判例検索β > 平成31年(う)第168号
詐欺
事件番号平成31(う)168
事件名詐欺
裁判年月日令和元年5月24日
法廷名東京高等裁判所
結果棄却
原審裁判所名横浜地方裁判所
原審事件番号平成30(わ)1157
裁判日:西暦2019-05-24
情報公開日2019-06-25 03:32:22
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令和元年5月24日宣告

東京高等裁判所第11刑事部判決

平成31年(う)第168号

詐欺被告事件
主文
本件控訴を棄却する
当審における未決勾留日数中80日を原判決の刑に算入する。
理1由
本件事案と控訴の趣意
本件は,新成人向けの振袖の販売やレンタル,着付後の写真撮影等を主な業務内容とする会社の代表取締役である被告人が,会社が債務超過状態にあり,営業損失でもあったのに,資産超過であり営業利益も出ている旨の内容虚偽の決算報告書を利用するなどして,2つの銀行から合計約6500万円の融資を受けた詐欺の事案である。本件控訴の趣意は,弁護人作成名義の控訴趣意書記載のとおりであり,論旨は量刑不当の主張である。
2
原判決の判断
原判決は,本件の被害額が多額であり,被害額のうち約6000万円について返済の見込みがないことや融資判断の前提となる財務状況等を偽って融資を受ける犯行が悪質であることなどを指摘して,相当期間の実刑に処するのが相当であるとした。その上で,各犯行が会社の資金調達のためであり,詐取金は会社の経費に充てられたこと,被告人が事実を認め,被告人なりに反省の弁を述べていること,被告人に前科のないことなどを考慮し,被告人を懲役2年6月に処した。

3
所論と当裁判所の判断
原判決の量刑判断は,考慮した事情及び評価ともに適切であり,当裁判所も相当なものとして首肯することができる。
これに対し,所論は,①各犯行は会社の経営のために行われたもので,各犯行により得た金銭は実際に会社の経営に用いられており,動機や犯行
後の事情に酌量の余地があること,②本件に関与した経理関係者が共犯者的立場であるのに処罰されておらず,このことを量刑上考慮すべきであること,③被告人には前科前歴がないこと,④被告人が反省していること,⑤被告人が7か月以上身柄を拘束されたこと,⑥会社の経営に関し被告人が厳しく報道され社会的制裁も受けたことなどによれば,原判決の量刑は不当に重い旨主張する。
しかしながら,①(会社の経営のための犯行であること)や③(前科前歴のないこと),④(被告人の反省)は,原判決も量刑上適切に考慮している。本件は,虚偽の決算書類等を利用するなどして,銀行の融資判断において重要な前提となる融資を受ける会社の財務状況等を偽って,合計約6500万円を詐取し,約6000万円の損害について被害回復の見込みがない事案であって,犯行態様は悪質で,被害も多額であるから,これらを中心に考察して,被告人を懲役2年6月の実刑に処した原判決の判断は相当であり,被告人の更なる反省等の原判決後の事情を踏まえても,原判決の量刑は左右されない。②(共犯者的立場が処罰されていないことなど)については,各犯行は,会社の代表者である被告人が,経理等に関わっていた人物に依頼して,内容虚偽の決算報告書等を準備した上で行われており,主に準備行為に関わったこのような人物の処罰の有無等が,被告人の量刑を左右するとはいえない。⑤(身柄の拘束)については,本件は実刑判決が相当な事案であり,原判決は所論指摘の点を未決勾留日数の算入において適切に考慮している。⑥(社会的制裁)については,本件の量刑を左右するほどの事情があるとはいえない。
以上によれば,論旨は理由がない。
4
よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における未決勾留日数の本刑算入につき刑法21条を,当審における訴訟費用の処理につき刑事訴訟法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,
主文のとおり判決する。
(検察官瓜生めぐみ出席)
令和元年5月24日
東京高等裁判所第11刑事部

裁判長裁判官

栃木力
裁判官

佐々木

直人
裁判官

上哲生岡
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