判例検索β > 平成29年(わ)第517号
監禁、殺人、監禁致傷、暴行被告事件
事件番号平成29(わ)517
事件名監禁,殺人,監禁致傷,暴行被告事件
裁判年月日平成31年3月22日
法廷名大津地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-22
情報公開日2019-04-10 14:00:15
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主文
被告人を懲役30年に処する
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
理由
【犯行に至る経緯】
第1

被告人は,順に交際相手となったA及びBと同居していたところ,平成23年頃,インターネット上で知り合ったCを誘ってその居住先の実家から離れさせ,同居人に加えると,やがて暴力を通じて屈服させ,様々に自由を制限し,Cを含む4名の同居先が堺市a区b町c丁d番e号所在の家屋(以下b町家屋ともいう。に移った平成24年頃以降,

Cに対し食事や水分摂取を制限し,
入浴及び排せつ時のトイレの使用も制限するなどの虐待をし,これらをA及びBにも分担させた。
よって,
被告人は,
平成25年頃から約4年間,
Cに対し,
後記第1の監禁致傷を行うに至る。

第2

並行して,平成28年9月頃以降,被告人は,交友者であったDに家出をさせて親元から引き離し,b町家屋の同居人に加えると,前同様に屈服させ,自由を制限し,食事や水分摂取のほか,入浴及び排せつ関連の虐待をし,これらをA及びBにも分担させ,途中からは被告人の交友者であるE及びFも虐待に加わった。よって,被告人は,平成28年9月頃から平成29年8月17日のD死亡までの間,同人に対し,後記第2の1及び2の暴行並びに第3の監禁及び殺人を行うに至る。

【罪となるべき事実】
第1

被告人は,前記のとおり同居するCについて,B及びAと共謀の上,平成25年頃から平成29年11月16日までの間,b町家屋の2階寝室において,自身を含むその3名の暴力等を受けて畏怖し,抵抗できない状態のC(当時34ないし38歳)を同寝室押し入れに入れて閉じ込め,その動静を監視カメラの映像及び直接の目視により監視するなどし,
同人が同所から脱出するのを著

しく困難にし,もって監禁し,その際,同監禁行為に伴う長期臥床により,同人に加療約2か月間を要する廃用症候群の傷害を負わせた。
第2

被告人は,Dを含む同居人及び交友者の数名と旅行に出掛けた機会の,
1
平成29年7月12日頃,沖縄県南城市fビーチ沖合において,Fと共謀の上,D(当時31歳)に対し,その頭部や首などを持って同人を海中に沈める暴行を加えた。

2
平成29年7月14日頃,沖縄県うるま市gh番地iビーチ沖合において,Fと共謀の上,D(当時31歳)に対し,その両肩を押し,足を引っ張るなどして同人を海中に沈める暴行を加えた。

第3
1
第2の各暴行の前後を通じて同居するDについて,
被告人は,B及びAと共謀の上,平成28年9月頃から平成29年8月15日頃までの間,b町家屋の2階和室において,自身を含むその3名の暴力等を受けて畏怖し,抵抗できない状態のD(当時30ないし31歳)の動静を監視カメラの映像及び直接の目視により監視するなどし,
同人が同所から脱出する
のを著しく困難にし,もって監禁

2
前記のとおり自由を奪われ,身体の生理機能を害される虐待を受け,E及びFが加わった5名から暴力を振るわれるうちに細菌性肺炎を発症して衰弱したDが,平成29年8月15日頃,集中治療室等の設備の下で医師による適切な医療を受けるのでなければ死亡する危険が高い状態に陥ったところ,その事
情を認識した被告人,B,A,E及びFは,Dが病院に運ばれるのに伴って上記の虐待や暴力等が発覚するのを恐れたことなどから,
滋賀県内にある空き家
の状態のE所有家屋にDを移動させて監禁し,
同医療を受けさせないで死亡さ
せる旨の謀議を行い,よって被告人は,B,A,E及びFと共謀の上,殺意をもって,同日頃,b町家屋の2階和室から滋賀県近江八幡市j町k番地l所在のE所有家屋(以下j町家屋ともいう。
)まで,衰弱して身動きできないD
(当時31歳)を,被告人,E及びFの担当により自動車に乗せて連行し,同
日頃から同月17日までの間,同家屋において,監視カメラの映像及び直接の目視により監視するなどしてDが同家屋から脱出するのを著しく困難にし,も
って監禁するとともに,その間,医師による適切な医療を受けさせないでDを極度に衰弱させ,病状を一層悪化させることにより,同日,同家屋において,細菌性肺炎に基づいて同人を死亡させ,殺害した。

