判例検索β > 平成29年(ワ)第12720号
不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)12720
事件名不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日令和元年6月13日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-06-13
情報公開日2019-06-28 16:00:29
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令和元年6月13日判決言渡

同日原本受領

平成29年(ワ)第12720号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

不正競争行為差止等請求事件

平成31年3月25日
判決原告
日本精工硝子株式会社

同訴訟代理人弁護士

山田威同柴田和彦同池田直樹同石飛優子被告堀同青同同龍之木恭美富岡幸宏佐藤万主里奈文1原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

日本耐酸壜工業株式会社

同訴訟代理人弁護士

一1実及び理由
請求
被告は,別紙被告商品目録に記載の商品を製造し,販売し,又は販売の申出
をしてはならない。
2
被告は,別紙被告商品目録に記載の商品及び当該商品の製造のための金型を
廃棄せよ。
3
被告は,原告に対し,3300万円及びこれに対する平成30年1月13日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

原告は,被告が,原告が製造・販売する別紙原告商品目録1ないし15記載の食品・調味料用瓶(以下,それぞれ原告商品1等といい,合わせて原告商品という。)と形態が酷似する別紙被告商品目録1ないし15記載の食品・調味料用瓶(以下,それぞれ被告商品1等といい,合わせて被告商品という。)を製造・販売するところ,主位的に,被告の上記行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たるとして,同法3条,4条に基づき,製造・販売の差止め及び廃棄等,並びに損害賠償及びこれに対する訴状送達の日(平成30年1月12日)の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告の上記行為は民法709条の不法行為に当たるとして,上記同額の損害賠償及び遅延損害金
の支払を求めた。
1
前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)


当事者等(甲1,2。書証は枝番号を含む。以下同じ。)

原告は,ガラス製品の製造・加工及び販売,容器の製造・販売等を目的とする株式会社であり,原告商品を製造・販売している。
被告は,各種ガラス製品の製造加工並びに販売等を目的とする株式会社であり,被告商品を製造・販売している。


原告商品の製造・販売(甲3)

原告は,食品,調味料又は飲料用の瓶(これらの用途の瓶を総称して食調瓶という。)として,平成11年ころから,品番SSGシリーズ(原告商品14,15のサイズ違いの商品),同SSIシリーズ(原告商品11ないし13),同SSEシリーズ(原告商品4ないし6),同SSSシリーズ(原告商品7ないし10),同SSFシリーズ(原告商品1ないし3)の各シリーズの製造・販売を順次開始した。



被告商品の製造・販売

被告は,平成26年ころから,被告商品の製造を開始し,平成27年ころから食
調瓶を取り扱う商社又は問屋(以下商社等という。)や食品メーカー,調味料メーカー,飲料メーカー等(以下食品メーカー等という。)に対する営業活動及び販売を行った(ただし,被告商品1及び3は未発売。)。被告商品の価格は,原告商品の価格に比べて廉価である。
争点
被告の行為が不正競争防止法2条1項1号に該当するか。


原告商品の形態の特別顕著性


原告商品の形態の周知性


原告商品と被告商品の形態の類似性


原告商品と被告商品との混同のおそれ



(予備的請求)被告の行為が一般不法行為に該当するか。



差止め・廃棄請求の必要性



2


原告の損害額

第3

争点に関する当事者の主張

1
争点⑴(被告の行為が不正競争防止法2条1項1号に該当するか。)


原告商品の形態の特別顕著性(争点⑴ア)

【原告の主張】

原告商品の発売の経緯

原告は,
明治28年創業のガラス瓶メーカーであり,
デザイン性,
美感,高級感,
透明性や適度な重量感を求められる化粧品用の瓶を中心に製造・販売してきたが,近年,化粧品容器の多くが瓶からプラスチック製に切り替えられることとなったため,平成10年ころから,化粧品用の瓶で培ったノウハウを活かし,従来の食調瓶とは異なる,高い品質とデザイン性を持つ食調瓶の開発を始め,平成11年ころから,原告商品の製造・販売を順次開始し,現在まで原告商品の製造・販売を継続し
ている。

原告商品の各シリーズの形態及び特徴

原告商品は,いずれもガラス製の食調瓶であり,各原告商品の形態及び各シリーズの特徴は,以下のとおりである。
原告商品1ないし3(SSFシリーズ)
[基本的構成態様]
平面視及び底面視が略正六角形状の縦長筒状の瓶体であって,内容物を収容
する胴部,内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,
縦長の正六角柱状からなり,
六角形の角部はやや丸みを帯びている。
肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]


胴部の横幅は48.8mmである。



胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211.2mm(原告商品1),
165.1mm(原告商品2),122.1mm(原告商品3)である。⒢
首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。

なお,⒟で示した首部の形態に関しては,顧客の要望に応じ,ネジ型の形態を採用する場合がある。ネジ型であっても,⒟以外の構成は全く同一であるが,品番はSSF-200Aというように品番の末尾がBからAに変わる。このことは,原告商品2ないし15についても同様である。
[特別顕著性]



胴部が縦長の正六角柱状からなり,六角形の角部がやや丸みを帯びている点


肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している点
において,他社の食調瓶にはない顕著な特徴を有している。
また,原告商品1は,非常に縦長の不安定な形状からなり,かかる点も,他社の食調瓶にはない顕著な特徴である。
原告商品4ないし6(SSEシリーズ)
[基本的構成態様]
平面視及び底面視が略正方形の縦長筒状の瓶体であって,内容物を収容する胴部,内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ
肩部とからなる。


胴部は,
縦長の正方形柱状からなり,
正方形の角部はやや丸みを帯びている。



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]

胴部の横幅は40mmである。



胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211.2mm(原告商品4),
165.2mm(原告商品5),122.1mm(原告商品6)である。⒢

首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。

[特別顕著性]

胴部が縦長の正方形柱状からなり,正方形の角部がやや丸みを帯びている点


肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや
丸みを帯びた角部を形成している点
において,他社の食調瓶にはない顕著な特徴を有している。
また,原告商品4は,非常に縦長の不安定な形状からなり,かかる点も,他社の食調瓶にはない顕著な特徴である。
原告商品7ないし10(SSSシリーズ)

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,
内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,縦長の円柱形状からなる。



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。

首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]



胴部の横幅は45mmである。
胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211.2mm(原告商品7),
185.2mm(原告商品8),165.1mm(原告商品9),122.1mm(原告商品10)である。


首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。

[特別顕著性]

胴部が,縦長の円柱形状からなる点



肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや
丸みを帯びた角部を形成している点
の組み合わせにおいて,他社の食調瓶にはない顕著な特徴を有している。また,原告商品7は,非常に縦長の不安定な形状からなり,かかる点も,他社の食調瓶にはない顕著な特徴である。
原告商品11ないし13(SSIシリーズ)

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,
内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,下方がなだらかな裾広がりの略円錐台状に形成され,その上の部分
は直径が変わらない円柱状に形成されている。


肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]

胴部の最大径(底部)は57.3mm(原告商品11),46.7mm(原
告商品12),39.5mm(原告商品13)である。


胴部,
肩部,
首部をあわせた瓶全体の高さは204.
6mm
(被告商品11)


167.8mm(原告商品12),114.8mm(原告商品13)である。⒢

首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。

[特別顕著性]


胴部の下方がなだらかな裾広がりの略円錐台状に形成され,
その上の部分は

直径が変わらない円柱状に形成されている点



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している点
において,他社の食調瓶にはない顕著な特徴を有している。
また,原告商品11は,非常に縦長の不安定な形状からなり,かかる点も,他社の食調瓶にはない顕著な特徴である。
原告商品14,15(SSGシリーズ)
[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,

内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部とからなる。⒝

胴部は,縦長の円錐台形状に形成されている。



首部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合せるリング状の凸状部が2つ設けられ
ており,その下の部分は円筒状になっている。
[具体的構成態様]


胴部の最大径(底部)は51.4mm(原告商品14),47.8mm(原
告商品15)である。


胴部,
肩部,
首部をあわせた瓶全体の高さは169.
3mm
(原告商品14)


162.2mm(原告商品15)である。

首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。

[特別顕著性]
胴部が縦長の円錐台形状に形成されている点は,他社の食調瓶にはない顕著な特徴である。

需要者による原告商品の受け止められ方
ガラス瓶業界及び需要者

現在,日本国内のガラス瓶メーカーは,日本ガラスびん協会に所属する大規模メーカー6社,及び,ガラスびんフォーラムに所属する中規模メーカー7社の合計1
3社であり,被告は前者に,原告は後者に属するところ,大規模メーカーは,少品種大量生産を行うことが多い一方,中規模メーカーは,顧客の要望に合わせた特徴的な形態の瓶を製造する傾向が強い。
原告商品や被告商品のように,ガラス瓶メーカーが独自にデザインし,費用を負担して保有する金型で製造し,不特定多数の会社に販売する一般瓶と呼ばれる瓶は,ガラス瓶の販売を得意とする問屋を介して食品メーカーや調味料メーカーに販売されるケースが多い。したがって,原告商品や被告商品の需要者は,食品メーカー等及び商社等(流通業者)である。
原告商品の形態が他社の同種製品にはないものであること

