判例検索β > 平成29年(ワ)第10969号
地位確認等請求事件
事件番号平成29(ワ)10969
事件名地位確認等請求事件
裁判年月日令和元年5月23日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-05-23
情報公開日2019-06-25 03:32:26
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令和元年5月23日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第10969号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

地位確認等請求事件

平成31年2月14日
判主1決文
原告らの請求のうち,本判決確定の日の翌日以降に別紙①請求一覧表1から3までの各支給日欄記載の日が到来する各金額欄記載の各金員及びこれらに対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員の支払を求める部分に係る訴えをいずれも却下する。

2
原告らが,被告に対し,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

3⑴

被告は,原告Aに対し1948万0283円,原告Bに対し1733万4282円,原告Cに対し1701万1529円を支払え。



被告は,原告Aに対し別紙②認定一覧表1の1の,原告Bに対し別紙②認定一覧表1の2の,原告Cに対し別紙②認定一覧表1の3の各金額欄記載の各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。



被告は,平成31年2月から本判決確定の日まで,原告Aに対し別紙③認定一覧表2の1の,原告Bに対し別紙③認定一覧表2の2の,原告Cに対し別紙③認定一覧表2の3の各支給日欄記載の日限り各金額欄記載の各金員及び各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。

4
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用はこれを4分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。

6
この判決は,第3項⑴から⑶まで及び第5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1

請求の趣旨

1
主文2項同旨

2
被告は,平成29年4月以降,原告Aに対し別紙①請求一覧表1の,原告Bに対し別紙①請求一覧表2の,原告Cに対し別紙①請求一覧表3の各支給日欄記載の日限り,各金額欄記載の各金員及びこれらに対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。

第2

事案の概要等

1
本件は,被告との間で期間の定めのない労働契約を締結し,被告の設置する大学の教員として勤務していた原告らが,被告が原告らの所属していた学部の廃止を理由としてした解雇が無効であると主張して,被告に対し,労働契約に基づき,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,解雇後の月例賃金,夏期手当,年末手当及び年度末手当である原告Aにおいて別紙①請求一覧表1の,原告Bにおいて別紙①請求一覧表2の,原告Cにおいて別紙①請求一覧表3の各支給日欄記載の日限り各金額欄記載の各金員並びに各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2
前提事実
証拠等を掲記していない事実は,当事者間に争いがない事実,当裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨によって認められる事実である。


当事者

被告
被告は,淑徳大学,淑徳大学短期大学部,淑徳巣鴨高等学校,淑徳巣鴨中学校,淑徳高等学校,淑徳中学校,淑徳与野高等学校,淑徳与野中学校,淑徳小学校,淑徳幼稚園,淑徳与野幼稚園及び淑徳日本語学校を設置する学校法人である。
淑徳大学は,
千葉キャンパス,
千葉第2キャンパス,
埼玉キャンパス
(平
成18年4月1日当時の名称はみずほ台キャンパス。)及び東京キャンパスを有する4年制大学であり,平成29年4月当時,総合福祉学部,コミュニティ政策学部,国際コミュニケーション学部,経営学部,教育学部,看護栄養学部及び人文学部が置かれていた(以下,同大学の各学部を単に国際コミュニケーション学部などという。)。
国際コミュニケーション学部は,埼玉キャンパス内にあり,同学部には経営コミュニケーション学科,人間環境学科及び文化コミュニケーション学科が置かれていたが,
後記のとおり,
これらの全学科で平成26年度
(以
下,
年度
という場合はその年の4月1日を起算日とする1年間を指す。

までに学生募集が停止され,同学部は平成30年4月1日に廃止された。人文学部は,国際コミュニケーション学部の全学科における学生募集が停止された平成26年度に,
東京キャンパス内に新設された。
同学部には,
表現学科及び歴史学科が置かれている(以下,国際コミュニケーション学部及び人文学部の各学科を単に文化コミュニケーション学科などということがある。)。

原告ら
原告らは,いずれも,被告との間で後記⑵掲記の期間の定めのない労働契約(以下,原告らが被告と締結した労働契約を総称して本件各労働契約という。なお,契約書は作成されていない。)を締結し,後記⑶の解雇通知を受けた際,文化コミュニケーション学科に所属していた。


本件各労働契約の内容等

本件各労働契約締結の経緯等
原告A
原告Aは,平成6年4月1日から専任講師として被告に勤務し,その後,被告との間で平成11年4月1日を勤務開始日とする期間の定めのない労働契約を締結し,同日から平成19年3月末日までは淑徳大学国際コミュニケーション学部助教授,同年4月1日から平成21年3月末日までは同学部准教授,同年4月1日以降は同学部教授として勤務し,同学部における所属学科はいずれの期間も文化コミュニケーション学科であった。
原告B
被告は,平成18年6月頃,淑徳大学の教員を公募し,公募条件として,所属を国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科,担当分野をヨーロッパの歴史及び思想,主な担当予定科目をヨーロッパの歴史及び思想とするほか,実習指導や就職指導等の学生支援業務も担当すること,職名は教授又は准教授であること,応募資格は大学院博士課程を修了し又はこれと同等以上の学識を有すること,教職課程科目を担当できること及び大学院研究科での研究指導が可能なこと,大学での教育歴を有することが望ましいこと,提出書類は履歴書,研究教育業績書類一覧,主要著書,主要論文,現在の研究活動及びその主要な成果の要約並びに担当科目のうちいずれか1科目の講義計画案であることなどを記載した(乙10の2)。
原告Bは,被告の公募に応募して専任教員として採用され,被告との間で平成19年4月1日を勤務開始日とする期間の定めのない労働契約を締結し,同日付けで,専任教育職員として採用し,淑徳大学国際コミュニケーション学部勤務を命ずる及び准教授に任ずるとの記載がある辞令の交付を受けた。原告Bは,同日から平成25年3月末日までは国際コミュニケーション学部准教授,同年4月1日以降は同学部教授として勤務し,いずれの期間も文化コミュニケーション学科に所属していた。(甲3の1,2)
原告C
被告は,平成17年7月頃,淑徳大学の教員を公募し,公募条件として,所属を国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科,担当分野を英語コミュニケーション,担当科目を異文化間コミュニケーション論Ⅰ及びⅡ,英語コミュニケーション論Ⅰ及びⅡ,異文化間教育論,基礎演習Ⅰ及びⅡ並びに演習Ⅰ及びⅡとするほか,授業科目のほかに実習指導や就職指導等の学生支援業務も担当してもらうこと,職名は教授又は助教授であること,応募資格は大学院博士課程を修了し又はこれと同等以上の学識を有すること,大学での教育歴を有することが望ましいこと,提出書類は履歴書,研究教育業績書類一覧,主要著書,主要論文,現在の研究活動及びその主要な成果の要約並びに各講義科目の講義計画案であることなどを記載した(乙10の1)。
原告Cは,被告の公募に応募し専任教員として採用され,被告との間で,平成18年4月1日を勤務開始日とする期間の定めのない労働契約を締結し,同日付けで,専任教育職員として採用し,淑徳大学みずほ台勤務を命ずる及び助教授に任ずるとの記載がある辞令の交付を受けた。原告Cは,同日から平成23年3月末日までは国際コミュニケーション学部助教授,同年4月1日以降は同学部教授として勤務し,いずれの期間も文化コミュニケーション学科に所属していた。
(甲4の1,
2)

