判例検索β > 平成27年(行ウ)第468号
法人税更正処分等取消請求事件
事件番号平成27(行ウ)468
事件名法人税更正処分等取消請求事件
裁判年月日令和元年6月27日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-06-27
情報公開日2019-08-15 18:00:15
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令和元年6月27日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成27年(行ウ)第468号法人税更正処分等取消請求事件(以下第1事件という。)平成29年(行ウ)第503号法人税更正処分等取消請求事件(以下第2事件という。)平成30年(行ウ)第444号法人税更正処分等取消請求事件(以下第3事件という。)口頭弁論終結日

平成31年1月31日
判主1決文
麻布税務署長が平成24年3月27日付けで原告に対してした,次の⑴から⑶までの処分をいずれも取り消す。


原告の平成20年10月7日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス10億7026万4862円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金10億7026万4862円を下回る部分



原告の平成21年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額2億9222万0389円を超える
部分及び納付すべき法人税額6286万7700円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分


原告の平成22年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額18億8020万7363円を超える部分及び納付すべき法人税額5億5276万3400円を超える部分
並びに過少申告加算税の賦課決定処分
2
麻布税務署長が平成29年2月24日付けで原告に対してした,原告の平成23年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし,平成30年1月29日付け減額再更正後のもの。)のうち,
所得金額9億2411万4407円を超える部分及び納付すべき法人税額2億5304万2100円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,同日付け変更決定による変更後のもの。)をいずれも取り消す。
3
麻布税務署長が平成30年2月27日付けで原告に対してした,原告の平成24年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額4億3408万2724円を超える部分及び納付す
べき法人税額1億2998万3900円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
4
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
第1事件
主文第1項と同旨

2
第2事件
主文第2項と同旨

3
第3事件
主文第3項と同旨

第2
1
事案の概要等
用語
本件で用いる主な略称(後記の法人名及び国名を除く。)は別紙2のとおりであり,関係法令の定めは別紙3のとおりであり,法人名の略称は別紙4のと
おりである。なお,以下,フランス共和国をフランス,グレートブリテン及び北アイルランド連合王国を英国,オランダ王国をオランダ,アメリカ合衆国を米国,ドイツ連邦共和国をドイツという。
2
事案の概要
音楽事業を目的とする日本法人である原告は,本件各事業年度(平成20年12月期から平成24年12月期まで)に係る法人税の確定申告において,同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入して申告したところ,麻布税務署長(処分行政庁)は,同支払利息の損金算入は原告の法人税の負担を不当に減少させるものであるとして,法人税法132条1項に基づき,その原因となる行為を否認して原告の所得金額を加算し,本件各事業年度に係る法人税の各更正処分及び平成20年12月期を除く各事業年度
に係る過少申告加算税の各賦課決定処分をした(本件各更正処分等)。本件(第1~第3事件)は,原告が,上記借入れは原告を含むグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であり,本件各更正処分等は法人税法132条1項の要件を欠く違法な処分であると主張して,被告を相手に,本件各更正処分等の取消しを求める事案
である(なお,第1事件は平成20年12月期から平成22年12月期まで,第2事件は平成23年12月期,第3事件は平成24年12月期の各事業年度に係るものである。)。
3
前提事実(証拠等の掲記がない事実は,当事者間に争いがない。)原告及び主なヴィヴェンディ・グループ法人


原告
原告は,平成20年10月7日にCMHL(後記エ)を完全親会社として設立された音楽事業を目的とする日本法人(合同会社)であり,ヴィヴェンディ(後記ウ)の間接的な完全子会社であって,法人税法2条10号の同族会社に当たる。


UMKK
UMKK(ユニバーサルミュージック株式会社)は,昭和56年9月19日に設立された音楽事業を目的とする日本法人であり,ヴィヴェンディの間接的な完全子会社であったが,平成21年1月1日の本件合併
(後記

により,原告に吸収合併されて解散した。UMKKは,U

MPKK,ユニバーサルミュージックアーツ株式会社,ミックス株式会社のほか,他の事業体に対する少数株主持分を有していた(甲17)。ウ
ヴィヴェンディ
ヴィヴェンディ(VivendiS.A.)は,メディア事業,テレビ事業,映画事業,音楽事業等を行うヴィヴェンディ・グループ法人における究極の親会社であり,フランス法人である。


CMHL
CMHL(CMHLB.V.)は,オランダに所在するヴィヴェンディ・グループ法人であり,平成20年(2008年)9月25日に設立された中間持株会社であって,同年10月7日に完全子会社である原告を設立したオ

UMTC
UMTC(UniversalMusicTradingCompanyB.V.)は,オランダに所
在するヴィヴェンディ・グループ法人であり,昭和36年(1961年)10月13日に設立された中間持株会社であって,UMKKが原告の直接の親会社であっ

た。

CMH
CMH(CentenaryMusicHoldingsLimited)は,英国に所在するヴィヴェンディ・グループ法人であり,CMHLの完全親会社であって,持株会社かつ金融会社である。


UMIHBV
UMIHBV(UniversalMusicInternationalHoldingB.V.)は,オランダに所在するヴィヴェンディ・グループ法人であり,UMTCの完全親会社であって,持株会社である。


UMIF及びUMGT
UMIF(UMIFinanceS.A.S.)及びUMGT(UniversalMusicGroupTreasuryS.A.S.)は,フランスに所在するヴィヴェンディ・グループ法人である。


ヴィヴェンディ・グループの資本関係
ヴィヴェンディ・グループ法人のUMG部門における本件組織再編取引
の前の主な資本関係は,以下のア~ナのとおりであり,これを図示すると別紙5のとおりである(甲17,19,24,76,弁論の全趣旨)。以下のア~ナにおいて,持分とは,株式等の会社持分のことを示し,別紙5において,矢印はその先の法人について株式又は持分を有していることを示し(点線の矢印は,途中の法人の記載を省略した間接的な資本関係を示
す。),矢印に付された丸囲いの数字はその持株比率又は出資比率を示している。

ヴィヴェンディ

は,米国法人であるVivendiHoldingI

Corp.の持分を100%保有していた。

VivendiHoldingICorp.は,米国法人であるUMG(UniversalMusicGroup,Inc.)の持分を100%保有していた。


UMGは,米国法人であるPolyGramHolding,Inc.の持分を100%保有し,また,オランダ法人であるCHBV(CentenaryHoldingB.V.)の持分を100%保有していた。


オランダ法人であるUIMBV(UniversalInternationalMusicB.V.)について,CHBVは持分を95.4%保有し,PolyGram
Holding,Inc.は持分を4.6%保有していた。

UIMBVは,ドイツ法人であるUMBの持分を間接的に100%保有していた。


フランス法人であるUMGT

について,UIMBVは持分

を70%保有し,UMBは持分を30%保有していた。


UIMBVは,オランダ法人であるCentenaryMusicInternationalB.V.の持分を100%保有していた。

CentenaryMusicInternationalB.V.は,オランダ法人であるCentenaryMusicHoldingB.V.の持分を100%保有していた。

CentenaryMusicHoldingB.V.は,オランダ法人であるポリグラム(PolyGramB.V.)の持分を100%保有していた。


UIMBVは持分
を6%保有し,CentenaryMusicHoldingB.V.は持分を29%保有し,ポリグラムは持分を65%保有していた。


ポリグラムは,オランダ法人であるMGBBV(UniversalMusicPublishingMGBHoldingB.V.)の持分を100%保有していた。

MGBBVは,日本法人であるMGBKK(株式会社ユニバーサル・ミュージック・MGB・パブリッシング)の持分を100%保有していた。

ポリグラムは,オランダ法人であるUMIHBV

の持分を

100%保有していた。

UMIHBVは,オランダ法人であるUMTC

の持分を1

00%保有していた。

UMTCは,日本法人であるUMKK

)の持分を100%保

有していた。

UMKKは,日本法人であるUMPKK(株式会社ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング)の持分を100%保有していた。


ポリグラムは,英国法人であるCMH

の持分を100%保

有していた。

CMHは,英国法人であるUMO(UniversalMusicOperationsLimited)の持分を,間接的に100%保有していた。


CMHは,英国法人であるV2(V2MusicGroupLimited)の持分を100%保有していた。

V2は,日本法人であるV2J(株式会社ヴィツーレコズ・ジャパン)の持分を100%保有していた。


CMHは,英国法人であるUMGI(UniversalMusicGroupInternationalLimited)の持分を,間接的に100%保有していた。


本件再編成等スキーム
ヴィヴェンディ・グループは,遅くとも平成20年(2008年)7月23日までに,日本の関連会社の組織再編等を目的とした本件再編成等スキームを作成し(乙15),これに基づき

本件組織再編取

引及び本件財務関連取引(本件組織再編取引等)が実行された。


本件組織再編取引(以下ア~ケの各行為)

CMHLの設立と本件設立
CMHは,平成20年(2008年)9月25日,CMHLを完全子会社として設立し,CMHLは,同年10月7日,原告を完全子会社として200万円の資本金により設立した(本件設立)。


本件増資
原告は,平成20年(2008年)10月29日,CMHLから295億円の追加出資を受けた(本件増資)。


本件借入れ(本件貸付け)
原告とUMIFは,平成20年(2008年)10月29日,以下
のa~eの概要による金銭消費貸借契約を締結した(乙17)。
a
貸手(UMIF)は,契約締結日に借入金額(866億6132万円)を借り手(原告)に交付する。

b
借入金額は,本件各日本法人(UMKK,MGBKK及びV2J)の株式の購入代金及びその関連費用にのみ使用される。

c
利息の利率は,平成26年(2014年)10月29日までの間は年6.8%,同日以降は年5.9%とする。
d
借り手(原告)は,平成40年(2028年)10月29日に借入金残額及び経過利息等を返済する。

e
借り手(原告)は,平成21年(2009年)10月29日までであれば,300億円を限度として,借入金の一部を返済することができ,平成26年(2014年)10月29日以降においては,いつ
でも借入金の全部又は一部の返済をすることができる。
原告は,平成20年(2008年)10月29日,

の金銭消

費貸借契約に基づき,UMIFから866億6132万円の交付を受けた(本件借入れ)。

本件買収
UMKK株式の株式価値算定分析(乙19)の結果,平成20年
(2008年)8月31日時点における同株式の評価額の総額は1144億1900万円とされた。
原告とUMTCは,平成20年(2008年)10月29日,UMTCが保有するUMKK株式の売買に関し,以下の概要による契約を締
結した(乙20)。
a
売手(UMTC)は,買手(原告)に対し,UMKKの全発行済株式である94万7000株を売却する。

b
上記株式の売買価格は1144億1800万円とする。
原告は,平成20年(2008年)10月29日,

基づき,UMTCに対して1144億1800万円を支払い,UMKK株式を取得した(本件買収)。

本件MGBKK買収
MGBKK株式の譲渡

原告とMGBBVは,平成20年(2008年)10月29日,MGBBVが保有するMGBKK株式の売買に関し,以下の概要による契約を締結した(乙27)。
a
売手(MGBBV)は,買手(原告)に対し,MGBKKの全発行済株式である500株を売却する。

b
上記株式の売買価格は14億6900万円とする。
原告は,平成20年(2008年)10月29日,

契約に

基づき,MGBBVに対して14億6900万円を支払い,MGBKK株式を取得した(本件MGBKK買収)。

本件V2J買収
原告とV2は,平成20年(2008年)10月29日,V2が保有するV2J株式の売買に関し,以下の概要による契約を締結した(乙
29)。
a
売手(V2)は,買手(原告)に対し,V2Jの全発行済株式である9000株を売却する。

b
上記株式の売買価格は2000ポンドとする。
原告は,平成20年(2008年)10月29日,

基づき,V2に対して2000ポンドに相当する32万円を支払い,V2J株式を取得した(本件V2J買収)。

本件UMPGK設立
原告は,平成20年11月6日,資本金100万円で,UMPGK(ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社)を設立した(本
件UMPGK設立。甲14,弁論の全趣旨)。

本件合併
原告とUMKKは,平成20年11月10日,原告を存続会社と
し,UMKKを消滅会社として吸収合併する旨の,以下の概要による契
約を締結した(乙22)。
a
合併の効力が生ずる日は平成21年1月1日とする。
b
原告は,合併の効力発生日に,UMKKの資産,負債及び権利義務の一切を承継する。
原告は,

に基づき,平成21年1月1日,UMKKを

吸収合併し,これによりUMKKは消滅した(甲9,本件合併)。原告は,本件合併によりUMKKの資産,負債及び利益剰余金を引
き継ぐとともに,合併により消滅するUMKK株式について,平成20年12月31日時点のUMKK株式の価額である1144億3196万2396円から,UMKKの資本金及び資本準備金の合計額である68億1100万円を差し引いた1076億2096万2396円を,抱合い株式消滅損失として消却処理した(乙10,23)。


本件UMPGK合併
UMPGK,MGBKK及びUMPKKは,UMPGKを存続会社とし,MGBKK及びUMPKKを消滅会社とする吸収合併に係る契約を締結し,平成21年7月1日に合併の効力が生じたことにより消滅会社である同2社は消滅した(甲15,甲16。本件UMPGK合併)。

本件組織再編取引によって変更されたヴィヴェンディ・グループ法人の資本関係は以下の

とおりであり,本件組織再編取引直後の各法人

の資本関係を図示すると別紙6のとおりである(甲19,24,弁論の全趣旨)。
英国法人であるCMHは,オランダ法人であるCMHLの持分を100%保有することとなった。
CMHLは,日本法人である原告の持分を100%保有することとなった。
原告は,日本法人であるUMPGK及びV2Jの持分をそれぞれ1
00%保有することとなった。
UMTC,MGBBV及びV2は,いずれも日本法人の持分を有さないこととなった。


本件財務関連取引
平成20年(2008年)10月29日に実行された,本件組織再編取引に係る資金面に関する取引(本件財務関連取引)は以下のとおりであり(甲
18,19,21,22),これを図示すると別紙7のとおりである。なお,別紙7において四角囲いされた資金移動が,本件資金決済(

)に

係る取引である。

本件増資の原資に係る資金の流れ
CMHLが原告に対し追加出資した2

95億円の原資に係る,平成20年(2008年)10月29日の資金の流れは以下のとおりである。
ヴィヴェンディはUMGTに対し,UMGTはUMOに対し,現実の資金移転を伴わない短期関係会社勘定により,順に1億9995万4332.16ポンドを送金した。

UMOはCMHに対し
ンドを,現実の資金移動を伴わない出資として送金した。
CMHとヴィヴェンディは,CMHの
32.16ポンドと,ヴィヴェンディの同額のポンドに相当する2億4719万2894.25ユーロを交換する,現実の資金移動を伴わない
両替を実行した。
CMHはCMHLに対し
ユーロを,現実の資金移動を伴わない出資として送金した。
CMHLとヴィヴェンディは,CMHLの上記

の2億4719万

2894.25ユーロと,ヴィヴェンディの同額のユーロに相当する295億円を交換する,現実の資金移動を伴う両替を実行した。
295億円について,現実の資金
移動を伴う払込みをした(本件増資)。これにより,原告は,本件増資に基づく295億円を保持するに至った。

本件貸付けの原資に係る資金の流れ
UMIFの原告に対する本件貸付け

の原資に係る,平成2

0年(2008年)10月29日の資金の流れは以下のとおりである。866億6132万円のうち555億5957万円について
a
ヴィヴェンディはUMGTに対し,UMGTはUMIFに対し,現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として,順に4億6555万6980.06ユーロを送金した。

b
UMIFとヴィヴェンディは,UMIFの上記aの4億6555万6980.06ユーロと,ヴィヴェンディの同額のユーロに相当する555億5957万円を交換する,現実の資金移動を伴う両替を実行した。

c
UMIFは原告に対し,上記bの555億5957万円を,現実の資金移動を伴う貸付けとして送金した(本件貸付けの一部)。

866億6132万円のうち300億円について
a
ヴィヴェンディはUMGTに対し,UMGTはUMIFに対し,現実の資金移動を伴う短期関係会社勘定として,順に300億円を送金した。

b
UMIFは,原告に対し,上記aの300億円を,現実の資金移動を伴う貸付けとして送金した(本件貸付けの一部)。
866億6132万円のうち11億0175万円について

a
ヴィヴェンディはUMGTに対し,UMGTはUMIFに対し,現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として,順に923万2026.14ユーロを送金した。

b
UMIFとヴィヴェンディは,UMIFの上記aの923万2026.14ユーロと,ヴィヴェンディの同額のユーロに相当する11億0175万円を交換する,現実の資金移動を伴わない両替を実行した。
c
UMIFは原告に対し,上記bの11億0175万円を,現実の資金移動を伴う貸付けとして送金した(本件貸付けの一部)。


本件買収による代金支払後の資金の流れ
より原告からUMTCに対して支払われた代
金1144億1800万円について,その支払後の資金の流れは以下のとおりである。
UMTCとヴィヴェンディは,UMTCの1144億1800万円
と,ヴィヴェンディの同額の円に相当する9億5875万6494.05ユーロを交換する,現実の資金移動を伴う両替を実行した。
UMTCは,ポリグラムに対して,
94.05ユーロのうち4億8292万3460.10ユーロを,現実の資金移動を伴わない貸付けとして送金した。

b
ポリグラムは,上記aの4億8292万3460.10ユーロを,UMIFに対して,現実の資金移動を伴わない貸付けの返済として送金した。

ち4億7583万3033.95ユーロを,UIMBVに対して,現
実の資金移動を伴わない貸付けとして送金した。
b
UIMBVは,上記aの4億7583万3033.95ユーロのうち4億0932万3498.58ユーロを,UMIFに対して,現実の資金移動を伴わない貸付けの返済として送金した。

c
UIMBVは,上記aの4億7583万3033.95ユーロのうち6650万9535.37ユーロを,UMGTに対して,現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定の返済として送金した。

上記

の4億0932万3498.58ユーロを合算した8億92

24万6958.68ユーロを,UMGTに対して現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として送金した。

cの6650万9535.37ユーロ及び上記
の8億9224万6958.68ユーロを合算した9億5875万6494.05ユーロを,ヴィヴェンディに対して現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として送金した。

本件MGBKK買収による代金支払後の資金の流れ
本件MGBKK買収

原告からMGBBVに対して支

払われた代金14億6900万円について,その支払後の資金の流れは以下のとおりである。
MGBBVとヴィヴェンディは,MGBBVの14億6900万円と,ヴィヴェンディの同額の円に相当する1230万9368.19ユ
ーロを交換する,現実の資金移動を伴わない両替を実行した。
MGBBVは,上記