従来の食調瓶の業界においては,経済性や安全性を重視するため,底面が大きく安定感のある形状を採用し,また,瓶同士がぶつかって割れることを防止するために,できるだけ角のない形状とすることが一般的であった。
これに対し,原告商品の形態は,前記イのとおりであり,いずれの商品も,中に入れた調味料や飲料を美しく,かつ,高級に見せることを意図してデザインされて
おり,ガラスならではのシャープさや高級感を印象付けるため,製造の困難さや倒れやすさ等の機能的な問題点が生じるにもかかわらず,意図的に肩部に角部を設けた形態や,縦型のシャープな形状を採用した。このような原告商品は,発売当初は酷評されたものの,後に,食調瓶の業界において非常に斬新な瓶であるとの評価を受け,特に,高額商品を取り扱う食品メーカーの間で高く支持され,他社商品の約
1.5ないし3倍の価格で販売されている。
原告・被告以外のガラス瓶メーカーの製造する一般瓶には,原告商品と類似した形態の瓶は一切存在しない。また,一般瓶以外の瓶,すなわち,食品メーカー等が自社の負担で独自の金型を製作・所有し,ガラス瓶メーカーにその金型を用いて瓶を製造させる留め型,及び,業界各社が容量・形状を統一して指定する規格瓶の類型では,いずれも,なで肩の形態以外の瓶は存在しない。以上より,原告商品には,いずれも他社の食調瓶にはない顕著な特徴があるとい
える。

被告の主張について

被告は,市場に流通している原告及び被告以外の製造に係るガラス瓶及び後記PET瓶の中には,原告商品と類似するものが多くあると主張する。しかし,ガラス瓶とPET瓶は,材質及び特性が全く異なり,取引の場においては明確に区別して販売されているから,原告商品の形態の特殊性を議論する際に,PET瓶との形態の類似性を論じることは無意味である。
また,被告が類似性を主張するガラス瓶のうち,食調瓶ではない物は,原告商品の形態の特別顕著性を検討する上で参考にはならないし,被告が類似性を主張する
食調瓶の中には,原告が製造・販売する物や,原告の許諾の下で他のメーカーが製造する物が含まれており,その他の瓶も,口の大きく開いた広口瓶であったり,肩部がなだらかに形成されていたり,縦長形状でなかったりし,原告商品の特徴を有しない物ばかりである。
【被告の主張】

原告商品の共通した特徴として,多くの食調瓶に比して縦長で角部を配したシャープな形状をしていることは否定しないが,液体の食料・調味料を充填するという食調瓶の機能的な使用目的からすれば,縦長であることは,特にデザイン面で際立つものではない。
また,原告商品を含むガラス瓶容器は,直接又は商社等を経由して,食品メーカ
ー等に販売され,中身を充填され,商品ラベルやプラスチックフィルムを貼付されるなどして市場に流通するところ,現在,市場に流通しているガラス瓶容器,及びガラス瓶容器と同様に食料・調味料の容器として利用され,同一の場所に陳列されることの多いPET瓶(瓶の材料がポリエチレンテレフタレート及び他の合成樹脂材料である容器)の中には,原告商品と極めて形態が類似した物が多くみられ,具
体的には,被告の営業担当者10数名が1か月の間に収集したガラス瓶152個及びPET瓶59個(乙1)が,原告商品の形態と類似していた。

また,これらの容器には,全面あるいは相当大きな割合で,商品名やその特徴を表示するラベル等が貼付されており,容器自体の形態についての印象が希薄化している物が多い。
このような状況からすれば,原告商品の形態が特別顕著性を有するとは到底認めることはできない。


原告商品の形態の周知性(争点⑴イ)

【原告の主張】

原告商品の売上・シェア

原告商品は,それぞれ,以下の発売時期から製造・販売され,平成17年以降の売上は以下の通りであるから,原告商品の形態は周知性を有する。発売時期

販売本数(本)

売上金額(円)

原告商品1

平19.7

8,187,960

307,434,160

原告商品2

平19.10

1,004,412

42,185,304

原告商品3

平20.4

505,190

18,692,030

原告商品4

平19.1

3,994,340

187,733,980

原告商品5

平19.7

2,389,230

100,347,660

原告商品6

平19.8

2,642,676

97,779,012

原告商品7

平19.1

3,085,520

145,018,440

原告商品8

平23.7

406,368

18,286,560

原告商品9

平19.7

4,726,906

197,530,052

原告商品10

平19.8

1,408,293

52,476,841

原告商品11

平18.4

6,360,662

298,951,114

原告商品12

平21.1

1,583,423

58,586,651

原告商品13

平21.1

2,810,452

98,365,820

原告商品14

平16.2

3,210,056

125,192,184

原告商品15

平21.1

889,930

32,927,410

被告は,原告商品の売上がすべての食調瓶の売上の中に占める割合が小さいことから原告商品は周知性を有しないと主張するが,原告商品は他社の販売する一般瓶の価格の1.5倍ないし3倍の価格で販売される高級品であるから,留め型や規格瓶,及び原告商品や被告商品とは異なる有色の着色瓶等の類型を含むすべての食調瓶の市場全体の中で,シェアを議論するのは妥当ではない。イ
展示会への出展等による宣伝・広報活動

原告は,原告商品の発売開始日以降,全国の食品メーカー等,及び瓶の卸問屋である商社等に原告商品のカタログ(甲3,11)を配布するほか,自ら酒類販売管理者の免許を取得して,基本的に食品メーカー以外は出展することができず,他のガラス瓶メーカーが出展していない展示会に出展し,延べ6311人の来場者を得るなど,長年にわたり大規模な販売・営業活動を行って,食調瓶市場において新たな高級品市場を開拓した。
このような努力により,発売開始から7,8年経過してようやく,当初は酷評されていた原告商品を採用する需要者が増え始め,現在では,各地方にある道の駅,
デパートの地下の食料品店,高級食材店等に,原告商品が多く並んでおり,需要者に広く認知されている。
ガラス瓶の販売に関わる商社等は,各社の商品の形態を概ね把握しており,原告商品の形態を知らない者はほとんどなく,高級な価格帯の商品を製造・販売する食品メーカー等の間においても,原告商品の形態は広く認識されている。

インターネット上の検索結果

インターネット上の検索サイトであるYahoo!JAPANにおいて,高級「高級ポン酢,高級醤油,
ドレッシング」とキーワードを入力して検索した結果

表示された画像のうち,
原告商品を使用する製品がそれぞれ11.
4%,
12.
7%,
34.5%を占める。

まとめ

以上より,原告商品の形態は,商品自体の機能や美観等の観点から選択されたという意味を超えて,自他商品識別機能,出所表示機能を有し,取引者,需要者の間で原告の商品等表示として広く認識されている。
【被告の主張】

原告商品は,他の多くの食調瓶に比して縦長で角部を配したシャープな形状
をしているという特徴があることは事実であるが,デザイン及び容量等の点で多種多様な食調瓶の中において,その形態自体が原告の商品等表示として需要者である食料・調味料の製造・販売業者及び流通業者の間において広く認識されているとはいえない。

原告の主張する広告宣伝方法は,他のガラス瓶メーカーも行っている方法で
あって,
特別に効果が高い方法とはいえない。
そして,
原告の主張を前提としても,
食品メーカーの展示会への出展は1年に平均2件程度であり,来場者数は年400人余りに過ぎない。
原告は原告商品以外にも極めて多品種のガラス瓶を製造しているため,出店商品やカタログ類に原告商品の占める割合はわずかであると思われる。ウ
原告は,平成17年から平成29年までの原告商品の売上が累計約40,6
76,018本に達すると主張するところ,これによれば原告商品の1年当たりの販売数は約400万本であり,平成29年にガラス瓶メーカー17社が出荷したガラス瓶約70億本に占める割合は0.05%,化粧品・食調瓶約23億本に占める割合は0.17%,食調瓶約17億8298本に占める割合は0.226%にすぎない。

このような状況からすれば,原告商品の形態が周知性を有するとは到底認め
られない。

原告商品と被告商品の形態の類似性(争点⑴ウ)

【原告の主張】

被告商品は,原告商品と同じく,ガラス製の食調瓶であり,各被告商品の形
態は,以下のとおりである。
被告商品1ないし3
[基本的構成態様]
平面視及び底面視が略正六角形状の縦長筒状の瓶体であって,内容物を収容する胴部,内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,
縦長の正六角柱状からなり,
六角形の角部はやや丸みを帯びている。



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]


胴部の横幅は47mmである。



胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211mm(被告商品1),1
65mm(被告商品2),122mm(被告商品3)である。


首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。
被告商品4ないし6

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が略正方形の縦長筒状の瓶体であって,内容物を収容する胴部,内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,
縦長の正方形柱状からなり,
正方形の角部はやや丸みを帯びている。



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや
丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]


胴部の横幅は39.5mmである。



胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211mm(被告商品4),1
65mm(被告商品5),122mm(被告商品6)である。


首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。
被告商品7ないし10

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,
内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,縦長の円柱形状からなる。



肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。

首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]



胴部の横幅は44mmである。
胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは211mm(被告商品7),1
85mm(被告商品8),167.5mm(被告商品9),123.5mm(被告商品10)である。



首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。
被告商品11ないし13

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,
内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部,胴部と首部をつなぐ肩部とからなる。


胴部は,下方がなだらかな裾広がりの略円錐台状に形成され,その上の部分
は直径が変わらない円柱状に形成されている。

肩部は,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜
面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成している。


首部は,略短円筒状になっているが,上部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合
せるリング状の凸状部が2つ設けられ,その下の中央部は円筒状になっており,肩部と接する下部は裾広がりの形状となっている。
[具体的構成態様]


