発電機は,発生トルクが低レベルで,
起動トルクが弱く
(甲5の1の証拠資料C)発電出力は,

せいぜい50kW未満であり,実用化されているのは10kW未満であること(甲5の1の証拠資料C)からすると,引用発明2において1000kW以上の発電出力とすることは不可能である。
したがって,当業者は,引用発明2において,発電出力を大容量(1000kW以上)とする構成(相違点に係る本願発明の構成)とすることを容易に想到し得たものといえないから,本件審決の上記判断は誤りである。(2)

被告の主張
引用例2の風力発電装置は,図1記載のものに限定されないから(【00
87】),風車(ブレード)2の形状も,直線翼垂直風車に限定されるものではない。また,1000kW以上の発電出力が可能な垂直軸風車発電機は,本件基礎出願の時点で既に実現されている(乙17)。加えて,引用例2の【0087】には,フライホイールの径をより大径とし,さらに大きな慣性エネルギーを蓄積することについての示唆がある。
そして,風力発電機全般において,風車の受風面積を拡大すればより多くの風力エネルギーを捕捉でき,発電出力が増大することが可能なことは,技術常識であり,また,発電出力の増大は一般的な技術課題であることからすると,当業者は,引用発明2において,風車の受風面積を拡大させて発電出力を増大させることにより,発電出力を大容量(1000kW)とすること(発電出力を大容量(1000kW以上)とする構成(相違点に係る本願発明の構成))を容易に想到することができたものである。したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。
3
取消事由3(実施可能要件の判断の誤り)について
(1)

原告の主張
本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明は,定格運転
時においては,垂直軸風車がフライホイールにトルクを転送し,フライホイールが垂直軸風車より転送されたトルクと等しいトルクを発電機に出力するものであって,フライホイールによりトルクを増大させるものではない旨の記載(【0013】)がある一方で,本願発明は,フライホイールによってトルクを増大させるものである旨の記載(【0010】,【0014】)があることからすると,本願明細書の発明の詳細な説明は,全体として技術的に整合しておらず,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められないから,実施可能要件を満たしていない旨判断した。
しかしながら,フライホイールは,自らが運動エネルギーを生み出すわけがなく,風車から運動エネルギーが転送されて初めて,運動エネルギーを蓄積するものであるから,本願明細書の【0010】及び【0014】の記載は,フライホイールによってトルクを増大させることを開示したものではない。

したがって,本件審決の上記判断は,その前提において誤りがある。(2)

被告の主張
本願明細書の【0010】及び【0014】は,風車の半径の拡大,
風速の増大
及び
フライホイールの半径の拡大
を並列的に列挙し,
風車の半径の拡大や風速の増大によって得られる運動エネルギーの増大と同等の効果を,フライホイールの半径の拡大によって得られることを記載したものであるから,【0010】及び【0014】は,本願発明がフライホイールによってトルクを増大させるものである旨を開示するものである。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明は,全体として技術的に整合せず,実施可能要件を満たしていないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。
第4当裁判所の判断
1
取消事由1(引用発明1に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について
(1)

本願明細書の記載事項について


本願明細書(乙5,10)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし図4については別紙1を
参照)。

(ア)

【技術分野】

【0001】
本発明は風車発電機でフライホイールを風車と一体型にすることによって大容量(1000kW以上)(以下,大容量の表記は,1000kW以上を意味する)の発電を可能にした垂直軸風車発電機で,且つ,暴風や豪雪下では円筒式の格納容器に自動収納する機構を備えた垂直軸風車発電機(WTG)(図1)である。(以下,当該風車発電機と称する)。(イ)