の1230万9368.19ユーロを,UI

MBVに対して現実の資金移動を伴わない貸付けとして送金した。UIMBVは,上記

の1230万9368.19ユーロを,UM

GTに対して現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として送金し
た。
UMGTは,上記

の1230万9368.19ユーロを,ヴィヴ

ェンディに対して,現実の資金移動を伴わない短期関係会社勘定として送金した。


本件資金決済

平成20年(2008年)10月22日,三菱UFJ銀行渋谷明治通支店において,ヴィヴェンディ,MGBBV,UMTC,CMHL,UMGT,UMIF及び原告の名義の各預金口座(本件各口座)が開設された。本件各口座の開設は,全てUMKKの従業員1名により,残高を0円として行われた。

平成20年(2008年)10月29日,本件財務関連取引の一環として,三菱UFJ銀行渋谷明治通支店における日中資金立替により,本件各口座間で,次表のとおり,ヴィヴェンディ・グループ内の送金を行う資金決済が行われた(本件資金決済)。なお,以下の表における処理時間とは送金が実行された時間であり,送金元口座名義人欄のヴィヴェンディ(NATIXIS)とはNATIXIS銀行に開設された既存のヴィヴェンディ名義の預金口座であり,送金先口座名義人欄のUMOとは既存のUMO名義の預金口座である。処理時間

送金元口座送金先口座
名義人
名義人

送金額

乙号証

9時10分ヴィヴェンディ

UMIF

11億0175万円52の1,2

9時12分ヴィヴェンディ

CMHL

295億円53の1,2

9時13分ヴィヴェンディ

UMIF

555億5957万円54の1,2

9時15分ヴィヴェンディ

UMGT

300億円55の1,2

9時28分

UMGT

UMIF

300億円56の1,2

9時30分

CMHL

原告

295億円16の1,2

9時50分

UMIF

原告

866億6132万円18の1,2

10時1分

原告

MGBBV

14億6900万円28の1,2

ヴィヴェンディ

14億6900万円57の1,2

10時42分MGBBV
10時48分

原告

UMTC

1144億1800万円21の1,2

11時16分

UMTC

ヴィヴェンディ

1144億1800万円58の1,2

ヴィヴェンディ
13時17分(NATIXIS)ヴィヴェンディ
時間不明


原告

32万円

UMO

2億7432万円

本件各口座のうち,UMIF名義及び原告名義の預金口座を除く5口座は,平成21年(2009年)4月16日から平成22年(2010年)4月30日までの間に解約された。


本件資金決済の結果,上記アの原告名義の預金口座には,295億円及び866億6132万円の合計1161億6132万円が入金される一方,14億6900万円,1144億1800万円及び32万円が出金されたため,その残高は2億7400万円となった。


本件借入れに係る返済等

原告は,平成21年(2009年)3月31日,UMIFに対して307億8030万円を送金し,そのうち300億円を本件借入れに係る元金の返済とし,7億8030万円を本件借入れに係る利息の返済とする経理処理をした。


本件各事業年度において,原告が損金の額に算入した支払利息(本件利息)の額,原告が本件借入れに基づき実際に支払った利息の額及び未払利息の残額は,次表のとおりである(乙10,11,32~34,71,72,79,80)。
本件利息の額

実際支払額

未払利息残額

平成20年12月期

10億4763万9069円

0円

10億4763万9069円

平成21年12月期

44億1081万6562円

47億7348万3229円

6億8497万2402円

平成22年12月期

39億0648万3229円

39億0648万3229円

6億8497万2402円

平成23年12月期

39億0648万3228円

39億2788万8616円

6億6356万7014円

平成24年12月期

38億1329万7033円

38億5233万6090円

6億2452万7957円



本件訴えの提起に係る経緯

第1事件の提起に至る経緯
原告は,平成20年12月期から平成22年12月期までの各事業年度の法人税について,別表1記載1~3の確定申告欄のとおり,青色の確定申告書を法定申告期限(いずれも法人税法75条の2第1項
の規定により1か月間延長されたもの。以下同じ。)までに提出した。麻布税務署長は,原告に対し,平成24年3月27日付けで,別表1記載1~3の更正等欄のとおり,平成20年12月期更正処分,平成21年12月期更正処分及び同賦課決定処分,平成22年12月期更正処分及び同賦課決定処分をした。

原告は,平成24年5月22日,国税不服審判所長に対し,上記
の更正処分等を不服として審査請求をした。
国税不服審判所長は,平成27年2月2日,上記

の審査請求を棄

却する旨の裁決をした。
原告は,平成27年7月31日,第1事件に係る訴えを提起した。

第2事件の提起に至る経緯等
原告は,平成23年12月期の法人税について,別表3の確定申告欄のとおり,青色の確定申告書を法定申告期限までに提出した。麻布税務署長は,原告に対し,平成29年2月24日付けで,別表3
の更正等欄のとおり,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
原告は,平成29年4月13日,国税不服審判所長に対し,上記


更正処分等を不服として審査請求をした。
原告は,平成29年10月31日,上記
の日から3か月を経過して

も裁決がない(行政事件訴訟法8条2項1号)として,第2事件に係る訴えを提起した。原告は,同年11月28日,
の審査請求を取り

下げた。
麻布税務署長は,前記

の各処分における所得金額に誤りがあり(な

お,本件の争点とは関係しない誤りである。),法人税及び過少申告加算税の各税額が過大であったことから,平成30年1月29日付けで,別表3の減額更正等欄のとおり,平成23年12月期の法人税に係
る減額再更正及び過少申告加算税の変更決定をした。
原告は,平成30年3月20日の第2事件第1回口頭弁論期日において,取消しを求める更正処分につき同年1月29日付け減額再更正後のもの(平成23年12月期更正処分)とし,取消しを求める賦課決定処分につき同日付け変更決定による変更後のもの(平成23年12月期賦
課決定処分)とする旨の訴えの変更をした。

第3事件の提起に至る経緯等
原告は,平成24年12月期の法人税について,別表5の確定申告欄のとおり,青色の確定申告書を法定申告期限までに提出した。麻布税務署長は,平成30年2月27日付けで,別表5の更正等欄のとおり,平成24年12月期更正処分及び同賦課決定処分をした。
原告は,平成30年4月17日,国税不服審判所長に対し,上記
の更正処分等を不服として審査請求をした。
原告は,平成30年10月15日,上記

の日から3か月を経過して

も裁決がない(行政事件訴訟法8条2項1号)として,第3事件に係る訴えを提起した。原告は,同年11月2日,

の審査請求を取り下

げた。
4
争点
本件の争点は本件各更正処分等の適法性であり,具体的には,法人税法132条1項の適用に関し,次の点が争われている。
法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものの該当性

5
原告の本件各事業年度における所得金額及び納付すべき法人税額
争点に関する当事者の主張の要旨
争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙8のとおりである。また,被告が
本件に関して主張する課税の根拠及び計算は別紙9のとおりであるが,上記争点に関する点を除き,原告はこれを争うことを明らかにしていない。第3

当裁判所の判断
当裁判所は,原告による本件借入れが行われる原因となった,ヴィヴェン
ディ・グループが設定した本件8つの目的及びこれを達成する手段としての本件組織再編取引等は,同グループ全体にとっても,また原告にとっても,経済的合理性を欠くものと認めることはできないから,本件借入れは法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものに該当するとはいえず,これに該当することを前提としてされた本件各更正処分等は違法であるので,原告の請求はいずれも理由があり認容すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。
1
認定事実
ヴィヴェンディ・グループにおける企業買収の経緯等

フランスに本社を置くヴィヴェンディは,タレント発掘からコンテンツ
の制作や配信に至るまでを手掛ける総合メディア・コンテンツ企業であり,ヴィヴェンディ・グループにおける究極の親会社であって,直接又は間接の子会社は70か国に所在する約1000社に及ぶ。同グループの事業は,音楽事業のほか,メディア事業,テレビ事業,映画事業などである。

ヴィヴェンディ・グループにおける音楽事業は,平成12年(2000
年)12月に行われたヴィヴェンディとカナダ法人であるシーグラムとの合併により開始された。すなわち,シーグラム・グループは,音楽事業を行うユニバーサル・ミュージック・グループをその傘下に有していたところ,さらに,平成10年(1998年)6月,オランダ法人であるフィリップス社から,ポリグラム・グループにおける親会社であるポリグラム・エヌ・ヴィ(PolyGramN.V.)を買収し,同グループをユニバーサル・ミュージック・グループに統合した。ポリグラム・グループは,ドイツ・グラモフォンを有していたシーメンス社と,オランダ・デッカ・ディストリビ
ューションを有していたフィリップス社が昭和37年(1962年)に立ち上げた合弁事業に起源を有する,当時世界最大の音楽会社グループであり,同グループとの統合によって,ユニバーサル・ミュージック・グループは世界最大の音楽会社グループとなった。
こうして,ヴィヴェンディ・グループは,ヴィヴェンディとシーグラム
との合併により,上記のポリグラム・グループとの統合後のユニバーサル・ミュージック・グループを取り込むこととなり,その音楽事業は,後のUMG(UniversalMusicGroup,Inc.)であるユニバーサル・ミュージック・インベストメンツ・インク(UniversalMusicInvestmentsInc.)を最上位とする子会社群(UMG部門)が担うこととなった。日本法人で
あるUMKK(ユニバーサルミュージック株式会社)は,ユニバーサル・ミュージック・グループのレコード音楽会社であり,UMPKK(株式会社ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング)はその子会社である音楽出版会社であって,いずれも上記合併を機にヴィヴェンディ・グループに属することとなったものである。


ヴィヴェンディ・グループは,その後,さらに次の企業買収を実施し
た。
平成18年(2006年)9月から平成19年(2007年)5月にかけて行われた米国法人であるBMG・ミュージック・パブリッシング(MGBMusicPublishing)の買収では,20か国以上に所在する被買収会社及びその子会社をUMG部門の子会社が取得した。これにより,被買収会社の子会社であった日本法人のMGBKK(株式会社ユニバーサル・ミュージ
ック・MGB・パブリッシング)は,ポリグラムの完全子会社であるMGBBV(UniversalMusicPublishingMGBHoldingB.V.)の完全子会社となった。
また,平成19年(2007年)9月に行われた英国法人であるV2(V2MusicGroupLimited)の買収では,同社をポリグラムの完全子会社
であるCMH(CentenaryMusicHoldingLimited)の完全子会社とした。これにより,V2の完全子会社であるV2J(株式会社ヴィツーレコズ・ジャパン)も,CMHの間接的な完全子会社となった。
なお,上記イのようなポリグラム・グループとの統合の経緯から,ユニバーサル・ミュージック・グループにおいては,オランダの関連会社が,
米国以外の全ての外国で設立された会社の株主となっており,企業買収等の資金を借入れにより調達した結果,平成17年(2005年)及び平成18年(2006年)に金融負債が急激に増加した。

以上を含む各買収の結果,ヴィヴェンディ・グループのUMG部門の子会社数は増加し,平成18年(2006年)には374社であったのが平成19年(2007年)には595社となり,また,買収後のグループ内の資本関係も複雑なものとなった。そのため,ヴィヴェンディ・グループでは,法人数を減らすとともに,複雑化した資本関係を整理するための組織再編が進められ,平成24年(2012年)にはUMG部門の子会社数
は506社まで減少した。その後,同年におけるEMIレコーズの買収により669社に増加したものの,平成27年(2015年)には再び568社まで減少している。
また,平成16年(2004年)には,ヴィヴェンディとUMKKとの間に持株会社が21階層存在していたが,上記のような組織再編が進められた結果,平成19年(2007年)には11階層となり,本件組織再編取引が行われる前の平成20年(2008年)9月には9階層となってい
た。その後,平成27年(2015年)には,4階層まで減少している。ヴィヴェンディ・グループのUMG部門において以上のような組織再編を行う際に採られていた基本方針は,①法人格を持つ組織の数を減らすこと,②1つの国に1つの持株会社(統括会社)を設置し,その傘下に事業会社等を所属させること,③各国の会社に適切なレベルの負債を配分する
(各国のグループ内で資本と負債のバランスを適正にする)ことであった。

ヴィヴェンディ・グループのUMG部門では,北米及び南米における音楽事業については米国の関連会社が業務管理を統括しているのに対し,こ
れらを除く地域における音楽事業については,英国法人であるUMGI(UniversalMusicGroupInternationalLimited)が業務管理を統括しており,したがって,本件各日本法人(UMKK,MGBKK,V2J)に対する事業遂行上の指揮監督も,UMGIが行っていた(なお,UMGIは同じく英国法人であるCMHの間接的な完全子会社であるが,CMHは
持株会社であり自ら業務管理を行わないため,資本関係では同社より下位にあるUMGIが業務管理の統括会社となっている。)。
(以上ア~オにつき,前提事実⑴,甲73,76,96,乙15,61)ヴィヴェンディ・グループにおける資金管理

ヴィヴェンディ・グループでは,資金集中管理制度(CMS)を採用しており,外部の金融機関からの借入れ等の金融取引は一括してヴィヴェンディが実行し,ヴィヴェンディ・グループ法人が資金調達等をする場合は,ヴィヴェンディ・グループにおけるCMSの統括会社であるUMGT(UniversalMusicGroupTreasuryS.A.S.)又はUMIF(UMIFinanceS.A.S.)との間で金融取引を実行することとされていた。これは,ヴィヴェンディ・グループ法人が個別に外部の金融機関等と取引を行い,資金調達をしようとすれば,与信審査も法人ごとに行われることとなり,調達で
きる資金にも各法人の信用に応じて限りがあるが,ヴィヴェンディが一括して必要な資金を調達すれば,ヴィヴェンディの信用力(その背景には,ヴィヴェンディ・グループ全体の信用力がある。)を利用して,大規模な資金調達をすることができるとともに,資金調達をしようとする当該法人の与信審査を経ることなく機動的に必要な資金調達を行うことができるな
ど,法人ごとに資金調達をするよりもメリットが大きいためであった。また,CMSにより,グループ法人の余剰資金につき,UMGT等を通じてヴィヴェンディに集中させることによって,より有利な資金運用を行うというメリットもあった。(甲22,73,76,乙51,61)

一般に,企業グループにおいて導入されるCMSでは,プーリングサービス(グループ内の統括会社の銀行口座とグループ法人の銀行口座の間で,資金移動を自動的に行うこと),定期性貸借(返済期限が定められた貸借について,グループ法人が申請して統括会社が承認する流れを経て,グループ内で管理すること),ネッティング(グループ法人間の支払を,
銀行を通さず統括会社・グループ法人間の貸借に付け替えて清算すること)などがあるとされている。また,CMSを導入する効果としては,①所用資金量の低減に関する効果,②資金調達のコストの低減,資金運用の合理化,振込手数料の削減など,資金効率の向上に関する効果,③資金関連の事務処理工数の軽減,連結決算業務の合理化など,財務・経理業務の
合理化に関する効果,④財務リスクの集中管理,運営の標準化による業務や品質の向上など,リスク管理の高度化に関する効果があるとされている。
これらのうち,上記①に係る所用資金量の低減の効果とは,CMSを導入することで,グループ法人間における資金余剰と資金不足とを相殺して,グループ全体の所用資金量を低減させる効果であるとされ,上記②に係る資金運用の合理化の効果とは,グループ法人の余剰資金を集中さ
せることで,より有利な資金運用を行うことが可能になる効果であるとされている。

(以上につき,甲77)

UMKKは,UMGTとの間で,平成18年(2006年)1月13日,本件CMS合意をし,UMGTが統括会社として運営するヴィヴェンディ・グループのCMSに参加した。本件CMS合意で確認又は合意され
た主な内容は,以下の

とおりである。(甲78)

UMGTは,契約に基づくプーリングサービスを構築し,ヴィヴェンディ・グループ法人にこれを提供しているところ,UMKKは,これにより,その余剰資金をUMGTにおける当座勘定に預け入れ,又は事業活動のために必要な資金を短期貸付けによりUMGTから借り入れる
ことができる。
UMGTは,ヴィヴェンディとの間で与信協定を締結しており,これに基づきヴィヴェンディから借り入れた資金を,UMKKが借り入れることができる。
上記の預入れや借入れには,UMGTが用いる指標金利にヴィヴェ
ンディが定めるスプレッドを上乗せした率の利息を付す。
UMG部門の子会社間でネッティングを実行する。

本件組織再編取引等の前において,UMKKはUMGTに対し,本件CMS合意に基づいて余剰資金363億3700万円を預け入れ,UMGT
はヴィヴェンディに対し,同額を短期関係会社勘定(短期貸付け)により貸し付け,ヴィヴェンディは同額を外部の金融機関に預金していた。ヴィヴェンディは,ユーロ建てで連結計算書類を作成しており,外貨建ての金融資産及び負債は,ユーロに換算して連結貸借対照表に計上していたところ,為替レートの変動により,連結貸借対照表に計上する外貨建ての金融資産の価値が目減りし,又は外貨建ての負債が増加するリスク(貸借対照表リスク)をヘッジするため,為替ヘッジを行うポリシー
(ヘッジポリシー)を有していた。そこで,ヴィヴェンディは,上記363億3700万円の預金についても,ヘッジポリシーに基づき,これに相当する額のユーロと交換し,将来の一定の時点(取引の満期日)において反対の交換をすることを約する通貨スワップ取引(本件ユーロ・円通貨スワップ取引)をしていた。

一般に,通貨スワップ取引においては,対象となる通貨の金利差を調整するために,利率の高い通貨を受け取った当事者は,利率の低い通貨を受け取った相手方に発生した費用を支払わなければならないところ,本件ユーロ・円通貨スワップ取引においては,円の金利が年0.97%,ユーロの金利が年4.33%と設定されていたことから,ヴィヴェンデ
ィは,円とユーロの上記金利差に基づく手数料(年間約800万ユーロ)を当該金融機関に対して支払うべきこととなり,余剰資金につきユーロの高い金利により得られる利益を享受することができなかった(甲22,73,76,165)。

原告は,本件設立後,UMKKに係る本件CMS合意と同様の内容により,ヴィヴェンディ・グループのCMSに参加した(甲73,76)。

なお,ヴィヴェンディ・グループの英国法人であるUMO(UniversalMusicOperationsLimited)についても,平成20年(2008年)当時,約2億ポンドの余剰資金が生じており,同余剰資金は上記エと同様に
UMGTを通じてヴィヴェンディに貸し付けられ,外部の金融機関にポンド建てで預金されていたため,ヘッジポリシーに従い,本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引が行われていた。その当時,ポンドとユーロの金利差は僅かであったため,上記エのような大きな手数料負担はなかったものの,将来,ユーロの金利が上昇するなどして,両通貨の金利差が生じる可能性はあった(甲76)。
UMKK及び原告の財務状況