胴部の最大径(底部)は56.5mm(被告商品11),46mm(被告商
品12),38.5mm(被告商品13)である。


胴部,
肩部,
首部をあわせた瓶全体の高さは204.
5mm
(被告商品11)


167.5mm(被告商品12),114.5mm(被告商品13)である。⒢

首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。
被告商品14,15

[基本的構成態様]
平面視及び底面視が円形の縦長筒状の瓶体であって,
内容物を収容する胴部,
内容物を排出可能なように上部に孔が設けられた首部とからなる。⒝

胴部は,円錐台形状に形成されている。



首部には周囲の横方向に蓋体を嵌め合せるリング状の凸状部が2つ設けられ
ており,その下の部分は円筒状になっている。
[具体的構成態様]


胴部の最大径(底部)は51mm(被告商品14),47mm(被告商品1
5)である。


胴部,肩部,首部をあわせた瓶全体の高さは169mm(被告商品14),
162mm(被告商品15)である。


首部の上の凸状部の直径は26.3mmである。


原告商品と被告商品との形態の対比
原告商品1ないし3と被告商品1ないし3

原告商品1ないし3と被告商品1ないし3は,基本的構成態様におけるすべての構成が共通しているほか,具体的構成態様で示した寸法も概ね共通しており,外観上の印象が酷似している。
また,被告商品1ないし3は,原告商品1ないし3の特徴的な形態である①胴部が縦長の正六角柱状からなり,六角形の角部がやや丸みを帯びているとの構成,及
び②肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成しているとの構成を具備している。
以上に鑑みれば,被告商品1ないし3の形態が,原告商品1ないし3の形態と類似することは明らかである。

原告商品4ないし6と被告商品4ないし6
原告商品4ないし6と被告商品4ないし6は,基本的構成態様におけるすべての構成が共通しているほか,具体的構成態様で示した寸法も概ね共通しており,外観上の印象が酷似している。
また,被告商品4ないし6は,原告商品4ないし6の特徴的な形態である①胴部
が縦長の正方形柱状からなり,正方形の角部がやや丸みを帯びているとの構成,及び②肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜面
を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成しているとの構成を具備している。
以上に鑑みれば,被告商品4ないし6の形態が,原告商品4ないし6の形態と類似することは明らかである。
原告商品7ないし10と被告商品7ないし10
原告商品7ないし10と被告商品7ないし10は,基本的構成態様におけるすべての構成が共通しているほか,具体的構成態様で示した寸法も概ね共通しており,外観上の印象が酷似している。
また,被告商品7ないし10は,原告商品7ないし10の特徴的な形態である①
胴部が縦長の円柱形状からなるとの構成,及び②肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成しているとの構成を具備している。
以上に鑑みれば,被告商品7ないし10の形態が,原告商品7ないし10の形態
と類似することは明らかである。
原告商品11ないし13と被告商品11ないし13
原告商品11ないし13と被告商品11ないし13は,基本的構成態様におけるすべての構成が共通しているほか,具体的構成態様で示した寸法も概ね共通しており,外観上の印象が酷似している。

また,被告商品11ないし13は,原告商品11ないし13の特徴的な形態である①胴部の下方がなだらかな裾広がりの略円錐台状に形成され,その上の部分は直径が変わらない円柱状に形成されているとの構成,及び②肩部が,胴部との境界面よりも,首部との境界面のほうがやや高くなった斜面を形成しているが,その勾配はなだらかであり,胴部と肩部の境界は,角がやや丸みを帯びた角部を形成してい
るとの構成を具備している。
以上に鑑みれば,被告商品11ないし13の形態が,原告商品11ないし13の
形態と類似することは明らかである。
原告商品14,15と被告商品14,15
原告商品14,15と被告商品14,15は,基本的構成態様におけるすべての構成が共通しているほか,具体的構成態様で示した寸法も概ね共通しており,外観上の印象が酷似している。
また,被告商品14,15は,胴部が縦長の円錐台形状に形成されているという原告商品14,15の特徴的構成を具備している。
以上に鑑みれば,被告商品14,15の形態が,原告商品14,15の形態と類似することは明らかである。


被告の主張について

原告商品と被告商品との全高,胴径,首径のいずれも約1mmの差しかなく,大きさはほぼ同一であり,
肩部分の傾斜にもほぼ差はなく,
重量も平均して約10%,
最大40グラム程度の差しかないため,商品サンプルがあったとしても,需要者が目視で原告商品と被告商品とを区別することは困難である。
【被告の主張】
原告商品と被告商品は,別紙製品データ比較表のとおり,重量割合や形状に相違点が認められる。
原告商品及び被告商品は,最終需要者である食品メーカー等又はこれらの事業者へ販売する商社等に対して販売されるところ,
いずれの場合も取引相手の事業者は,

商品のサンプルを実際に検分し,使用目的を考慮しながら,価格や美感・強度・生産性等を総合的に勘案して採否を決定するところ,
原告商品と被告商品との間には,
上記比較表のとおり,肩部分の傾斜及び重量について顕著な差異がある上,被告商品は原告商品に比して垂直荷重に対する強度が約20%大きく,原告商品の底部には<S>,被告商品の底部にはNTという製造者を示す刻印があり,
明確に区別される。
原告商品は被告商品に比して透明度が高く,肩部の傾きや肩部を胴部との接続部
分の局面の半径の大きさ等が異なり,よりシャープな外見をしていて,ガラス瓶の中身が充填されラベルが貼付されていても,一見して両者の違いに気付く程度の相違がある。
したがって,原告商品及び被告商品の間には形態の類似性が認められない。⑷

原告商品と被告商品との混同のおそれ(争点⑴エ)
【原告の主張】

取引の実態

前記のとおり,原告商品と被告商品は,実質的同一の形態からなるガラス瓶であり,食品メーカー等に対して販売されているところ,食品メーカー等が食調瓶を購入する場合,通常は,商品カタログやサンプル等により商品を選別するが,原告商品と被告商品は形態が酷似しているのみならず,サイズバリエーションや商品ラインナップも共通しており,最終需要者である食品メーカー等には小企業も多く,ガラス瓶メーカーの名前について知識や関心がないことも多々あるから,過去に原告商品を目にしたことのある需要者が,被告商品を原告商品と誤認して購入してしま
うおそれは極めて大きい。

現実に混同が生じていること

原告代表者は,平成29年2月,展示会において,原告商品をほぼ100%使用しているボトラーの棚に,原告商品と思われるガラス瓶が並んでいるのを見かけ,そのボトラーの社長と挨拶を交わしたが,後から,そのときに並んでいたガラス瓶のほとんどは被告商品であったことが判明した。しかし,原告商品の開発者である原告代表者ですら,当時はやや違和感があったものの,原告商品でないと認識することはできなかった。
また,別のボトラーにおいて,資材購入責任者がコストダウンのために原告商品を被告商品に切り替えたが,
そのことに社長が気付かなかったということもあった。

このように,需要者の間で現実に混同が生じており,混同のおそれがあることは明らかである。

また,原告は,原告商品の製造を他のガラス瓶メーカーに対して許諾している場合があるが,このような許諾があるかどうかは当事者以外は把握できないから,需要者においては,被告商品も,原告の許諾の下に製造されたと認識する可能性があり,この点からも混同のおそれがあるといえる。

被告の主張について

被告は,被告商品の販売方法から,需要者は被告商品を見て原告商品又は原告が製造する商品であると誤信することはないと主張するが,原告商品や被告商品は,ガラス瓶メーカーが独自に企画,デザインし,製造した製品を不特定多数の需要者に販売する一般瓶であるから,最終需要者と綿密な交渉を経てその希望する形態と必要とされる強度を兼ね備えたガラス瓶を新たに設計するということはあり得ず,被告の上記主張は失当である。
また,前記⑶のとおり,原告商品と被告商品との形態が酷似していることに鑑みると,需要者が商品サンプルを検分したとしても,両商品を識別することは困難でるし,底面の刻印は取引の過程でも通常は目につかない部分である。被告商品の販
売方法については具体的な証拠がなく,被告商品の説明があったとしても,過去に原告商品を目にしていた需要者が原告商品と誤認して被告商品を購入してしまう可能性がある。
【被告の主張】
被告の営業担当者は,被告商品を販売するに当たって,需要者に対し,必ず被告
の営業担当者であることを明らかにした上で名刺を交付して,被告のパンフレットやカタログを交付し,被告の商号が記載されたガラス瓶の図面や仕様書,見積書を交付した上で,需要者・取引者と緊密な連絡を取り,最終需要者である食品メーカー等がガラス瓶に中身を充填し出荷可能な状態に至るまでの製造・出荷ラインの状況,完成品の保管状況,運送方法やルート・距離,被告から最終需要者までの納入
方法等を詳細に把握した上で,最終需要者が希望する形態と必要とされる強度を兼ね備えたガラス瓶を決定した上で,対象となるガラス瓶の詳細な図面と仕様,サン
プル生産したガラス瓶を最終需要者に交付し,テスト後に不具合が出た場合はサンプル品を再製造するなどした後に,取引条件について交渉を行い,合意に基づきガラス瓶の生産・出荷を開始する。
上記取引の態様,前記⑶のとおり,原告商品及び被告商品の形態には差異があること,需要者において原告と被告は,それぞれ製瓶業者としてそれなりの知名度があり,
異なる会社であることは広く知られていることから,
原告が主張するように,
需要者が被告商品を見てこれを原告商品あるいは原告が製造する商品であると誤認して購入するということはあり得ず,混同のおそれは認められない。2
争点⑵((予備的請求)被告の行為が一般不法行為に該当するか。)
【原告の主張】