就業規則の内容
被告の就業規則8条は

学園は,業務上必要と認めた場合,教職員に対し勤務地,所属部署,職種及び職務の変更を命ずることができる。

と定め,同14条は

教職員が次に掲げる各号の一に該当するときは,解雇する。

と定め,同条4号はやむを得ない理由により事業を縮小または廃止するときと定めている(甲6)。ウ
月例賃金
被告の専任教員の月例賃金は,当月末日締めの当月25日払であり,本俸と諸手当とに分けられる。
本俸は,基本給及び職能給で構成される。基本給及び職能給のいずれも,原則として毎年4月1日に基本給は1号棒ずつ,職能給は5号棒ずつ昇給するが,他の教職員との均衡上必要と認めるときは,昇給が停止され,又は職能給の昇給が4号俸以下若しくは6号俸以上10号俸以下とされることがある。また,基本給及び職能給のいずれも,基本給表及び職能給表に定める各等級の最高号棒に達した場合は同号棒に据え置かれるほか,満60歳となった場合はその翌年度から昇給が停止される。大学教員の基本給表及び職能給表は,別紙④基本給表,別紙⑤職能給表大学教員(1級~2級)及び別紙⑥職能給表大学教員(3級~4級)のとおりである。
諸手当には,勤続手当及び住宅手当が含まれ,勤続手当は勤続年数が満10年に達した日の属する年度の翌年度4月から支給される。
(甲10,50)
原告Aの平成28年度における等級及び号俸は,基本給号俸が最高号俸である28号俸,職能給が4級の68号俸であり,原告Aの同年度における月例賃金は,本俸59万8300円並びに勤続手当1000円及び住宅手当6500円の合計60万5800円である。原告Aは,昭和31年12月生まれであり,平成28年度に満60歳に達する。
原告Bの平成28年度における等級及び号俸は,基本給号俸が最高号俸である28号俸,職能給号俸が4級の30号俸であり,原告Bの同年度における月例賃金は,本俸51万3500円及び住宅手当6500円の合計52万円である(甲8の1)。原告Bは,昭和37年6月生まれであり,平成34年度に満60歳に達する。
原告Cの平成28年度における等級及び号俸は,基本給号俸が最高号俸である28号俸,職能給号俸が4級の26号俸であり,原告Cの同年度における月例賃金は,本俸50万3500円並びに勤続手当1000円及び住宅手当6500円の合計51万1000円である
(甲9の1)

原告Cは,昭和34年8月生まれであり,平成31年度に満60歳に達する。

期末手当
被告の給与規程及び期末手当支給規程は,満2か月以上勤務した教職員に期末手当を支給する旨,期末手当の支給は各年度に3回とし,原則として,7月に夏期手当,12月に年末手当及び3月に年度末手当を支給する旨等を定めているが,
期末手当の支給額についての定めはない
(甲
10,11)。
被告は,教職員に対し,平成28年6月29日,専任教職員の平成28年度の夏期手当を(本俸+扶養家族手当)×2+1000円とする旨通知し,同年12月1日,専任教職員の同年度の年末手当を(本俸+扶養家族手当)×3+1000円とする旨通知し,平成29年3月15日,専任教員らの同年度の年度末手当を(本俸+扶養家族手当)×(学校及びキャンパスごとの評価係数)×0.367+1000円とし,淑徳大学埼玉キャンパスの専任教員の評価係数を0.75とする旨通知した(甲12の1ないし3)。
被告は,原告らに対し,上記各計算式に基づき,平成28年7月5日に夏期手当を,同年12月5日に年末手当を,平成29年3月15日に年度末手当をそれぞれ支払った。なお,その際,年度末手当の計算結果に小数点以下の数字が生じた場合,小数点第1位を繰り上げる方法により計算が行われた。
(甲7の2ないし4,甲8の2,甲9の2ないし4,
12の1,2)

定年
国際コミュニケーション学部の教員の定年は,採用日が平成13年3月31日以前である場合は満70歳,同年4月1日以降である場合は満65歳であり,定年に達した年度の末日をもって退職となる。
原告らの定年は,原告Aが満70歳,原告B及び原告Cが満65歳である。



国際コミュニケーション学部の廃止及び本件解雇

国際コミュニケーション学部の廃止に至る経緯
被告は,平成24年度から経営コミュニケーション学科の,平成25年度から人間環境学科の,平成26年度から文化コミュニケーション学科の各学生募集を停止した。
各学科の最終募集年度に入学した学生の卒業予定年月日は,経営コミュニケーション学科が平成27年3月31日,人間環境学科が平成28年3月31日,文化コミュニケーション学科が平成29年3月31日であったが,いずれの学科も,留年した学生がいたため,上記各同日の翌年4月1日に廃止された。


本件解雇に至る経緯
被告は,平成25年12月17日,国際コミュニケーション学部の教員に対し説明会を行い,同学部を廃止する予定である旨及び同学部の業務がなくなれば雇用は終了する旨説明した。
原告らは,被告に対し国際コミュニケーション学部以外の学部(以下,単に他学部という。)への配置転換を要求したが実現せず,平成27年3月23日には淑徳大学教職員組合(以下本件組合という。)を結成して団体交渉を申し入れたが,開催条件について折り合わず団体交渉は開催されなかった(甲15)。
被告は,平成29年2月21日,原告らに対し,就業規則14条4号により同年3月31日をもって解雇する旨通知した(以下,原告らに対する解雇を総称して本件解雇という。)(甲5の1ないし3)。


人文学部の新設

学校教育法等の定め
学校教育法(平成23年5月2日法律第37号による改正後のもの。以下特記なき限り同じ。)4条1項は,大学の学部の設置等は同項各号に定める者の認可を受けなければならない旨定め,同項1号は,私立大学の学部の設置等の認可権者を文部科学大臣と規定している。
また,
同条2項は,
同条1項の規定にかかわらず,同条2項各号に掲げる事項を行うときは文部科学大臣の認可を受けることを要しない旨及びこの場合にはあらかじめ文部科学大臣に届け出なければならない旨定め,同項1号は,大学の学部の設置であって当該大学が授与する学位の種類及び分野の変更を伴わないもの等を掲げている。
学位の種類及び分野の変更等に関する基準(平成15年3月31日文部科学省告示第39号)1条1項は,大学の学部の設置等であって学校教育法4条2項1号に該当するものは,同基準1項各号に掲げる要件のいずれにも該当するものとする旨定め,同項1号は,設置等の前後において当該大学が授与する同基準別表第一の上欄に掲げる学位の種類の変更を伴わないことと定め,同項2号は,設置等の前後において同別表の上欄に掲げる学位の種類に応じ同別表の下欄に掲げる学位の分野の変更を伴わないことと定め,同別表の上欄は,学位の種類として学士等を定め,同別表の下欄は,学位の種類が学士である場合における学位の分野を文学関係その他の19分野に区分している。なお,同号は,学際領域等当該区分により難い学位の分野の判定に当たっては,既設の学部等の廃止を伴い,かつ,設置等に係る学部等の教員の半数以上が当該既設の学部等に所属していた教員で占められることなどにより,設置等の前後において当該大学が授与する学位の分野の変更を伴わないと認められる場合に限り,同号に該当するものとして取り扱う旨定めている。(乙13)

人文学部新設の経緯
人文学部の新設は,平成23年12月,被告の常務会に提案され,平成24年3月21日,
被告の理事会及び評議員会で承認された
(乙15)

文化コミュニケーション学科及び人文学部は,いずれも学位の種類が学士,学位の分野が文学関係であったため,被告は,同学部の新設を文部科学大臣への届出の方法によることとし,平成25年4月22日,文部科学省に対し,同学部の新設に関する基本計画書等を提出し,平成26年4月1日,同学部を新設した。同学科及び同学部の各入学定員は,いずれも100名であった。(甲53の1ないし6)

3
争点及びこれに対する当事者の主張
(本案前の争点)
将来給付の訴えの利益
(被告の主張)
本件訴えのうち将来の給付を求める部分は,あらかじめその請求をする必要がなく,訴えの利益を欠くものである。
(原告らの主張)
争う。
(本案の争点)


争点1(本件解雇の効力)について
(原告らの主張)

