判例検索β > 平成30年(わ)第307号
業務上横領
事件番号平成30(わ)307
事件名業務上横領
裁判年月日平成31年3月25日
法廷名高知地方裁判所
裁判日:西暦2019-03-25
情報公開日2019-04-26 14:00:11
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平成31年3月25日宣告
平成30年(わ)第307号,第376号,第398号

主文
被告人を懲役3年6月に処する
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,株式会社Aの総務課長として勤務し,同社の資金の管理等の経理業務に従事していたものであるが,
第1(平成30年10月3日付け公訴事実)
別表1記載のとおり,平成28年2月25日頃から同月26日頃までの間,2回にわたり,高知市a町b丁目c番d号所在の株式会社B銀行C支店において,前記株式会社A代表取締役D名義で振り出された小切手2通(額面金額合計700万円)を同支店従業員にそれぞれ呈示し,同支店従業員から現金合計700万円の支払を受け,これを前記株式会社Aのためにそれぞれ業務上預かり保管中,別表2記載のとおり,同月25日頃から同月29日頃までの間,3回にわたり,
同市e町f丁目g番h号所在のE金庫F支店ほか2か所において,自己の用途に費消する目的で,前記現金合計700万円を自己が外国為替証拠金取引口座として使用していたG銀行H支店開設のI名義の口座にそれぞれ振込入金し,もって横領した
第2(平成30年12月14日付け公訴事実)
別表3記載のとおり,平成25年3月29日頃から平成27年1月5日頃までの間,13回にわたり,同市a町i丁目j番k号所在の株式会社J銀行C支店ほか1か所において,前記株式会社A代表取締役K名義で振り出された小切手13通(額面金額合計3300万円)を同支店従業員らにそれぞれ呈示し,同支店従業員らから現金合計3300万円の支払を受け,これを前記株式会社Aのためにそれぞれ業務上預かり保管中,別表4記載のとおり,平成25年3月29日頃から平成27年1月5日頃までの間,15回にわたり,同市a町l丁目m番n号所在のE金庫L支店ほか6か所において,自己の用途に費消する目的で,前記現金合計3300万円のうち現金合計3000万円を自己が外国為替証拠金取引口座として使用していたG銀行M支店開設のN株式会社ほか1社名義の口座にそれぞれ振込入金し,もって横領した
第3(平成30年12月27日付け公訴事実)
別表5記載のとおり,
平成27年1月8日頃から同年8月31日頃までの間,
12回にわたり,同市a町i丁目j番k号所在の株式会社J銀行C支店ほか1か所において,前記株式会社A代表取締役Kほか1名名義で振り出された小切手12通(額面金額合計2250万円)を同支店従業員らにそれぞれ呈示し,同支店従業員らから現金合計2250万円の支払を受け,これを前記株式会社Aのためにそれぞれ業務上預かり保管中,別表6記載のとおり,同年1月8日頃から同年8月31日頃までの間,16回にわたり,同市a町l丁目m番n号所在のE金庫L支店ほか4か所において,自己の用途に費消する目的で,前記現金合計2250万円のうち現金合計2200万円を自己が外国為替証拠金取引口座として使用していたG銀行H支店開設のI名義の口座にそれぞれ振込入金し,もって横領した
ものである。
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法253条に(判示第2の別表4番号13及び判示第3の別表6番号1ないし4については,番号ごとに包括して)該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第2の別表4番号10の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,
空調,
給排水衛生設備の配管工事等の事業を行う会社の総務課長として,同社の資金管理等の経理業務に従事していた被告人が,自己の外国為替証拠金取引口座への入金のため,平成25年3月末頃から平成28年2月末頃にかけて,現金合計5900万円を横領したという事案である。
被害額は,上記のとおり多額に及び,被告人の供述によれば,約10年間にわたって同様の行為を繰り返してきたというのであり,被害会社が被った損害は更に多額に上ることも予想されるところ,被告人からの被害弁償は737万円余りにとどまり,
被告人が一連の横領行為を繰り返す中で密かに補てんした金額を考慮しても,実質被害額に遠く及ばないことは被告人自身が認めるところである。こうした多額の被害について,実質的な被害弁償がされる見込みは極めて薄い。また,犯行の態様も,上司らからの厚い信頼を悪用し,長期間にわたって常習的に横領を繰り返してきたものであり,動機において,私的に行っていた投機行為で被った損失の穴埋めに利用するという利欲目的の強いものであることにも鑑みれば,悪質性が高いとの評価を免れない。取引で利益が出れば横領金を補てんする意思であったとの事情は,この種事案に及ぶ者の意思として一般的なものであり,特に有利に考慮すべきものでもない。
以上によれば,被告人の刑事責任は重く,被害額が高額に上る悪質事案であることに応じた相応の実刑は免れない。
一方,被告人は,本件を率直に認めて反省しており,社会復帰後,まじめに働いて被害弁償をする旨を誓約しており,
その態度は真摯なものと認めることができる。
また,被告人には,これまで前科がなく,まじめな勤務態度から,被害会社で若くして総務課長の地位にあったところ,本件が発覚して解雇され,妻とも離婚するに至ったもので,社会的には一定の制裁を受けたとも評価できる。
そこで,これらの被告人に有利な事情を,刑期を定めるにあたって考慮し,主文の刑を量定した。
(求刑

懲役5年)

平成31年3月25日
高知地方裁判所刑事部

裁判官


別表省略

田裕文
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