UMKKの財務状況
UMKKの各事業年度における財務状況の概要は,以下の


おりである。
平成18年12月期
平成18年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高が約209億円,利益剰余金が約141億円計上されていた。また,同期の損益計算書においては,売上高が約579億円,営業利益が約74億円,支払利息が約150万円,経常利益が約71億円,税引前純利益が約73億円計上されていた(乙12)。

平成19年12月期
平成19年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高が約251億円,利益剰余金が約183億円計上されていた。また,同期の損益計算書においては,売上高が約650億円,営業利益が約75億円,支払利息が約460万円,経常利益が約73億円,
税引前純利益が約73億円計上されていた(乙13)。
平成20年12月期
平成20年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高が約315億円,利益剰余金が約247億円計上されていた。また,同期の損益計算書においては,売上高が約656億円,営業
利益が約111億円,支払利息が約110万円,経常利益が約111億円,税引前純利益が約111億円計上されていた(乙14)。

原告の財務状況
原告の各事業年度における財務状況の概要は,以下の

とおりで

ある。
平成20年12月期
原告の平成20年12月期(本件設立の日である平成20年10月7日から同年12月31日まで)の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高が約284億円,利益剰余金がマイナス約11億円計上されていた(乙9)。
平成21年12月期

原告の平成21年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高がマイナス約523億円,利益剰余金がマイナス約818億円計上されていた。また,原告の同期の損益計算書においては,売上高が約568億円,営業利益が約78億円,支払利息が約44億円,経常利益が約31億円,税引前純損失が約1044億円計上されていた
が,仮に本件合併に伴うUMKK株式の消却による抱合い株式消滅損失約1076億円を除くとすると,約32億円の税引前純利益が計上されることとなる(乙10)。
平成22年12月期
原告の平成22年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株
主資本)の残高がマイナス約511億円,利益剰余金がマイナス約806億円計上されていた。また,原告の同期の損益計算書においては,売上高が約518億円,営業利益が約65億円,支払利息が約39億円,経常利益が約22億円,税引前純利益が約20億円計上されていた(乙11)。

平成23年12月期
原告の平成23年12月期の貸借対照表においては,純資産の部(株主資本)の残高がマイナス約505億円,利益剰余金がマイナス約800億円計上されていた。また,原告の同期の損益計算書においては,売上高が約514億円,営業利益が約54億円,支払利息が約39億円,経常利益が約13億円,税引前純利益が約13億円計上されていた(乙72)。

オランダ法人の財務状況
ヴィヴェンディ・グループのオランダ法人であるUIMBV(UniversalInternationalMusicB.V.)及びポリグラム(PolyGramB.V.)の財務状況の概要は,以下のア及びイのとおりである。

UIMBVの財務状況
UIMBVの平成19年(2007年)12月期から平成21年(2009年)12月期までの貸借対照表及び損益計算書から認められる財務状況は,以下の表のとおりである(甲168~170)。なお,以下の表における比較とは,平成20年12月期と平成19年12月期との比較である(後記イ,ウの各表においても同じ。)。

(単位:1000ユーロ)
19年12月期

20年12月期

21年12月期

比較

長期負債

1,831,345

1,876,793

610,095

+45,448

流動負債

583,830

878,640

1,050,904

+294,810

売上高

315,312

363,389

274,971

+48,077

10,383

14,700

-1,419

+4,317

53,848

+53,848

90,938

144,655

87,934

+53,717

税引前損益

-74,650

-60,782

-17,355

+13,868

純損益

-80,509

-70,650

-17,355

+9,859

営業利益
受取配当金
支払利息


ポリグラムの財務状況
ポリグラムの平成19年(2007年)12月期から平成21年(2009年)12月期までの貸借対照表及び損益計算書から認められる財務状況は,以下の表のとおりである(甲171~173)。

(単位:1000ユーロ)
19年12月期

20年12月期

21年12月期

比較

長期負債

1,246,313

1,092,857

750,501

-153,456

流動負債

1,796

1,796

1,798

1,237

99,487

11,430

+98,250

79,558

67,148

47,028

-12,410

税引前損益

-141,228

39,501

-16,612

+180,729

純損益

-155,789

48,479

-16,612

+204,268

売上高
受取配当金
支払利息

UMKK及び原告の本件合併に係る対外対応等

UMKKが,本件合併を公表するに当たり平成20年11月18日付けで作成した想定問答集には,要旨次のとおり記載されていた(乙24)。本件合併は,ユニバーサル・ミュージック・グループ内の組織再編に伴うもので,資本関係に一切変更はなく,従来どおり同グループ100パーセント出資の日本法人であるという位置付けは変わらない。原告の事業内容や従業員数については,UMKKの全ての事業と従
業員を引き継ぐ。事業内容もUMKKと同じである。
本件合併後の新しい経営組織は,従来のUMKKと全く同じであ
る。

単に社名及び組織の変更を行うだけであり,事業運営においては全く変わらない。
原告の意思決定機関としては,取締役会に相当する組織としてマネジメント・コミッティーを置く。現在のUMKKの取締役は,原告のマネジメント・コミッティーのメンバーとなる。
UMKKの代表取締役であった者が原告の会長兼CEOとな
り,合同会社の職務執行者として株式会社の代表取締役に相当する職務の執行を行う。
イ原告が,平成21年1月5日付けで作成した合併,及び役員人事に関するお知らせと題する文書には,要旨次のとおり記載されていた(乙25)。
原告は平成21年1月1日付けでUMKKと合併し,UMKKの全ての権利義務を承継した。
本件合併はユニバーサル・ミュージック・グループ内の組織再編に
伴うものであり,原告は同グループの100パーセント出資による日本法人である位置付けに変わりはなく,事業内容も従来どおりである。本件合併に伴い,役員の役職名が変更になり,例えば,UMKKの代表取締役会長兼CEOが原告の最高経営責任者兼会長となっ
た。

デット・プッシュ・ダウンについて
いわゆるデット・プッシュ・ダウン(debtpushdown)とは,一般に,親会社が,借入金の返済に係る経済的負担を,企業グループの資本関係の下流にある子会社に負担させることをいう。すなわち,企業グループは,事業に必要な資金を外部からの出資又は負債により調達し,調達した資金を企業グ
ループ内の各社の資金需要に応じて分配するところ,外部から資金を借り入れた親会社がこれを子会社に出資する場合には子会社は負債の経済的負担を負わないのに対し,親会社が外部から借り入れた資金を子会社に貸し付ける場合には,負債の経済的負担が子会社に移転することになる。財務上の観点からは,規模が大きく多額の利益を計上している事業会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的であり,税務上の観点からは,税率の高い国で多額の利益を計上し多額の税金を負担している会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的であるとされている。(乙62)
米国税制との関係
米国税制上,米国法人の子会社が被支配外国法人(CFC)とされた場合は,当該米国法人に対していわゆるタックスヘイブン対策税制の適用があ
り,当該被支配外国法人の所得が当該米国法人の課税対象所得に加算されることとされていた。他方,被支配外国法人の子会社が一定の要件を満たした場合には,米国税制上のいわゆるチェック・ザ・ボックス規則により,法人課税(当該法人に対して課税される。)と,構成員課税(当該法人の構成員〔社員等〕に対して課税される。)を選択できることとされており,被支配
外国法人の子会社が構成員課税を選択した場合には,当該子会社(パス・スルー・エンティティ)間における売買や利息の支払等においては,当該被支配外国法人には所得が生じていないものとみなされ,したがって,当該米国法人の課税対象所得にも合算されないこととされていた。(甲162,163)

ヴィヴェンディ・グループにおいて,オランダ法人であるUIMBVは米国法人であるUMGの被支配外国法人とされていたところ,UIMBVの子会社(オランダ法人,英国法人等)は,本件各日本法人を除き,いずれも構成員課税を選択したことにより,当該子会社間での利息の支払等はUIMBVの所得とみなされていなかった。これに対し,日本の株式会社は,米国税
制上,チェック・ザ・ボックス規則の適用対象外となっていたことから,構成員課税を選択することができなかった。(甲76,乙61)
2
本件8つの目的及び本件再編成等スキームについて
本件8つの目的の有無について

ヴィヴェンディ・グループにおいて平成20年(2008年)7月23日付けで作成したユニバーサル・ミュージック・グループ・インターナショナルジャパンリストラクチャリング〔日本組織再編〕と題する
書面(乙15)には,本件取引の目的として,次のとおり記載されている。

オランダの借入金のレベルを減少させるための資金を調達すること。

日本における会社関係を1つの会社の傘下にまとめること。

日本における音楽出版会社を1つの法人にまとめること。

日本から円余剰資金を移転させ,ヴィヴェンディが為替リスクのヘッジをすることなく,ユーロ市場での投資活動を可能ならしめること。


日本の資本構造に借入金を発生させること。

(配当制限のある英国から余剰資金を移転させ,また,その資本構造を英国の役員による経営管理体制に適合させるため)日本のオペレーションを英国管轄下に置くこと。

米国税制の観点から柔軟性を有する日本の企業体を活用すること。

現在検討中で将来起こり得る可能性のある第三者の日本の音楽企業の買収と,ユニバーサル・ミュージック・グループの音楽企業との結合に対応すること(交渉の完了とデューディリジェンスが必要である。)。


これらは,原告の主張において,ヴィヴェンディ・グループが本件再編等スキームを策定するに当たり設定したとする本件8つの目的(目的①~⑧)にそれぞれ相当する。
そして,ヴィヴェンディの税務部副部長であるAが作成した陳述書(甲76,96。A陳述書)には,本件再編成等スキームを策定するに当たり本件8つの目的が設定されており,同スキームに基づく本件組織再編取引等は本件8つの目的を同時に達成することを企図したものである旨の説明が記載されている。また,東京国税局調査第一部の職員らにより平成23年2月8日に行われた調査におけるヴィヴェンディ又はヴィヴェンディ・グループの財務担当者及び税務担当者(Aほか2名)による供述(乙61)においても,同様の説明がされている。


そこで,A陳述書等の上記説明部分の信用性を検討するに当たり,本
件8つの目的を基礎付ける客観的事情が,本件組織再編取引等の前に存在していたか否かについて検討する。
日本の関連会社に係る資本関係の整理の問題
ヴィヴェンディ・グループは,平成12年(2000年)にシーグラムと合併し,ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG部門)を擁することになって以降,次々に企業買収を繰り返して複数の音楽会社グループをその傘下に組み入れ,その結果,UMG部門の子会社数は増加し,グループ内の資本関係も複雑化したため,法人数を減らすとともに,資本関係を整理するための組織再編が進められてきた(認定事実

本件各日本法人について見ると,①上記のシーグラムとの合併より前からユニバーサル・ミュージック・グループに属していたUMKKは,オランダ法人であるUMTCの完全子会社であり,②BMG・ミュージック・パブリッシングの買収によりUMG部門に属することとなっ
たMGBKKは,オランダ法人であるMGBBVの完全子会社であり,③V2の買収によりUMG部門に属することとなったV2Jは,英国法人であるV2の完全子会社(英国法人の持株会社であるCMHの間接的な完全子会社)であったため,本件各日本法人はそれぞれ異なる親会社と資本関係を有することとなっていた。しかも,UMKKの下にも,音楽出版会社であるUMPKKが存在していたため,上記のとおりMGBKKが加わったことによって,日本という1つの国に音楽出版会社が2つ存在する状態となっていた。(
また,ヴィヴェンディ・グループのUMG部門では,北米及び南米を除く地域における音楽事業については英国法人であるUMGIが業務管理を統括しており,本件各日本法人に対する事業遂行上の指揮監督も
UMGIが行っていたところ

,上記のとおり,日本法

人であるUMKK及びMGBKKは,いずれもオランダ法人の子会社であり,英国法人と直接の資本関係を有していなかった。
以上のようなヴィヴェンディ・グループにおける企業買収の経緯や買収後の各社の資本関係等の状況に照らせば,日本の関係会社について,異なる親会社の下にあった本件各日本法人の資本関係を再編成するとともに,2つの音楽出版会社を1つの法人に統合し,さらに,オランダ法人の子会社であった日本法人を英国法人の資本下に置くことによって事業遂行上の指揮監督関係と資本関係を一致させることを目的としていたとするA陳述書等における説明は,これを裏付ける客観的事情を伴
うものであったと認められる。
これらは,本件8つの目的のうち,目的②,目的③及び目的⑥(前半)に相当する。
グループ内における負債の経済的負担の配分の問題
本件組織再編取引等の前におけるヴィヴェンディ・グループ法人の
財務状況について見ると,ユニバーサル・ミュージック・グループにおける企業買収等のための資金の借入れにより,オランダ法人の負債が平成17年(2005年)及び平成18年(2006年)に急激に増加し

ウ),平成19年(2007年)におけるオラン

ダ法人の企業間負債は34億ユーロを超え,そのうち約31億ユーロはUIMBV又はポリグラムのUMGT又はUMIFに対する負債であった(甲76の別紙3)。また,UIMBV及びポリグラムにおいては,支払利息が営業利益を上回っている状況であった(認定事実)。
これに対し,日本法人であるUMKKは,平成18年12月期から平成20年12月期までの営業利益が約74~111億円であるのに
対し,支払利息は約110~460万円にとどまり,営業利益に対する支払利息の割合が極めて小さい状況であった(認定事実

ア)。

このようなヴィヴェンディ・グループ法人の財務状況に照らせば,支払利息が営業利益を超え,負債の経済的負担が過度に重くなっているオランダ法人の負債を減少させ,営業利益に対する支払利息の割合が極めて小さい日本法人に負債を負わせることを目的としていたとするA陳述書等における説明は,これを裏付ける客観的事情を伴うものであったと認められる。
これらは,本件8つの目的のうち,目的①及び目的⑤に相当する。為替リスクのヘッジに係るコストの問題

日本法人であるUMKKには,本件組織再編取引等の前において,余剰資金363億3700万円が生じており,同余剰資金はUMGTを通じてヴィヴェンディに貸し付けられ,外部の金融機関に円建てで預金されていたところ,ヴィヴェンディ・グループのヘッジポリシーに従い行われていた本件ユーロ・円通貨スワップ取引では,円の低い
金利(年0.97%)とユーロの高い金利(年4.33%)の金利差によって生じる手数料として年間約800万ユーロを当該金融機関に対して支払うべきこととなり,余剰資金につきユーロの高い金利により得られる利益を享受することができなかった(
また,英国法人であるUMOについても,本件組織再編取引等の前において,約2億ポンドの余剰資金が生じており,ヴィヴェンディのポンド建ての預金について本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引が行われていたところ,将来,ユーロの金利が上昇するなどして両通貨の金利差が生じた場合には,上記のような手数料の負担が生じる可能性があった(

)。

以上のようなヴィヴェンディ・グループにおける外貨建ての余剰資金の取扱いの実情に照らせば,UMKK及びUMOの余剰資金を解消し,本件ユーロ・円通貨スワップ取引及び本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を終了させることを目的としていたとするA陳述書等における説明は,これを裏付ける客観的事情を伴うものであったと認められる。

これらは,本件8つの目的のうち,目的④及び目的⑥(後半)に相当する。
資本関係の整理に関する統括会社の問題
日本の関連会社については資本関係を整理する必
要があったところ,ヴィヴェンディ・グループにおいては,世界各国
のグループ法人に係る組織再編を行うに当たり,1つの国に1つの持株会社(統括会社)を設置し,その傘下に事業会社等を所属させるという基本的方針を採って
そして,日本に設置する統括会社の組織形態を株式会社でなく合同会社とすることによって,UIMBVの他の子会社と同様に米国税制
上のチェック・ザ・ボックス規則が適用され,構成員課税を選択できることとなり,子会社間における売買や利息の支払等についてUIMBVには所得が生じていないとみなされ,その親会社である米国法人UMGの課税対象所得に合算されないこととな

)。

また,上記統括会社を合同会社とした場合には,合同会社に株主総会等の設置義務がなく,社員間の合意で業務執行を行い得るなど,より機動的な事業運営が可能となることから,企業買収等の意思決定や
その執行に当たってもより機動的に行うことができることとなる。以上のような米国税制における取扱いや合同会社の特性等に照らせば,米国税制上構成員課税を選択できるようにするとともに,将来の企業買収に備えて機動的な事業運営ができるようにすることを目的として原告を合同会社とした旨のA陳述書等における説明は,これを裏
付ける客観的事情を伴うものであったと認められる。
これらは,本件8つの目的のうち,目的⑦及び目的⑧に相当する。ウ
本件8つの目的の有無に関する小括
以上によれば,本件組織再編取引等の前において,ヴィヴェンディ・グ
ループでは,本件8つの目的のいずれについても,これを裏付ける客観的事情が存在していたと認めることができ,これらに照らせば,本件再編成等スキームを策定するに当たり本件8つの目的が設定されており,同スキームに基づく本件組織再編取引等は本件8つの目的を同時に達成することを企図したものである旨のAの陳述書等の説明部分は,信用することがで
きる。
したがって,本件組織再編取引等の当時,その目的として本件8つの目的が存在していたと認めるのが相当である。
本件再編成等スキームについて
そこで,次に,本件8つの目的を達成するための手段として計画されたと
される本件再編成等スキーム及びこれに基づく本件組織再編取引等が,上記の目的とどのような関係にあるかについて検討する。

本件再編成等スキーム及びこれに基づく本件組織再編取引等の概要は,
英国法人であるCMHの完全子会社としてオランダ法人であるCMHLを設立し,CMHLの完全子会社として,日本法人(合同会社)である原告を設立した(本件設立)。本件設立後,原告はCMHLから295億円の追加出資を受けた(本件増資)が,その原資は,ヴィヴェンディが外部の金融機関に預金していたUMOの余剰資金につき,本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を終了させて得た約1億9995万ポンドを,UMGTを介してUMOに戻した上,UMOから
CMHに出資し,CMHがこれをユーロに両替した上でCMHLに出資し,CMHLがこれを円に両替した上で原告に出資した(前提事実。
原告は,その子会社であるUMPGK(ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社)を設立した(本件UMPGK設立)。
UMIFは,ヴィヴェンディから借り入れた866億6132万円を原告に対して貸し付け(本件貸付け),これにより,原告は,UMIFに対して866億6132万円の借入金債務を負う状態となった。本件貸付けは,原告による本件各日本法人の株式購入の資金とすることを目的としたものであり,原告は,この貸付金と本件増資による出
資金を原資として,1144億1800万円でUMKKの全株式を取得し(本件買収),14億6900万円でMGBKKの全株式を取得した(本件MGBKK買収)。そのほか,原告は,32万円でV2Jの全株式を取得した(本件V2J買収)。
本件貸付けのうち貸付金300億円に係る原資は,ヴィヴェンディ
が外部の金融機関に預金していたUMKKの余剰資金につき,本件ユーロ・円通貨スワップ取引を終了させて得た300億円を,UMGTを介して本件貸付けに係る貸主であるUMIFに送金したものである(前提
本件買収の代金は,買主である原告から売主であるUMTCに支払われた後,ユーロに両替された上で,UMTCからオランダ法人であるUIMBV及びポリグラムに貸し付けられ,これらの法人はこれを原資としてUMGT又はUMIFに対する借入金の返済をし,UMGT及びUMIFは返済を受けた資金を(UMIFについてはUMGTを介して)
本件MGBKK買収の代金は,買主である原告から売主であるMG
BBVに支払われた後,ユーロに両替された上で,オランダ法人であるUIMBVに貸し付けられ,UIMBVはこれを原資としてUMGTに対する借入金の返済をし,UMGTは返済を受けた資金をヴィヴェンディに送金した