【背景技術】

【0002】
実用化されている大容量の発電出力を備えた風車発電機はプロペラ型風車発電機が主流をなしている。しかし,このプロペラ型風車発電機には下記に列挙するような弱点がある。
1.風力エネルギーの電気エネルギーへの変換率が低い,理論上は,約59%(ベッツの法則による)である。しかし,実際は機械ロスも大きいため,約40~45%である。…
2.建造費のレベルが高い。これは,発電出力が2000kWクラスでローター,
ナセル,
発電機等の主要機器の総重量は約130トンに及び,
これが地表レベルより約80メートル上空のタワーの頂点に設置されるため耐震,耐風上,タワーの強度設計レベルを引き上げる必要があり,そのために建造費が極度に高い要因となっている。それでもなお且つ,強風により金属疲労を起こしタワーが折損破壊された事例が多発している。
3.出力が2000kWのもので,そのローターのスパンは約80メートルで,ローターの重量は約40トンに及ぶ。これをタワーに懸架するためには高レベルの据付クレーンを必要とする。風車が山頂の高レベルに設置される場合,同クレーンの現地搬入が困難であり,又,搬入費用が高く,据付工事費の高騰の要因となっている。
4.発電機等の主要機器が上記の通り相当の上空に設置されるため,メインテナンスの難易度が高いためメインテナンスの費用が高く,又,落雷等で電気機器に火災が発生した場合,火災箇所が高所であるために消火活動が困難であり機器が燃え尽きるのを待つ事例が見受けられている。5.低周波音,並びにシャドウフリッカー(太陽光を断続的に遮る現象)を発する為に風車設置近辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼしている。6.バードストライクによる渡り鳥の死亡事故が多発している。自然保
護の対策が必要である。又,地表レベルより平均100メー及ぶ高層建造物であるため設置により自然の景観を損ねている。
(ウ)

【発明が解決しようとする課題】

【0003】
プロペラ型風車に較べて従来型の垂直軸風車はその発生トルクモーメント(以下,回転トルクと称する)が極めて低レベルであること,又,羽根車のブレードの形状が,その殆どが揚力型でなく,直線翼であるために自己起動性が低いこと。この二大欠陥によりこれまでの垂直軸風車発電機は低発電出力に止まっている。
【0004】
プロペラ型風車はその構造上,その殆どが増速機の組入れ型であるため機械ロスが大きい。又,風力エネルギーの捕捉率が低い。これ等が風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換率の低さの要因となっている。(エ)

【発明を解決するための手段】

【0008】
回転体の運動エネルギー(K)の値は次の定義式で表される。即ち,:-
K=1/2I*ω^2
ここで,
(I)
は,
慣性モーメントであり,
ωは角速度である。
又,
(I)
は,I=m*r^2で表される。(m)は,回転体の質量であり,(r)は回転体の半径を表す。即ち,上記の通り,運動エネルギー(K)は,回転体の質量とその半径の二乗と,角速度の二乗に比例すると定義されている。

このエネルギーに関わる方程式がフライホイールを一体型に

した当該風車発電機の根幹を成す。
動エネルギーを蓄え,

即ち,フライホイールは大量の運

そして,大回転トルクを定格で負荷側に放出す

る特有の機能を持つもので,この理論を適用したものがフライホイール
一体型垂直軸風車発電機である。
【0009】
在来の直線翼垂直軸風車発電機の出力計算は,プロペラ型風車発電機と同様に風車の受風面積と風速の三乗に比例すると定義している。即ち,回転体の回転速度が出力の一つの要因となっている。故に,可能な限り回転体の角速度を大にして発電出力を上げようとしている。
理論的には,
これによって運動エネルギー(仕事量→動力)の増大は可能であるが,角速度の過度な増大は金属疲労をもたらし,又,機械的な破壊を招く。即ち,過度の角速度の増大は風車の破壊を招くことになる。一方,上記の定義式より,慣性モーメント(I)を大にすれば,(K)は増大するのであるから同重量(m)より半径(r)の二乗に比例するから,この(r)を増大させた方が有利である。従って,回転体の質量より半径を大にして同運動エネルギーの増大を図る。しかし,過度な(r)の増大は負荷の増大となり起動トルクの問題で風車が自動起動出来ないと云う難問題が生じる。