本件解雇の効力の判断枠組み
被告は,原告らに何ら落ち度がないにもかかわらず,経営上の事情を理由に本件解雇をしたのであるから,本件解雇は,いわゆる整理解雇の4要件,すなわち,人員削減の必要性,解雇回避努力義務の履行,被解雇者選定の合理性及び解雇手続の相当性のいずれかを満たさない場合,解雇権を濫用したものとして無効である。
上記4要件を検討するに当たっては,本件各労働契約において原告らの所属学部が国際コミュニケーション学部に限定されていなかったこと及び職種が大学教員に限定されていたことを前提とすべきである。
すなわち,学部には当該学部の専門性と無関係のいわゆる一般教養科目や初年次教育科目(以下単に一般教養科目という。)を担当する専任教員も在籍していることが一般的であり,大学教員であるからといって当然に専門性を理由に所属学部が限定されるわけではなく,原告らも国際コミュニケーション学部の専門性と関係のない一般教養科目を担当してきたことや,原告らの所属学部を国際コミュニケーション学部に限定する旨記載された労働契約書その他の書面は存在しないこと,原告らに対する辞令は原告らの所属学部を国際コミュニケーション学部に限定せずに同学部への勤務を命ずる内容のものであったこと,被告は原告らに対し就業規則8条1項を根拠に学部間の配置転換を命ずることが可能であったことなどに照らし,原告らの所属学部は国際コミュニケーション学部に限定されていなかったものである。
他方,原告らに対する辞令に専任教育職員として採用する旨の記載があることや,大学教員はその専門的知識及び実績に着目して採用されるものであり,大学教員ほどの専門的知識及び実績を求められない高等学校の教員や事務職員等としての勤務は想定されていないこと,原告ら採用時の公募は博士課程の修了を応募資格とし主要論文を提出書類とするなど大学教員としての勤務を前提とするものであったことからすると,本件各労働契約における原告らの職種は大学教員に限定されていたものである。イ
本件解雇の効力
以下のとおり,
本件解雇は整理解雇の4要件をいずれも満たしておらず,
解雇権を濫用したものとして無効である。
人員削減の必要性
被告は,平成29年度時点で,資産が941億円,うち金融資産が300億円に達し,資産に占める自己資金の比率は94%,採算を表す帰属収支差額は10億7000万円の黒字であり,有利子負債はほとんどなく,教育研究活動におけるキャッシュフローは28億8000万円のプラスとなるなど,本件解雇の前後を通じて財務状況が極めて良好であったから,本件解雇当時,人員削減の必要はなかった。
被告は,国際コミュニケーション学部の廃止により原告らについて人員削減の必要性が生ずる旨主張するが,前記アのとおり原告らの所属は同学部に限定されていなかったから,同学部の廃止により原告らについて人員削減の必要性が生ずるものではない。また,被告は,同学部を廃止するとともに人文学部を新設し,
13名の専任教員を新規採用したが,
原告Aは別紙⑦担当可能科目一覧表1の,原告Bは別紙⑦担当可能科目一覧表2の,原告Cは別紙⑦担当可能科目一覧表3のとおり,他学部の平成29年度における授業科目を担当可能であり,人文学部にも原告らの担当可能な授業科目が多数あったことからすれば,被告は,同学部の専任教員を新規採用することなく原告らを同学部に配置転換することが可能であったのであるから,人員削減の必要性はなかった。
解雇回避努力
前記のとおり人文学部には原告らの担当可能な授業科目が多数あり,文化コミュニケーション学科の廃止と同時に人文学部が新設されたという意味において,両者の間には連続性があるから,被告は,同学科に所属していた原告らを同学部へ配置転換するか,少なくとも原告らに対し同学部への応募の機会を与えるべきであった。被告は,同学科と同学部との間の連続性を否定するが,被告が両者間の連続性を前提に同学部を届出の方法により新設したことや,
被告が文部科学省へ提出した書面に,
同学部は同学科を改組転換したものである旨や同学部の表現学科及び歴史学科は文化コミュニケーション学科を基礎とするものである旨が記載されていたことなどによれば,同学科と同学部との間に連続性があることは明らかである。また,人文学部以外の学部にも原告らの担当可能な授業科目があったことや,少なくとも本件解雇の時点では教員の配置転換について教授会の決議は不要だったことからすれば,被告は,教授会の意向にかかわらず,原告らを人文学部以外の学部へ配置転換することも可能であった。さらに,現在多くの大学では,附属機関に配置された専任教員が学部横断的に一般教養科目を担当しており,
被告においても,
学部に所属せず附属機関に所属している教員がいたのであるから,被告は原告らを附属機関へ配置転換して一般教養科目を担当させることも可能であった。
それにもかかわらず,被告は,原告らと同じ国際コミュニケーション学部に在籍していた専任教員の多くを他学部又は附属機関へ配置転換する一方,原告らに対しては意向聴取すら行わないまま本件解雇を強行したものであって,解雇回避努力を尽くしたということはできない。解雇手続の相当性
被告は,平成24年3月21日,理事会及び評議員会において,文化コミュニケーション学科の学生募集の停止及び人文学部の新設を決定し,淑徳大学の学長は,同月27日,国際コミュニケーション学部の教授会において,当該決定について報告するとともに,関係する教員とは今後個別に相談して対応したい旨述べ,平成25年3月12日の教授会でも同旨を述べた。このように,学長が2年度にわたり関係する教員とは今後個別に相談したい旨述べたことから,原告らは,他学部に配置転換されるなどして本件各労働契約が存続すると信じており,突然の解雇予告など想像もしていなかった。それにもかかわらず,被告は,原告らに対し,国際コミュニケーション学部廃止後の身分について一切個別の相談,説明及び協議をせず,また,人文学部の全教員について新規採用が内定し原告らを同学部に配置転換する余地がなくなった後もそのことを説明せず,同年12月17日になって,希望退職を募集することやこれに応じない場合は解雇することを初めて伝えたのであり,被告の一連の対応は,労働契約関係における信義則に著しく反するものである。被告は,その後も,国際コミュニケーション学部の廃止に伴い原告らを解雇する必要性や原告らを他学部へ配置転換できない理由等について一切説明せず,原告らが本件組合を結成して団体交渉を申し入れた際も正当な理由なく団体交渉を拒否した。
被解雇者選定の合理性
被告は,被解雇者の選定について,国際コミュニケーション学部所属の教員を対象とした旨説明するのみで何ら合理的な説明をしていない。(被告の主張)

本件解雇の効力の判断枠組み
大学は学部ごとに研究及び教育内容の専門性が異なるから,大学教員は所属学部を限定して公募,採用されることが一般的であり,淑徳大学においても,教員を採用する際は,公募段階で所属学部を限定した上,所属予定の学部の教授会又は人事委員会が承認した場合に限って採用している。原告らも,所属学部を国際コミュニケーション学部に限定した公募に応募した上,同学部の教授会の承認を経て採用されたものであり,実際にも同学部以外に所属したことはなく,原告らの所属学部及び職種は,国際コミュニケーション学部の大学教員に限定されていた。
このように,本件各労働契約において,原告らの所属学部及び職種は国際コミュニケーション学部の大学教員に限定されていたから,同学部の廃止に伴う本件解雇はいわゆる整理解雇ではなく,その効力を判断するに当たっていわゆる整理解雇の4要素を検討する必要はない。