以上によりUMGT又はUMIFが返済を受けてヴィヴェンディに送金した金額は,合計約9億5875万ユーロであり,UIMBV及びポリグラムがUMGT又はUMIFに対して負っていた借入金債務の約3割に相当する。
原告は,UMKKを吸収合併し,UMKKはこれにより消滅した
(本件合併)。

原告は,UMKKが保有していた307億8030万円をもって,本件借入れに係る債務の一部(元金300億円及び利息)を返済し,UMIFは,その返済を受けた資金をもってヴィヴェンディに対する債務を返済した。これにより,原告のUMIFに対する債務は566億6132万円(元金)となった。

UMPGKは,UMPKK及びMGBKKを吸収合併し,これら2社は消滅した(本件UMPGK合併)。

以上を本件8つの目的と対比してみると,次のとおりである。
日本の関連会社に係る資本関係の整理に関し
本件設立によって原告を設立し,次いで,本件買収,本件MGBKK買収及び本件V2J買収によって本件各日本法人を全て原告の完全
子会社とすることで,日本の関連会社を1つの統括会社(原告)の下にまとめることができた(目的②)。また,原告がUMKKを吸収合併し,原告の子会社として設立されたUMPGKがUMPKK及びMGBKKを吸収合併したことにより,日本の関連会社の数を本件組織再編取引等の前よりも減少させることができ(法人数を減少させるこ
とも目的②に含まれるものと解される。),かつ,日本において2社存在していた音楽出版会社を1つの法人に統合することができた(目的③)。さらに,原告の親会社であるCMHLを,英国法人の持株会社であるCMHの完全子会社として設立したことにより,原告をはじめとする全ての日本法人が英国法人の資本下に置かれるととなり,日
本の関連会社について事業遂行上の指揮監督関係と資本関係を一致させることができた(目的⑥〔前半〕)。
グループ内における負債の経済的負担の配分に関し
本件買収及び本件MGBKK買収の代金として原告からUMTC又はMGBBVに支払われた資金がオランダ法人であるポリグラム又は
UIMBVに貸し付けられたことにより,これらのオランダ法人がUMGT又はUMIFに対し負っていた借入金債務の約3割に相当する合計約9億5875万ユーロが返済された(目的①)。また,原告が本件買収等のため本件借入れをしたことにより,日本法人の資本構造に負債が導入された(目的⑤)。

為替リスクのヘッジに係るコストに関し
ヴィヴェンディが外部の金融機関に預金していたUMOの余剰資金につき,本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を終了して本件増資の原資に充て,また,UMKKの余剰資金につき,本件ユーロ・円通貨スワップ取引を終了して,本件貸付けのうち貸付金300億円に係る原資に充てたことにより,これらのポンド建て及び円建ての余剰資金が解消され,ヴィヴェンディが外貨建ての余剰資金に係る為替リスク
のヘッジをすることなくユーロ市場での投資活動をすることが可能となった(目的④,目的⑥〔後半〕)。資本関係の整理に関する統括会社に関し
原告を合同会社として設立したことにより,米国税制上のチェッ
ク・ボックス規則が適用され,構成員課税を選択できることとなっ
た。また,合同会社における事業経営の機動性を将来の事業買収等にも活かせることとなった。(目的⑦及び目的⑧)ウ
本件再編成等スキームに関する小括
以上によれば,本件再編成等スキームに基づく本件組織再編取引等は,本件8つの目的を全て達成することができるものであったことが認
められる(なお,本件8つの目的及びこれを達成するための本件組織再編取引等が法人税法132条1項の適用との関係で経済的合理性を有するものと評価されるか否かについては,さらに以下において検討する。)。
3
争点⑴(法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものの該当性)について⑴

判断枠組み

これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものの意義法人税法132条1項1号は,税務署長は,内国法人である同族会社に係る法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨を定めている。これは,同族会社が少数の株主又は社員によって支配されているため,同族会社の法人税の税負担を減少させる行為や計算を行うことが容易であることに鑑み,同族会社と非同族会社との間の税負担の公平を維持するため,同族会社の法人税の負担を不当に減少させる結果とな
ると認められる行為又は計算が行われた場合に,これを正常な行為又は計算に引き直して当該同族会社に係る法人税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものと解される。このような同号の趣旨に照らせば,当該同族会社の行為又は計算が,同項柱書にいうこれを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものに該当するか否かは,専ら経済的,実質的見地において,当該行為又は計算が純粋経済人として不自然,不合理なものと認められるか否か,すなわち経済的合理性を欠くか否かという客観的,合理的基準に従って判断すべきものと解される。
利益を産み出し,これを出資者である株主や社員に対して還元する
ことを究極の目的とする会社にあっては,事業の目的に沿った種々の経済活動を遂行するに当たり,業務の管理・遂行上,財務上又は税務上などの様々な観点から,利益を最大化し得る方法を法令の許容する範囲内で自由に選択することができるところ,仮に,税務署長が法人税法132条1項の適用に当たり,会社の経営判断の当否や,当該行為又は計算
に係る経済的合理性の高低をもって不当か否かを判断することができるとすれば,課税要件の明確性や予測可能性を害し,会社による適法な経済活動を萎縮させるおそれが生じるといわざるを得ない。したがって,当該行為又は計算が当該会社にとって相応の経済的合理性を有する方法であると認められる限りは,他にこれと同等か,より経済的合理性が高いといえる方法が想定される場合であっても,同項の適用上不当と評価されるべきものではない。
そして,同族会社にあっては,自らが同族会社であることの特性を活かして経済活動を行うことは,ごく自然な事柄であって,それ自体が不合理であるとはいえないから,同族会社が,自らが同族会社でなければなし得ないような行為や計算を行ったとしても,そのことをもって直ちに,同族会社と非同族会社との間の税負担の公平が害されることとは
ならない。
以上を踏まえると,同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かを判断するに当たっては,当該行為又は計算に係る諸事情や当該同族会社に係る諸事情等を総合的に考慮した上で,法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益
がおよそないといえるか,あるいは,当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかなどの観点から検討すべきものである。イ
経済的合理性の有無を判断する対象
対象となる法人

法人税法132条1項は,次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,その法人に係る法人税の課税標準等を計算することができる旨規定している。
このような同項の文言によれば,その法人とは,法人税につき更正又は決定を受ける法人(更正対象法人)をいうものであると解される。本件においては,本件各更正処分を受けた法人である原告がこれに該当する。
対象となる行為又は計算
法人税法132条1項は,税務署長は,同項各号が定める法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,その法人に係る法人税の課税標準等を計算することができる旨定めている。このような同項の文言によれば,経済的合理性の有無を判
断する対象となる行為又は計算は,法人税の負担を減少させる結果を直接生じさせる行為又は計算(直接起因行為)であると解するのが相当である。
これを本件についてみると,本件各事業年度における原告の法人税額を減少させる結果を直接生じさせた行為(直接起因行為)は,本件借
入れであり,原告は,本件借入れに基づきUMIFに対して支払った本件利息の額を本件各事業年度における損金の額に算入したために,課税対象所得が減少し,その結果法人税の額が減少したものである(前提事実
)。
以上によれば,本件において,法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものの該当性を判断するに当たっては,原告による本件借入れを対象として,その経済的合理性の有無を判断するのが相当である。
被告の主張について

この点,被告は,①経済的合理性の有無を判断する対象となる法人は,更正対象法人に限られるものではなく,更正対象法人と経済的,実質的に一体といえる法人も含まれ,本件ではUMKKがこれに該当する,②直接起因行為を含む複数の取引が積み重ねられることにより法人税の負担を不当に減少させる結果を生じさせている場合には,そのような複数の行為を一体として否認することができ,本件では,本件一連の行為(本件設立,本件増資,本件借入れ,本件買収及び本件合併)又はそのうち本件設立を除いた行為について否認することができる旨主張する。被告のこれらの主張は,本件一連の行為の前にはUMKKは借入金債務を負担していなかったのに,本件一連の行為の後にはUMKKと実質的に一体である原告が本件借入れに係る債務を負担することとなった
から,原告ないしUMKKに係る本件一連の行為(又はそのうち本件設立を除いた行為)を否認することができるという趣旨をいうものと解される。
しかしながら,被告の上記主張における解釈は,法人税法132条1項の明文に反するものであって,採用することができない。また,本件
借入れが本件一連の行為の一環としてされたものであることを考慮しても,法人税の負担を減少させたのは本件借入れによるものであり,本件設立,本件増資,本件買収及び本件合併の各行為は法人税の負担の減少とは無関係であるから,これらの行為について同項による否認の対象とする必要性もないというべきである。なお,仮に被告主張のように本件
一連の行為(又はそのうち本件設立を除いた行為)を否認することとなれば,本件増資,本件借入れ,本件買収及び本件合併の各行為がなかったものとして法人税の課税標準等が計算されるはずであるが,他方において,被告は,法人税の課税標準等の計算については,これらの行為が存在しないことを前提として計算することが困難あるいは不合理である
として,結局,本件借入れをなかったものとみて本件利息の額を損金の額に算入せずに課税標準等の計算をすれば足りるものと主張しており(別紙8の2〔被告の主張の要旨〕

),本件において否認の対象とな

る行為について更正対象法人以外の者による直接起因行為以外の行為も含めるものと解した場合の法的帰結との関係は不明であるといわざるを得ない。
ところで,本件において否認の対象となる行為(経済合理性の有無を
判断する対象となる行為)が原告による本件借入れのみであると解した場合でも,その経済的合理性の有無を判断するに当たっては,上記アにおいて説示したとおり,当該行為又は計算に係る諸事情や当該同族会社に係る諸事情等を総合的に考慮すべきであるから,本件借入れがその一部に組み込まれている本件一連の行為に係る事情や,グループ法人と
して原告と密接な関係にあったUMKKに係る事情も考慮すべきことは当然である。つまるところ,被告の主張は,本件借入れに係る経済的合理性の有無の判断について,ヴィヴェンディ・グループ全体からみて経済的合理性があるか否かではなく,原告ないしUMKKからみて経済的合理性があるか否かという観点から判断されるべきであるという趣旨を
いうに帰するものといわざるを得ない。


本件借入れに係る経済的合理性の有無について

以下においては,前記前提事実及び認定事実に基づき,

照らして,①原告による本件借入れが行われる原因となった,ヴィヴェンディ・グループが設定した本件8つの目的(及びこれらの目的を同時に達成しようとしたこと)が合理性を有するものか,②本件8つの目的を達成する手段として,本件組織再編等スキームに基づく本件組織再編取引等を行ったことが相当であるか,③上記の目的及び手段が,ヴィヴェンディ・グループ全体にとってだけでなく,原告にとっても経済的合理性を有する
ものといえるかについて,順次検討する。

本件8つの目的に係る合理性の有無について
日本の関連会社に係る資本関係の整理に関し
前記2
(2000年)以降,次々に企業買収を繰り返し,その結果,UMG部門の子会社数が増加し,グループ内の資本関係も複雑化したことから,法人数を減らすとともに,資本関係を整理するための組織再編が進められてきたところ,本件各日本法人について見ると,①UMKKはオランダ法人であるUMTCの完全子会社であり,MGBKKはオランダ法人であるMGBBVの完全子会社であり,V2Jは英国法人であるV2の完全子会社(CMHの間接的な完全子会社)であったため,本件各日本
法人がそれぞれ異なる親会社と資本関係を有する状態となっていたこと,②日本という1つの国にUMPKKとMGBKKという2つの音楽出版会社が存在する状態となっていたこと,③ヴィヴェンディ・グループのUMG部門では,北米及び南米を除く地域における音楽事業については英国法人であるUMGIが業務管理を統括しており,本件各日本法
人に対する事業遂行上の指揮監督もUMGIが行っていたところ,日本法人であるUMKK及びMGBKKはいずれもオランダ法人の子会社であったため,英国法人と直接の資本関係を有していなかったことが認められる。
一般に,資本関係は親会社が子会社に対して事業遂行上の指揮監督を
及ぼす根拠となるものであるから,企業グループにおける親子会社間の重層的な資本関係が簡素化されれば,重要な意思決定に係る手続の短縮などのメリットがあるといえ,あえて複雑な資本関係のままとする経済的理由は通常考え難い。また,同種の事業を行う複数の会社を統合して1つの会社とすることや,企業グループにおける資本関係と事業遂行上
の指揮監督関係との間に齟齬がみられる場合に両者を一致させることも,経営の効率化や管理コストの低減の観点から,経済的合理性を有するものといえる(なお,音楽出版会社は音楽著作物の著作権を扱っているため,著作権の一元的な管理という観点からも,複数の音楽出版会社を統合する必要性は高いといえる。)。
そうすると,本件においても,異なる親会社の下にあった本件各日本法人につき資本関係を再編成するとともに,2つの音楽出版会社を1つの法人に統合し,さらに,オランダ法人の子会社であったUMKK及びMGBKKを英国法人の資本下に置くことによって事業遂行上の指揮監督関係と資本関係を一致させること(本件8つの目的のうち,目的②,目的③及び目的⑥〔前半〕)は,資本関係の簡素化や経営の効率化
等の観点から,いずれも経済的合理性を有するものであると認められる。
グループ内における負債の経済的負担の配分の問題に関し
ユニバーサル・ミュージック・グループに
おける企業買収等のための資金の借入れにより多額の負債を抱えてい
たオランダ法人のUIMBV及びポリグラムは,平成19年(2007年)において,UMGT又はUMIFに対する負債が約31億ユーロに上り,支払利息が営業利益を上回っている状況であったのに対し,日本法人であるUMKKは,平成18年12月期から平成20年12月期までの営業利益が約74~111億円と多額である一方,支
払利息は約110~460万円と極めて少ない状況であった。
UMGT及びUMIFはヴィヴェンディ・グループのCMS(資金集中管理制度)の統括会社であり,ヴィヴェンディが外部の金融機関から借り入れて調達した資金はUMGT又はUMIFを通じてヴィヴェンディ・グループ法人に貸し付けられる

ことから

すれば,UMGT又はUMIFから貸付けを受ける各法人の財務状況は,外部の金融機関から借入れを行うヴィヴェンディ(又はヴィヴェンディ・グループ全体)の信用に少なからず影響があるものと推認される。
そして,一般に,企業グループにおいて借入金の返済に係る経済的負担を資本関係の下流にある子会社に負担させる場合(いわゆるデット・プッシュ・ダウン)において,その経済的負担をグループ内のどの子会社に負わせるのかについては,財務上の観点からは,規模が大きく多額の利益を計上している事業会社に対してより多くの負債を負
このような財務上の観点からすると,支払利息が営業利益を超え,負債の経済的負担が過度に重くなっているオランダ法人(UIMBV及びポリグラム)のUMGT又はUMIFに対する負債を減少させ,これに代えて,多額の営業利益を計上し支払利息が極めて少ない日本法人に負債を負わせること(本件8つの目的のうち,目的①及び目的⑤)は,ヴィヴェンディ・グループの財務戦略として不合理なもので
はないということができる。
なお,多額の営業利益を計上している日本法人に負債を負わせれ
ば,これにより日本法人の法人税の負担も減少することとなるが,税務上の目的と財務上の目的とは別個のものであり,上記のとおり財務上の観点から日本法人に負債を負わせることが不合理といえない以
上,法人税の負担の減少という税務上の効果が併せて得られることをもって,かかる財務上の目的による行為の経済的合理性が否定されるものではないというべきである。
為替リスクのヘッジに係るコストに関し
日本法人であるUMKKに生じていた余剰

資金約363億円は,UMGTを通じてヴィヴェンディに貸し付けられ,外部の金融機関に円建てで預金されていたところ,ヴィヴェンディ・グループのヘッジポリシーに従い行われていた本件ユーロ・円通貨スワップ取引では,円の低い金利(年0.97%)とユーロの高い金利(年4.33%)の金利差によって生じる手数料として年間約800万ユーロを当該金融機関に対して支払うべきこととなっていた。また,英国法人であるUMOに生じていた約2億ポンドの余剰資金についても,ヴィヴェンディのポンド建ての預金について本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引が行われていたところ,将来,ユーロの金利が上昇するなどして両通貨の金利差が生じた場合には,上記のような手数料負担が生じる可能性があった。

以上のようなヴィヴェンディ・グループにおける外貨建ての余剰資金の取扱いの実情に照らせば,UMKK及びUMOの余剰資金を解消し,本件ユーロ・円通貨スワップ取引及び本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を終了させること(本件8つの目的のうち,目的④及び目的⑥〔後半〕)は,上記各取引による手数料負担を免れ,資産管理の
コストを軽減するものとして,経済的合理性を有するということができる。
資本関係の整理に関する統括会社の問題
ヴィヴェンディ・グループにおいては,世
界各国のグループ法人に係る組織再編を行うに当たり,1つの国に1
つの統括会社を設置し,その傘下に事業会社等を所属させるという基本的方針を採っていた。一般に,世界の各地域経済圏の拠点として統括会社を設置することは,当該地域経済圏における商流の一本化や間接部門(経理,人事,システム,事業管理等)の合理化を通じて,グループ法人の収益の向上に寄与するものとされており(甲71),ヴ
ィヴェンディ・グループにおける上記の方針も合理的なものであったといえる。
そして,

日本の関連会社に係る資本関係の

整理に際し,日本に設置する統括会社の組織形態を株式会社でなく合同会社とすることによって,米国税制上のチェック・ザ・ボックス規則が適用され,構成員課税を選択できることとなり,子会社間における売買や利息の支払等について米国法人UMGの課税対象所得に合算されないという税務上のメリットがあったと認められる。また,合同会社においては株主総会等の設置義務がなく,社員間の合意で業務執行を行い得るなど,より機動的な事業運営が可能となるというメリットもあったと認められる。