これらの要因がネックとなり在来の垂直軸風車発電

機の発電出力を小出力に止まっている。
故に,
実用化されているものの発電出力は凡そ,
50Kw未満である。
【0010】
垂直軸風車発電機において,
この問題を解決するために考案されたのが,
密度が均一な剛体であるフライホイール(1)を垂直軸風車発電機と一体化した当該風車発電機である。
このフライホイールには次の通り二つの顕著な機能がある。即ち,:-其の一:フライホイールは回転することによってその内部に運動エネルギーを蓄える機能を持つ。又,フライホイールはスケールUP(質量と径の増大)することによってより多くの運動エネルギーを蓄えることが出来る機能を持つ。従って,フライホイールはエネルギーを貯め込むこ
とによって,風車から伝達される入力トルク(T1)より大きな定格トルクを負荷側に定格に放出することができる。更に,フライホイールは外力(風力エネルギー→T1)が加えられることにより増速し,回転速度の二乗に比例して運動エネルギーを蓄えることが出来る特有な機能を持つ。…即ち,貯水池のスケールを大にすればより大量の水(位置エネルギー→運動エネルギー)を貯め込むことができることと同じく,フライホイールもスケールUPすれば大量の運動エネルギーを蓄えることが出来る。そして,水力発電は貯水池からの放水量を増やすことによって運動エネルギーが増大し発電量を増大することになる。同じく,フライホイールから大量の運動エネルギー,即ち,異次元の理量である回転トルクを発電機に放出することによって発電量が増大する。即ち,概念的に,同貯水池もフライホイールもエネルギーの貯蔵機能に於いて同じくするものである。このエネルギーの貯蔵機能を持つフライホイールを風車と一体型にすることによって,即ち,定格で大回転トルクを放出する機能を持たせた風車発電機がこの考案の主要なコンセプトを為すものである。そして,外力(エネルギー)の補給,即ち,風力エネルギーが続く限りフライホイールはその機能を発揮して発電出力に繋がることになる。
故に,フライホイールをスケールUPして貯蔵能力を増やせば定格に大回転トルクの放出が可能となり大発電出力が可能となる。
其の二:フライホイールは運動エネルギーを蓄える一方,同エネルギーを平準化して安定したトルクを負荷側に放出する機能を持つ。この機能を適用したものとして大型の舶用ディーゼルエンジンがフライホイールを装備していることを挙げることが出来る。レシプロエンジンが発する脈動のあるエネルギーをクランクシャフトにフライホイールを取り付けてこのフライホイールの機能により平準化した回転トルクを放出する機
能である。

一方,フライホイールは負荷側にトルクを放出することに

よって蓄えられたエネルギーが減少して回転は減速する。そこで,連続して負荷側に平準化したトルクを放出するためには風車より連続してフライホイールに回転トルク(T1),即ち,付加トルクを補給する必要がある。付加トルクよって,フライホイールは加速されて,更なるエネルギーを蓄え,そして,平準化した回転トルク(T2)を放出して安定した電気エネルギーを生み出すことになる。このフライホイールを中枢とした当該風車発電機による発電シテムを図2に示す。一方,安定した電気エネルギーを得るには風車を安定した風力エネルギーを得る地域に設置することが肝要である。…
(オ)

【0012】

フライホイールを回転させた場合の発生動力の理論計算を下記に示す。・フライホイールの質量と径の設定:総質量

15ton,
半径

2
(フライホイールを3段直列接続,1段当たりの質量5ton


m.

1参照)


フライホイールの接線力:

15ton*9806(N)=

14

7,000(N)


(1Kg当たりの接線力:1Kg*9.806N)



フライホイールの放出トルク:147,000(N)*2.0m.
=294,000(N)


フライホイールの定格回転数を100rpm.と設定した場合の動
力(P):


動力(P)=トルク(T)*回転数(N)/9549
=294,000(N・m)*100(rpm)/95
49

≒3080Kw
(注)
上記は理論計算であり,
出力係数,
機械ロスは計算外としている。
…当該風車発電機の羽根車
(2)
の形状は抗力式”字型ブレード
V”
(3)
であり同ブレードの外周部にはコーナーブレード(3b)(別称,ウイングレット)を備えており,風力エネルギーの捕捉を向上させ羽根による風力エネルギーの引摺り現象を無くしている。又,羽根車の外周部位には可動式ガイドベーン(4)を備えて風量制御を行い,ガイドベーン効果,即ち,ガイドベーンの開閉角度調整により風力を羽根車の外周部に集束させて回転トルクを向上させる効果(挺子の原理の応用)により風力エネルギー利用効率の向上を図っている(図4