不正競争防止法2条1項1号に該当しない場合であっても,ことさら原告製
品と誤認混同を生じさせて自己の利益を図り又は原告に損害を被らせることを意図するなど,不正な競争をする意図をもって,被告製品を原告製品と偽って原告の販売先に積極的,集中的に販売するなど,公正な競争秩序を破壊する著しく不公正な方法で,原告に営業上,信用上の損害を被らせたというような特段の事情の存する場合には,
かかる行為は民法709条の不法行為を構成するところ,
被告の行為は,
以下に述べるとおり,これに該当する。


不正な競争をする意図を有すること
被告が原告商品の形態を意図的に模倣していること

被告は,原告商品と同じ商品を作ってもらいたいという依頼を顧客から受け,平成26年ころより,原告商品を見本として,ほぼサイズを変えることなく,原告商品の形態により近づけ,またイメージも変えないように,被告商品11,7及びNTS-150(平成29年1月に型番を変更する前の被告商品2。以下,型番変更の前後を通じて被告商品2という。)を設計した。

また,被告は,平成29年7月ころより,被告商品1,3ないし6,8ないし10,12ないし15の製造・販売を開始し,これらの被告商品が掲載されたカタロ
グ,図面(甲5)及び1つの段ボール箱に入れた被告商品のサンプルを持ち,食調瓶を取り扱う卸売問屋や食品メーカーへ配布するといった営業活動を行った。被告の主張によれば,被告は,被告商品7,9及び11以外の被告商品につき,すべて平成29年1月27日から同年3月23日の2か月以内の間に金型の製造を行っており,被告商品8を除いては,顧客からの要望ではなく自らの判断で開発を行っているところ,これらの被告商品も原告商品と形態がほぼ同一であり,原告商品を参照して製造されているから,被告はこれらも意図的に模倣したといえる。このような短期間かつ同時期に,通常,売れるかどうかわからない一般瓶をほぼ同時に何種類も開発し,金型をサンプル用も含めて各20丁以上製造するというのは考
えられないことであるし,需要者から12種類もの新たなガラス瓶の製造の依頼を受け,開発し,製造開始に至るというのもあまりにも不自然であって,むしろ,被告から積極的に原告商品をまとめて模倣し,大量生産を企図して,需要者に売り込んだとみるのが自然である。被告は,被告商品2の稟議書起案日は平成29年3月23日であると主張するが,原告が被告商品2を発見し,販売中止を求める通知書
を送付したのが平成27年7月7日であるから,上記主張は事実と合致しない。被告が,需要者からの要請がなくても原告商品の模倣品を製造したことは,被告商品1及び3を製造したものの実際の販売には至っていないこと,被告商品4ないし6のNTYシリーズは,サンプル用ではなくいきなり本生産用の金型を同一の日に注文していること,被告商品7及び11の金型の稟議書起案日が同一日であるこ
とからも明らかである。

被告商品が原告商品のデッドコピーであること

前記1⑶のとおり,被告商品と原告商品の形状,寸法,重量等に顕著といえるほどの差はなく,むしろ形状等はほぼ同一であって,被告商品は原告商品の形態をほぼ変えることなくコストダウンを図るため,使用する原材料の量を減らしたり,首部から肩部にかかる斜面の角度を大きくしたりしたにすぎない。
被告は,被告商品の垂直荷重に対する強度が原告商品に比べて約20%大きいこ
とを強調するが,その根拠は被告社内において行われた被告商品8に係る実験結果(乙7)のみであり,これをもってすべての原告商品と被告商品との間に顕著な差異があるというのは妥当ではない。また,ガラス瓶の肩の傾斜を大きくすればするほど,
製造が簡単になり,
不良品も出にくく,
コストダウンも可能となり,
さらに,
肩の傾斜を大きくして肩の張りを小さくすれば強度が大きくなることは,当業者にとって常識である。
よって,被告商品が原告商品のデッドコピーであることは明らかである。⑶

公正な競争秩序を破壊する著しく不公正な方法であること
シリーズごと模倣していること

原告商品は,細口の食調瓶であり,化粧品のガラス瓶をイメージしたスタイリッシュなデザインを有する点で共通する,SSシリーズという24種類のガラス瓶のシリーズの中で,特に人気があり,売上が上位の5種類のシリーズ(SSE,SSF,SSG,SSI及びSSS)である。被告は,原告商品の売れ筋について把握していたと考えられ,原告商品及び被告商品がシリーズ性のあるものであることを
認識していた。
また,
被告が被告商品をNTシリーズ等と名付けていることからも,
被告送品を原告商品と同様にシリーズ化しており,原告商品をシリーズごと模倣したことは明らかである。
被告は,原告が製造・販売するSSシリーズのガラス瓶は全部で79種類あり,原告商品はそのうちの15種類にすぎないと主張する。

しかし,SSシリーズの品目としては,SSA,SSB,SSE(原告商品4ないし6),SSF(原告商品1ないし3),SSG(原告商品14,15),SSH,SSI(原告商品11ないし13),SSJ,SSM,SSN,SSO,SSP,SSQ,SSS(原告商品7ないし10),SSU,SSW,SSY,SSハート,SS24の19品目のみであり,これらの中でもサイズバリエーションが3
種類以上あって実際にシリーズ展開しているのは下線を引いた品目のみであるところ,SSAシリーズは最も古くほとんど販売されておらず,SSハートシリーズは
意匠登録されている。
したがって,被告は,SSシリーズの中でも,実際にシリーズとして展開している品目で,意匠登録がされておらず,かつ,売れているものをまとめて模倣したことは明らかである。

被告による営業態様

被告は,原告の顧客に対し,原告商品とそっくりで,サイズも同じガラス瓶があり,値段も安くするから切り替えないかというような形で営業を行った。実際に,被告商品がガラス瓶問屋に持ち込まれてから,原告と取引を中止したり減らしたりした顧客は10社以上あった。
前記1⑵のとおり,原告が,多数の展示会への出店という労力,コスト及び長い年月をかけたことにより,ようやく原告商品がデザイン性の高い食調瓶として評価されるようになったのに対し,被告は,原告商品の売れ筋であるSSシリーズを模倣しただけであるから,被告商品は,原告商品の営業努力やこれまでに築いたブランドにフリーライドしているというほかはない。


被告による被告商品の製造・販売行為の悪質性

被告による被告商品の製造・販売行為は,原告商品が意匠登録されていなかったことや,発売から3年を経過していることを奇貨として,原告商品を順次模倣して大量生産を行ったものと強く推察され,原告の顧客吸引力を利用して不当に利益を上げているのであって,極めて悪質である。

原告の営業活動上の利益が侵害されていること

被告は,原告商品と酷似する被告商品を製造し,原告商品の形態が有する顧客吸引力を利用しながら安価で販売することにより,原告の顧客を奪うだけでなく,原告商品の価値を低下させた。また,被告は,原告商品を模倣するだけで,サイズ等を決定する作業に何らリスクや労力をかけることなく利益を上げている一方で,原告としては,その労力等が無駄になった。
よって,被告は,原告商品の形態の利用による利益だけでなく,原告の営業活動
上の利益も侵害しているといえる。

まとめ

したがって,被告の行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当するか否かにかかわらず,
また,
同項3号
(形態模倣行為)に定める3年の期間経過後においても,
民法709条の不法行為を構成するものであり,被告は損害賠償義務を負う。【被告の主張】


一般不法行為の対象となる要件

不正競争防止法2条1項1号及び3号の規制の対象とならない他人の商品形態の冒用行為については,①ことさら誤認混同を生じさせる不正競争の意図と混同を生じさせる行為,②公正な競争秩序を破壊する著しく不公正な営業活動と行為者の害意,③市場における利益追求という観点を離れ,ことさらに相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたというような特段の事情の全部又は一部が認められる場合に限り,一般不法行為の対象となり得ると解される。


被告商品の製造・販売に至る経緯

被告は,需要者からの要請に応じるため,被告商品を順次開発し,開発が完了した時点で各被告商品の製造に必要な金型を発注した。被告の社内における金型発注の稟議書は,金型発注伺い書とのタイトルが付された定型書式が用いられており,これにより,最終責任者である常務取締役の決裁を経て社内稟議が完了する。平成25年11月ころ,あるギフト商品販売事業者が,被告に対し,従前より原
告商品を使用していたが原告の顧客対応に不満がある旨を述べ,代替のガラス瓶の納入を打診した。これを受けて,被告は,同月8日付け製品図面作成依頼書(乙15)により被告商品11の開発を開始し,原告商品11を参考にしながらもデッドコピーにはならないように留意しながら,独自の製品開発を成し遂げた。完成した被告商品11は,外寸は原告商品11に近似するものの,外側面下部のカーブや肩
部分の傾き,
胴部分との接続部分においてシャープさが際立つ原告商品11に対し,緩やかでより曲率半径が大きい。また,原告商品11の重量が237グラムである
のに対し,被告商品11は205グラムと軽量であり,それにもかかわらず垂直荷重強度その他の強度が原告品11を上回っている。一方,被告商品11の透明度は原告商品11に比べて劣ることが一見して明らかである。
被告商品2及び7も同様の経緯により開発された。
先行して開発したこれら被告商品2,
7及び11の評価が高かったため,
被告は,
平成29年度の決算期予算で実現することとして,他の被告商品の開発を進め,販売を開始した。
別紙被告商品の金型発注稟議書起案日等一覧のとおり,各被告商品の金型の発注日は,平成26年3月19日から平成29年7月7日の間であり,販売開始日
は,平成26年12月19日から平成30年3月5日の間である。したがって,被告商品の製造・販売は,ことさら誤認混同を支持させる不正競争の意図と混同を生じさせる行為には当たらない。