以上のような米国税制における取扱いや合同会社の特性等に照らせば,米国税制上構成員課税を選択できるようにするとともに,将来の企業買収に備えて機動的な事業運営ができるようにすること(本件8つの目的のうち,目的⑦及び目的⑧)は,経済的合理性を有するものといえる。

本件8つの目的を同時に達成しようとすることの合理性
以上のとおり,本件8つの目的は,それぞれ個別的にみて経済的合理性を有するものといえるところ,ヴィヴェンディ・グループがこれらを同時に達成しようとしたこと,特に,日本の関連会社に係る資本関係の整理の目的

日本法人への負債の導入を

含む財務上の目的

についても同時に達成するものとし

て本件8つの目的を設定したことが経済的合理性を有するものといえるかという点が,次に問題となる。
この点,本件組織再編取引等の前のヴィヴェンディ・グループの状況からすると,オランダ法人(UIMBV及びポリグラム)のUMGT又はUMIFに対する負債を減少させ,これに代えて日本法人に負債を負わせるという目的(グループ内における負債の経済的負担の配分に関する,目的①及び目的⑤)を達成するためには,日本法人が多額の資金需要によりその資金を借り入れ,かつ,かかる借入れにより得た資金が日本法人からオランダ法人に渡ってUMGT又はUMIFに対する借入金の返済に用いることができる状態となることが必要であったといえるところ,かかる資金需要は日本に設置される統括会社
(原告)による本件各日本法人の買収(特に企業価値の高いUMKK及びMGBKKの買収)を行うことにより発生させることができ,また,これらの買収における売主(UMTC及びMGBBV)はいずれもオランダ法人であって,同国法人同士の取引(貸付け等)によってUIMBV及びポリグラムに対し借入金の返済資金を交付することが
できたから,上記の目的を達成しようとするヴィヴェンディ・グループにとっては,日本の関連会社に係る資本関係の整理の目的と併せて,同時に両目的を達成することに合理性があったということができる。
また,これに加えて,原告がUMKK及びMGBKKを買収する資
金を調達するために,UMKKやUMOの余剰資金を活用すれば,本件ユーロ・円通貨スワップ取引等を終了させ,これらの取引に係る手数料の負担を免れることができる(為替リスクのヘッジに係るコストに関する,目的④及び目的⑥〔後半〕)から,この目的についても併せて達成することに合理性があったといえる。

そうすると,

のとおりグループ内における負債の経済

的負担の配分や為替リスクのヘッジに係るコストに関する上記各目的に経済的合理性が認められる以上,これらを実現するために本件8つの目的を同時に達成しようとしたこともまた,経済的合理性を有するものというべきである。


本件8つの目的を達成する手段の相当性について
前記2

ウのとおり,本件再編成等スキームに基づく本件組織再編

取引等は,本件8つの目的を全て達成することができるものであり,本件8つの目的を達成する手段として相当であったと認められる。なお,目的①に関し,オランダ法人であるUIMBV及びポリグラムがUMGT又はUMIFに対する借入金債務を返済しても,その返済資金(本件買収又は本件MGBKK買収の代金)を貸し付けたUMTC又はMGBBVに対する債務は残存することになるが,オランダ法人の子会社間の債務と,ヴィヴェンディ・グループのCMSの統括会社であるUMGT又はUMIFに対する債務とでは,UIMBV及
びポリグラムの財務状況がヴィヴェンディ(又はヴィヴェンディ・グループ全体)の対外的な信用に及ぼす影響に差異があることは否定できないから,これらのオランダ法人がUMGT又はUMIFに対する借入金債務の約3割を返済したことにより,ヴィヴェンディ(又はヴィヴェンディ・グループ)の信用力は相応に向上したものということ
ができる。
また,目的④及び目的⑥(後半)に関し,原告のUMIFに対するため,本件組
織再編取引等の後も,為替リスクのヘッジの必要性自体は残存しているものの,300億円を超える余剰資金に係る通貨スワップ取引が解
消されたことで,ヴィヴェンディは,円とユーロの金利差によって生じる年間約800万ユーロもの手数料を支払う必要がなくなった上,上記の円資金の代わりに,本件財務関連取引によって得られたユーロ資金を保有することができることとなったものであり(乙61),ヴィヴェンディ・グループにおける資金調達のコストが軽減され,財務
状況が改善されたということができる。
被告の主張について
被告は,①日本の関連会社に係る資本関係を整理するためには,UMKKを統括会社としてMGBKK及びV2Jの買収をさせるなどすれば足りるから,あえて原告を設立する必要はなかった,②原告を設立するとしても,本件買収を経ずに本件合併をすれば足り,本件合併に先立って本件買収をするのは迂遠であるなどと主張する。

しかし,オランダ法人の子会社であった日本法人を英国法人の資本下に置く(目的⑥〔前半〕)ために,CMHLによる原告の設立に代えて,UMKKをCMH又はその子会社に買収させようとすると,英国法人において多額の株式購入資金を準備しなければならないという不都合が生じる上,オランダ法人のUMGT又はUMIFに対する負
債を減少させ,これに代えて日本法人に負債を負わせるという目的(目的①及び目的⑤)も達成することができなくなる。また,仮に原告を設立した上で本件買収を経ずに原告がUMKKを吸収合併する場合には,UMKKの完全親会社であったUMTCに対し原告の持分を割り当てるか金銭等を交付することを要する(会社法751条1項2
号~4号参照)こととなるところ,これらに代えてあらかじめ原告がUMKKの全株式を買収した(本件買収)上で同社を吸収合併することが,経済的にみて不合理であるとは認められない。
したがって,被告の上記主張は,本件組織再編取引等が本件8つの目的を達成する手段として不相当であることを基礎付けるものではな
い。

原告からみた経済的合理性の有無について
原告が本件8つの目的の達成により得た経済的利益
本件8つの目的のうち日本の関連会社に係る資本関係の整理は,資
本関係の簡素化のほか,経営の効率化や管理コストの低減が期待でき
とって経済的合理性を有することは明らかである。また,原告の組織形態を合同会社としたことについても,将来における企業買収等の際に意思決定や執行をより機動的に行うことができるというメリットが
また,グループ内における負債の経済的負担の配分や,為替リスクのヘッジに係るコストなどの課題への対応は,ヴィヴェンディの対外的な信用を高め,資金調達のコストを軽減することとなるなど,ヴィヴェンディ・グループ全体の財務態勢を強化するものである(上記イところ,原告を含むヴィヴェンディ・グループ法人は,UM

GT又はUMIFを統括会社とするCMS(資本集中管理制度)に参加することにより,外部との金融取引を一括して行うヴィヴェンディの信用力(又はその背景にあるヴィヴェンディ・グループ全体の信用力)を利用して,個別に資金調達をする場合と比べて大規模かつ円滑な資金調達を行い得るメリットを享受していた(認定事実

ア~オ)

のであるから,ヴィヴェンディ・グループ全体の財務態勢が強化されることは,同グループ法人である原告にとっても,このようなメリットをより確実に享受することができることを意味するものであったといえる。
原告に生じた経済的不利益の検討

他方,本件組織再編取引等の結果,原告は本件借入れに係る約866億円の債務を負担することとなったことから,同債務の負担が原告に不当な経済的不利益を負わせるものであるかについて検討する。まず,本件借入れに係る借入金額(約866億円)は,本件買収及び本件MGBKK買収に係る株式購入資金のうち本件増資では足りな
い分を賄うためのものであるところ,その購入価格の大部分を占めるUMKK株の価格(約1144億円)は,ダフ・アンド・フェルプス社による株式価値算定分析(乙19)に基づき決定されたものであり,その価格が不当に高額であるとは認められない。
次に,本件借入れに係る返済条件について見ると,①利息の利率は,借入れ後6年間は年6.8%,それ以降は年5.9%であり,②借入金の一部返済も,借入れ後1年までは300億円まで可能であり,借入れ後6年以降はいつでも借入金の全部又は一部の返済ができる旨が
とって不当に不利益となるものとは認められない。また,UMKKは,原告に吸収合併される前の3事業年度において,営業利益を約7
入れにより生ずる支払利息(年約40億円)は,同社の事業をそのまま承継する原告が営業利益によって賄うことができる範囲内のものであって,本件借入れに当たり,利息の支払をすることが困難になるおそれがあったとは認められないし,現に,原告による利息の支払が困難になったなどの事情はうかがわれ
さらに,本件借入れが原告の対外的信用に及ぼす影響について見ると,①

原告に必要な資金調達は,もっぱらCMSに基

づきヴィヴェンディの信用によって行われるから,本件借入れにより原告の資金調達への影響が生ずるおそれはない。原告の貸借対照表上,純資産がマイナスであり,債務超過の状態になっているとしても,原告の債権者はヴィヴェンディ・グループ法人のみであることから,上記の財務状態による外部の金融機関に対する信用の低下や倒産リスクはそもそも原告固有の不利益として生じる余地がないというべきである。また,②音楽事業の関係者や社会一般に対しても,本件合
併前のUMKKと比べて事業内容等が異なるものではないとの説明が本件合併後の原告に対する社会的信用が
従前と比べて損なわれたとの事情はうかがわれない。
以上によれば,本件8つの目的を本件組織再編取引等により達成したことは,ヴィヴェンディ・グループ全体にとってだけでなく原告にとっても経済的利益をもたらすものであったといえる一方,本件借入れは原告に不当な不利益をもたらすものとはいえないから,これらが原告にとって経済的合理性を欠くものであったと認めることはできない(なお,上記の判断は,被告主張のように原告とUMKKを経済的,実質的に一体のものとみて,本件組織再編取引等の前のUMKKの状況から同取引等の後の原告の状況への変化を捉えたとしても,左
右されるものではない。)。
被告の主張について
被告は,①ヴィヴェンディ・グループの財務態勢が強化されることによって得られる原告の経済的利益は,一般的・抽象的なものにすぎず,②日本の関連会社に係る資本関係の整理によって得られる利益も,本件
借入れに基づく約866億円の負債に見合うものではなく,本件一連の行為を通じて,原告は事実上,UMKKと事業主体に実質的な変更がないにもかかわらず,利益の減少だけが見込まれることになった旨主張する。
しかしながら,一般に,企業グループに導入されるCMSには,所用
資金量の低減,資金効率の向上,財務・経理業務の合理化,リスク管理の高度化等のメリットがあるとされている(認定事実
これらが企業グループ全体にとって利益となるのみならず,CMSに参加する各グループ法人にとっても利益となることは明らかである。したがって,企業グループ全体の財務態勢の強化は,各グループ法人
がCMSを通じて得る利益を増強することにつながるから,本件においても,ヴィヴェンディ・グループの財務態勢が強化されることによって得られる原告の経済的利益を一般的・抽象的なものにすぎないということはできない。
原告は,本件借入れに係る支払利息を経費として計上することにより税引前純利益が従前(UMKK)と比べて減少することになる(認定が,これは,オランダ法人のUMGT又はUMIFに対する

負債を減少させ,これに代えて日本法人に負債を負わせるという,グループ内における負債の経済的負担の配分に関する目的が達成されたことによるものであって,このことがヴィヴェンディ・グループ全体の財務態勢の強化につながり,同グループ法人である原告にも利益をもたらすものであることは,

に説示したとおりである。

また,原告は,本件借入れにより調達した資金をもってUMKK株式等を購入しているところ,

によれば,その購入価格は上記株

式の価値に見合うものであったといえるから,支払利息の負担も含めて本件借入れに係る負債の経済的負担に見合う財産を取得したということができる(なお,UMKK株式は本件合併により消滅したため,
原告はこれを抱合い株式消滅損失として消却処理している〔前提事実原告は本件買収により,これがなかったとすれば本件合
併の際に要するものとされていたUMTCに対する原告の持分の割当て又は金銭等の交付を免れたものである。)。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。


小括
以上のとおり,①原告による本件借入れが行われる原因となった,ヴ
ィヴェンディ・グループが設定した本件8つの目的は,日本の関連会社に係る資本関係の整理や,同グループの財務態勢の強化(グループ内における負債の経済的負担の配分,為替リスクのヘッジに係るコストの軽減)等の観点からいずれも経済的合理性を有するものであり,かつ,これらの目的を同時に達成しようとしたことも経済的合理性を有するものであったと認められ,②本件再編成等スキームに基づく本件組織再編取引等は,これらの目的を達成する手段として相当であったと認められる。そして,③本件組織再編取引等によるこれらの目的の達成は原告にとっても経済的利益をもたらすものであったといえる一方,本件借入れ
が原告に不当な経済的不利益をもたらすものであったとはいえない。そうすると,原告による本件借入れについては,法人税の負担が減少するという利益を除けばこれによって得られる経済的利益がおよそないとか,あるいは,これを行う必要性を全く欠いているなどということはできないから,専ら経済的,実質的見地において,純粋経済人として不
自然,不合理なものとはいえず,したがって,経済的合理性を欠くものと認めることはできない。
よって,本件においては,法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものに該当するということはできないから,こ
れに該当することを前提としてされた本件各更正処分等はいずれも違法である。
第4

結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求には
いずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官

村松悠史
裁判官松長一太は,転補のため,署名押印することができない。

裁判長裁判官

清水知恵子
当事者の表示及び別紙1については省略

(別紙2)

略称一覧表

略称

内容

通則法

国税通則法のこと

ヴィヴェンディ・グループ

ヴィヴェンディが直接的又は間接的な完全親
子会社関係を有する会社から成る会社群のこ

UMG部門

ヴィヴェンディ・グループのうち,UMGを
最上位とする子会社群であり,音楽事業を担
当する部門のこと

ヴィヴェンディ・グループ法人

ヴィヴェンディ・グループのUMG部門を構
成する法人のこと

間接的な完全子会社

複数の子会社を介して,その資本の100%
を親会社が保有しているといえる場合の当該
子会社のこと(当該親会社を間接的な完全親会社という。)

更正対象法人

法人税法132条1項に基づき,法人税につ
き更正又は決定を受ける法人のこと

税負担減少結果

同族会社の行為又は計算により生じる法人税
の負担の減少結果のこと

直接起因行為

同族会社の税負担減少結果を直接生じさせる
行為のこと

独立当事者間の通常の取引

独立,対等で相互に特殊な関係のない当事者

間で通常行われる取引のこと

貸借対照表リスク

貸借対照表に計上する外貨建ての金融資産に
ついての自国通貨に換算した価値が,為替レ
ートの変動により変化するリスクのこと

ヘッジポリシー

貸借対照表リスクをヘッジするポリシーのこ
と(なお,ヘッジとは,外国為替等の取引
で,買い方の値下がり損や売り方の値上がり

作のことである。)
本件ポンド・ユーロ通貨スワップ

ヴィヴェンディが,金融資産約2億ポンドを

取引

交換してユーロ建ての預金をした際に付し
た,将来の一定の時点で反対の交換をする旨
の通貨スワップ取引
8〕)

本件ユーロ・円通貨スワップ取引

ヴィヴェンディが,金融資産約300億円を
交換してユーロ建ての預金をした際に付し
た,将来の一定の時点で反対の交換をする旨

8〕)
平成20年12月期

一般には,平成20年1月1日から同年12
月31日までの事業年度のこと。原告におい
ては,設立された平成20年10月7日から
同年12月31日までの事業年度のこと。

平成21年12月期

平成21年1月1日から同年12月31日ま
での事業年度のこと(平成20年12月期を
除く他の事業年度以降も同様)

本件各事業年度

平成20年12月期から平成24年12月期
までの各事業年度の総称

平成20年12月期更正処分

麻布税務署長が平成24年3月27日付けで
原告に対してした平成20年12月期に係る
法人税の更正処分のこと

平成21年12月期更正処分

麻布税務署長が平成24年3月27日付けで
原告に対してした平成21年12月期に係る
法人税の更正処分のこと

平成22年12月期更正処分

麻布税務署長が平成24年3月27日付けで
原告に対してした平成22年12月期に係る
法人税の更正処分のこと

平成23年12月期更正処分

麻布税務署長が平成29年2月24日付けで
原告に対してした平成23年12月期に係る
法人税の更正処分(ただし,平成30年1月
29日付け減額再更正後のもの。)のこと

平成24年12月期更正処分

麻布税務署長が平成30年2月27日付けで
原告に対してした平成24年12月期に係る
法人税の更正処分のこと

平成21年12月期賦課決定処分

麻布税務署長が平成24年3月27日付けで
原告に対してした平成21年12月期に係る
過少申告加算税の賦課決定処分のこと

平成22年12月期賦課決定処分

麻布税務署長が平成24年3月27日付けで
原告に対してした平成22年12月期に係る
過少申告加算税の賦課決定処分のこと
平成23年12月期賦課決定処分

麻布税務署長が平成29年2月24日付けで
原告に対してした平成22年12月期に係る
過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,平
成30年1月29日付け変更決定による変更
後のもの。)のこと

平成24年12月期賦課決定処分

麻布税務署長が平成30年2月27日付けで
原告に対してした平成24年12月期に係る
過少申告加算税の賦課決定処分のこと

本件各更正処分

平成20年12月期更正処分から平成24年
12月期更正処分までの総称

本件各賦課決定処分

平成21年12月期賦課決定処分から平成2
4年12月期賦課決定処分までの総称

本件各更正処分等

本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の総

CMS

資金集中管理制度(キャッシュ・マネジメン
ト・システム)のこと

本件CMS合意

UMKKとUMGTが,平成18年(200
6年)1月13日に合意した,CMSに係る
合意(キャッシュ・マネージメント・アグリ
ーメント)のこと(認定事実

ウ)

本件各日本法人

UMKK,MGBKK及びV2Jの総称

日本の関連会社

日本に所在するヴィヴェンディ・グループ法
人の総称(本件各日本法人を含む。)

本件再編成等スキーム

ヴィヴェンディが作成した,日本の関連会社
の組織再編等を行うための計画のこと(前提

事実
本件8つの目的



本件再編成等スキームにおいて定められてい
たとする目的の総称(以下の目的①~⑧)
目的①

オランダ法人の負債を軽減するための弁済資
金を取得すること

目的②

日本法人を1つの統括会社の傘下にまとめる
こと

目的③

日本における音楽出版会社を合併により1社
とすること

目的④

日本法人の円余剰資金を解消し,ヴィヴェン
ディが為替リスクをヘッジすることなく,ユ
ーロ市場での投資活動を行うことを可能にす
ること

目的⑤

日本法人の資本構成に負債を導入し,日本の
関連会社が保有する円建ての資産及び日本の
関連会社が生み出す円建てのキャッシュフロ
ーに係る為替リスクを軽減すること

目的⑥

業務系統と資本系統の統一を図ることにより
経営を合理化・効率化すること,及びUMO
の余剰資金を減少させること

目的⑦

日本法人を合同会社にすることにより,米国
税制上のメリットを受け,又はデメリットを
回避するとともに,原告を含む日本の関連会
社の柔軟かつ機動的な事業運営を行うこと