本件解雇の効力
被告は,国際コミュニケーション学部が廃止されて原告らの労務提供先がなくなったことによりやむを得ず原告らを解雇したものであり,後記のとおり解雇回避努力も尽くしているから,本件解雇は有効である。人員削減の必要性
原告らの所属学部が国際コミュニケーション学部に限定されている以上,
同学部が廃止されれば原告らの労務提供先はなくなるのであるから,被告の財務状況と関係なく,原告らを解雇せざるを得ないものである。そして,同学部の入学者数は,平成20年以降定員に達しておらず,定員を減員したにもかかわらず定員割れの状態が解消されなかったのであるから,同学部の廃止には合理性がある。
解雇回避努力
被告は,以下のとおり解雇回避努力を尽くしており,これ以上の措置は想定できない。
a
平成25年12月17日,平成28年6月1日及び同年11月1日の3回にわたり,文化コミュニケーション学科所属の教員を対象に希望退職を募集した。

b
平成26年5月19日,原告ら訴訟代理人弁護士両名(以下原告ら代理人という。)と会談し,他大学又は他学部から原告らに対するオファーがあれば速やかに連絡する旨伝えた。なお,いずれの大学又は学部からもオファーはなかった。

c
平成28年10月14日,原告らに対し,人文学部以外の学部における教員の公募状況を通知した。

d
中学及び高校の教員資格を持っている原告B及び原告Cについて,平成28年11月16日,淑徳中学校及び淑徳高等学校に対し,同月21日,淑徳巣鴨中学校及び淑徳巣鴨高等学校に対し,同年12月1日,淑徳与野中学校及び淑徳与野高等学校に対し,それぞれ教員としての採用の検討を依頼した。なお,いずれの学校からも採用しない旨回答があった。
e
平成28年12月22日,原告らに対し,同日時点での本俸を維持する労働条件で,専任事務職員として雇用する旨提案した。
これに対して,原告らは,原告らを人文学部で採用し又は原告らに同
学部への応募の機会を与えるべきであった旨主張するが,同学部の教員を全員新規採用とすることは被告の裁量の範囲内である。また,原告らは,他学部への異動命令を発すべきだったとも主張するが,一般企業における人事異動と異なり,大学は学部ごとに教育や研究の専門性が異なるため,受入先学部の教授会又は人事委員会の承認がなければ当該学部への異動命令を発することはできないのであり,淑徳大学においても受入先学部の承認がないにもかかわらず異動命令を発した例はない。解雇手続の相当性
被告は,以下のとおり,十分な期間をかけて原告らに対する説明及び原告らとの協議を尽くしており,解雇手続は相当である。
a
平成23年11月15日,教授会において,国際コミュニケーション学部の改組,再編に着手せざるを得ない旨説明した。

b
平成24年3月27日,国際コミュニケーション学部の教授会において,平成26年度から文化コミュニケーション学科の学生募集を停止する旨説明した。新たな学生募集を停止するということは,いずれ学部が廃止されることを意味するから,被告は同日には同学部の廃止予定について説明したものである。また,同日,関係する教員とは今後個別に相談して対応したい旨説明しており,その後個別相談を実施した。
c
平成25年3月12日,国際コミュニケーション学部の教授会において,文化コミュニケーション学科に所属している教員の身分について今後個別に相談して対応したい旨説明した。

d
平成25年12月17日,国際コミュニケーション学部の教員に対して説明会を行い,同学部を廃止する予定であること,これに伴い同学部の教員を対象に希望退職の募集を行うことを説明するとともに,同学部の業務がなくなれば雇用は終了する旨説明した。また,同日及び同月19日,教員ごと個別に説明及び相談の機会を設けた。

e
平成26年4月から7月まで,原告ら代理人との間で交渉を行っ
た。

被解雇者選定の合理性
国際コミュニケーション学部の廃止に伴い,同学部に在籍していた専任教員全員が退職又は解雇の対象となったのであるから,被解雇者の選定には合理性がある。


争点2(原告らに対する未払賃金の額)
(原告らの主張)
原告らの年齢,勤続年数及び平成28年度の月例賃金並びに被告の賃金体系によれば,原告らに支払われるべき平成29年度以降定年までの月例賃金は,原告Aにつき別紙①請求一覧表1の,原告Bにつき別紙①請求一覧表2の,原告Cにつき別紙①請求一覧表3のとおりである。被告は,毎年,夏期手当として(本俸+扶養家族手当)×2+1000円,年末手当として(本俸+扶養家族手当)×3+1000円,年度末手当として(本俸+扶養家族手当)×(学校及びキャンパスごとの評価係数)×0.367+1000円をそれぞれ支給しているから,同評価係数を0.75としても,原告らに対し支払われるべき平成29年度以降定年までの夏期手当,年末手当及び年度末手当の額は,原告Aにつき別紙①請求一覧表1の,原告Bにつき別紙①請求一覧表2の,原告Cにつき別紙①請求一覧表3のとおりである。
(被告の主張)
原告らの月例賃金は,将来にわたり昇給が保障されているわけではない。また,夏期手当,年末手当及び年度末手当は,支給時期ごとに決定されるものであり,支給期未到来の各手当に係る債権は発生していない。
第3

当裁判所の判断

1
本案前の争点(将来給付の訴えの利益)について
労働契約上の地位確認と同時に将来の賃金を請求する場合,労働契約上の地
位を確認する判決の確定後も使用者が賃金を支払わないと予想されるなどの特段の事情がない限り,判決確定の日の翌日以降に支払期日の到来する賃金についてあらかじめその請求をする必要があるとは解されず,当該賃金の請求に係る訴えは不適法というべきである。
本件では,上記特段の事情を認めるに足りる証拠はないから,原告らの請求のうち,本判決確定の日の翌日以降に支払期日の到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払を求める部分に係る訴えは,訴えの利益を欠き,不適法なものとして却下を免れない。
2
争点1(本件解雇の効力)について


認定事実
前記前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

被告の財務状況
平成28年度末時点における被告の資産は約926億9000万円であり,うち金融資産(現預金,引当特定資産及び有価証券)は約278億7000万円であり,
上記約926億9000万円のうち自己資金は約93.
9パーセントに当たる約870億2000万円,負債は約6.1パーセントに当たる約56億7000万円であり,負債のうち借入金は約6億3000万円であった。
被告の採算を表す帰属収支差額は,
平成22年度から平成29年度まで,
平成27年度に帰属収入が消費支出を約1億8000万円下回ったのを除き,いずれも帰属収入が消費支出を上回るいわゆる黒字の状態が続いており,黒字の額は,平成22年度が約15億2000万円,平成23年度が約8億3000万円,平成24年度が約8億4000万円,平成25年度が約5億円,平成26年度が約5億6000万円,平成28年度が約7億5000万円,平成29年度が約10億7000万円であった。被告の教育活動によるキャッシュフローにおいて収入と支出の差を見ると,平成26年度から平成29年度まで,いずれも収入が支出を上回っており,その額は,平成27年度は約21億7000万円,平成28年度は約23億5000万円であった。
(甲44の1ないし6,45,73,74,89,90の1ないし3)イ
淑徳大学における教員の採用手続
淑徳大学における教員の採用は,従前は,各学部に設けられた教員人事委員会が審議し,審議結果を教授会に報告し,教授会の決議を経て学長が理事長に具申し,理事長が同具申に基づき行うこととされていた(乙4ないし6)。
その後,遅くとも平成27年度以降,教員の採用手続が変更され,各学部に設けられた学部人事委員会が審査し,審査の経過及び結果を大学人事委員会に,審査の結果を教授会に,それぞれ報告し,大学人事委員会が審議をして被告に報告することとなり,教授会の決議は不要となった(甲67,68,70,85)。


学部に所属しない教員の存在
淑徳大学には,アジア国際社会福祉研究所その他の附属機関があり,本件解雇当時,学部に所属せず附属機関にのみ所属する教員が存在した(甲71,72,証人D,弁論の全趣旨)。


原告らの専門分野,担当科目等
原告らの専門分野は,原告Aが日本近代文学,原告Bが西洋史学(古代ローマ史),原告Cが異文化コミュニケーションである(甲85ないし87)。
淑徳大学において,原告Aは,英語,比較文化,比較文学,アメリカ文学,日本文化研究,日本文学等の,原告Bは,ヨーロッパの歴史,ヨーロッパの思想,歴史学,イギリスの歴史,都市文化論,教養基礎等の,原告Cは,異文化コミュニケーション論,英語コミュニケーション論,異文化教育論,イギリスの思想,基礎演習等の各授業科目を担当していた。また,原告B及び原告Cは,他の2名の教員と共同で,読解の方法,文章の論理展開,文章作法,発表の方法等について学ぶための初年次教育用テキストの執筆も担当した。
国際コミュニケーション学部には,学科ごとの又は全学科を横断した専攻コースがあり,観光業への就職を目指す学生を教育する観光ツーリズムコースや,歴史・文化コース等があったが,原告Bは,平成19年度から観光ツーリズムコースが閉鎖された平成26年度まで,同コースを担当していた。原告Bが同コースを担当していた当時,原告Bを含む5名の教員が同コースを担当しており,原告B以外の担当教員は,旅行会社の元社員1名及び現代中国論,日本語学又は社会学をそれぞれ専門分野とする教員各1名であった。また,原告Cも,観光ツーリズムコースを担当していたことがあった。
(甲59,61,85ないし87,原告B)