参照)。その上,

図3に示している通り,羽根車は360度の無指向性であるので風向の変位に対して風力エネルギーの捕捉率が優れている。…
一方,当該風車発電機のメリットの一つは,その構造が鉛直構造であり又,増速機を必要としない構造なので機械ロスが少ない利点が挙げられる。従って,風力エネルギーの電気エネルギーへの変換効率は,プロペラ型機より優れている。
総括として,上記の数々の利点により,風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換率はプロペラ型風車より優れている風力機械である。【0013】
垂直軸風車発電機が起動トルクが弱いために起動始動が出来ない問題点については,次の二つの機構を適用することによって解消する。
1.当該風車発電機(WTG)は,図1に示している通り,鉛直の主軸上に風車ローター(2),フライホイール(1),発電機(14)が直列に取付けられる構造である。同主軸は最上部よりフライホイールの底面に至るまで中空軸(5)とし,又,同フライホイールの外周部の対角線上に2個以上の圧搾空気噴射用の噴射ノズル(11)を設ける。別置
きのコンプレッサー付属の空気槽(17)と同中空軸の最上部を配管接続する。同空気槽には常時,圧搾空気を蓄えて置き,備えられた風速検知センサーがカットイン風速(4~5m/sec.)を検知した時に同配管上に設けられた電磁開閉器が“開”動作を行い,同圧搾空気が同配管を通して同噴射ノズルに圧搾空気が圧送されて同噴射ノズルより圧搾空気を噴射させてフライホイールを強制回転させる機構である。同噴射ノズルからの圧搾空気の噴射時間を5秒間以内に設定し,この噴射力によって同フライホイールは即時に回転始動する。始動起動直後に同電磁開閉器は“閉”動作を行う様にタイマー設定を行い圧搾空気の圧送を停止する。
同フライホイールは始動起動後,フライホイール自らが醸し出す慣性と風車から送られて来る回転トルク(付加トルク)によって回転維持乃至増速することになる。そして,負荷側に回転トルクを放出することによって回転は減速する。かくして,この入力トルクと放出トルクがバランスしたところで定格運転(定格出力)に入ることになる。この運転システムは図2に示されている…
【0014】
当該風車発電機は風車のローターの外周部位に可動式ガイドベーン(4)
を備える。同ガイドベーンは,上述の通り,風力エネルギーをローターの外周部に集束させて回転トルクを増大させる効果,謂わば,ガイドベーン効果の他に,風車の回転制御及び,過回転防止の機能を持つ。即ち,フライホイールの回転速度をセンサーで検知してガイドベーンの“開”角度を調整してローターの回転速度を自動的にコントロールして定格運転を行い,且つ,カットオフ風速(25m/sec.)時にはセンサーで同風速を検知してガイドベーンを“閉”状態にして風車の過回転を防止する機構である。…

図4(A)は同ローターにおいてガイドベーンを備えて居ない場合の風力エネルギーの捕捉に関わる概念図である。同ローターの反抗力側のB面を通過する風力エネルギーは捕捉出来ていない。従って,回転トルクが低減することとなりローターの回転速度は減速状態となり,やがて回転停止状態になることがモデルテストで確認された。
同図において,(B)は,同ローターにおいてガイドベーンを備えている場合で,同ガイドベーンの角度調整によりA面に流れる風力エネルギーに加えて反抗力側のB面へ流れる風力エネルギーもA面側の同ローターの外周部位に集束されて回転トルクを増大させる機能をもつものである。この機能を,上述した通り,ガイドベーン効果と呼ぶが,これは,所謂,挺子の原理を応用するもので外力をローターの外周部に集束させてトルクの増大を図ったものである。
従って,風車の半径を機械的に可能な限り大とすれば風車が生み出す回転トルクは大となりフライホイールに転送されるトルク(付加トルク)が大となり同ホイールの回転速度が増大し,結果,フライホイールに蓄えれられる運動エネルギーは増大することになる。
一方,フライホールの半径をより大きくする,即ち,フライホイールを機械的に可能な限りスケールUPすれば蓄えられる同エネルギーも増大し,このエネルギーの増大が比例して回転トルクとして発電機に放出されて大出力を生み出す一つの手段となる。
一方,出力を増大させる別の手段は,風速の増大である。風速が上がれば風車の回転数が上がり風車が生み出す運動エネルギーの増大に繋がる。…
(カ)