被告の行為が市場における自由な競争の下に行われたこと

被告商品は,製造原価に間接経費や適正な利潤を付加した価格で販売しているが,原告商品よりも安価である原因は,必要な強度を維持しつつより軽く製造するという設計及び製造上の工夫に加え,製造ラインの合理化や商品保管や配送のためのコスト低減努力の総合的な結果である。また,被告は,配送サービスの柔軟性や不良品発生時の迅速な対応,新たな商品開発の要望に対する真摯な対応等の点で,原告に勝っている。

そして,被告商品が意匠法等の保護を受けた権利を侵害しないことを確認済みであること,底部に被告が製造者であることを示すNTマークを刻印していること,営業活動に際しては担当者が需要者に対し製造・販売者が被告であることを明示していることなどから,被告の行為は,市場における自由な競争の下に公正に行われたものであり,上記一般不法行為の対象となる行為には当たらない。


原告の主張について


原告は,被告商品は原告の製造・販売する商品のうち売れ筋商品である原告
商品をシリーズごとコピーしたものであって,被告の違法性は顕著であると主張する。しかし,原告が製造・販売するSSシリーズを構成するガラス瓶は全部で79種類あり,原告商品はそのうちの15種類にすぎない。また,被告は,原告商品がSSシリーズの中で売上が上位である商品か否かを知る得べくもなかった。被告は,需要者からの要望に基づき被告商品を開発,製造・販売することになったのであって,原告商品をシリーズごと模倣するといった意図は存在しない。被告商品は原告商品よりも性能において優れており,これを安価に販売できるのはひとえに被告の企業努力の結果である。

原告の主張は,被告商品が原告商品のデッドコピーであることを前提とする
ところ,前記1⑶のとおり,被告商品は形状,寸法及び重量等において原告商品と顕著な差があり,また,被告商品は原告商品に比して重量が約10%軽量であるにもかかわらず垂直荷重に対する強度が約20%大きいこと等から明らかなとおり,被告商品は原告商品のデッドコピーに当たるものではないから,原告の主張は失当である。


原告は,被告がコストダウンを図るために使用する原料の量を減らしたと主
張するが,食調瓶の最終需要者は,食料・調味料等を瓶に充填して最終製品を製造し,これらを保管・運搬することから,食調瓶の形状や特性について,瓶の外寸について原告商品と被告商品との間に大きな差が生じないこと,
瓶を軽量化すること,
大きな垂直荷重に耐えうる強度を有すること,を要望するものであって,被告は,これらの要望をすべて満たすために被告商品の開発を行い,
完成させたものである。
単に原料の量を減らせば,軽量化は図れるものの強度が低下することは自明であるところ,被告商品が原告商品に比べて軽量であるにもかかわらず垂直荷重に対する強度が大きいことは,被告のガラス瓶製造事業者としての知識と技術が優れていることを示すものである。



まとめ

以上のとおり,被告が被告商品を製造・販売する行為は,正当な企業間競争の範
囲内における正当な業務であって,不法行為を構成しない。
3
争点⑶(差止め・廃棄請求の必要性)

【原告の主張】
被告商品の販売行為によって,原告商品の販売が阻害される事態が生じており,原告の営業上の利益が侵害されている。
したがって,原告は,被告商品の製造・販売等を差し止め,被告商品及びその製造のための金型を廃棄するよう求める権利がある。
【被告の主張】
争う。

4
争点⑷(原告の損害額)

【原告の主張】
被告は,被告商品の販売により,少なくとも1億2000万円の売上を上げており,被告の得た利益は3000万円を下らない。
原告が本件訴訟に関して負担を余儀なくされた弁護士費用は,300万円を下らない。
よって,被告の不正競争行為又は不法行為による原告の損害は,少なくとも3300万円と推定される。
【被告の主張】
争う。

第4

当裁判所の判断

1
認定事実(前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実)


原告及び被告が製造・販売するガラス瓶の種類及び需要者等
(甲13,
14)

原告は,比較的中・小規模のガラス瓶メーカー7社が所属し,原告代表者が会長を務めるガラスびんフォーラムの会員であり,被告は,比較的大規模のガラス瓶メーカー6社が所属する日本ガラスびん協会の会員であって,日本国内のガラス瓶メーカーは,これらの13社が中心となっている。

日本ガラスびん協会に所属する大手は,大手の食品メーカー等を主たる顧客として,少品種の大量生産が中心であり,ガラスびんフォーラムに所属する中・小規模のメーカーは,中・小規模の食品メーカー等を主たる顧客として,特徴的な形態の瓶を含む,多品種の商品を販売している。
ガラス瓶メーカーが製造販売するガラス瓶には,

原告商品や被告商品のような,
ガラス瓶メーカーが独自にデザインし,保有する金型で製造して不特定多数の需要者に販売する一般瓶,瓶に充填する中身を製造するメーカーが自社の負担で独自の金型を製作・所有し,
ガラス瓶メーカーにその金型を用いて瓶を製造させる
留め型,及び薬剤のように,業界各社が容量・形状を統一して指定する規格瓶
の類型がある。一般瓶は,食品メーカー等に対し,直接又はガラス瓶の販売を得意とする商社等を介して販売されるケースが多く,これらの食品メーカー等及び商社等が需要者となる。また,原告商品や被告商品のような色の付いていない透明な瓶を白瓶,色の付いている瓶を着色瓶という。


一般瓶の取引態様(乙3ないし9,証人P1)

一般瓶の購入を検討する需要者は,ガラス瓶メーカーに対して希望する瓶があるか問い合わせ,ガラス瓶メーカーは,その要望が,従来製造しておりカタログに掲載されている瓶に合う場合はそれを勧め,そうではない場合には,需要者からの要望を聞き,対応が可能であれば,需要者との間で,製品名,製品図面,規格,価格,品質等について打ち合わせをしつつ開発を進める。需要者からの要望がガラス瓶メ
ーカーの保有していない形態の製品である場合,合意の上で新たに金型を製作し,製品を生産販売することもある。
被告においては,営業担当者が顧客からの要望を聞き取り,これに基づき設計担当部門が形状の提案をして開発設計を行い,サンプルを生産してその評価検討し,仕様が確定し,取引条件について合意が成立すれば,本生産に移行する。


原告の製造・販売するガラス瓶

原告の平成29年作成の商品カタログ(甲1)
によれば,
原告は,
製造する瓶を,

細口瓶(調味料用の瓶のように丈が高く開口部が狭い瓶。原告商品を含む。)と広口瓶(ジャム瓶のように丈が低く開口部が広い瓶)に分類し,それぞれ同じ型のサイズ違い及び栓のタイプ違い(A:ねじ式,B:キャップ式)をまとめて1つのシリーズとしている。1つの型に多種類のサイズ・栓のタイプがあるシリーズもあれば,1種類のサイズ・栓のタイプしかないシリーズもある。
細口瓶のシリーズは,
容量が50mlから300mlの比較的小型のシリーズと,
500mlから750mlの比較的大型のシリーズに分かれており,原告商品は小型のシリーズに属する。
同シリーズには,
UDA
(1)UDS

(1)UDF

(1)

OSG24(1),SS24(1),SSО(1),SSA(3),SSB(1),
SSE(4),SSE(BG)
(2),SSF(3),SSG(5),SSH(2),
SSI(4),SSJ(1),SSM(1),SSN(1),SSP(1),SSQ(1),SSS(4),SSU(1),SSW(1),SSY(1),SSハート(5),TS200(1),丸200ミニスクリュー(1),の26シリーズがあり
(括弧内はサイズの種類の数,
下線を引いたものは原告商品を含むシリーズ。,


いずれも,見た目がすっきりとしており,肩が張っているデザインであり,丸い印象のSSО,SSN,SSU,SSW及び丸200ミニスクリューを除いて細長い形状をしており,SSE(BG),TS200及び丸200ミニスクリュー以外は栓のタイプが2種類あるという特徴がある。
原告は,上記シリーズのうち,冒頭にSSの付くシリーズをSSシリーズ
と総称しており,これに属する瓶の種類は全部で約80種類である。⑷

原告商品の形態(甲1,4)


原告商品全体

原告商品1ないし13は,いずれも,首径が26.3mmであり,肩部は,胴部との境界面よりも首部との境界面の方がやや高くなっているが,その勾配はなだらかであり,全体的に細長くすっきりとして,肩が張った印象を与える。原告商品14,15は,胴部と首部との間に径の差がなくつながっており,原告
商品1ないし13にあるような肩部はない。
原告商品の底部には,Sという刻印がある。

原告商品1ないし3(SSFシリーズ)

原告商品1ないし3は,いずれもSSFシリーズのBタイプ(全3種類の各サイズ)であり,胴部が縦長の六角柱の形状で,胴部の横幅はいずれも48.8mm,全体の高さはそれぞれ211.2mm,165.1mm,122.1mm,質量はそれぞれ240g,183g,138gである。

原告商品4ないし6(SSEシリーズ)