国際コミュニケーション学部の入学定員充足率
国際コミュニケーション学部では,平成20年度以降,入学定員が充足されておらず,同学部の入学定員充足率は,平成20年度が98パーセント,平成21年度が75パーセント,平成22年度が91パーセント,平成23年度が79パーセントであった。また,文化コミュニケーション学科の入学定員充足率は,平成20年度が102パーセント,平成21年度が58パーセント,平成22年度が80パーセント,平成23年度が58パーセントであり,平成24年度は入学定員を175名から100名に減員したものの,87パーセントであった。


本件解雇に至る経緯
淑徳大学の副学長は,平成23年11月15日,国際コミュニケーション学部の教授会において,同学部は4年間入学定員を確保できない状況が続いており,今後同学部の改組,再編に着手せざるを得ない旨説明した。
被告の理事会及び評議員会は,平成24年3月21日,平成26年度から文化コミュニケーション学科の学生募集を停止する旨決定するとともに,同年度に人文学部を新設する旨及び同学部の専任教員は原則として全員新規採用とする旨決定した(乙11,乙15)。
淑徳大学の学長は,平成24年3月27日,国際コミュニケーション学部の教授会において,平成26年度から文化コミュニケーション学科の学生募集を停止するとともに,同年度に人文学部を新設すること,関係する教員とは今後個別に相談したいことなどを説明した(原告B本人)。
被告は,平成24年7月11日以降,申請計画作業部会において人文学部の教員候補者の資格審査,面接等を行い,同学部の教員予定者を決定した(乙15)。
淑徳大学の学長は,平成25年3月12日,国際コミュニケーション学部の教授会において,文化コミュニケーション学科に所属している教員の身分について今後個別に相談したい旨説明した。同日の時点で,人文学部の教員予定者は全て決定済みであり,原告らが同学部に配置転換される予定はなかったが,同学長は,そのことを説明しなかった(証人D)。
被告は,平成25年4月22日,文部科学省に対し,人文学部の新設に関する基本計画書等を提出した。
同基本計画書によれば,人文学部で予定されている授業科目数は,表現学科が基礎教育科目35及び専門教育科目62であり,歴史学科が基礎教育科目35及び専門教育科目65であった。
加えて,同基本計画書によれば,同学部で採用予定の専任教員は13名,非専任教員は47名であり,専任教員13名の提出時点における現職は,学内が3名,学外が10名であり,学内の3名には国際コミュニケーション学部教授(1年間の任期付教員)及び国際コミュニケーション学部非常勤講師が各1名含まれており,非専任教員47名の提出時点における現職は,学内が10名,学外が37名であり,学内の10名には国際コミュニケーション学部非常勤講師が7名含まれていた。
また,同基本計画書によれば,同一設置者内における変更状況(定員の移行,名称の変更等)の欄に淑徳大学国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科(△100)(平成25年9月届出予定)との記載がある一方,人文学部の入学定員が100人とされていた。
さらに,同基本計画書には,人文学部の設置の趣旨等を記載した書面が添付されており,同書面には,同学部の表現学科及び歴史学科の基礎となる文化コミュニケーション学科の過去における志願者状況を踏まえて表現学科及び歴史学科の各入学定員を設定したこと,表現学科及び歴史学科の基礎となる文化コミュニケーション学科の教育内容を充実して再編するので表現学科及び歴史学科ではより一層の志願者確保を見込むことができること,表現学科及び歴史学科の基礎となる文化コミュニケーション学科を設置する国際コミュニケーション学部の卒業生には相当数の求人があるところ,表現学科及び歴史学科では文化コミュニケーション学科における卒業生の進路や需要を十分に勘案した上で教育内容を充実させることなどからこれまで以上の求人件数を見込むことができることなどが記載されていた。
(甲53の1,2,5,6,乙15)
淑徳大学の副学長は,平成25年5月頃,国際コミュニケーション学部の教員とグループ面談を行い,同教員の身分について善処する旨述べた(原告B)。
被告は,平成25年6月28日,文部科学大臣に対し,淑徳大学国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科の学生募集停止について(報告)と題する書面を提出した。同書面には,文化コミュニケーション学科の学生募集を平成26年度から停止すること,募集停止の理由は同学科を改組転換して新たに人文学部を設置するためであり,同学科の所属教員については学園内学校への配置転換等を模索し,できる限り解雇を回避するよう努めていくことなどが記載されていた。(甲60)
被告は,平成25年12月17日,国際コミュニケーション学部の教員に対し説明会を行い,同学部の廃止に伴い希望退職の募集を行う旨及び同学部の業務がなくなれば雇用は終了する旨説明した。
また,
被告は,
同日の説明会後及び同月19日,同学部の専任教員と個別に説明及び相談をする機会を設けた(乙15)。

被告が本件解雇以前に講じた措置
希望退職の募集
被告は,平成25年12月17日,平成28年6月1日及び同年11月1日の3回にわたり希望退職の募集を行ったが,原告らはいずれにも応募しなかった。
平成25年12月17日の希望退職募集(以下平成25年希望退職募集という。)は,対象者を文化コミュニケーション学科等の専任教員で被告が承認した者,募集期間を同月18日から平成26年1月末日まで,文化コミュニケーション学科専任教員の退職日を平成29年3月末日とし,応募者が退職日まで勤務した場合には退職金支給規程に定める退職金に加え退職時の本俸月額12か月分の加算金を支給することなどを内容とするものであった(甲13)。
平成28年6月1日の希望退職募集(以下平成28年6月希望退職募集という。)は,対象者を文化コミュニケーション学科専任教員で学園が承認した者,募集期間を同日から同月10日までとし,退職日並びに退職金及び加算金は平成25年希望退職募集と同一であった(甲47)。
平成28年11月1日の希望退職募集は,対象者を文化コミュニケーション学科専任教員で学園が承認した者,募集期間を同日から同月11日までとし,退職日並びに退職金及び加算金は平成25年希望退職募集と同一であった(甲48)。
代理人間の交渉
原告ら代理人は,平成26年4月8日付けで,被告に対し,国際コミュニケーション学部の募集停止に伴い平成29年3月末日をもって原告らを解雇した場合,
当該解雇は解雇権の濫用として無効である旨通知し,
被告代理人は,平成26年5月19日,原告ら代理人と協議を行い,他大学又は他学部から原告らへのオファーがあれば速やかに連絡する旨伝えた。また,原告ら代理人は,同年7月11日付けで,被告に対し,希望退職の対象とされた国際コミュニケーション学部所属教員の相当数が既に他学部又は附属機関への配置転換が決定しており,平成29年3月末日に予定されている解雇は原告らを狙い撃ちしたものといわざるを得ない旨通知するとともに,原告ら以外の国際コミュニケーション学部所属教員の配置転換の状況及びその予定を明らかにすること及び原告らは他学部にも担当可能な授業科目があるため原告らの他学部への配置転換を検討することを求め,平成26年7月12日付けで,被告に対し,原告らの担当可能科目を具体的に記載した書面を送付し,被告代理人は,同月30日付けで,原告らに対し,原告ら以外の国際コミュニケーション学部所属教員のうち3名は希望退職に応じ,2名は他部署に配置転換となったこと,同月12日付けで送付された書面は被告に渡したこと,他学部で原告らの採用を希望する旨の意向が出た場合には速やかに連絡することなどを通知した。しかし,被告が原告らに対し,他大学又は他学部からの採用希望を伝えたことはなかった。(甲14の1ないし6,乙15)
求人ウェブサイトの紹介
被告は,平成28年10月14日,原告らに対し,淑徳大学での専任教員採用について国立研究開発法人科学技術振興機構のJREC-INPortalで公開している旨通知した(乙2の1ないし3)。
JREC-INPortalは,一般公開されている研究者用の求人ウェブサイトであり,登録すれば誰でも閲覧することが可能であった。専任事務職員としての勤務の提案
被告は,平成28年12月22日,原告らに対し,平成29年4月1日以降,現在と同額の月額給与で被告の専任事務職員として勤務することを提案したが,原告らは,同提案を拒否し,被告に対し,淑徳大学の教員として雇用を継続するよう求めた。(甲38ないし40,乙12)ク
原告ら以外の国際コミュニケーション学部の教員の処遇
被告は,平成24年度,経営コミュニケーション学科の学生募集を停止するとともに経営学部を新設し,平成25年度,人間環境学科の学生募集を停止するとともに教育学部を新設した。
上記の両学部では,教員全員が新規に採用されたわけではなく,経営コミュニケーション学科又は人間環境学科の教員のうち自主退職しなかった者はいずれも配置転換又は再任用され,両学科に所属していた教員で解雇された者はいなかった。
国際コミュニケーション学部の廃止が決定した当時,文化コミュニケーション学科には12名の専任教員が在籍しており,うち3名は平成25年希望退職募集に,1名は平成28年6月希望退職募集にそれぞれ応募し,5名は他学部又は附属機関に配置転換となり,原告ら3名のみが解雇された(乙15)。また,希望退職に応募した教員の中には,平成29年度に経営学部及び教育学部の非常勤講師として採用され,英語によるコミュニケーションに関する授業科目を合計8コマ担当した者が含まれていた(甲66の3,証人D)。