【発明の効果】

【0016】
1.大スケールのフライホイールを垂直軸風車発電機と一体化すること
によって大容量の発電出力を可能とするものである。
2.可動式ガイドベーンを風車ローターの外周部位に備えてガイドベーン効果により出力の増大化を図り,且つ,同ガイドベーンの開度角度調整により風量制御を行うことによってフライホイールの回転速度を制御して発電出力の安定化を可能とする。
3.暴風時,或いは,豪雪時にセンサー検知により当該風車発電機を円筒式格納容器に自動収納する。この機構により同風車発電機を自然による破壊から防護する効果を発揮する。ヨーロッパと異なり,日本は台風に襲われる風土である。従って,風車発電機に耐暴風機構を備えることは絶対必要条件となる。
4.段落(0012),(0013)に記述されている通り,当該風車発電機の構造は鉛直構造であり主要機器である風車,フライホイール,発電機,等は全て鉛直上に直列に設置されて構造がシンプルである。従って,機械ロスがプロペラ型風車発電機に較べて小さいので風力エルギーの電気エネルギーへの変換効率が優れている。
5.重量級のフライホイール及び,発電機は地表レベルに設置される。従って,耐風,耐震上,発電装置としての建造物の強度レベルを低く押さえることが出来る。故に,同建造物の全体コストを低く押さえることが出来る。
6.フライホイール,発電機,等の中枢機器が地表レベルに設置されるので同機器のメインテナンスの難易度が低い。従って,メインテナンスコストを低く押さえられる。
7.当該風車発電機は建造物として,港の灯台と同様に景観を損なうものではない。又,風車の構造上,運転中に低周波音やシャドウフリッカーを発しないので人体に健康被害を及ぼさない。そして,渡り鳥の衝突事故死を招かない発電装置の建造物である。プロペラ型風車は羽
根車の周速が早いので鳥は障害物を目視出来ずに衝突すると言われている。総じて,当該風車発電機は環境にやさしい建造物である。イ
前記アの記載事項によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明に関し,次のような開示があることが認められる。

(ア)

従来の垂直軸風車発電機は,プロペラ型風車に較べてその回転トル
クが低レベルであり,また,羽根車のブレードの形状が直線翼であるため自己起動性が低いことから,低発電出力にとどまっており,実用化されているものの発電出力は,およそ50Kw未満であるという問題があった(【0003】,【0009】)。
(イ)

本発明は,この問題を解決するため,大スケールのフライホイ

ールを垂直軸風車発電機と一体化することによって大容量(1000kW以上)の発電出力を可能としたフライホイール一体型の垂直軸風車発電機であり,また,可動式ガイドベーンを風車ローターの外周部位に備えてガイドベーン効果により出力の増大化を図り,且つ,同ガイドベーンの開度角度調整により風量制御を行うことによってフライホイールの回転速度を制御して発電出力の安定化を可能としたものである(【0010】,【0014】,【0016】)。
(2)

引用例1の記載事項について
引用例1(乙15)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図2ないし図4,図7及び図8については別紙2を参
照)。
(ア)

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項1】
フライホイールを装備した垂直軸風車発電機において,同風車の回転翼(ローター)
の水平フレームに鉛直に取付けられた複数の抗力型羽根
(ブ
レード)は風力エネルギーを受け入れて抗力によって回転エネルギーを
生み出すが,同ブレード内部の空気の滞留はクッションとなり抗力を減衰させるので,そのブレードの上端部と下端部に空気の滞留を防ぐエアー抜き開口部を設けて空気を流通させて抗力を高めることによって回転エネルギーの向上を図り発生回転トルクの増大により風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換比率の向上化を図った抗力型の“V”字型ブレード付き垂直軸風車発電機
【請求項2】
抗力型ブレードを持つ垂直軸風車発電機に於いて同風車のローターの外周部分に風力エネルギー(力)を収束させて回転トルクの増大を図る目的で,即ち,梃子の原理の応用であるが,同ローターの全外周部の外郭部位に同ローターの外周部位に向かって風抜き角度を設定した複数の案内羽根(ガイドベーン)を取付けた機構を持つ請求項1の垂直軸風車発電機
(イ)