【争点に対する判断】
第1

被告人及び弁護人の主張内容
罪となるべき事実第1の監禁致傷並びに第3の監禁及び殺人について,犯罪
成立要件は満たされていなかったと主張するものである。
具体的には,監禁致傷について,判示被害者は監禁されていたものではないし,被告人が判示共犯者らと共謀してその監禁に関与した事実もない,というのである。
また,
監禁及び殺人について,
判示被害者は監禁されていたものでは
なく,被告人が共犯者らと共謀してその監禁に関与した事実はないし,殺意を備えつつ共犯者らと共謀して殺人に関与した事実もない,というのである。第2

当裁判所の判断

1
罪となるべき事実第1の監禁致傷について



関係証拠によれば,平成29年11月16日に捜査機関がb町家屋で判示Cを発見した当時,同人はおむつを着用するのみで全身の肌を露出し,同家屋2
階寝室の押し入れ上段に寝そべっていたものであり,
これは,
寝ている同人の
背丈がようやく収まり,
両腕の横にわずかな隙間が残るほどの狭い寸法の空間
であった。
同人は布団に寝ていたが,
その表面にはペットシーツが敷き詰めら
れていた。
布団は全体が強く湿って一部に青カビが発生し,
異臭を漂わせてお
り,
布団とその下のマットレスをめくると,ペットシーツ越しに黒ずんだ液体が付着し,
下の棚板と癒着していた。
同人の足の爪は大きく突き出るほどに伸
びており,
髭も伸びて顎まわりを埋めており,
頭髪が接する辺りの壁は黒ずん

だ色合いに変色していた。
そのような同人の様子をとらえる映像が,押し入れ
内の天井部分に設置の防犯カメラを通じ,
寝室内に別途設置のモニターに映し
出され,これを被告人及びBの携帯電話機でも見られる仕組みになっていた。Cの背中から腰にかけての広い範囲に皮膚の変色らしきものが生じ,その身体
状態は,自力による歩行や起立ができないほどに関連の機能が低下していた。⑵

以上の事実に照らせば,被告人が公判で述べるとおりにCが任意に押し入れ内に身を置いていたとは考えられず,むしろ,同人と長く同居する被告人,B及びAにおいて,Cに強いて押し入れ内にとどまらせ,
その身体状態が劣悪な
ものとなっても放置し,
閉じ込めていたとみるのが自然である。
Cの同居人で
あったその3名の携帯電話機を通じたLINEのメッセージのやり取りのうちには,
Cにアイマスクを装着させるとか,繰り返しスティックパンやラーメンを食べさせるとか,
これと併せてビタミンを用意するなどという内容の伝達
が含まれており,
この点も,
およそ健全でない取扱いが同人に向けられていた
ことを示すと考えられる。
Cが押し入れ内に監禁されていた事実の推認が働く
ところ,C,B及びAの証言を含む各供述は,推認内容と整合する判示監禁の事実を具体的に述べるものであり,信用性に疑問はない。



そして,それらの各供述は,犯行に至る経緯第1のとおりに被告人が暴力を通じてCを屈服させ,
自由を制限し,
虐待を主導して行っていた延長で監禁
及んだことを述べる内容であるが,その内容は,Bから被告人に向けて,あるいはAからB及び被告人に向けて問い合わせをしたり了承を求めたりし,よっ
てCの取扱いが決められていたこと,
すなわち,
被告人が主導してその取扱い
を決めていたことを示すLINEのメッセージの内容と整合するのであって,やはり信用性に疑問はない。



被告人に不利な虚偽が述べられている疑いを検討したが,B及びAは自身らも暴力を振るうなどの虐待に及んだ事実を自認し,
被告人に全ての責任を負わ
せようとする姿勢ではないし,
この独自の虐待の存在はCの供述にも現れてい