本件組合による不当労働行為救済申立て等
原告らは,平成27年3月23日,本件組合を結成し,本件組合は,同月26日及び同年5月9日,被告に対し,原告らの雇用の維持等を議題として,交渉場所を淑徳大学埼玉キャンパス構内とする団体交渉の申入れをしたが,被告は,交渉場所を学内とする団体交渉には応じられないことなどを理由として,いずれの申入れにも応じなかった(甲17ないし20,22,23)。
本件組合は,平成27年8月6日,東京都労働委員会に対し,被告が正当な理由のない団体交渉拒否及び支配介入の不当労働行為をした旨主張して救済命令の申立てを行い,東京都労働委員会は,平成28年10月4日,本件組合の主張する不当労働行為の成立を認め,同申立ての一部を認容する命令を発した(甲29)。
被告は,同命令を不服として,中央労働委員会に対し再審査の申立てをしたが,中央労働委員会は,平成29年10月4日,同再審査の申立てを棄却する命令を発した(甲65)。
被告は,同命令を不服として,同年11月1日,同命令の取消しを求めて当裁判所に訴訟を提起した(平成29年(行ウ)第505号不当労働行為救済命令取消請求事件)。


本件解雇の効力の判断枠組み
本件解雇は,淑徳大学の国際コミュニケーション学部の廃止に伴い,同学部に所属していた原告らを解雇するものであって,原告らに帰責性のない被告の経営上の理由によるものである。そうすると,本件解雇が解雇権を濫用したものとして無効となるか否かは,人員削減の必要性,解雇回避努力,被解雇者選定の合理性及び解雇手続の相当性に加え,本件においては,原告らの再就職の便宜を図るための措置等を含む諸般の事情をも総合考慮して,本件解雇が客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当と認められるか否か(労働契約法16条)を判断するのが相当である。
これに対し,被告は,本件各労働契約において原告らの所属学部及び職種は国際コミュニケーション学部の大学教員に限定されていたから,同学部の廃止に伴う本件解雇はいわゆる整理解雇ではなく,その効力を判断するに当たって上記諸事情を考慮する必要はない旨主張する。しかし,原告らの所属学部及び職種が同学部の大学教員に限定されていたか否かにかかわらず,同学部の廃止及びこれに伴う本件解雇について原告らに帰責性がないことに変わりはなく,被告の主張する原告らの所属学部及び職種の限定の有無は,本件解雇の効力を判断する際の一要素にすぎないと解されるから,以下,上記限定の有無については,本件解雇の効力を判断するに当たり必要な限度で検討する。


本件解雇の効力

人員削減の必要性
前記認定事実のとおり,国際コミュニケーション学部の平成20年度以降の入学定員充足率は,平成20年度が98パーセント,平成21年度が75パーセント,平成22年度が91パーセント,平成23年度が79パーセントであった。このような状況の中,被告は,平成24年度から経営コミュニケーション学科の学生募集を停止し,平成25年度から人間環境学科の学生募集を停止したが,同年度も募集を継続した文化コミュニケーション学科の入学定員充足率も,平成20年度には102パーセントであったものの,平成21年度が58パーセント,平成22年度が80パーセント,平成23年度が58パーセントと継続的に定員割れの状態にあり,平成24年度は入学定員を175名から100名に減員したにもかかわらず,入学定員充足率は87パーセントにとどまった。このように,国際コミュニケーション学部は,平成20年度以降一貫して定員割れの状態にあり,平成25年度までに3学科中2学科で学生募集を停止し,同年度も募集を継続した文化コミュニケーション学科も,平成24年度に入学定員を前年度の6割弱まで減員したにもかかわらず定員割れが継続していたのであり,このような状況の下で,被告が同学科における平成26年度以降の学生募集の停止及びこれに伴う同学部の廃止を決定したこと自体は,経営判断として不合理ということはできない。
もっとも,前記認定事実のとおり,被告は,平成28年度末時点における資産が約926億9000万円,うち金融資産が約278億7000万円であり,上記約926億9000万円のうち自己資金は約93.9パーセントに当たる約870億2000万円,負債は約6.1パーセントに当たる約56億7000万円であり,負債のうち借入金は約6億3000万円のみであった。また,被告の採算を表す帰属収支差額は,平成22年度から平成29年度まで,平成27年度に帰属収入が消費支出を約1億8000万円下回ったのを除き,いずれも帰属収入が消費支出を上回るいわゆる黒字の状態にあり,黒字額は,平成22年度が約15億2000万円,平成23年度が約8億3000万円,平成24年度が約8億4000万円,平成25年度が約5億円,平成26年度が約5億6000万円,平成28年度が約7億5000万円,平成29年度が約10億7000万円であった。さらに,被告の教育活動によるキャッシュフローにおいて収入と支出の差を見ると,平成26年度から平成29年度まで,いずれも収入が支出を上回っており,その額は,平成27年度は約21億7000万円,平成28年度は約23億5000万円であり,証拠(甲73,89,90)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年度及び平成29年度も同程度の水準であったことが推認できる。そうすると,本件解雇の時点において,被告の資産,収支及びキャッシュフローはいずれも相当に良好であったというべきであり,原告らを解雇しなければ被告が経営危機に陥るといった事態は想定し難い状況であった。
また,前記認定事実のとおり,被告は,平成24年3月21日,国際コミュニケーション学部の廃止を前提として,平成26年度から文化コミュニケーション学科の学生募集を停止する旨決定するとともに,同年度に人文学部を新設する旨決定し,これに伴い,同学部の表現学科に35の基礎教育科目及び62の専門教育科目,歴史学科に35の基礎教育科目及び65の専門教育科目をそれぞれ新設した。そして,前記認定事実によれば,被告は,本件解雇以前,原告Aに英語,原告Bに教養基礎,原告Cに英語コミュニケーション論といった一般教養科目を担当させていたほか,原告B及び原告Cに読解の方法,文章の論理展開,文章作法,発表の方法等を学ぶための初年次教育用テキストを執筆させ又は観光業への就職を目指す学生を教育するコースを担当させるなど,原告らに対し,専門分野との関連性のない又は希薄な授業等を担当させてきた実態があると認められる。原告らは,原告Aについては別紙⑦担当可能科目一覧表1の,原告Bについては別紙⑦担当可能科目一覧表2の,原告Cについては別紙⑦担当可能科目一覧表3のとおり,他学部の授業科目を担当可能である旨主張しているところ,別紙⑦担当可能科目一覧表1から3までの各授業科目には,
人文学部のものだけを見ても,
英語の基礎,
応用又は実践をそれぞれ内容とするものや,日本語による読解,作文,発表,企画又はプレゼンテーションをそれぞれ内容とするものなど,原告らが従前担当してきた授業等と内容共通のものを含む多くの一般教養科目が含まれているほか,西洋史概論等の原告らの専門分野と一定の関連を有する専門科目も含まれており,被告における上記実態も踏まえれば,別紙⑦担当可能科目一覧表1から3までの各授業科目には原告らの担当可能なものが多く含まれていると認められる。
以上によれば,被告が国際コミュニケーション学部を廃止すること自体を経営判断として不合理ということはできないものの,原告らを解雇しなければ被告が経営危機に陥るといった事態は想定し難く,原告らは人文学部の一般教養科目及び専門科目の相当部分を担当可能であったものであるから,人員削減の必要性が高度であったとはいえないというべきである。
これに対し,被告は,本件各労働契約において原告らの所属学部は国際コミュニケーション学部に限定されていたから,同学部が廃止される以上,被告の財務状況等と関係なく人員削減の必要性が認められる旨主張する。
しかし,原告らの所属学部が同学部に限定されていたか否かは別として,
淑徳大学には,
アジア国際社会福祉研究所その他の附属機関があり,
学部に所属せずに附属機関に所属する教員が存在し,原告らが配置転換を求めていたことは前記認定のとおりであるから,被告は,原告らを他学部へ配置転換することが可能であったかはともかくとしても,附属機関へ配置転換することは可能であったことが認められる。そうすると,仮に原告らの所属学部が同学部に限定されていたとしても,国際コミュニケーション学部の廃止によっても,原告らの配置転換が不可能であった結果,原告らを解雇する以外に方法がなかったということはできず,被告の主張は採用することができない。