【技術分野】

【0001】
現時点(2014年10月1日現在),プロペラ型風車発電機による風の運動エネルギーの機械エネルギーへの変換率,即ち,風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換比率は学術上,風洞試験に基づくベッツの法則(Betz’Law)により最大59.3%とされている。しかし,実際面では,羽根車を通過しない空気の引き摺りによるエネルギー損失,羽根車の空気摩擦損失,増速機や発電機等の機構からくる機械損失等で,更に低く40~45%であるとされている。即ち,一般的に風車発電機における同エネルギーの変換比率は低効率であることが指摘されている。
【0003】
一方,当該垂直軸風車発電機においては,その構造上,風向に対して3
60°無指向性であるのでヨー機構を必要としない。叉,乱流に対しても的確に風力エネルギーを捕捉することが可能である。
加えて,
構造上,
鉛直軸上に風車,フライホイール,発電機等の中枢機器が設置されているので摩擦による機械損失が少なく,又,近年,大容量出力の多極式同期発電機が開発され低速発電が可能となったので増速機が不要となり,従って,構造がシンプルとなったので風車発電機としての綜合効率は理論上,プロペラ型風車発電機より良いとされている。
しかし,尚,力学的エネルギーを電気エネルギーに変換している水力発電のエネルギー変換比率が80~90%であるのに比べて一般通称の風車発電機の同変換比率は,上述の通り,59.3%以下とされており,その変換率の低レベルが指摘されている。
(ウ)

【考案が解決しようとする課題】

【0005】
図3及び図4に示されている通り,回転翼(ローター)2に抗力型羽根(ブレード)3を備える当該垂直軸風車発電機において,そのブレードの形状を“V”字型ブレードとして,複数の同ブレードを同回転翼フレーム2aに取り付けて風力エネルギーを受け入れ,その抗力により同ローターを回転させる方法において,同“V”字型ブレードの上部位と下部位に空気抜き口(AOL)を設けて受風時に“V”字型ブレード内部に空気の滞留を避ける機構を持たせたものである。空気の同ブレード内の滞留は受風時に空気がクッションとなり抗力を減衰させるので空気の逃げ口を設けて空気を流通させて抗力の増大化を図ったものである。この手段によって,同ブレード内部での抗力が高まり同ローターの回転速度が増大して,その結果,回転トルクが主軸を通してフライホイールに送られて同フライホイールに貯えられる運動エネルギーが増大して,それに比例して増大した回転トルクが負荷側(発電機側)に放出されて
電気エネルギーに対する変換比率を引き上げることになる。…
【0006】
この“V”字型ブレードには別の機能がある。即ち,下述の通り,受風面積を拡大して抗力を増大させることによって回転増速を得て運動エネルギー(回転エネギー)を増大させる機能である。…
【0007】
この“V”字型ブレードに加えて,当該垂直軸風車発電機は回転ローターの全外周部位に複数の案内羽根(ガイドベーン)4を取り付けるもので,これによって風力エネルギーの電気エネルーに対する変換比率を高める手段とする。
又,当ガイドベーンの付加的手段として流入する風量(風力エネルギー)を制御する,或いは,当ガイドベーンを閉塞して同エネルギーを遮断することによって風車の過回転を防止することである。…
【0008】
その一つ機能は,当ガイドベーン4の傾角の角度設定を行い同ガイドベーンにおける空気の流れを,即ち,同ガイドベーンの吐出開口方向を同回転ローター2の外周部に向けて風力エネルギーを同回転ローターの外周部に収束させる方法によって回転トルクの増大を図る手段である。これは,所謂,梃子の原理の応用である。即ち,図7の(B)に示す通り,同ローターの反抗力側Bに働く風力エネルギー(力)を同ローターの抗力側Aのローターの外周部に方向転回させて同エネルギーを収束させて一層の回転トルクを生み出すことを目的としたものである。
図8は,回転ローター2の外郭部位に取付けられるガイドベーン4の取付け方式を示す。
ガイドベーンは四角枠に取付ける方式と円形枠に取付ける方式の二方式がる。そして,その同ガイドベーンの形態にはそれぞれ固定式と可動調
整式の二形態がある。当ガイドベーンが固定式の場合の風量制御は,尚,
図9に示す通り,フライホイールの回転速度をセンサー検知して風車格納容器の上下作動により行なう機能も備えている。
【0009】
…風車発電は風力エネルギーが回転エネルギーに転換されて回転トルクを生み出し発電するシステムである。当該垂直軸風車発電機は風車自体によって生み出された回転トルクが主軸を通してフライホイールに伝達され,
風力エネルギーが続く限り同トルクは送り続けられることになり,慣性力も加わり同フライホイールは益々増速して過回転となってしまう。そこで,当フライホイールの回転速度をセンサー検知して,当ガイドベーンの開度の自動調整を行ない流入風量のコントロール行なって回転制御を行うシステムを採用している。風力エネルギーが続く限り,このシステムによって回転制御を行い設定された定格回転数を保って定格出力を得るものである。
加えるに,フライホイールの過回転は風車を破壊することになるので,万一に備えてガイドベーンを完全閉塞して流入風量をシャットアウトさせる機能を持たせるものである。図10は,水車タービンのガイドベーンによる水量の調整機構で,この操作機構を当ガイドベーンに応用したものである。…
(エ)