目的⑧

当時検討されていた日本におけるヴィヴェン
ディ・グループ外の音楽会社の買収に備える
こと

本件設立

原告が,平成20年10月7日,CMHLを
親会社として,200万円の資本金により設
立されたこと(前提事実

本件増資

ア)

原告が,平成20年10月29日,CMHL
による295億円の追加出資を受けたこと
(前提事実

本件貸付け・本件借入れ

イ)

原告を借主,UMIFを貸主として,平成2
0年(2008年)10月29日に締結され
た866億6132万円の金銭消費貸借契約
のこと(前提事実



本件借入契約書

本件借入れに係る契約書のこと

本件買収

原告がUMTCから,平成20年(2008
年)10月29日,UMKK株式を1144
億1800万円を支払って取得したこと(前
提事実

本件MGBKK買収

エ)

原告がMGBBVから,平成20年(200
8年)10月29日,MGBKK株式を14
億6900万円を支払って取得したこと(前
提事実

本件V2J買収



原告がV2から,平成20年(2008年)
10月29日,V2J株式を2000ポンド
(32万円)を支払って取得したこと(前提

事実
本件UMPGK設立

カ)

原告が,平成20年11月6日にUMPGK
を設立したこと(前提事実

本件合併

原告とUMKKとの平成20年11月10日
付け契約に基づき,平成21年1月1日,原
告を存続会社とし,UMKKを消滅会社とし
てされた吸収合併のこと(前提事実

本件UMPGK合併



UMPGK,MGBKK及びUMPKKの契
約に基づき,平成21年7月1日,UMPG
Kを存続会社とし,MGBKK及びUMPK
Kを消滅会社としてされた吸収合併のこと
(前提事実

本件一連の行為



本件設立,本件増資,本件借入れ,本件買収
及び本件合併の総称

本件組織再編取引

本件一連の行為に,CMHLの設立,本件増
資,本件MGBKK買収,本件V2J買収,
本件UMPGK設立及び本件UMPGK合併
を加えた行為の総称

本件組織再編取引等

本件組織再編取引及び後記の本件財務関連取
引の総称

三菱UFJ銀行

株式会社三菱東京UFJ銀行のこと

本件各口座

平成20年10月22日に,三菱UFJ銀行
渋谷明治通支店において,ヴィヴェンディ・
グループ法人の各名義で開設された預金口座
(前提事実



本件ヴィヴェンディ口座

本件各口座のうちヴィヴェンディの名義によ
る口座

本件資金決済

平成20年10月29日に,三菱UFJ銀行
渋谷明治通支店において,本件各口座間でさ
れた資金決済の総称(前提事実

本件財務関連取引



本件組織再編取引に当たってヴィヴェンデ
ィ・グループ法人が行った本件資金決済を含
む貸金等の取引のこと(前提事実⑸)

本件利息

本件借入れに基づき支払った利息のうち,本
件各事業年度における損金の額に算入された
もののこと

A陳述書

ヴィヴェンディの税務部副部長であるAが作
成した陳述書(甲76,96)

A陳述書等

A陳述書のほか,東京国税局職員の調査にお
けるヴィヴェンディ等の財務担当者及び税務
担当者による供述(乙61)の総称

(別紙3)

3
2
(現か
略況ど前
)にう項
よかの
るの場
も判合
の定に
とはお
す、い
る同て
。項、
に内
規国
定法
す人
るが
行同
為項
又各
は号
計に
算掲
のげ
事る
実法
の人
あに
つ該
た当
時す
のる













































の総数又は式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出ハロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株し
























所長等





が前に当該事業所において個人と




























以下こ


主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親
ロイ二一























その事業所の所
























イからハまでのいずれにも該当する内国法人内国法人である同族会社額





























その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金

























税務署長の認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められは

























これを容認












次に掲げる法人に係る法人税につき更正又



















法人税法
(別紙4)

法人略称一覧表

略称

法人名

設立国

センテナリー・ミュージック・ホールディングス・リミ
テッド(CentenaryMusicHoldingsLimited)CMH

なお,平成22年(2010年)に登録名をユニバー英国サル・ミュージック・ホールディングス・リミテッドに変更している。
ユーエムジー・インターナショナル・リミテッド
UMGI

英国
(UniversalMusicGroupInternationalLimited)ユーエム・オペレーションズ・リミテッド

UMO

英国
(UniversalMusicOperationsLimited)ヴィツー・ミュージック・グループ・リミテッド

V2

英国
(V2MusicGroupLimited)

CMHL

シーエムエイチエル・ビーヴィ(CMHLB.V.)

オランダ

ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・エムジ
MGBBV

ービー・ホールディング・ビーヴィ

オランダ

(UniversalMusicPublishingMGBHoldingB.V.)ユニバーサル・インターナショナル・ミュージック・ビ
UIMBV

オランダ
ーヴィ(UniversalInternationalMusicB.V.)ユニバーサル・ミュージック・インターナショナル・ホ

UMIHBV

ールディング・ビーヴィ
(UniversalMusicInternationalHoldingB.V.)
オランダ

ユニバーサル・ミュージック・トレーディング・カンパ
UMTC

ニー・ビーヴィ

オランダ

(UniversalMusicTradingCompanyB.V.)ポリグラム

ポリグラム・ビーヴィ(PolyGramB.V.)

オランダ

株式会社ユニバーサル・ミュージック・MGB・パブリ
MGBKK

日本
ッシング

UMKK

ユニバーサルミュージック株式会社

日本

UMPGK

ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社

日本

UMPKK

株式会社ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング

日本

株式会社ヴイツーレコーズ・ジャパン

日本

V2J

ユーエムジー・トレジャリー・エス・アー・エス
UMGT

フランス
(UniversalMusicGroupTreasuryS.A.S.)ユーエムアイ・ファイナンス・エス・アー・エス

UMIF

フランス
(UMIFinanceS.A.S.)

ヴィヴェンディヴィヴェンディ・エス・アー(VivendiS.A.)
フランス

ユニバーサル・ミュージック・グループ・インク
UMG

米国
(UniversalMusicGroup,Inc.)

(別紙5)

1枚添付

(別紙6)

1枚添付

(別紙7)

1枚添付

(別紙8)

争点に関する当事者の主張の要旨
1
争点⑴(法人税法132条1項にいうその法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものの該当性)について
(被告の主張の要旨)
判断枠組み


租税回避の意図,目的等が要件とはならないこと
いわゆる同族会社の行為又は計算の否認規定である法人税法132条1項は,同族会社の行為又は計算を容認した場合に生じる法人税の負担の減少結果(税負担減少結果)が不当と認められるときに,税務署長に同
族会社の行為又は計算を否認する権限を与えている。同項は,その行為又は計算にかかわらず税務署長の認めるところにより課税標準等を計算することができると規定されているとおり,同族会社の私法上の行為を否認するのではなく,当該私法上の行為が実在し,それが私法上有効なものであっても,課税負担公平の原則の見地からそれを租税法上否認する,いわ
ば当該私法上の行為から生ずる租税法上の効果を否認する規定である。法人税法132条1項の文言解釈からすれば,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否かの判断に当たって,同族会社に租税回避の意図,目的等があることは要件とされていない。主観的な意図,目的等が要件とはならないことは,立法当初は主観的要件が明文化さ
れていたにもかかわらず,その後の改正によって主観的要件が削除されたという同項の改正の経緯に照らしても明らかである。
したがって,法人税法132条1項の適用に当たり,同族会社の租税回避の意図,目的といった主観的要件は不要であり,同族会社の行為が租税回避の意図,目的に基づいて行われたものでなくとも,客観的に見て,同族会社の行為又は計算により法人税の負担を不当に減少させる結果を生じさせたと認められる場合には,同項の適用により,その税負担
減少結果を不当なものとして否認することができるというべきである。

不当性要件該当性は経済的合理性を欠くものか否かにより判断すべきであること

法人税法132条1項の趣旨は,元来,多数の株主又は社員により所有されている一般の会社にあっては,多数の株主等は必ずしも利害が一致しないため,意思決定過程においても反対者の意思が反映し,一部の者のみによって意思決定がされることが比較的少ないのに対し,同族会社は,少数の株主等が多数の議決権を有する会社であるから,比較的利害を同一にしているこ
れらの者の意思によって会社の行為又は計算を自由に支配することができ,株主等と同族会社を通じて課税負担を不当に軽減することが比較的容易であるため,同族会社と非同族会社との課税負担の公平を期するために,税務署長に対し同族会社の行為又は計算を否認する権限を与えたものである。このように同項が,同族会社と非同族会社との税負担の公平を維持する趣旨で設
けられ,その否認の対象を同族会社等の行為又は計算に限定していることに照らせば,非同族会社(独立当事者間)であっても容易になし得る行為又は計算が同項の対象になるとは考え難い。そこで,同族会社の行為又は計算を容認することにより生じる税負担減少結果が同項にいう不当に該当するためには,当該行為又は計算が,同族会社でなければ通常なし得ない行為又
は計算で,かつ,経済的合理性を欠くものに限られると解される。以上のとおり,法人税法132条1項の法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否かは,同項の趣旨に照らせば,経済的,実質的見地から,純粋経済人の行為として不合理,不自然な行為と認められるか否かという客観的,合理的基準により判断されるべきである。そして,同項の趣旨が,同族会社と非同族会社との課税負担の公平を維持することにあることに鑑みれば,同族会社の行為又は計算が,純粋経済人として不合理,
不自然なもの,すなわち,経済的合理性を欠く場合には,同族会社の行為又は計算が異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業上の目的が存在しないと認められる場合のみならず,独立,対等で相互に特殊な関係のない当事者間で通常行われる取引と異なっている場合なども含まれ得ると解するのが相当である。



本件におけるその法人の行為又は計算とは何か

主位的主張
法人税法132条1項の文理からすれば,その法人の行為又は計算が一つの行為又は計算でなければならないとは解されない。

同族会社の税負担減少結果を生じさせる行為又は計算の中には,一つの行為又は計算により直接当該結果を生じさせる場合もあれば,同族会社の税負担減少結果を直接生じさせる直接起因行為のみならず,当該行為計算の前提となっている複数の行為又は計算が存在し,これら一連の行為又は計算が積み重なり全体として税負担減少結果をもたらす場合も当
然に想定される。すなわち,同族会社の行為としては,同族会社間の行為,同族会社と株主との間の行為などがあるが,これらの中には,同族会社間又は同族会社と株主との間で複数の取引が積み重ねられたり,2以上の同族会社や株主による複数の取引が行われる場合も当然に想定されるところ,これら同族会社らの複数の取引により不当に税負担減少結
果が生ずる場合も当然に法人税法132条1項の趣旨が妥当する。このように経済的合理性のない行為を含む複数の取引が積み重ねられることなどにより税負担減少結果をもたらしたにもかかわらず,直接起因行為のみが同項のその法人の行為又は計算に該当し,直接起因行為は直ちに経済的合理性を欠くとはいい難いため否認できないということであれば,同項の趣旨が没却されることは明らかである。
したがって,法人税法132条1項の趣旨からしても,同族会社間等による複数の行為又は計算が積み重なることによって税負担減少結果が生じている場合には,当該複数の行為又は計算を一体としてその法人の行為又は計算に該当すると解し得るというべきである。本件一連の行為を構成する各行為(本件設立,本件増資,本件借入れ,
本件買収及び本件合併)のうち,直接起因行為は本件各事業年度の原告の損金の額を増加させた本件借入れである。
しかしながら,本件一連の行為を構成する各行為間の関係を見ると,①CMHLを100パーセント親会社とする同族会社である原告を設立し(本件設立),②原告がCMHLから295億円の追加出資を受ける
(本件増資)とともに,③原告がUMIFから866億6132万円の借入れをし(本件借入れ),④原告が上記②及び③により調達した資金を用いてUMTCからUMKK株式を購入した上(本件買収),⑤原告がUMKKを吸収合併すること(本件合併)により,UMKKが行っていた音楽事業やUMKKの資産,負債等を合併後の原告に全て引き継ぎ
つつ,上記③で負担した本件利息を損金算入することにより,UMKKないし原告の欠損金額を増加させ,又は課税対象所得や法人税の額を減少させたものである。
このように,本件一連の行為は,原告を中心とするヴィヴェンディ・グループ法人の行為として,それぞれ先行する行為を前提として積み重ね
られた行為であり,その結果,UMKKないし原告の欠損金額が増加し,又は課税対象所得や法人税額が減少したのであるから,本件一連の行為が一体として税負担減少結果を生じさせたものというべきである。加えて,本件一連の行為は,原告の属するヴィヴェンディ・グループが策定した本件再編成等スキームに基づき,そのスキームどおりに実行されたものであるから,なおさら本件一連の行為は一体としてその法人の行為に当たるというべきである。

予備的主張1
仮に,UMKKないし原告の行為ではない本件設立はその法人の行為又は計算に当たらないとしても,本件一連の行為のうち,本件設立を除く各行為がその法人の行為又は計算に当たるというべきである。


予備的主張2
仮に複数の行為がその法人の行為又は計算に該当することはないとしても,本件借入れはその法人の行為又は計算に該当するというべきである。


経済的合理性の有無の判断対象となる法人

経済的,実質的に同一の法人を一体として判断することができること法人税法132条1項の規定が,少数株主等の意思によって同族会社の税負担が不当にゆがめられることを防止する趣旨のものであることからすれば,同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠き,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否かは,税負担減少結果が生じ
る内国法人である同族会社からみて経済的合理性が認められるか否かによって判断されるべきである。
もっとも,単に,形式的に,税負担減少結果が生ずる内国法人である同族会社の見地から検討しただけでは,経済的合理性の有無について適切な判断ができない場合があることは明らかである。税負担減少結果が生
ずる内国法人である同族会社と経済的,実質的に同一視される法人があり,両法人が一体となってした行為又は計算については,内国法人である同族会社の行為又は計算として,その経済的合理性の有無を判断するべきである。
また,法人税法132条1項の不当性の有無,すなわち経済的合理性の有無を判断するに当たっては,私法上の行為の形式面にとらわれず,経済的,実質的に観察することが許容されるというべきであり,したがっ
て,形式的にみる限りは別個の法人格を有するとしても実質的には同一視されるべき両法人を一体として不当性を検討することは,当然に同項の解釈として許容されているというべきであるし,同項の文言からしても,経済的合理性の有無について,税負担減少効果が生ずる内国法人の側から見る際に,これを形式的に単体の法人に限定しなければならない文理
上の理由はないというべきである。

主位的主張及び予備的主張1を前提とした本件における当てはめ
同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠く行為か否かは,その株主である親会社等からみて判断すべきではなく,あくまでも法人税の負担が減少
する主体である内国法人である同族会社から見て判断すべきである。このことは法人税法132条1項の趣旨からして明らかである。すなわち,同項の趣旨は,同族会社の場合,比較的利害を同一にしている少数の株主等の意思によって,会社の行為又は計算を自由に支配して同社の課税負担を不当に軽減させることが比較的容易であることに鑑み,非同族会社との課税負担の公
平を期するため,同項の要件を充足した行為又は計算を否認する権限を認めたものであって,少数株主等の意思によって当該内国法人である同族会社の税負担が不当にゆがめられることを防止するものであるから,行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かを,当該少数株主等の観点で判断することは相当ではなく,あくまでも法人税の負担が減少する当該内国法人である同族会
社の観点に立ってこれを判断すべきことは当然である。
ヴィヴェンディ・グループの日本国内での音楽事業の実態についてみると,これを行う内国法人として,原告が設立される以前からUMKKが存在しており,UMKKとは別個に原告が独立して存在し続ける固有の理由があったとは認められない。すなわち,原告とUMKKは,平成20年11月10日付けで吸収合併(本件合併)に関する契約を締結したところ,これは,法人税法2条12号の8(平成22年法律第6号による改正前のも
の。)の適格合併に該当するものであった。本件設立から本件合併までの各行為は約3か月間という短期間で行われたところ,原告は,この約3か月間に,固有の事業や従業員を有しておらず,事業活動も行っていなかった。そして,本件合併後の原告においては,UMKKと比較したところで,社名と組織形態を変更したのみで,役員,従業員,事業内容に変わりはなく,UM
KKの有していた資産・負債をそのまま引き継ぎ,UMKKが行っていた日本国内のヴィヴェンディ・グループの音楽事業を引き続き行うこととなったが,登記上の目的,部署名,意思決定機関,得意先や在庫商品について特段の違いは生じておらず,日本国内におけるヴィヴェンディ・グループの支配関係や資本関係につき実質的な変更もなされていない。そうすると,ヴィヴ
ェンディ・グループの日本国内での音楽事業の活動実態を客観的に観察すれば,原告は,UMKKを内容はそのままに形式的には別の合同会社に置き換えるために作られた会社であり,実質的には,本件一連の行為により,UMKKが合同会社に組織変更しただけのものであるといえる。
したがって,事業活動の実態を客観的に見れば,原告とUMKKは,本件
合併前から,各々が別個に独立して存在し続ける固有の理由があるものとして存在していたわけではなく,経済的,実質的に同一視される一体のものであったというべきである。

予備的主張2を前提とした本件における当てはめ
本件借入れは,UMIF(貸主)と原告(借主)との間で締結された金銭消費貸借契約に基づき,その借入金額は866億6132万円,平成26年(2014年)10月29日までの利息は年6.8%とするものである。本件借入れに係る返済は平成40年(2028年)10月29日に終了し,原告は当該契約終了日に本件借入れの残高全額を,経過利息等とともに返済することとされ,また,原告は平成21年(2009年)10月29日までであれば,300億円を限度として,借入れの一部返済を行うことができ,平成26年(2014年)10月29日以降においては,いつでも借入れの全部又は一部の返済をすることができるとされている。なお,本件借入れには,担保は付されていない。
このように,原告は,本件設立から本件合併までの約3か月の間に,UM
IFから,866億6132万円もの本件借入れをしたところ,その返済や利払いについては,本件借入れの後に本件合併を行うことを前提に,UMKKが有していた資産やUMKKが行っていた音楽事業による収益力を当てにしたものであった。すなわち,このような本件借入れにおける返済や利払いの予定については,本件再編成等スキームにおいて,当初から計画されてい
たものであり,原告は,平成21年3月31日,本件借入れの元本の一部である300億円及びこれに対する利息である8億6700万円(源泉徴収後は7億8030万円)をUMIFに支払い,同年10月29日には,本件借入れの元本の残額に対する利息47億7348万3229円を支払い,平成22年10月29日には,同残額に対する利息39億0648万3229円
を支払ったところ,いずれの支払についても,原告が本件合併により得たUMKKの資産又はUMKKの音楽事業による収益力から返済したものである。
以上のとおり,UMIFから本件借入れを行い,本件借入れに係る債務を負ったのは原告であるものの,本件借入れをすることで負う債務の返済や利
払いは,原告固有の資産や収益力ではなく,UMKKが有していた余剰資金等の資産又はUMKKが行っていた音楽事業による収益力によって支払うことが予定され(そうでなければ原告固有の資産や収益力をもって返済や利払いをすることはおよそ不可能であった。),実際にもUMKKが有していた資産や収益力をもって支払われたものである。
このように,本件借入れは,実質的にみれば,UMKKの存在を抜きにしてはあり得ない行為であったものであり,原告とUMKKが一体となってし
た行為であったというほかないものであるから,原告とUMKKは,経済的,実質的に同一視される一体のものであったというべきである。⑷