原告商品4ないし6は,いずれもSSEシリーズのうちBタイプ(全4種類のサイズのうち3種類)であり,胴部が縦長の正方形柱の形状で,胴部の横幅はいずれも40mmであり,全体の高さはそれぞれ211.2mm,165.2mm,122.2mm,質量はそれぞれ240g,185g,140gである。エ
原告商品7ないし10(SSSシリーズ)

原告商品7ないし10は,いずれもSSSシリーズのうちBタイプ(全4種類の各サイズ)であり,胴部が縦長の円柱の形状で,胴径はいずれも45mmであり,全体の高さはそれぞれ211.2mm,185.2mm,165.1mm,122.1mm,質量はそれぞれ240g,190g,185g,140gである。オ
原告商品11ないし13(SSIシリーズ)

原告商品11ないし13は,いずれもSSIシリーズのうちBタイプ(全4種類のサイズのうち3種類)であり,胴部は,下方がなだらかな裾広がりの略円錐台状で,上方は直径が変わらない円柱状の形状であり,胴部の最大径はそれぞれ57.3mm,46.7mm,39.5mm,全体の高さはそれぞれ204.6mm,167.8mm,114.8mm,質量はそれぞれ237g,145g,93gである。


原告商品14,15(SSGシリーズ)

原告商品14,15は,いずれもSSGシリーズのうちBタイプ(全5種類のサ
イズのうち2種類)であり,胴部が縦長の円錐台の形状で,胴部の最大径はそれぞれ51.4mm,47.8mmであり,全体の高さはそれぞれ169.3mm,162.2mm,質量はそれぞれ181g,145gである。

原告商品の開発・販売の経緯等(甲35,原告代表者)


原告は,明治28年の創業以来,デザイン性の高い化粧品の瓶を主に製造・
販売してきたところ,プラスチックやその他の素材容器の需要が高まる中でガラス瓶の売上が低下したことから,化粧品瓶に代わる新しいシリーズを立ち上げることにし,平成10年ころから化粧品瓶の感覚を活かしたスタイリッシュな食調瓶としてSSシリーズを開発し,遅くとも平成16年から平成23年頃にかけて,順次発売した(甲3,10,11)。
発売当初,同シリーズは,従来にはないタイプの製品だったため,需要者からは違和感をもって受け止められ,評判は芳しくなかったが,原告が,需要者に原告商品の掲載されたカタログやパンフレットを配布するほか,食品メーカーのみが出展する展示会も含めた国内外の展示会に数多く出展するなどして広告宣伝活動に努め
たり,原告商品が実際に中身を充填されて商品として棚に並べられたりしたために徐々に需要が高まり,発売開始より7,8年経った頃から徐々に売り上げが伸び,現在は,同シリーズに食料や調味料を充填した商品が,高級品として,各地の道の駅,デパート地下の食品売り場,高級食材店等において,広く取り扱われている(甲10,24~26)。


原告の製造・販売する瓶のうち,一般瓶の売上が全体の約50%を占め,そ
の中でも,SSシリーズの売上が全体の約25%から30%を占めるところ,原告商品は,SSシリーズの中でも特に生産本数・売上が多いシリーズである。⑹

被告の製造・販売するガラス瓶

被告は,
平成22年3月作成の汎用びんカタログ
(乙13)では,
製造する瓶を,
食料・調味料びん,酒類びん,飲料・ドリンクびん,薬品びんに
分類しているが,これを補足するものとして平成30年12月に作成した汎用カタ
ログ(乙14)では,特に分類をせず,製造・販売する瓶それぞれの品名,図及び必要情報を記載している。
これらのカタログにおいて,被告は,同じタイプの,サイズ違いの製品等があるものについて,冒頭に同じアルファベットや言葉を用い,これに容量を表す数字を付したものを品名としているが,特段,複数の製品にシリーズ名を付して他の製品と区別したり,一連のシリーズであることを強調するような記載はしていない(以下,
便宜的に,
上記アルファベットをシリーズの名称として表記することがある。。)


被告商品の形態(甲5,乙14)
被告商品全体

被告商品1ないし13は,いずれも,首径が26.3mmであり,肩部は,胴部との境界面よりも首部との境界面の方がやや高くなっているが,その勾配はなだらかであり,全体的に細長くすっきりとして,肩を張った印象を与えるが,肩の張りは,
原告商品1ないし13に比べ,
より小さい
(首部と胴部の高低差がより大きい)
印象を与える。被告商品14,15は,胴部と首部との間に径の差がなくつながっ
ており,被告商品1ないし13にあるような肩部はない。
被告商品の底部には,NTという刻印がある。

被告商品1ないし3

被告商品1ないし3は,いずれも品名にNTRと付くシリーズ(全3種類の各サイズ)
であり,
胴部が縦長の六角柱の形状で,
胴部の横幅はいずれも47mm,
全体の高さはそれぞれ211mm,165mm,122mm,質量はそれぞれ210g,160g,125gである。

被告商品4ないし6

被告商品4ないし6は,いずれも品名にNTYと付くシリーズ(全3種類の各サイズ)
であり,胴部が正方形柱の形状で,
胴部の横幅はいずれも39.
5mm,
全体の高さはそれぞれ211m,165mm,122mm,質量はそれぞれ220g,170g,132gである。


被告商品7ないし10

被告商品7ないし10は,いずれも品名にNTMと付くシリーズ(全4種類の各サイズ)であり,胴部が円柱の形状で,胴径は45mm(被告商品8)及び44mm(被告商品7,9,10),全体の高さはそれぞれ211mm,185mm,167.5mm,123.5mm,質量はそれぞれ200g,183g,165g,125gである。

被告商品11ないし13

被告商品11ないし13は,いずれも品名にNTKと付くシリーズ(全3種類の各サイズ)であり,胴部は,下方がなだらかな末広がりの略円錐台状で,上方が直径が変わらない円柱状の形状であり,胴部の最大径はそれぞれ56.5mm,46mm,38.5mm,全体の高さはそれぞれ204.5mm,167.5mm,114.5mm,質量はそれぞれ205g,140g,87gである。カ
被告商品14,15

被告商品14,15は,いずれも品名にNTCと付くシリーズ(全2種類の各サイズ)であり,胴部が円錐台の形状で,胴部の最大径はそれぞれ51mm,47mm,
全体の高さはそれぞれ169mm,
162mm,
質量はそれぞれ155g,
138gである。


被告商品の開発・販売の経緯(乙12,15ないし37,証人P1)被告は,平成25年11月から12月ころ,従前,原告商品を購入していた
顧客より,原告商品の代替となる瓶の製造,納入の打診を受け,リニューアルを兼ねてギフト箱の変更をしなくても済む範囲での形状変更を希望していることなどを聴取し,インターネット上で公開されている原告商品2,7,11の図面を参考にしながら,それぞれ3種類の設計図面を作成し,顧客の希望により形状等を決定した上で(乙15ないし35),平成26年4月以降,サンプル生産を行って(乙1
2の1,3,乙37),被告商品7,11については,同年9月以降本生産用の金型を作成して(乙12の2,4),同年12月及び平成27年1月に,製造・販売
を開始した。
被告商品2については,顧客の都合により,平成29年3月以降,金型を作成し(乙12の19),同年12月に,製造・販売を開始した。

平成26年11月ころ,調味料の製造・販売業者である株式会社アジア食品
は,商品を充填するために使用する容量150mlの瓶として,原告商品9を検討するとともに,被告に対し同様の製品の生産が可能かどうかを打診し,見積を依頼した。
被告は,同年4月に,同社に対し被告商品9のサンプルを提供し,同社の製造ラインに適合するか等を確認した後,同年3月以降,金型を作成して,本生産を開始
し(乙12の5),同年4月28日に販売を開始して,以後,同社に対し,被告商品9の販売を継続している(乙3)。

平成27年6月ころ,被告の取引先である坂元醸造株式会社は,使用中の原
告商品の強度に問題があるとして,被告に見積を依頼し,被告は,同社の要望に応じて被告商品8の図面作成と見積提示を行い,平成28年12月に同社の承認を得た上で,平成29年2月以降サンプル生産を行って(乙12の6),原告商品との強度比較試験を実施した上で,同年4月より本生産を行って(乙12の7),同年5月19日,同社に対し,被告製品の販売を開始した(乙7)。

その他の被告商品のサンプル生産の金型購入伺い書及び本生産の金型購入伺
い書の作成日並びに販売開始日は,それぞれ以下のとおりである。設計図面

サンプル生産の

本生産の

金型購入伺い書

金型購入伺い書

被告商品1

販売開始

H29.1.27

未発売

H29.3.23

H29.12.12

被告商品3

H29.1.27

未発売

被告商品4

H29.1.27

H29.5.26

被告商品2

H25.12.2

H26.3.19

被告商品5

H29.1.27

H29.7.24

被告商品6

H29.1.27

H29.12.22

H26.3.19

H26.9.11

H27.1.20

H29.2.3

H29.4.5

H29.5.19

H28.3.8

H28.4.28

H29.5.23

H29.7.18

H26.3.19

H26.9.11

H26.12.19

H29.2.24

H29.7.7

H29.9.21

H29.5.22

H29.8.24

H29.2.8

H29.7.5

H29.7.7

H30.3.5

被告商品7

H25.11.8

被告商品8
被告商品9
被告商品10

H29.2.24
H29.2.28

被告商品11

H25.11.8

被告商品12

H29.2.28
被告商品13

H29.3.8

被告商品14
被告商品15

H29.3.8

なお,原告は,被告商品6,12,13,15について,平成29年7月24日に各被告商品のサンプルを発見したと主張して販売開始時期を争うが,原告の主張を裏付ける客観的な証拠はなく,また,サンプルの製造後直ちに商品化して販売開始するとは限らないから,上記主張を採用することはできない。
2
争点⑴(被告の行為が不正競争防止法2条1項1号に該当するか。)につい