て,
同人にも被告人に不利な内容を誇張しようとする姿勢はないと指摘できるから,この点の疑いを差し挟む余地はない。
てんかんの持病のあるCが押し入れでの生活を自ら希望し,それに協力したに過ぎないと述べる被告人の公判供述は,
既に検討したところと整合しない不
自然,不合理なものとしてその信用性を否定し,排斥することとした。⑸

C,B及びAの証言を含む関係証拠によれば,Cに対し判示のとおりの監禁が行われ,これを被告人が主導したものであり,すなわち,被告人が判示のとおり共謀して監禁致傷の犯行を行った事実が優に認定できるから,この結論を
明示したものである。

2
罪となるべき事実第3の1の監禁について



内容が合理的で信用性に疑問のないG医師の証言及び検察官調書によれば,平成29年8月17日に死亡した判示Dの死因は細菌性肺炎であるが,同人の
ような年若い世代が同肺炎を悪化させて死亡するのは稀であり,
それほどに悪
化させた別の要因が想定されるところ,
遺体に残る受傷の痕跡に,
同肺炎の発
症や悪化の要因となり得るものはなかった。
他方で,
血液検査の結果も総合し
て見いだせる同人の全身の低栄養状態は,
相当に数値が悪いものであり,
死亡
から起算して遡ると,
少なくとも1か月ほど前から生じたと認められ,
この低
栄養状態が,細菌性肺炎の発症や悪化をもたらす要因になったと認められる。そして,
Dはb町家屋に生活の本拠を移し,食事を含む日常生活を被告人らと共にしていたことが争いなく認められるから,
そうであるなら上記低栄養状態
はその同居生活で生じたと想定できる。
同居人のうちのDに限り栄養不足に陥
る関係性があったとの推認が働くのであり,
同居人らが意図してDに栄養を摂
取させない状況があったとの推認が働く。



この推認に沿うようにして,同居生活を送る頃のDが,被告人ら同居人やその交友者と行動を共にする中で暴力を受けたり辱めを受けたりし,虐待を受け
ていたことを示す映像等の客観的証拠が多数存在する。
Dが運転中にもかかわ

らず,
その顔面を助手席の被告人が容赦なく殴りつける映像が含まれていたし,記録化する被告人自身において当該虐待がDにとっての重大な被害ととらえる様子がなく,
暴力を振るう交友者に制止する声掛けをしていても真摯さの感
じられないものにとどまり,
むしろ虐待を是認し,
楽しむために記録化したと
うかがわれるものが多数存在する。


また,
b町家屋の同居人らがやり取りをしたLINEのメッセージを見ると,同家屋内にいるDの様子を随時知らせる内容のうちに,
同人がアイマスクの着
用を強いられていたことや,
水分補給をするにも許可を求める必要があったこ
となどをうかがわせるものがあり,
すなわち,
同人の行動の自由が失われてい
たことを示すものが含まれる。そして,メッセージの内容を更に精査すると,随時,Aが被告人に対し,事細かにDの様子を知らせた上,これに対し被告人が対応を指示するやり取りを示すものであって,
Dに水分を摂らせないように
指示する内容等のメッセージが存在するから,
Dに十分な栄養を摂取させない
状況を作出していたのは被告人であるとの推認が働く。



被告人が暴力を通じてDを屈服させ,同人を虐待していた一環で判示のとおり監禁していた事実を述べるB及びAの証言は,以上の検討,推認と整合し,被告人がDを痛めつける音が聞こえていた旨述べるCの供述にも支えられている。また,b町家屋内のDの様子を屋内の防犯カメラでとらえ,その映像を被告人が外出先でも携帯電話機を通じて確かめられる仕組みになっていた事実等とも整合する。
加えて,
同居せずに断続的にDと接触していたE及びFの
証言にも,被告人のDに対する虐待の事実が現れるところ,これらは,Bらの証言と異なる独自の虐待の存在を交えて述べられているから,
各供述が口裏合
わせや捜査官による誘導の産物とは考えにくく,
むしろ各自の記憶に残る内容
を率直に述べて相互に支え合うものといえる。
これら供述者が自身も独自にD
に暴力を振るうなどの虐待に及んだ事実を自認していることからすると,被告
人に不利な虚偽を誇張している疑いはない。
いずれの供述についても信用性に