本件における原告の行為は経済的合理性がないこと(主位的主張及び予備的主張1に係る当てはめ)


本件一連の行為は同族会社でなければ通常なし得ない行為であることヴィヴェンディ・グループ内で資金還流があったこと
ヴィヴェンディ・グループにおいては,本件一連の行為を含む日本国内の組織再編に伴う取引等について,平成20年(2008年)10月29日に行われた資金の会計処理(本件財務関連取引)を全体としてみる
と,原告がUMKK株式を取得した原資である本件増資及び本件借入れに係る資金は,ヴィヴェンディからヴィヴェンディ・グループ法人を経由して原告に提供されたものであり(ヴィヴェンディから原告への資金提供),また,原告からUMTCに支払われたUMKK株式の取得代金は,ヴィヴェンディ・グループ法人を経由して再度ヴィヴェンディに還
流された(原告からヴィヴェンディへの資金回収)という会計処理がされているといえる。すなわち,ヴィヴェンディを起点として拠出された本件借入れに係る866億6132万円と本件増資に係る295億円の原資となる合計1161億6132万円の資金のうち,UMKK株式の取得代金である1144億1800万円は,原告を含むヴィヴェンデ
ィ・グループ法人を経由して,最終的には,再びヴィヴェンディに戻っているのであり,上記資金が還流されている。このことを原告の視点から見れば,UMKK株式の取得代金の原資となった本件増資及び本件借入れに係る資金は,原告自身がUMTCに対して支払ったUMKK株式代金がヴィヴェンディ・グループ法人間を経由して還流されたものといえ,本件一連の行為は,上記のようなヴィヴェンディ・グループ内の資金還流によって初めて実行可能なものであるといえる。
また,上記一連の資金の流れにおいては,原告がヴィヴェンディ・グループ外部に対して支払うべき費用相当額及び原告がV2に支払うべきV2J株式の代金相当額以外の金員については,実際の資金を必要としないものであった。すなわち,ヴィヴェンディ,UMO及び原告以外の
ヴィヴェンディ・グループ法人は,会計処理上,入金額と出金額が同額であったため,平成20年10月29日の一連の取引(本件財務関連取引)による資金の増減はなく,上記一連の資金の流れの中で実際の資金を要しなかったものである。他方,会計処理上資金の増減があったヴィヴェンディ,UMO及び原告の3法人については,それぞれ,①ヴィヴ
ェンディにおいて2億7432万円の減少,②原告において2億7400万円の増加,③UMOにおいて32万円の増加があった。まず,上記①のうちの2億7400万円及び②については,原告がUMKK株式の取得に係る付随費用及び本件増資に伴う登録免許税等の諸費用として支出することが見込まれる資金2億7400万円を,ヴィヴェンディが本
件増資及び本件借入れを通じて原告に提供したものである。また,上記①のうちの32万円及び③については,原告が,ヴィヴェンディから本件増資及び本件借入れを通じて提供された資金の中から,V2J株式の取得代金として支払うべき資金32万円をUMOに支払ったものである。

このように,ヴィヴェンディ・グループ内で平成20年10月29日に行われた一連の資金の流れのうち,実質的な資金の移動があったのは,原告がヴィヴェンディ・グループ外部に支払う見込みの費用相当額2億7400万円及びV2J株式の代金相当額32万円のみであって,それ以外の部分については実際の資金を必要とすることなく,ヴィヴェンディ・グループ内の資金還流(循環取引)によって実行されたものである。このようなヴィヴェンディ・グループ法人間の資金還流を行わなければ,原告がUMKK株式を取得するための約1144億円もの資金を調達することはできなかったのであるから,本件一連の行為は,上記資金還流によって初めて実現可能なものということができる。そして,本件においては,原告を含む全ての取引当事者がヴィヴェンディ・グルー
プ法人であり,親法人が子法人の意思決定を自由に支配することができる同族会社であるからこそ,上記のような複雑かつ多額の資金還流(循環取引)を実質的な資金を要さずに実行することができたのであり,本件一連の行為は,全ての取引当事者がヴィヴェンディ・グループ法人であるという同族会社でなければ通常なし得ない行為であるといえる。
現実に行われた決済の状況について
ヴィヴェンディ・グループ内で平成20年10月29日に行われた一連の資金の流れ(本件財務関連取引)のうち,本件資金決済として実際に行われた入出金はその一部のみであるが,残高のない本件ヴィヴェンディ口座から立替資金を出金するなどした資金を,本件各口座を経由させ
た上で最終的に本件ヴィヴェンディ口座に還流したものといえる。このように,本件資金決済は,ヴィヴェンディを起点として,ヴィヴェンディ・グループ法人の本件各口座を経由して本件ヴィヴェンディ口座に再び資金を還流するというものであるところ,本件資金決済に係る送金は,それぞれ多額であり,かつ,それぞれ複数のヴィヴェンディ・グル
ープ法人名義の口座を経由するという複雑なものであるにもかかわらず,午前9時10分から午前11時16分までの2時間余りの短時間で処理されており,全ての取引当事者がヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社であるからこそ実行可能なものということができることから,同族会社でなければ通常なし得ない行為というべきである。
また,一つの取引に一つの決済が伴うというのは,独立当事者間の通常の取引における原則的な決済方法と考えられるところ,上記のように,本件一連の行為に伴って行われた複数の当事者間の複数の取引に係る会計処理について,大半の資金移動を帳簿上の処理により省略した形で資金決済が行われているのは,本件各口座間で行われた本件資金決済の当事者が全てヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社であればこそ
可能であったというべきである。
この点,独立当事者間の通常の取引においても,事務の省力化や決済手数料の節減という観点から中間的な決済を省略したり,また,当事者間に従前の取引に基づく債権債務関係が存在する場合等には,それらの債権債務を精算した上で必要最低限の資金移動のみを行うよう取り決めた
りして,資金決済を省略することもあり得ることといえる。しかしながら,本件資金決済において必要最小限の資金移動を行うのであれば,NATIXIS銀行のヴィヴェンディ名義口座から三菱UFJ銀行渋谷明治通支店の原告名義の口座に対して直接2億7432万円の送金を行うだけで足りたはずである。このように,仮に,ヴィヴェンディ・グルー
プが決済手数料等の節減のために必要最低限の資金移動による決済のみを行い,会計処理に対応した決済を省略したのだとしても,ヴィヴェンディ名義の上記口座及び原告名義の上記口座以外の預金口座に資金を通過させる合理的な理由は見当たらず,これらの資金移動を行う必要性は認められないというべきである。

原告が無担保で本件借入れをしていること
原告は,本件借入れ当時いわゆるペーパーカンパニーであり,見るべき資産や近い将来相当の収益が得られる見込みのある事業も有していなかったにもかかわらず,同じくヴィヴェンディ・グループに属する同族会社であるUMIFから,無担保で約866億円もの多額の融資を受けたというのであって,このような融資はヴィヴェンディ・グループ法人という同族関係を前提としなければ到底あり得ないものであった。したがって,本件借入れ自体に着目しても,本件借入れは原告がヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社でなければ通常なし得ないものであったことは明らかである。
原告の意思決定の経緯について

本件一連の行為に係る原告の意思決定の経緯についてみると,CMHLから原告に対する295億円の本件増資は,平成20年10月29日午前9時30分に決済がされているが,原告が,その意思決定機関であるマネジメント・コミッティーにおいて,本件増資について承認したのは,同日午前11時から午前11時2分までのことである。同様に,原
告のUMIFからの本件借入れについては,同日午前9時50分に決済がされているところ,原告がマネジメント・コミッティーにおいて本件借入れを承認したのは,同日午前11時2分から午前11時4分までのことであり,原告からUMTCに対するUMKK株式代金の支払についても,午前10時48分に行われているにもかかわらず,原告がマネジ
メント・コミッティーにおいて本件買収を承認したのは,同日午前11時4分から午前11時6分の間のことである。原告の業務執行規程上,原告の意思決定機関はマネジメント・コミッティーであるところ,本件一連の行為のうち本件増資,本件借入れ及び本件買収については,原告の意思決定機関であるマネジメント・コミッティーによる承認が行われ
る前に,資金の決済が実行されており,原告の意思決定とその実行との前後関係が逆転している。このように,原告の意思決定がされる前に,意思決定に基づかない資金決済が先行して実行されているのは,原告がヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社であり,その意思決定が親会社によって自由に支配されているためである。上記のような原告の意思決定の経緯からしても,本件一連の行為は,原告がヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社であればこそ実現可能であったもので
あり,同族会社でなければ通常なし得ない取引というべきである。小括
以上のとおり,本件一連の行為は,会計処理上も実際の資金決済の上でも,ヴィヴェンディ・グループ内の資金還流(循環取引)を前提として初めて実行可能なものである上,原告の意思決定機関であるマネジメン
ト・コミッティーによる承認前に資金決済の一部が行われており,このような取引は,全ての取引当事者がヴィヴェンディ・グループ法人であって,ヴィヴェンディが原告の意思決定を自由に支配し得るという同族会社であればこそ実現可能なものである。したがって,本件一連の行為は,同族会社でなければ通常なし得ないものであることが明らかであ
る。なお,このことは,仮に予備的主張1又は予備的主張2を前提としても同様である。

本件一連の行為が,ヴィヴェンディ・グループ内の支配関係,事業運営等に与えた実質的な経済的影響はなく,経済的合理性がないこと

法人格と組織形態の変更による経済的な影響はないこと
本件一連の行為の前において,ヴィヴェンディ・グループ法人で日本国内の音楽事業を行っていたのは株式会社であるUMKKであったが,本件一連の行為の後においては,合同会社である原告に変更された。しかしながら,平成20年12月31日現在の原告は,事業拠点とな
る固定的施設や従業員を有しておらず,売上高等の事業活動を示す収益計上もなかった。このように,原告は,本件設立(平成20年10月7日)から本件合併(平成21年1月1日)までの約3か月間,固有の事業所や従業員を有しておらず,事業活動も行っていないいわゆるペーパーカンパニーというべき状態にあった。
他方,①UMKKが作成した想定問答集には,原告がUMKKの全ての事業と従業員を引き継ぎ,事業内容も同じであって,単に社名と組織を変更するのみで事務運営は全く変わらないことが記載されていたほか,②原告が報道関係者向けに作成した合併,及び役員人事に関するお知らせと題する文書には,原告は,UMKKと合併してUMKKの全ての権利義務を承継したところ,ヴィヴェンディ・グループに属する法人
の100%出資による日本法人であるという位置付けに変わりはなく,事業内容も従来どおりであり,UMKKの役員が引き続き原告の役員であることが記載されていた。さらに,③原告の登記簿上の目的の内容は,UMKKのそれと同一であり,UMKKと原告の事業部の部署名もその多くがそのまま引き継がれていたほか,④UMKKにおいて一定の
議事を審議するために行われていた取締役会と同様に,原告においても,一定の議事を審議するためにマネジメント・コミッティーが置かれており,本件合併直後の平成21年1月5日に開催されたマネジメント・コミッティーにおいては,UMKKによる平成20年の音楽事業の売上げと利益に係る報告が行われるとともに,原告による平成21年の
音楽事業に係る目標設定をも併せて審議していた。加えて,⑤本件合併直前のUMKKの売掛金の相手先と本件合併後の原告の売掛金の相手先に変わりはなく,在庫製品の種類や金額規模を比較しても,その事業内容が変化したと認めるに足りる違いはない。このように,本件一連の行為の前後で,日本国内の音楽事業を行う主体が株式会社であるUMKK
から合同会社である原告に変わったことは,単なる社名と組織形態の変更にすぎず,事業内容等の実質的な変更をもたらすものではなかった。したがって,本件一連の行為により日本国内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)の法人格や組織形態に違いを生じたことにつき,事業運営上実質的な意味があったと認めることはできない。むしろ,本件において組織形態を合同会社とするための方法としては,株式会社であるUMKKを合同会社に組織変更するのが通常であり,組織形態の変更のためにあえて合同会社を新規設立した上でこれと合併させるというのは,経済的合理性のない迂遠な方法といわざるを得ないのであって,経済的,実質的見地から客観的に見て不合理,不自然というべきである。

日本国内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)における支配関係に実質的な変更はないこと
本件一連の行為の前において,日本国内で音楽事業を行うUMKKの直接の親会社はUMTCであったが,本件一連の行為の後において日本国内の音楽事業を行うこととなった原告の直接の親会社はCMHLである
から,日本国内の音楽事業の主体となるヴィヴェンディ・グループ法人の直接の親会社はUMTCからCMHLに変更されている。
しかしながら,日本国内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)の資本関係を遡った場合,本件一連の行為の前後いずれにおいても,ポリグラムに行きつくことに変わりはない。そ
して,CMHL及びUMTC並びにそれぞれこれらの直接の親会社であるCMH及びUMIHBVは,いずれも従業員を有しておらず,事業拠点となるような固定的施設もないほか,中間持株会社としての投資収益以外に収益の計上がない。すなわち,これらの各社は,いずれも固有の事業所も従業員も有しないいわゆるペーパーカンパニーであり,日本国
内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)に対して事業上何らかのコントロールを及ぼすことができるような機能を有しているものとはいえない。
また,税務調査の際,フランスからヴィヴェンディの税務・財務担当者が来日し,調査担当者に対して本件再編成等スキームについて説明したことや,その目的や計画を記載した文書の作成者や本件再編成等スキームに係るメールの送信者がヴィヴェンディに所属する者であったことからすれば,少なくとも税務・財務面におけるプランニングや対外的対応は,組織再編の前後を問わず,究極の親会社であるヴィヴェンディが主体となって行っていたものと認められる。
したがって,日本国内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人
(UMKKないし原告)の親会社がUMTCからCMHLに変更されたとしても,両者ともペーパーカンパニーであったことからすれば,ヴィヴェンディ・グループ内の支配関係に実質的な変更はなく,日本国内の事業運営に具体的な影響を及ぼしたものとは認め難い。
以上のことからすれば,本件一連の行為の前後で,日本国内で音楽事業
を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)に対する実質的な支配関係及び事業運営には何ら変更がないものと認められる。資本金の額が増額されたことは実質的な経済的影響を生じさせていないこと
本件一連の行為の前において,日本国内の音楽事業を行っていたUMK
Kの資本金は35億6100万円であったのに対し,本件一連の行為の後において,原告の資本金は295億0200万円となり,日本国内の音楽事業を行う主体の資本金が形式的には約260億円増加した。しかし,UMKKの平成20年12月期末において,UMKKは,資本準備金として32億5000万円,利益準備金,固定資産圧縮積立金及
び繰越利益剰余金の合計額として約247億円の利益剰余金を計上しており,純資産の部(株主資本)の残高としては,資本金額35億6100万円に上記資本準備金及び利益剰余金の合計約279億円を加えた合計約315億円を計上していた。他方,原告は,平成20年12月期末において,純資産の部(株主資本)の残高として約284億円を計上していた。
そうすると,本件合併直前のUMKKと本件合併後の原告とを比較して,資本金額が約260億円増加したというのは,本件合併直前のUMKKにおいて,株主資本のうち資本準備金及び利益剰余金として計上していた金額を資本金に振り替えて組み入れたのと同視することができる。すなわち,日本国内で音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法
人(UMKKないし原告)の株主資本の規模(金額)という実質的な観点から見れば,本件合併直前のUMKKの株主資本は約315億円であり,本件合併後の原告の株主資本は約284億円であるから,株主資本の規模に大きな変更があったとはいえない。したがって,資本金額の増加といっても,株主資本の内訳(組み入れた科目)が変更されたにすぎ
ないということができ,実質的に意味のある変更とはいえない。
本件一連の行為により資産や収益の増加をもたらしていないこと
本件一連の行為の前において,UMKKは,実質的に固定的な負債を有していなかったのに対し,本件一連の行為の後においては,原告に固定的な負債866億6132万円が新たに生じた。

原告は,本件借入れ及び本件増資により得た資金を用いて,UMKK株式という資産を取得したが,原告が取得したUMKK株式は,本件合併に伴い,抱合い株式消滅損失の計上により消却処理されて消滅した結果,原告は経済的に何ら得るものはなく,財務上544億6336万7532円の債務超過となった。

他方,原告は,本件合併により,UMKKの有していた資産・負債をそのまま引き継ぎ,日本国内でヴィヴェンディ・グループの音楽事業を行うこととなったものの,かかる変更は実質的なものとは認め難い。また,UMKKないし原告において,本件一連の行為を通じて,新たな資産を取得したり,新たな収益が生じるなど,何らかの経済的価値の流入があったとは認められず,かつ,将来的に収益の増加が見込まれることとなったなどの事情も認められない。そればかりか,原告においては,
本件借入れに基づいて利息が発生することにより,年間数十億円の利益が減少することが見込まれることとなった。
このように,日本国内の音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)においては,本件一連の行為を通じて,本件借入れにより多額の負債が発生したにもかかわらず,それに見合うだけの
資産や収益等が生ずることはなく,事業上実質的な変更がないにもかかわらず,利益の減少だけが見込まれることとなった。したがって,本件一連の行為は,原告において,資産や収益の増加をもたらすことなく,本件借入れによる負債のみを生じさせるものであるから,経済的,実質的見地から客観的に見て経済的合理性を欠くことは明らかである。

ヴィヴェンディ・グループの組織再編としても経済的合理性を欠くこと原告の少数株主等であるヴィヴェンディ・グループ全体ないしその究極の親会社であるヴィヴェンディから見ても,本件一連の行為は,同グループの組織再編として経済的合理性を欠くものである。

