判例検索β > 平成29年(わ)第1243号
強盗致傷、強盗予備
事件番号平成29(わ)1243
事件名強盗致傷,強盗予備
裁判年月日令和元年5月24日
法廷名福岡地方裁判所
裁判日:西暦2019-05-24
情報公開日2019-06-26 16:00:10
戻る / PDF版
主文
被告人Aを懲役11年に,被告人Bを懲役16年に処する
未決勾留日数中,被告人Aに対しては370日を,被告人Bに対しては300日をそれぞれその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人A及び同Bは,現金を強取しようと考え,C,D,E,F,G,H,I及びJと共謀の上,平成29年4月20日午後零時25分頃,福岡市a区bc丁目d番eパーキングにおいて,K(当時29歳)に対し,その顔面に催涙スプレーを噴射する暴行を加えて,その反抗を抑圧し,同人管理の現金3億8400万円在中のスーツケース1個(時価約1万円相当)を強取し,その際,前記暴行により,同人に約5日間の治療を要する刺激物質性接触皮膚炎及び化学物質性急性気管炎の傷害を負わせた。
(事実認定及び罪数判断の補足説明)
1
本件の争点は,
被告人両名と共犯者らとの間の強盗の共謀の有無であるところ,
被告人両名が本件犯行に関与した旨を述べるCの証言は,①関係者間の通話履歴や防犯カメラ映像,共犯者の供述等の関係証拠とよく整合し,②全体的に具体的かつ自然で内容に破綻がない上,③Cが捜査段階から一貫して被告人両名の関与を供述しており,④既に刑が確定しているCには被告人両名を殊更罪に陥れる動機もないことからすれば,十分に信用できる。
上記①の点について補足すると,統合捜査報告書によれば,Cが被告人Bから本件犯行計画を持ちかけられたと述べる平成29年3月以降,被告人BとCの間の通話の回数及び時間が,同年一,二月の通話の回数・時間から格段に増加し,同年4月には,上記両名の間のほか,Cと被告人A,CとDの間の通話の回数・時間もそれ以前と比べ大幅に増加している。
そして,Cは,当日の金地金の取引量や取引金額(被害者が所持している現金の額)
を前日の夕方から当日の朝にかけて被告人Bから聞き,
Dに伝達していた,
被告人BはLからその情報を入手していたと証言するところ,後記3のとおり,本件犯行の実行グループが被害者を待ち伏せるなどして強盗の機会をうかがった同年4月14日の朝,同グループが再び被害者を待ち伏せるなどした同月19日の前日に当たる同月18日の夕方,本件犯行決行日である同月20日の前日に当たる同月19日夜の3度にわたり,Lと被告人Bの間の通話履歴に続けて被告人BとCの間の通話履歴が存在し,
このうち同月14日及び同月18日については,
更に続けてCとDの間等の通話履歴が存在する。
また,Cは,実行グループから受け取った現金入りのスーツケースをレンタカーに積み込む際,被告人Aに手伝ってもらったと述べるが,この証言は,強奪した現金の受取地点を撮影した防犯カメラ映像にCと被告人Aらしき人物が映っていることや,その場に居合わせたE及びHが,Cともう一人の男性が奪ってきたキャリーケースを持って車に積み込んだなどと供述していることにより裏付けられている。
これに対し,被告人Aは,本件当時突発性左大腿骨壊死という病気にかかっており,本件犯行に関わることはあり得ないなどと供述するが,新幹線を使って3度にわたり東京から福岡を訪れることが出来ているし,忙しい仕事を休んでまでして福岡に来た理由について,不自然で曖昧な説明に終始していることから,被告人Aの供述は到底信用できない。
一方,被告人Bは,LやCとの通話の内容について,ゴルフ場の予約がとれたかをLに確認し,その結果をCに伝えるなど,本件犯行とは無関係の会話をしていたと供述するが,Lが直接Cに連絡すれば済む話であることなど,説明自体がかなり不自然である上,同月20日午後3時にCと会話した際にCに緊迫した様子がなかったと述べる点は,その頃Cが交際女性の家で想定外のスーツケースの解体作業を行っていたという状況から考えて,およそ信じ難い。捜査段階から供述が大きく変遷していることも踏まえると,
被告人Bの供述も到底信用できない。
なお,証人Mは,金地金取引についての情報を被告人B,CやLなどに伝えたことは一切ないと述べるが,金地金取引における自身の関与の仕方を含め,説明が具体的かつ明瞭とは言い難い。他の取引関与者が取引情報を犯人側に流したかどうかは知らないとも述べていることからすると,少なくともCの証言の信用性を揺るがすものとはいえない。
2
信用できるCの証言に関係証拠を併せれば,被告人Bは,Cに本件犯行計画を持ち掛け,Cはその実行をDに依頼するとともに,被告人Bから得た取引情報をDに伝え,本件強盗致傷の犯行が実行されたこと,被告人Aは,Cの加勢をするようにとの被告人Bの指示を受け,東京から福岡へ行き,強奪した現金をCと共に実行グループから受け取るなどし,被告人Bの指示によりそのうち9000万円を東京まで運搬したことなどが認められる。
以上によれば,被告人両名が,判示共犯者らと本件犯行を共謀したことは優に認められる。