疑問はない。
Dに対し多数回の外食を共にするなどして十分に栄養を摂取させ,家族同様
に気遣って接していたかのように述べ,
そのほか,
上記映像等について異なる
経緯や意味合いがあったかのように述べる被告人の公判供述は,
各種の客観的
証拠の内容と矛盾し,不自然,不合理であるとして信用性を否定し,排斥することとした。


以上のBら同居人及びEら交友者の証言を含む関係証拠によれば,Dに対し判示のとおりの監禁が行われ,
これを被告人が主導したものであり,
すなわち,
被告人が判示のとおり共謀して監禁の犯行を行ったと優に認定できるから,こ
の結論を明示したものである。
途中で判示暴行の場面のようにDが外に連れ出
されることもあったが,
前後を通じて同人が暴力等を受けて畏怖し,
抵抗でき
ない状態にあったと認められる以上,
b町家屋からの脱出が困難な状態が作出
され,これが持続していたとの認定は妨げられない。

3
罪となるべき事実第3の2の監禁及び殺人について



前述のG医師の証言及び検察官調書のほか,当時のDの身体の動きなどを示す映像等の関係証拠によれば,
判示のとおりb町家屋から運び出される直前の
平成29年8月15日頃の時点において,
同人は,
細菌性肺炎を発症して意識
障害を生ずるなどの重篤な容態となり,
直ちに医師による適切な医療を受けな
ければ死亡する危険が高い状態に陥っていたと認められ,
具体的には,
集中治
療室等の設備の整った病院で手厚い治療を施すのでなければその死亡を回避できない状態であったと認められ,
かつ,
救急車の手配などをすれば容易に前
記治療を施すことができ,
Dの救命を果たすことが可能な状態にあったと認め
られる。
そして,関係証拠によれば,映像上も見て取れるほどの意識障害を生じるなどして衰弱したDは,病院に運ばれるのではなく,被告人,E及びFの担当のもとで判示のとおりj町家屋に運ばれている。その間,同人らにより食べ物が
与えられるなどしたものの必要な治療を受けさせようとする動きはなく,Dは
引き続きj町家屋内にあって外部と接触しない状態に置かれた上,身動きに加
えて発語もままならない同人の様子をとらえ,
遠く離れたb町家屋でその映像
を見ることのできるウェブカメラなどの機材がj町家屋に設置され,主にAが
b町家屋で継続して映像を見ていたと認められる。このような状態が,被告人が公判で述べるとおりのEによるDの看護,介抱であったとは考えられず,むしろ場所を移して判示のとおりの監禁が続けられたものと認められる。この監禁行為は,
医師による適切な医療を受けなければ死亡する危険が高い
状態にあるDの,家屋外への移動や外部の者との接触を許さないものであり,集中治療室等の設備のある医療機関で速やかに行われるべき適切な医療を受けさせないものにほかならず,その状況を続けてDの容態の悪化をもたらし,死亡の危険を増大させる行為といえる。
危険を増大させないためには監禁の行
為を取り止めることが必須であり,
監禁の行為の主体はDの生命を排他的に支
配するといえる。それなのに,本件においては監禁の行為を取り止めずに継続し,
医師による適切な医療を受けさせない状況を続けて死亡の危険を増大させたと認められるから,同医療を受けさせないという態様において,Dを死亡させる危険性の高い行為を行ったものであり,
殺人罪の実行行為を行ったものと
認められる。


被告人は,D自身が病院に行かなくても大丈夫だと述べていたから,死亡する危険性が高い状態にあるとの認識はなかった旨,
公判で述べるが,
当時の同
人の身体状態に照らせば,
相当に衰弱していることを認識できないはずはない
と考えられる。また,衰弱の事情を速やかにEらに知らせて集合し,対応を相談している事実に照らしても,
被告人が同危険性を認識していなかったとは考
えられない。この点の被告人の供述は排斥せざるを得ない。