解雇回避努力等
被告は,①希望退職の募集,②他大学又は他学部からのオファーがあれば速やかに連絡する旨の伝達,③人文学部以外の学部における教員の公募状況の通知,④被告の運営する中学校及び高等学校に対する採用検討の依頼並びに⑤本俸を維持する労働条件での専任事務職員としての雇用の提案を行い,これらにより解雇回避努力を尽くした旨主張する。しかし,前記認定事実によれば,上記①(希望退職の募集)は,原告らが希望退職に応募しない場合は解雇することを前提に,応募した場合は退職金に退職時の本俸月額12か月分の加算金を支給する旨提案したにすぎず,十分な解雇回避努力とはいえない。また,本件においては,再就職の便宜を図るための措置も考慮すべき一事情であるものの,上記②及び④(他大学又は他学部からオファーがあれば速やかに連絡する旨の伝達並びに被告の運営する中学校及び高等学校に対する採用検討の依頼)は,他大学,他学部又は被告の運営する中学校及び高等学校に原告らの採用の可否を問い合わせたにすぎず,上記③(人文学部以外の学部における教員の公募状況の通知)は,原告らが自ら閲覧可能な求人ウェブサイトのURLを原告らに通知したにすぎないから,解雇の有効性を基礎付ける事情として十分なものとはいえない。
また,前記前提事実のとおり,原告B及び原告Cが応募した教員公募は,担当業務を淑徳大学の授業等,職名を教授又は助教授若しくは准教授,応募資格を大学院博士課程を修了し又はこれと同等以上の学識を有することなどとし,提出書類が研究教育業績書類一覧,主要論文,現在の研究活動及びその主要な成果の要約等とされていたことに照らし,応募者が大学教員として勤務することを前提とするものであったこと,原告らはいずれも本件各労働契約の締結当時から助教授又は准教授の地位にあり,本件解雇の時点では教授の地位にあったところ,教授,准教授及び助教授はいずれも大学教員に固有の肩書であること(学校教育法92条1項,平成17年7月法律第83号による改正前の学校教育法58条1項),原告らが本件各労働契約の締結後本件解雇に至るまで一貫して大学教員として勤務してきたことなどの事情を総合すれば,本件各労働契約においては,原告らの地位を大学教員に限定する旨の黙示の合意があったと認めるのが相当である。このような本件各労働契約における原告らの地位に加え,前判示のとおり配置転換により大学教員として雇用を継続することが不可能とはいえないことを併せ考慮すると,上記⑤(本俸を維持する労働条件での専任事務職員としての雇用の提案)も本件における解雇回避努力としては不十分というべきである。
これに対して,被告は,上記①から⑤まで以外の解雇回避措置は採り得なかった旨主張するが,前判示のとおり,他学部にも原告らの担当可能な授業科目が多数あったこと,被告には学部に所属しない教員がいたことなどに照らせば,被告は,原告らを学部に所属させることなく他学部の一般教養科目を担当させるなどの解雇回避措置をとることが可能であったというべきであり,被告の上記主張は採用することができない。前記認定事実のとおり,被告は,平成24年3月21日,理事会及び評議員会で,平成26年度から文化コミュニケーション学科の学生募集を停止することとして,国際コミュニケーション学部の廃止を決定するとともに,同年度に人文学部を新設し,同学部の専任教員は原則として全員新規採用する旨決定したものである。被告が原告らの所属学部は国際コミュニケーション学部に限定されており受入先の承諾なく原告らを同学部以外へ配置転換することはできない旨一貫して主張していることからすれば,被告は,同日の時点で,原告らの受入れを承諾する配置転換先が見つからなければ原告らが国際コミュニケーション学部の廃止に伴って解雇となる旨認識していたことがうかがわれなくもないところ,同日の時点で原告らの受入れを承諾する具体的見込みのある配置転換先があったと認めるに足りる証拠はない。逆に,被告は,原告らを人文学部へ異動させることにより原告らの解雇を回避可能であったものである。それにもかかわらず,被告は,同日,同学部の教員は原則として全員を新規採用とする旨決定し,その後,原告らに対し同学部への応募の機会を与えないまま同学部の教員を決定して,結果的に原告らを同学部に異動させる方法による解雇回避の機会を失わせる一方で,原告らに対し,同学部の教員の決定後である平成25年12月17日に至るまで,国際コミュニケーション学部の廃止に伴い解雇となることを説明せず,かえって,原告らを含む文化コミュニケーション学科の教員の身分について今後個別に相談したい旨繰り返し述べるなどしていたものである。以上の事実経過に照らせば,被告は,原告らが解雇となることを認識しながら,原告らに対してはそれを明らかにすることなく,意図的に解雇を回避する機会を失わせ,原告らを淑徳大学から排除しようとした疑いを払拭できないところである。なお,原告Bは,平成24年3月27日の教授会において人文学部の教員を原則として全員新規採用とする旨説明を受けた旨供述するが,仮に被告が同日に当該説明をしていたとしても,被告が原告らに対し国際コミュニケーション学部の廃止に伴い解雇となる旨を伝えていなかったことなどの前判示に係る事情に照らせば,被告が原告らに知らせることなく解雇を回避する機会を失わせた疑いを払拭できない旨の前記判断を左右するものではない。
その後も,被告は,人文学部での採用に代わる解雇回避措置,例えば,前判示に係る原告らを学部に所属させずに他学部の一般教養科目を担当させるなどの措置について十分検討することなく,本件における解雇回避措置として不十分な上記①から⑤までの各措置をとったにとどまるのであって,このような被告の対応は,前記認定に係る文部科学大臣への提出書面に文化コミュニケーション学科の所属教員について配置転換等を模索しできる限り解雇を回避するよう努めていく旨記載した被告自身の行動とも矛盾するものである。
以上によれば,被告が本件で求められる解雇回避努力を尽くしたということはできない。
被告は,人文学部の専任教員を全員新規採用とすることは被告の裁量の範囲内である旨主張する。確かに,被告は人員配置に関し一定の裁量を有しており,人文学部の教員を全員新規採用とすること自体は被告の裁量により行うことができるものであるから,被告のとるべきであった解雇回避措置は,原告らの同学部への配置転換に限られるものではなかったというべきである。しかし,本件においては,人員配置に関して裁量を有することが解雇回避努力の程度を緩和するという関係にはないから,被告は,原告らを同学部へ配置転換しない場合,他の方法により解雇回避努力を尽くす義務を負っていたのである。そして,被告は,前判示のとおり原告らを学部に所属させずに他学部の一般教養科目を担当させるなどの解雇回避措置をとることが可能だったのであるから,被告の上記主張は採用することができない。
被告は,受入先学部の教授会又は人事委員会の承諾がなければ他学部への配置転換はできない旨主張する。しかし,前記前提事実によれば,遅くとも平成27年度以降,教員採用について教授会の決議は必要とされておらず,学部人事委員会による審査もその経過及び結果が大学人事委員会等に報告されるにとどまるものであって拘束力はなかったものであるから,本件解雇の当時,原告らの他学部への配置転換について当該学部の教授会又は人事委員会の承諾が不可欠であったとは認められない上,この点を措くとしても,前判示のとおり,被告は原告らを学部に所属させずに原告らの雇用を維持することも可能であったから,被告の上記主張は前記判断を覆すに足りない。