【考案の効果】

【0010】
当該垂直軸風車発電機の回転ブレードにおいて,受風面積の拡大を図った“V”字型ブレードにより風力エネルギーの捕捉率を高めて同エネルギーの高効率化を果たし,且つ,梃子の原理を応用した新機構のガイドベーン効果により風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換比率の高効率化を図ったものである。

一般的に垂直軸風車発電機はプロペラ型風車発電機に較べて構造がシンプルであるので機械損失が少なく機械効率は良いとされている。これに加えて,上述の当該考案の二つの手段により当該垂直軸風車発電機において風力エネルギーの利用効率を高め,電力エネルギーに対する変換比率の効率向上化を図ったものである。
且つ,ガイドベーンの閉塞機構によって過回転による風車の破壊を防止する機能を兼ね備えた垂直軸風車発電機を提供するものである。
(オ)

【図面の簡単な説明】

【0011】
【図1】…
【図2】大容量(MW級)出力の当該垂直軸風車発電機の概念図。…
(カ)

【符号の説明】

【0012】
1
フライホイール

2
回転翼(ローター)

2a

回転フレーム

3
“V”字型ブレード


4
ガイドベーン


5
中空軸(ホローシャフト)

7
ラディアルベアリング

8
ラディアルベアリング&スラストベアリング

9
リジッドカップリング

10

フレキシブルカップリング

11

空気噴射ノズル

12

空気配管


14

永久磁石多極同期発電機

15

円筒型風車格納容器


17a

空気槽(エアータンク)

25

非開閉式ドーム

26

非開閉式ドーム固定フレーム


28

ディスクブレーキ

29

三方エアー電磁弁

30

流体継ぎ手



前記アの記載事項によれば,引用例1には,①垂直軸風車発電機は,構造上,鉛直軸上に風車,フライホイール,発電機等の機器が設置されているので,摩擦による機械損失が少なく,構造がシンプルであり,風車発電機としての効率はプロペラ型風車発電機よりも良いとされているが,風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換比率は最大59.3%とされており,水力発電の変換比率に比べて,変換比率が低レベルであることが指摘されていること(【0001】,【0003】),②大容量(MW級)出力のフライホイールを装備した垂直軸風車発電機において,受風面積の拡大を図った“V”字型ブレードにより風力エネルギーの捕捉率を高めて同エネルギーの高効率化を果たし,且つ,梃子の原理を応用した新機構のガイドベーン効果により風力エネルギーの電気エネルギーに対する変換比率の高効率化を図ったこと【請求項2】【0010】【0012】(




の開示があることが認められる。

また,前記アの記載事項によれば,引用例1には,本件審決認定のとおり,引用発明1が記載されていることが認められる。

(3)