次に,被告人は,Dを病院に連れて行く提案をしたがEが拒み,同人がj町家屋に連れて行く計画を持ち出してきたと述べ,
併せて,
D自身も病院に行く

ことを拒んでいたと述べ,
自身は,
同所でDの面倒を見るというEの付添いと
して,現場まで同道したにすぎないと公判で述べている。この供述は,逆に,被告人が嫌がるEに無理強いするようにして同所への連行と監視を担当させ,病院に連れて行かないまま監禁を続けるよう指示した旨を述べるE,F,
B及
びCの証言を含む供述と対立している。

しかし,前述のとおりにウェブカメラなどを設置してb町家屋からの監視についても途切れさせないようにしていたことに加え,
同じ映像を被告人の携帯
電話機でも見られる状態にあったという徹底した監視の態勢作りは,目の届か
ないところでEが独自にDの取扱いを決めることを是としないものであり,む
しろ,被告人を含む周囲の関与者が連携して,j町家屋のE及びDの様子を確かめ続けようとするものとうかがわれる。
加えて,Eは,j町家屋に連行後,自身の知人に連絡を取り,救急に通報すべきかどうか思い悩む内容を伝えて相談していたと認められるのであり,この事実は,事前にEがDを病院に運ぶことにつき強く反対していたとみるには整合せず,むしろ病院に運ぶことを思い立っても踏み切れない事情があり,それゆえ逡巡していたことをうかがわせる。
そのほか,LINEのメッセージのうちに,D死亡前の被告人からBに宛てたやり取りとして,Dがしぶとく生き長らえている旨伝える意味合いとみるほかないものがあり,また,死亡後の同様のやり取りとして,早い段階でj町家屋に移動させて正解だった,b町家屋で死亡していたら大事になっていた,などと述べる意味合いとみるほかないものがあるし,被告人がAに対しDの身のまわりの物品を処分するよう伝達する内容のメッセージも含まれていると認められる。
以上の証拠内容は,自身は深く関与しないまま,j町家屋でEによる看護が行われる認識であったかのようにいう被告人の公判供述と整合せず,むしろEらの供述と整合し,これらを支える事実といえる。


被告人に不利な虚偽が述べられている疑いを検討したが,Eらの供述は各所に独自の内容を伴っており,しかし,つなぎ合わせれば一連のいきさつが矛盾なく説明できる構造のものと認められるから,
これらが口裏合わせや捜査官に
よる誘導の産物とは考えにくく,
むしろ各自の記憶に残る内容を率直に述べて
相互に支え合うものといえる。いずれの供述についても信用性に疑問はない。他方の被告人の供述は,各種の客観的な証拠内容や事実関係と整合せず,これらにつき不合理とみるほかない説明を積み重ねているものとして信用性を否定し,排斥することとした。



Eらの供述を含む関係証拠を総合すると,被告人は,Dが死亡する危険性が高い状態にあると認識の上,
病院に運べば従前の各監禁や虐待の事情が発覚す
るからこれを免れるべく,
同人に適切な医療を受けさせないままj町家屋に連
行し監禁し,
同所で息絶えるのならそれでよしとし,
すなわち,
殺意をもって,
この連行及び監禁を他の関与者らに指示し,
承諾させて連携させた。
被告人は,
以上のとおりに判示の監禁及び殺人を主導して遂げたものであり,共謀してこ
れらの犯罪を行ったと優に認定できるから,この結論を明示したものである。
【法令の適用】
被告人の判示第1の所為は刑法60条,221条(刑法10条により刑法220条及び204条各所定の刑を比較し,重い傷害罪について定めた懲役刑(ただし,短期は監禁罪の刑のそれによる)により処断)に,判示第2の1及び2の各所為は刑法60条,208条に,判示第3の所為のうち,1及び2の監禁の点は継続する1個の監禁行為であるから刑法60条,220条に,2の殺人の点は刑法60条,199条にそれぞれ該当するところ,判示第3の2の監禁殺人は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,
第3の1の監禁とも併せて刑法54条1項前段,
10条により以上を1罪とした上,重い殺人罪の刑で処断し,所定刑中,判示第2の1及び2の各罪について懲役刑を,判示第3の罪について有期懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により最も重
い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役30年に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中300日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。【量刑の理由】
1
本件は,
住宅街の一軒家を現場として,
成人男性2名が社会から長く隔絶され,
虐げられていた事案であり,首謀者である被告人,並びにこれに付和雷同の同居人及び交友者が一体となって行う監禁暴行を受けた被害者のうちの,衰弱した1名が命を落とした事案であって,陰湿かつ非道極まりない悪質事案である。
2
最終の殺人の罪は,危険な凶器を用いて積極的に生命を奪う行為等を内容としておらず,監禁を続けて必要な医療措置を受けさせない態様であって,死亡の結果の実現を強く意欲していたとまでは認めがたい態様であった。しかし,弱々しくなっていく被害者の様子を撮影し,映像を中継するなどして把握しながら見殺しにしており,それ自体,戦慄を覚える非情な態様であって,生命を軽んじる態度が現れている。そして,犯人らが虐待を加え,長く監禁する行為が先行していた点に特徴があり,並行して監禁していた別の被害者に関する事情も含め,これらの発覚防止を企てた身勝手の極みというべき動機により,遂に殺人にまで行き着いたところに大きな特徴がある。