解雇手続の相当性
前記認定事実のとおり,被告は,平成25年12月17日,原告らに対し,同学部の業務がなくなれば雇用は終了する旨説明し,同日及び同月19日,原告らを含む国際コミュニケーション学部の教員と個別相談の機会を設け,平成26年4月から同年7月まで,代理人を通じ原告らと協議を行ったが,被告がこれらの機会に原告らに対し解雇の必要性や原告らを配置転換できない理由等につき十分な説明をしたことをうかがわせる証拠はなく,また,被告は,原告らの結成した本件組合が本件各労働契約の存続等を議題とする団体交渉を申し入れた際もこれを拒否したことなどに照らせば,原告らに対する説明や原告らとの協議を真摯に行わなかったものというべきである。


総括
以上によれば,被告が国際コミュニケーション学部の廃止を決定したこと自体を不合理ということはできないものの,被告の財務状況が相当に良好であったことや,同学部の廃止と同時期に人文学部の新設が決定され原告らの担当可能な授業科目が多数新設されたことによれば,国際コミュニケーション学部の廃止に伴う人員削減の必要性が高度であったとはいえないというべきであり,それにもかかわらず,被告は,人文学部への応募の機会を与えず,個別に相談したいなどと述べて,本件各労働契約の存続に期待を持たせる言動に出て,結果的に解雇回避の機会を喪失させたばかりか,原告らを学部に所属させずに他学部の授業科目を担当させるなどの解雇回避努力を尽くすこともなく,原告らに対する説明や原告らとの協議を真摯に行うこともしなかったことなどの前判示に係る諸事情を総合考慮すれば,本件解雇は,解雇権を濫用したものであり,社会的相当性を欠くものとして無効である。
3
争点2(原告らに対する未払賃金の額)について


前記前提事実によれば,原告Aは,平成28年度に満60歳に達したため平成29年度以降昇給せず,原告Bは,同年度から勤続手当の支給が開始されるとともに,満60歳に達する平成34年度まで職能給号俸が毎年5号俸ずつ昇給し,原告Cは,平成29年度から満60歳に達する平成31年度まで職能給号俸が毎年5号俸ずつ昇給するものと認められ,原告らに対し支払われるべき平成29年4月以降の月例賃金及びその支払期日は,原告Aについて別紙②認定一覧表1の1及び別紙③認定一覧表2の1の,原告Bについて別紙②認定一覧表1の2及び別紙③認定一覧表2の2の,原告Cについて別紙②認定一覧表1の3及び別紙③認定一覧表2の3のとおりであると認められる。
これに対し,被告は,原告らの月例賃金は将来にわたり昇給が保障されているわけではない旨主張するが,前記前提事実のとおり,被告の専任教員は原則として毎年基本給につき1号俸ずつ,職能給につき5号俸ずつ昇給するものとされており,これに対する例外は,最高号俸に達した場合及び満60歳となった場合のほか,他の教職員との均衡上必要と認める場合に限られ,本件でそのような必要性をうかがわせるに足りる証拠はない。


前記前提事実によれば,被告の給与規程及び期末手当支給規程には,期末手当を各年度に3回支給する旨の定めがあるものの,期末手当の支給額については定めがなく,同支給額は,被告が各年度に各手当の支給基準を決定することにより確定するものと認められる。そして,前記前提事実に摘示した支給実績に照らせば,同支給基準は,個別の教職員ごとに決定されるものではなく,被告の専任教職員や埼玉キャンパス所属の専任教員等,一定の分類に属する教職員ごとに決定されており,原告らについて埼玉キャンパス所属の他の専任教員と異なる支給基準を決定することは予定されていなかったと認められる。そうすると,原告らが労務提供をしていなかった平成29年度以降も,被告が各手当の支給基準を決定した時点で原告らの各手当に係る債権の額が確定したものというべきであり,また,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,平成29年度の夏期手当,年末手当及び年度末手当並びに平成30年度の夏期手当及び年末手当については,本件口頭弁論終結時(平成31年2月14日)までに支給基準が決定され,かつ,当該支給基準は平成28年度のそれを下回るものではなかったと認められる。したがって,原告らの平成29年度の夏期手当,年末手当及び年度末手当並びに平成30年度の夏期手当及び年末手当に係る債権の額は,原告Aについて別紙②認定一覧表1の1の,原告Bについて別紙②認定一覧表1の2の,原告Cについて別紙②認定一覧表1の3の各金額を下回るものではないから,原告らの期末手当に係る請求は当該各金額の限度で理由がある。
他方,同年度の年度末手当及び翌年度以降の夏期手当,年末手当及び年度末手当については,その支給時期等に照らし,本件口頭弁論終結時までに支給基準が決定されていたとは認められないから,債権額が確定しておらず,上記各手当に係る各請求は理由がない。
4
原告らの請求に対する判断


以上によれば,原告らの請求のうち,本判決確定の日の翌日以降に支払期日が到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払を求める部分に係る訴えは訴えの利益がない。



また,原告らの請求のうち,被告に対しそれぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分は,いずれも理由がある。



さらに,原告らの請求のうち,本判決確定の日までに支払期日が到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払を求める請求は,以下の限度で理由があり,その余の部分は理由がない。

平成29年4月から本件口頭弁論終結日である平成31年2月14日までに支払期日が到来する月例賃金及び期末手当の支払を求める部分は,別紙②認定一覧表1の1から1の3までの各認定額合計欄記載のとおり,原告Aにつき1948万0283円,原告Bにつき1733万4282円,原告Cにつき1701万1529円の支払を求める限度で理由がある。

前記ア記載の月例賃金及び期末手当に対する各遅延損害金の支払を求める部分は,原告Aにつき別紙②認定一覧表1の1の,原告Bにつき別紙②認定一覧表1の2の,原告Cにつき別紙②認定一覧表1の3の各金額欄記載の各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員の支払を求める限度で理由がある。


平成31年2月15日以降に支払期日が到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払を求める部分は,原告Aにつき別紙③認定一覧表2の1の,原告Bにつき別紙③認定一覧表2の2の,原告Cにつき別紙③認定一覧表2の3の各支給日欄記載の日限り,各金額欄記載の各金員及び各金員に対する各起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による各金員の支払を求める限度で理由がある。
第4

結論
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部

裁判長裁判官

春名茂
裁判官

西村
康一郎

裁判官

関泰士
別紙は記載を省略

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