相違点の容易想到性について
本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,本願発明の垂直軸風車の主軸の下部位に発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つフライホイールにいうスケールの意義について規定した記載はない。
次に,本願明細書(乙10)の発明の詳細な説明には,スケールを直接定義した記載はないものの,フライホイールはスケールUP(質量と径の増大)することによってより多くの運動エネルギーを蓄えることが出来る機能を持つ(【0010】),フライホールの半径をより大きくする,即ち,フライホイールを機械的に可能な限りスケールUPすれば蓄えられる同エネルギーも増大し,このエネルギーの増大が比例して回転トルクとして発電機に放出されて大出力を生み出す一つの手段となる。(【0014】)との記載がある。上記記載によれば,スケールは,質量及び径(半径)を指すものと理解することができる。


引用例1には,フライホイールのスケールに関する明示的な記載はない。
しかるところ,引用発明1は,主軸の下部位にフライホイール1が装備され,風車自体によって生み出された回転トルクが主軸を通して前記フライホイール1に伝達され,回転トルクが負荷側(発電機側)に放出される,大容量(MW級)出力のフライホイール付き垂直軸風車発電機であるから,主軸に風車,フライホイール及び発電機が設置された回転機構を備えていることが認められる。ここに大容量(MW級)とは,1000kW以上の発電出力を意味するものと認められるから,引用発明1は,
1000kW以上の発電出力を可能とするフライホイール一体型の垂直軸風車発電機であるといえる。
加えて,引用例1には,受風時に“V”字型ブレード内部での抗力が高まり同ローターの回転速度が増大して,その結果,回転トルクが主軸を通してフライホイールに送られて同フライホイールに貯えられる運動エネルギーが増大して,それに比例して増大した回転トルクが負荷側(発電機側)に放出されて電気エネルギーに対する変換比率を引き上げることになる。(【0005】)との記載があることに照らすと,風車が風力エネルギーから回転トルクを生み出し,風車によって生み出された回転トルクが主軸を通してフライホイールに伝達され,さらに負荷側(発電機側)に放出されることを理解することができる。
そして,回転機構には主軸と軸受けとの間に摩擦損失が不可避的に発生することを考慮すれば,引用発明1のフライホイールは,発電機の発電出力の大容量(1000kW以上)の要求トルク以上のトルクを放出可能なスケールを備えているものと理解することができる。
そうすると,引用例1には,引用発明1のフライホイールが発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つことの開示があるといえるから,本件審決認定の本願発明と引用発明1との相違点は,実質的な相違点であるとは認められない。
したがって,引用例1に接した当業者は,引用例1に基づいて,本願発明を容易に想到することができたものと認められる。
(4)

原告の主張について
原告は,特許法29条の2の趣旨に照らせば,本願の発明者及び出願人と引用例1に係る実用新案登録出願の考案者及び出願人は,いずれも原告であって,同一人であるから,先願の引用例1に係る実用新案登録出願をもって後願の本願を排除できないと解すべきであり,引用発明1は同法2
9条2項の前項各号に掲げる発明に該当しない旨主張する。
しかしながら,特許法には,同法29条1項3号の特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明から,その発明をした発明者又はその発明に係る出願人が当該特許出願に係る発明をした発明者又は出願人である場合におけるその発明を除く旨を定めた規定は存在せず,同条2項の前項各号に掲げる発明についても,これと同様であるから,原告の上記主張は理由がない。

原告は,引用発明1と本願発明の手段及び目的は全く異なるものであるから,当業者は,引用発明1に基づいて,フライホイールが発電機が要求するトルク以上のトルクの放出を可能としたスケールを持つ構成(相違点に係る本願発明の構成)とすることを容易に想到し得たものといえない旨主張する。
しかしながら,
前記(3)のとおり,
本件審決認定の本願発明と引用発明1

との相違点は,実質的な相違点であるとは認められないから,原告の主張は理由がない。
その他原告は,
るる主張するが,
いずれも前記(3)の認定判断を左右する
ものではない。
(5)

小括
以上によれば,本願発明は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明を
することができたものと認められるから,本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。
2
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由がないから,その余の取消事由2及び3について判断するまでもなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹
裁判官

山門
裁判官

筈井一郎優卓矢
(別紙1)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

(別紙2)
【図2】

【図3】

【図4】

【図7】

【図8】

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