3
なお,C証言に関係証拠を併せれば,被告人両名が,平成29年4月14日及び同月19日の2回にわたり,
Cらと共謀の上,
Kから現金を強取しようとして,
eパーキング付近路上で被害者を待ち伏せるなどして強盗の機会をうかがった事実が認められる(以下各待ち伏せ行為という。。検察官は,各待ち伏せ行為)
をそれぞれ強盗予備罪として起訴しているが,各待ち伏せ行為及び同月20日の強盗致傷の犯行は,日時・場所が近接し,同じ被害者から現金を奪うという犯行計画に基づき行われ,犯行の手口や関与した共犯者も同じであったこと,金地金の取引金額は日ごとにそれぞれ異なるものの,取引金額に着目して強盗決行の有無を決めていたわけではなかったことからすると,全体としてみれば,1個の強盗に向けて継続した意思の下に行われたものと認めるのが相当である。よって,各待ち伏せ行為はいずれも強盗予備罪を構成せず,本件の強盗致傷罪に吸収されるものと解される。

(量刑の理由)
まず,全体の犯情についてみると,組織的・計画的な犯行である上,3億8400万円もの巨額の現金を白昼繁華街の駐車場で強奪しており,大胆で悪質な犯行といわざるを得ず,この犯行が社会に与えた衝撃は大きい。被害者の怪我の程度は比較的軽いものの,催涙スプレーを顔面に吹きかけるという危険な態様であったし,2度にわたり強盗の機会を逃しながら,なおも犯行を試みて本件強盗致傷の実行に至っていることからは,犯行に向けた意思の強さが見て取れる。
次に,被告人両名の個別の情状についてみると,被告人Aは,計画段階から本件に関与していた上,被告人Bの指示を受けてCのもとへ赴き,強奪した現金入りのスーツケースの受取・運搬・解体等の作業に関与し,現金の一部9000万円を東京まで運搬するなど,本件において重要な役割を果たしており,少なくない報酬も得ている。
また,被告人Bは,犯行計画を立案し,強奪する現金の動きに関する情報を入手して,Cを介して実行グループ側にその情報を伝達したほか,強奪した現金の半分を回収し,共犯者らに分配するとともに,自らはその手を汚すことなく高額の報酬を得ていると推察され,本件犯行において主導的・中心的な役割を果たしている。以上によれば,共犯事件で被害金額が1000万円以上の強盗致傷事件1件の事案の量刑傾向の中で,被告人Aの責任はやや重い部類に,被告人Bの責任はかなり重い部類に,それぞれ属するといえる。
その上で,被告人両名が,いずれも犯行を否認して不合理な弁解に終始し,反省の態度が見られないことも考慮し,被告人両名をそれぞれ主文の刑に処することとした。
(求刑:被告人Aにつき懲役13年,被告人Bにつき懲役16年)令和元年5月27日
福岡地方裁判所第3刑事部

裁判長裁判官

足立

裁判官

國分進
裁判官

加藤貴
トップに戻る

saiban.in