3
また,監禁の実態があまりにも酷いものであった。
先行の監禁は,屈服させた被害者を狭い押し入れ内に閉じ込め,排せつのために出ることも許さず,監視カメラを交えてその動静を徹底して監視するものであった。おむつを着用したままの排せつを強いられる被害者は,食事も劣悪なものを与えられ,身体機能が低下して本件の致傷を生じていた。その受給する障害年金が被告人らに横取りされていく一方で監禁が続き,カビが生えて異臭漂う押し入れ内から救出されるまでの4年余りの期間,被害者の尊厳は失われ続けていた。軽い評価を当てはめようもない。
追加して始められた監禁は,もう1名の被害者に対し,行動の自由を奪う度合
いこそ大きくないものの,奴隷ないし玩具のような扱いを伴っていた。身体を痛めつけたり辱めを負わせたりして反応を楽しむ虐待を並行させており,被害者の精神もむしばんでいく内容であった。この被害者にも前同様の排せつ等の制限を加え,劣悪な食事をさせ,栄養も水分も満足に与えないものとなっていった。監禁の期間は約1年に及び,
いたぶられ続けた被害者の尊厳は見るべくもなかった。
そのうちに被害者が衰弱し,死亡の危険を生じたところで翻意して救命を図るのではなく,逆に見殺しを選択しており,悪質性はいうまでもない。以上の非人道的な犯行につき,救い出された被害者が,また,救われなかった被害者の遺族が,厳しい被害感情を吐露するのは当然である。
4
そして,これほどにおぞましく悪質な各犯罪は,被告人が被害者らに甘言を用いるなどして順に取り込み,やがて態度を豹変させて暴力等により屈服させる方法で始まったと認められる。親元から離れさせるなどして各被害者を監禁し,一方には経済的な搾取を加え,一方には享楽的な虐待の対象になることを主に強制した。このような支配関係を築いた被告人は,同じく支配下に置いていた交際相手の女性らに監禁を分担させ,交友者らを虐待に誘い入れて暴行に関与させ,殺人の犯行においても監禁場所を移して見殺しにする計画を立案し,嫌がる交友者に主たる実行役を担当させるなどして犯罪全体を主導している。
本件は,
全ての基礎を被告人が作り出して犯行を推し進めたといえるのであり,ひとえに被告人の人格態度が,すなわち,他者の尊厳を傷つけないように努める発想が感じられない悪質な人格態度が被害をもたらし,顕現した事案であって,向けるべき非難の程度は重く大きい。
暴行罪の罪責を認め,謝罪の言葉を述べる被告人について,前科がなかった事情も含めて酌量を働かせられないか検討したが,公判廷で不合理な弁解を述べて罪責の大部分を争うその姿勢,特に,死亡した被害者をなお貶めるような弁解を述べているその姿勢に照らせば,反省の態度を汲み取ることもできず,刑事責任の評価を抑えるのは難しい。

5
総合すると,有期懲役刑の上限の刑期をもって処罰を行うべきとする検察官の科刑意見は,事案の内容に即した正当なものと判断できるので,主文のとおりの結論を選択した次第である。
(求刑:懲役30年)
平成31年3月28日
大津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

伊藤寛樹
裁判官

今井輝幸
裁判官

林宏樹
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