問題の所在


前記1⑷及び⑺で認定した原告商品と被告商品の形態の対比,並びに前記1

⑻で認定した,需要者の希望により原告商品の代替品として開発され,あるいは原告商品の図面を参照して開発されたとの経緯に照らすと,
原告商品と被告商品とは,
その対応する番号ごとに,形態において,少なくとも類似していると言うことはできる。
被告は,肩部分の傾斜,重量,ガラスの透明度が相違する点を主張するが,基本的な形状が一致する以上,形態としては少なくとも類似の範囲にあると認めるのが相当である。

他方,原告商品については,その形状又は構造に係る考案として,実用新案
登録の手続はされておらず,物の発明として,あるいはこれを生産する方法の発明として,
特許登録の手続はされておらず,
原告商品の形状又は立体的形状について,
意匠登録又は商標登録の手続もされていない(弁論の全趣旨)。
また,前記1⑸で認定したところによれば,原告商品のすべてについて,最初に販売されてから3年以上が経過しているから
(不正競争防止法19条1項5号イ)

原告商品の形態を模倣することが,
同法2条1項3号により制限されることもない。

したがって,原告商品と同一又は類似の形態,形状を有する瓶を製造し,譲渡すること自体が,法によって禁止されるものでないことは明らかである。ウ
原告は,主体的に同項1号の適用を主張し,原告商品の形態が,同号の商品
等表示に該当すると主張する。
そこで検討するに,同号は,他人の商品であることを示す表示,あるいは他人の営業であることを示す表示が商品に付され,その表示が需要者の間に広く認識されるに至った場合,
当該他人の営業上の信用が表示に化体されることから,
第三者は,
前記表示と同一又は類似の表示を自己の商品に使用することで,需要者をして,自己の商品を信用のある他人の商品と誤認させ,これによって顧客を獲得することが可能となり,このような行為は事業者間の公正な競争を害することから,これを不
正競争行為として,差止め及び損害賠償の対象としたものである。そうすると,同号の不正競争行為が成立するためには,原告商品の形態が,原告の商標や商号を商品に記載したのと同様に,商品の出所が原告であることを示す表示として機能するものであることに加え,当該商品の取引の実情に照らし,被告商品を見た需要者が,その形態の同一性,類似性を理由に,これを原告の商品と誤認
して,取引をするおそれのあることが必要である。
商品の形態それ自体は,美感を訴える目的や機能的理由で造られるものであり,
出所の表示を本来の目的とするものでないから,商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に当たるというためには,①原告商品の形態が,他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していること(特別顕著性)及び②その形態が長期間独占的に使用されるか,短期間でも強力な宣伝広告等により,需要者においてその形態が特定の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)が必要であり,これらが認められる場合に,原告商品の形態は,同号の商品等表示に当たるとして,混同のおそれについて検討すべきことになる(なお,同号は,商品等表示の例示として,商品の容器を掲げているが,需要者に販売される原告商品は,商品の容器ではなく,商品そのものである。)。


原告商品の形態の特別顕著性について


原告商品の形態

原告商品の形態の特徴は,前記1⑷のとおりであるところ,前記1⑴で認定したところによれば,ガラス瓶のメーカーは,原告及び被告の他に10社程度あるところ,これらのメーカーが製造・販売する食調瓶は,底部が円形で大きく安定感があるものが多く,首部と胴部がなだらかにつながっており(なで肩),原告商品のように肩部が張っていて細長くスタイリッシュな印象を与えるような製品はほとんどなく,そのような瓶を集めてシリーズ化しているメーカーもない(甲6ないし9,15ないし23)。
他方,
上記各メーカーの販売する食調瓶
(原告から原告商品と同型の商品を製造・

販売することについて特別の許可を受けたことの証拠がない物)の中にも,多角形柱型であったり,
瓶の色が乳白色であったりするが,
形状としては細口瓶であって,
縦長の柱型で肩部が張っており,贈答用に使用されることを想定した高級感のある製品のシリーズもあることが認められる(甲15の調味料M200角,甲18のゴージャスシリーズ,甲19のスイトシリーズ)。

原告は,原告商品1,4,7,11につき,非常に縦長の不安定な形状であることに特徴があると主張するが,他のメーカーの販売する食調瓶の中にも,縦長で不
安定な形状の物も認められる(甲15の調味料M200角,ST150,酒類びんではあるがST150PP,甲16のSLD150A-HC,甲18のゴージャスシリーズ,甲19のサエシリーズ等)。
また,原告商品は,原則として,需要者の要望に応じて単品で取引されており,複数の商品あるいは同じシリーズの商品を揃えて取引したり,並べて展示したりするとは限らないが,各シリーズもしくはSSシリーズ全体をまとめて見た場合と比べると,個別の原告商品に接した場合には,細長く肩部が張っていてスタイリッシュな瓶という原告商品の外見上の特徴は,それほど強い印象与えるものではなく,原告商品の各シリーズの筒部分の形状(六角柱,正方形柱,円柱,略円錐台等)及
びサイズによるバリエーションは,他のメーカーにおいて採用されているものと大きな相違はないから,原告商品と他のメーカー製の似た形状・サイズの瓶とが,形態により明確に区別されるとまではいえない。

原告の許諾による商品

原告は,複数のガラス瓶メーカーに対し,一部の原告商品と同型の商品を製造・販売する許諾を与えたり,原告商品と同型の商品を他のガラス瓶メーカーから仕入れたりしているところ,これらのガラス瓶メーカーは,完成品に原告との関連性をうかがわせる標章を付したりはしていない(甲28,29,33,34,原告代表者)。
そうすると,これらの製品に接した需要者は,特段の情報に接しない限り,原告
以外にも,原告商品と同一又は類似の形態を有する食調瓶を製造・販売しているメーカーがあると認識することになり,このことは,原告商品の形態の顕著性を減殺する方向にはたらく。

まとめ

原告商品の形態は,ある程度の特徴を有するものであると思われるが,原告の商品の中でも,意匠登録されているもの(SSハート等)と並ぶほど特徴的であるとはいえず,全体として,商品等表示としての特別顕著性があるとするには,疑問が
残るといわざるを得ない。


原告商品の形態の周知性について


原告商品のシェア

前記1⑸によれば,原告商品は,原告が従来にはない食調瓶として開発したものであり,遅くとも平成16年から平成23年にかけて順次発売開始され,現在に至るまで概ね10年程度継続して販売されていること,平成17年以降の累計売上高が約15億円,累計売上本数が約4000万本であることが認められる。しかし,原告商品の売上高は,原告全体の売上高の25%から30%を占めるものの,原告がガラス瓶製造業者としては中規模のメーカーであり,他にガラス瓶を
販売するメーカーが10社程度あることに鑑みれば,市場全体のシェアとして原告商品が独占状態であるとか特段大きいとまでいうことはできず,また,原告商品の出荷本数も,平成29年において食調瓶全体の出荷本数の0.226%にとどまる(乙10)。
原告は,原告商品は通常の一般瓶の1.5ないし3倍の価格で取引される高級志
向の瓶であるから,通常の食調瓶の市場シェアを考慮するのは妥当ではないと主張するが,高級志向の瓶の市場の存在やその規模について具体的な主張立証をしないため,上記主張を採用することはできない。

原告商品の宣伝方法

前記1⑸で認定したところによれば,原告は,カタログ等を配布するほか,食品メーカーが出展する展示会に出展するなどして原告商品を宣伝したとされるが,その際に,他のSSシリーズや多数ある他の原告の商品を区別する形で,原告商品のみをシリーズとして強調して宣伝したと認めるべき証拠は提出されていない。ウ
まとめ

証拠(甲24ないし26)によれば,需要者の担当者の中に,原告商品の形態は特徴的であり,一目で他社の瓶と区別できると述べる者がいることが認められる。しかしながら,ガラス瓶メーカーが13社程度しかない中で,ガラス瓶を専門に
扱う商社等の担当者や,現に原告商品を導入している食品メーカー等の担当者であれば,原告商品の形態を見て,原告の製品と認識することは可能であると思われるが,前記⑵で検討したとおり,原告商品の形態に,他メーカーの製品と比べて特別顕著といえるまでの特徴があるかは疑問であること,他メーカーに同一又は類似の形態の商品を許諾することで,その顕著性を自ら希釈していること,原告商品の宣伝方法も,前述のとおり限定的であることを総合すると,食調瓶の需要者として,日本国内に多数存在する食品メーカー等において,原告商品の形態が周知であると認めるに足りる立証はされていないといわざるを得ない。


誤認混同のおそれ


総論

前記⑴で検討したとおり,本件において不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為となるのは,被告が,被告商品に原告商品と同一又は類似の形態を使用することで,需要者をして,被告商品を原告の商品と誤認させる行為であり,その誤認混同のおそれの有無については,
当該取引,
すなわち,
食調瓶を製造する原告と被告,
食調瓶の需要者である食品メーカー等,両者を仲立ちする商社等の間における取引の実情に照らし検討すべきものである。

被告の取引

前記1⑻アないしウで認定したところによれば,被告は,従前原告商品を購入していた需要者,あるいは原告商品と比較検討する需要者の求めに応じ,原告商品の代替品となる,あるいは原告商品の競合品となる食調瓶を開発し,これを被告商品として販売したものであるから,需要者において,取引の相手が被告であることは明白であり,被告商品を原告の商品と誤認混同したと考える余地はない。また前記1⑻エで認定した被告商品のうち,同アないしウで述べた以外の被告商品には,需要者の求めによらず,被告自ら原告商品と類似する形態を有する食調瓶
を開発し,被告商品として販売した物も含まれているが,当該取引が,一般消費者との間ではなく,ガラス瓶製造メーカー,食品メーカー等,商社等との間で,事業
目的でまとまった額の食調瓶を売買するものである以上,商社等,あるいは食品メーカー等において,被告商品を原告の商品と誤認するとは考えにくいし,被告が,そのような誤認を生じさせるような宣伝広告や売込みを行ったと認めるに足りる証拠はなく,そのような誤認を前提に被告商品を購入した需要者がいたと認めるに足りる証拠もない(担当者が原告商品から被告商品へ切り替えたことを会社代表者が知らなかったことは,これには当たらない)。

まとめ

以上によれば,本件における取引の実情に照らし,被告商品の形態が原告商品に類似しているとしても,需要者が,被告商品を原告の商品と誤認するおそれがあるとは認められないというべきである。


争点⑴についての結論

原告商品の形態の特別顕著性については疑問の余地があり,その周知性についてはこれを認めるというに足りる証拠がなく,被告商品を原告の商品と誤認するおそれがあるとは認められないことから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為が成立しないことは明らかであり,その余の点について検討するまでもなく,原告の主位的主張に基づく請求は理由がない。
3
争点⑵(被告の行為が一般不法行為に該当するか。)について


問題の所在

原告は,被告の行為が本件競争行為に当たらない場合であっても,民法709条の不法行為が成立すると主張し,その理由として,被告は,①不正な競争をする意図で,被告商品を開発,製造したこと,②原告商品をデッドコピーしたこと,③原告商品をシリーズとして模倣したこと,④不公正な営業行為を行い,これにより原告に営業上の損害を被らせたことを主張する。
被告商品の製造等が,意匠法その他の知的財産法によって禁止されず,また,不
正競争防止法2条1項1号の不正競争行為にも当たらないことは既に述べたとおりであり,この場合に一般不法行為が成立するとすれば,相手方の営業の利益を侵害
することを企図して,自由競争の範囲を著しく逸脱するような不公正な行為が行われたような例外的な場合に限られるというべきであるから,原告が主張する上記事情が認められ,これがそのような例外的場合に当たると認められるかにつき,以下検討する。


原告の主張について


不正な競争をする意図での被告商品の開発,製造の主張について

被告は,
前記1⑻のとおり,
顧客からの要望に応じ,
被告商品のサンプルの設計,
サンプル生産の金型購入,本生産の金型購入の後,生産を開始し,この際,それぞれ対応する原告商品を参考にしつつ,顧客の要望に応じて胴径や全長は変えずに肩部の形状の変更等を行っており,原告の商品を単純にコピーしたものではない。原告は,被告が,顧客からの要望とは関係なく,あらかじめ被告商品のサンプル一揃いを開発・製造した上で,原告の顧客に対してシリーズとして原告商品からの切り替えを勧める形で売り込みに行ったと主張し,
そのことを裏付ける事情として,
被告商品7,9,11以外のすべての被告商品の金型が平成29年1月27日から
同年3月23日までの間に製造されたことや,被告製品1ないし3が発売開始されていないことを挙げる。
しかし,上記のとおり,被告商品のサンプル生産の金型購入伺い書は,平成26年3月19日(被告商品2,7,11)と平成29年2,3月ころ(それ以外の被告商品)に分かれて作成されており,本生産の金型購入伺い書は,平成26年9月
11日(被告商品7,11)及び平成29年1月27日(被告商品1,3ないし6,14),同年7月7日(被告商品12,15)に比較的集中しているものの,シリーズとして同じ日に作成されているのは,
被告商品4ないし6NTYシリーズ


のみである。また,販売開始時期は,被告商品2,6(平成29年12月12日)以外は別々であり,平成26年12月19日から平成30年3月5日までの長期間
にわたっており,シリーズとして同じ日に販売開始されたものはない。特定のシリーズの被告商品についても,サンプル生産の金型購入伺い書及び本生
産の金型購入伺い書の作成日並びに販売開始日は,上記NTYシリーズ(被告商品4ないし6)を除き,シリーズ内の被告商品ごとに別の日であり,例えば,NTKシリーズ(被告商品11ないし13)においては,1種類の商品(被告商品11)のみが平成26年中に販売開始され,他の2種類の商品は平成29年になるまで販売されなかった。
したがって,
被告が,
被告商品すべてを顧客の要望とは関わりなくまとめて開発・
製造した上で,需要者に対して一揃いのシリーズとして営業活動を行ったと認めるのは相当でなく,むしろ,需要者の要望に応える形で,順次,被告商品の製造・販売を行っていったと考えるのが自然である。

証人P1は,被告商品1,3ないし6,10,12ないし15について,先行して発売した被告商品2,7,11が好評だったため,特定のボトラーからの要請を経ることなく開発したと述べるところ,外観や機能性に優れた製品を参考にして自己の商品を開発し販売することは,法に抵触しない限り,自由競争の中で許容される範囲の経済活動であるし,需要者からの要望に応えて開発した商品が好評だった
ことから,その商品のイメージを維持しつつサイズや形状違いの商品を独自に開発することは不自然であるとはいえず,このことから,直ちに被告が不正競争の意図をもって原告商品を模倣したと認めることはできない。

デッドコピーの主張について

前記1⑷及び⑺によれば,被告商品は,それぞれ対応する原告商品と,首径は同一で,胴部の横幅(最大径)及び高さの寸法の差異がいずれも2mm以内であり,外見上の形状が相当に類似していることが認められる。
しかし,
他のメーカー製の細口瓶の中にも同じ首径の製品があること
(甲6,
8,
9,15,17,18),重量は被告商品の方が約5から15%軽く,肩の張り具合(首部から肩部に係る斜面の角度)も異なることから,全く同一の形態であると
いうことはできない。
前記アの被告商品開発の経緯に照らしても,被告は,原告商品の形状や寸法をそ
のまま模倣するのではなく,複数のイメージ図や設計図の作成,サンプルの生産を経て,被告商品の実際の製造・販売に至っているのであり,商品開発のために一応の資金や労力を投下したことが認められ,被告商品が,原告商品の単純なデッドコピーであるということはできない。

シリーズとしての模倣の主張について

前記1⑶,
⑹のとおり,
原告商品及び被告商品は,
それぞれのカタログにおいて,
形状が類似するサイズ(容量)違いの商品から構成されるシリーズとして掲載されているものの,原告商品4ないし6,11ないし15は,その属するシリーズの中のサイズ展開のうち一部に過ぎず,また,原告商品の属する各シリーズは,SSシリーズという,縦型で細長くシャープな形状をした約80種類の一般瓶のシリーズの中の一部である。
原告は,原告が製造する多数の一般瓶のうち,原告商品に属する15種類の食調瓶のみを取り出して,1つのシリーズを構成するものとして特定しているが,原告において,
これを商品のシリーズとして宣伝したといった事実は認められず,単に,

被告商品に対応する原告商品をひとまとめにして,シリーズと呼んでいるに過ぎない。
また,前述のとおり,被告商品のサンプル生産の金型購入の時期は平成26年3月及び平成29年2,3月に分かれ,本生産の金型購入時期は平成26年9月から平成29年7月の間に,実際の発売開始時期は平成26年12月から平成30年3
月までの間に(一部集中するものの)分散していること,販売開始の順序につき,被告商品11(NTKシリーズ),7及び9(NTMシリーズ)という別々のシリーズに属する商品が,他の被告商品よりも1年又は2年以上先行して発売されているのであるから,被告商品が,原告商品をシリーズとして模倣した物であるということは困難である。

以上によれば,
被告は,
原告商品と類似する形態を有する被告商品を順次開発し,
販売してきたということはできるが,そもそも対応する原告商品が一つのシリーズ
であったとはいえないし,被告がこれを一時期に模倣したとも認められないので,著しく不公正な行為があったということはできない。

不公正な営業行為及び営業上の損害の主張

被告の営業担当者が,平成29年5月から6月以降,需要者に対し,被告商品のサンプル一揃いを持参して営業活動を行ったことは認められる(原告代表者,証人P1)。
しかしながら,原告商品と類似した形態の商品を製造・販売することが,法によって禁止されておらず,また不正競争行為に当たらないことは既に述べたとおりであり,需要者に対し,より安価であったり,より軽量であったり,より有利な条件
で取引し得ることを示して,原告商品から被告商品に切り替えるよう提案することが,著しく不公正な行為であると評価することはできない。
また,被告の上記行為により,保護されるべき原告の営業上の利益が侵害されたということもできない。


まとめ

上記⑵アないしエによれば,被告の行為が不法行為に当たる理由として原告が主張する事情自体を認めることができないし,その他の事情を総合しても,被告の行為が,自由競争の範囲を逸脱するような不公正な行為に当たるとは認められず,不法行為の主張には理由がない。
4
結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官
谷有恒
裁判官
野上誠一島村陽子
裁判官
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