日本国内において音楽事業を行うヴィヴェンディ・グループ法人(UMKKないし原告)の組織形態が株式会社から合同会社に変わっても,当該音楽事業の実態に何ら変化がなかったことからすれば,UMKKの組織形態を合同会社とするために,あえて合同会社を新規設立した上でUMKKを吸収合併するという迂遠な方法をとる必要はなく,株式会社であるUM
KKを合同会社に組織変更すれば足りるのであるから,本件一連の行為を日本におけるヴィヴェンディ・グループの組織再編として見たとしても,経済的,実質的見地から客観的に見て不合理,不自然というべきである。また,原告は,平成20年10月29日,UMKK株式を取得(本件買収)した上で,平成21年1月1日にUMKKを消滅会社として本件合併を行っている。通常,合併に先だって合併法人が被合併法人の株式を全て取得するのは,被合併法人の買収により親法人となった合併法人が,その後の合併に当たって被合併法人の意思決定を自ら行うことができるからである。しかしながら,原告及びUMKKは,従来から,資本的にいずれもヴィヴェンディ・グループの完全支配下にあった法人であり,被合併法人であるUMKKの意思決定はもともとヴィヴェンディにより自由に行うこ
とができたのであるから,原告が本件合併をする上で,その合併に先立ってUMKK株式を取得(本件買収)しておくことは必要ではなかった。そうすると,本件一連の行為は,原告がUMKKの吸収合併を実現するために必要でない本件買収をあえて行ったという点で迂遠であり,日本におけるヴィヴェンディ・グループの組織再編としても,経済的,実質的見地か
ら客観的に見て不合理,不自然というべきである。
さらに,本件一連の行為の前において,原告は,200万円の出資で設立され,事業拠点となる固定的施設や従業員もなく,特に事業活動を行っていない状態にあり,295億円という本件増資や約866億円という本件借入れの規模に比して僅少な資本金額のいわばペーパーカンパニーで
あって,本件合併直前の平成20年12月期において,何ら営業利益を計上していない一方で,本件借入れに係る利息により10億円を超える損失を計上していた。これに対し,UMKKは,平成18年12月期及び平成19年12月期には約74億円,平成20年12月期には約111億円の営業利益をそれぞれ計上しており,日本国内の音楽事業を行う法人として
優良な事業実績を達成していた。そうすると,上記のとおり,原告は,後に本件合併に伴って消滅することとなるUMKK株式以外にこれといった保有資産もなく,実体的な事業を行ってもいないいわゆるペーパーカンパニーであるにもかかわらず,本件合併により,優良な営業実績を達成していたUMKKを吸収合併したということになり,原告とUMKKとの経済的実態からすれば,本件一連の行為は,組織再編としても,経済的,実質的見地から客観的に見て不合理,不自然であるというべきである。


本件における原告の行為は経済的合理性がないこと(予備的主張2に係る当てはめ)
仮に予備的主張2を前提としても,本件借入れは同族会社でなければ通常なし得ない行為であること,本件再編成等スキームを実行するため本件借入れにより本件一連の行為を成し遂げたことが,ヴィヴェンディ・グループ内の支配
関係,事業運営等に実質的な経済的影響を与えていないこと,ヴィヴェンディ・グループの組織再編としても経済的合理性を欠くことは,上記⑷で主張したところと同様である。

原告の主張に対する反論

オランダ法人の負債軽減との主張について
ヴィヴェンディ・グループにとってオランダ法人の負債軽減を図ることが適切であったとしても,UMKKないし原告にとって経済的合理性があることとは直接結びつくものではない。すなわち,オランダ法人の財務が健全化されたとしても,それによって原告に生じる利益は,抽象的なもの
であり個別具体的な経済的利益といえるものではない。仮に何らかの具体的な経済的利益が原告に生ずるとしても,原告は,約566億円の残元本を,その後に獲得する資金から返済していかなければならないとともに,その負債に対する利息の支払は,年間数十億円という巨額に上るものであり,UMKKの営業利益の額の過半にもなり得る規模のものであって,得
られる経済的利益はかかる負債の規模を上回るものとはいえない。そもそも,原告がいうオランダ法人の負債の額や内訳等も明らかではない。したがって,原告の主張するオランダ法人の負債に係る事実関係自体を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
更にいえば,ヴィヴェンディ・グループがオランダ法人の負債を軽減するために,UMKK株式の売却代金を原資とした理由が明らかではなく,その必然性,合理性は何ら明らかとはなっていない。


日本の関連会社の経営の合理化,資本関係の整理について
原告の主張によっても,その主張に係る本件8つの目的のうち,目的②,目的③,目的⑥,目的⑦及び目的⑧がどのような関係があるのかが具体的に明らかとなっておらず,単に日本の関連会社の経営の合理化という項目によってまとめることができそうな目的を寄せ集めただけで,柱と呼べ
るような実体はないものといわざるを得ない。また,結局のところ,ヴィヴェンディ・グループにとっての日本の関連会社の経営の合理化が目的であったというものにすぎず,UMKKないし原告にとっての経済的合理性の有無と直接結びつくものではない。これらの達成により,ヴィヴェンディ・グループにとって日本の関連会社の経営の合理化が図られ,ヴィヴェン
ディ・グループに何らかのメリットが生じるとしても,そこから日本法人にもたらされるメリットは間接的かつ将来的に得られる可能性のある一般的,抽象的なものにすぎない。仮に,そのような利益が生じるのだとしても,原告ないしUMKKにとっては,約866億円の負債のみが増加し,約300億円の余剰資金が失われるだけでなく,この資金の額を大きく上回る
額の元金の返済が更に必要になるとともに,その負債に対する年数十億円もの利息を支払わなければならなくなるという犠牲を払うこととなるのであり,上記のような抽象的なメリットが上記の犠牲を上回るとは到底いえない。

ヴィヴェンディ・グループの財務の合理化(目的④及び⑤)についてヴィヴェンディがユーロ建ての高い金利を享受できていなかったことやヴィヴェンディ・グループにとって為替リスクが生じており,このような状況を解消する必要があったとしても,それは親会社であるヴィヴェンディあるいはヴィヴェンディ・グループ全体にとっての事業目的であって,UMKKないし原告にとっての事業目的ではないから,無関係であるというほかない。
原告の主張によっても,日本法人の財務が合理化されることによってもたらされる原告の経済的利益とは,ヴィヴェンディあるいはヴィヴェンディ・グループにもたらされるメリットを通じてヴィヴェンディ・グループ全体の財務力が高まることによってもたらされる利益であり,かつ,経済
的利益ないしメリットの多くは必ずしも定量化することができない定性的なものだというのであるから,ヴィヴェンディ・グループに属する者であれば間接的に享受することができる抽象的なものにすぎないし,現実には,実際に享受するかどうかも分からないものである。
仮に,そのような利益が生じたとしても,原告にとっては,約866億
円の負債のみが増加し,約300億円の余剰資金が失われるだけでなく,この資金の額を大きく上回る額の元金の返済が更に必要になるとともに,その負債に対する年数十億円もの巨額の利息を支払わなければならなくなるという犠牲を払うこととなるのであるから,原告の主張するような上記の間接的かつ抽象的な利益が原告の犠牲を上回るとは到底い
えない。
本件財務関連取引をするに当たりヴィヴェンディが用いた資金は,もともとUMKKが有していた余剰資金300億円であった。そして,当該資金が流用されて原資の一部となって原告に対する本件貸付けが行われた上で,本件買収及び本件合併が行われたのであるから,UMKKないし原告
からすれば,本件借入れは,いわば,自身の有する余剰資金を自らが借りて負債を生じさせたものであるということができる。つまり,本件借入れは,その原資の点からみても,日本の関連会社であるUMKKないし原告に,新たな資産や収益の流入を生じさせることなく,負債のみを生じさせるものであったというべきである。
その結果,UMKKないし原告は,余剰資金300億円を失うのみならず,約544億円の債務超過の状態となり,失った余剰資金の額を大幅
に上回る金額の負債を引き続き返済する義務を負うとともに,本件借入れに係る利息を支払わされることにより,業績が堅調であり十分な収益力を有するUMKKであった状態から年間数十億円の利益が減少することが見込まれることとなってしまったのである。
このように,本件借入れをその原資から検討しても,およそ経済的合理
性は認められないものであったことが明らかである。


小括
以上に述べたところによれば,ヴィヴェンディ・グループは,本件一連の行為によって,原告を設立し(本件設立),いわゆるペーパーカンパニーである
直接の親会社が入れ替わるだけで日本国内の音楽事業の実態やヴィヴェンディ・グループ内の支配関係等に実質的な変更を来すことなく,また,新たにUMKKないし原告に収益や資産の増加をもたらすこともなく,多額の負債を負担させることにより,利益の減少だけが見込まれることとなったのであるから,本件一連の行為(又は少なくとも本件借入れ)は,UMKKないし原告に
とって,それ自体,経済的,実質的見地から客観的に見て不合理,不自然といえる(なお,日本におけるヴィヴェンディ・グループの組織再編として見ても,本件一連の行為は,経済的,実質的見地から客観的に見て,不合理,不自然というべきである。)。また,本件一連の行為は,このような現実の資金を要しないヴィヴェンディ・グループ内の資金還流によって初めて全体として実
行可能であり,全ての取引当事者がヴィヴェンディ・グループ法人という同族会社であるからこそ実現可能なものであって,同族会社でなければ通常なし得ない行為である。したがって,本件一連の行為は,同族会社でなければ通常なし得ない経済的合理性を欠く行為であるから,それにより生じた税負担減少結果は法132条1項にいう不当と評価できる。
(原告の主張の要旨)


租税回避の意図,目的(主観的要件)
不当性要件の該当性については,当該行為の経済的合理性の有無によって判断するべきであるが,同族会社の行為又は計算に,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的があったと認められる場合には,その事実は,不当性要件の評価障害事実として,同要件の認定判断において考慮する必要があり,正当な理由ないし事業目的があれば不当ということは困難であり,否認は許されな
いと解するべきである。


経済的合理性の有無の判断対象となる法人
法人税法132条1項は,次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときと規定しており,次に掲げる法人として,内国法人である同族会社(同項1号)等,その属性によって,適用対象の法人を列挙している。このように,同項は,行為又は計算の主体の属性が同項各号のいずれかに該当する場合にのみ適用されるという構造の規定であることから,文理上,その法人
(同項柱書のその法人)は,法人税につき更正又は決定を受けた法人(更正対象法人)を指すとしか解しようがない。このような解釈は,同項はあくまでも同項が定める法人という単体の法人の法人税の負担の不当な減少に対処するための規定であり,複数の法人から成る企業グループ全体での法人税の負担を問題とする規定ではないという同項の位置付けとも整合するものである。
したがって,その法人の行為又は計算とは,更正対象法人の行為又は計算を意味するものであり,それ以外の法人の行為又は計算は,たとえ株主,グループ法人等その法人と密接な関係のある法人の行為又は計算であっても,これに含まれないと解すべきであり,本件においては,原告のみがその法人に該当し得るというべきである。⑶
行為又は計算の解釈

法人税法132条1項は,その法人の行為又は計算のうち,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについて,これを否認して正常な行為又は計算に引き直して所得等を計算する権限を税務署長に与えているものである。そうすると,その法人の行為又は計算を容認するか否認するかにかかわらず,およそ法人税の負
担に影響がない行為又は計算は,そもそもその法人の行為又は計算に該当しない。また,およそ租税法上の効果は,個々の私法上の行為を基礎として,当該私法上の行為について租税法が課税要件を定めているために発生するものであるところ,同項は,その法人の行為に対して,その行為に基づいて生じた事実をなかったものとして租税法上の効果を計算する権限を税
務署長に与えた規定であることからすれば,否認の対象となるその法人の行為は,引き直しを行うことにより課税要件を満たし得る私法上の行為をいい,引き直しを行ったとしても,およそ課税要件を満たし得ない行為,つまり法人税の負担に影響がない行為はこれに含まれない。同項の文言上も,その法人の行為又は計算を容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果が生じるという,行為又は計算と法人税の負担の減少との結びつきが要求されている。かかる同項の趣旨及び文言からすれば,更正対象法人のある行為又は計算を容認したとしても,更正対象法人の法人税の負担の減少に結びつかない行為又は計算は,同項の適用対象であるその法人の行為又は計算に含まれないと解するべきである。
加えて,法人税法132条1項には,その法人の行為が複数の行為を含むという解釈の手がかりとなるような文言は一切なく,むしろ,同条2項は,同族会社の判定時期について

同項に規定する行為又は計算の事実のあった時の現況によるものとする。

と規定している。このような同項の文理と,課税要件である私法上の行為は私法上の規律に従い各々の単一の私法上の行為(借入れや合併等)を意味することを併せ考慮すると,同項のその法人の行為は,単一の時点における一個の行為であることを前提として
いるものと解される。
したがって,更正対象法人の法人税の負担の減少に結びつかない行為又は計算は,その法人の行為又は計算には含まれず,また,一連の行為のような私法上の複数の行為をまとめてその法人の行為又は計算に該当するとして法人税法132条1項を適用するということは同項の想定するところ
ではないというべきである。

本件におけるその法人の行為又は計算に該当し得る行為
本件設立
設立とは会社を成立させる行為のことであるところ,合同会社において
は,設立はその合同会社の社員になろうとする者による,定款の作成(会社法576条),出資の履行(同法578条),設立登記申請等の行為であり,設立される合同会社の行為ではない。すなわち,本件設立は,原告の社員になろうとしていたCMHLによる行為であり,原告の行為ではないため,その法人の行為又は計算とはなり得ない。ま

た,本件設立によって法人税を負担する主体である原告が成立したのであるから,本件設立によって原告の法人税の負担が減少することはおよそなく,本件設立は原告の法人税の負担の減少とはおよそ結びつかない行為である。
したがって,本件設立は,法人税法132条1項のその法人の行為又は計算とはなり得ない。本件増資,本件買収及び本件合併
本件増資は,原告の税務上の資本金等の額の増加を生ずる行為であるにすぎず,本件増資によって原告の法人税の負担が減少することはなく,本件増資は原告の法人税の負担の減少とはおよそ結びつかない行為である。
本件買収は,原告の行為であるが,本件増資及び本件借入れにより調達した資金により,それに見合う資産であるUMKK株式を購入したものであり,原告の収益若しくは時価ベースの資産を減少させ又は原告の損失を増加させたものではない。
本件合併は,原告がその完全子会社となったUMKKを吸収合併したも
のであり,原告の行為ではあるが,原告は合併法人(存続法人)であるから,本件合併は原告の税務上の資本金等の額の減少を生ずる行為であるにすぎない。したがって,本件合併によって原告の法人税の負担が減少することはおよそなく,本件合併は原告の法人税の負担の減少とはおよそ結びつかない行為である。

本件一連の行為の全体
本件一連の行為については,原告が本件設立により設立され,本件増資及び本件借入れにより原告が調達した資金により本件買収を行い,これに関連してヴィヴェンディ・グループ法人間の資金の流れが生じ,また本件買収の結果原告の完全子会社となったUMKKを原告が本件合併に
より吸収したという事実上の関連性があることは認めるが,本件一連の行為の全体を法人税法132条1項に定めるその法人の行為又は計算に該当すると捉えることはできない。一連の行為のような私法上の複数の行為をまとめ,否認対象としない行為まで含めてその法人の行為又は計算に該当するとして法人税法132条1項を適用するという
ことは同項の想定するところではない。被告は,本件一連の行為全体を否認すべきであるとしつつ,課税標準等の計算においては,本件借入れのみをなかったこととして計算しているが,このように否認すべき行為と課税標準等の計算の方法が齟齬するのは,被告のその法人の行為又は計算の解釈適用が誤っていることを示すものである。⑷
本件借入れは経済的合理性があること

本件組織再編取引をする経営上の必要性
本件組織再編取引は,ヴィヴェンディ・グループが全世界で買収を重ねた結果錯綜したグループ内の関連会社の関係を整理して事業を効率化するとともに財務上の利益を図るために実施されたものであり,次のようなオランダ法人の負債軽減(目的①),日本法人の経営の合理化(目的②,③,⑥,⑦
及び⑧)及び日本法人の財務の合理化(目的④及び⑤)の3つの柱(本件8つの目的)を同時に達成するために行われたものである。
目的①
目的②

日本法人を1つの統括会社の傘下にまとめること

目的③
オランダ法人全体の負債を軽減するための弁済資金を取得すること
日本における音楽出版事業会社を合併により1社とすること

目的④

日本法人の円余剰資金を解消し,ヴィヴェンディが為替リスクをヘッジすることなく,ユーロ市場での投資活動を行うことを可能にすること

目的⑤

日本法人の資本構成に負債を導入し,日本の関連会社が保有する円建ての資産及び日本の関連会社が生み出す円建てのキャッシュフローに係る為替リスクを軽減すること

目的⑥

業務系統と資本系統の統一を図ることにより経営を合理化・効率化すること及びUMOの余剰資金を減少させること

目的⑦

日本法人を合同会社にすることにより,米国税制上のメリットを受け,又はデメリットを回避するとともに,原告を含む日本の関連会社の柔軟かつ機動的な事業運営を行うこと

目的⑧

当時検討されていた日本におけるヴィヴェンディ・グループ外の音楽会社の買収に備えること

オランダ法人の負債軽減(目的①)について
ヴィヴェンディ・グループとしては,オランダ法人において,負債の支払利息が営業利益を大幅に上回る状況であり,営業利益に比して過大な負
債を抱えていたため,財務戦略の観点から,かかる過大な負債を軽減する必要があった。つまり,営業利益に比して過大な負債を抱えたオランダ法人は,その営業利益を原資として過大な負債の利息を支払うことができないため,過大な負債の利息の支払のために,更なる負債等による資金調達を行う必要に迫られるという悪循環に陥りかねず,債務不履行のリスクを
生じさせ,第三者からの信用や評判を失墜するおそれがあった。そのようなおそれを生じさせないことはヴィヴェンディ・グループの財務戦略上,極めて重要であるため,オランダ法人の負債の弁済資金を調達することにしたのである。そして,実際の結果としても,オランダ法人全体の負債が軽減され,ヴィヴェンディ・グループ全体の財務状況がより適正化され
た。
UMTCがその株式の100%を有していたUMKKは,堅調な業績を反映して,純資産額を大幅に超える1144億1900万円もの企業価値(株式時価総額)を有していた。したがって,UMTCによるUMKK株式の譲渡(本件組織再編取引の一部)は,まさにオランダ法人の負
債軽減のための資金調達に適した取引であった。本件組織再編取引によりオランダ法人であるUMTC及びMGBBVは,UMKK及びMGBKKの株式売却代金をそれぞれ受け取り,この資金をオランダ法人であるポリグラム及びUIMBVに対して貸し付けた。そして,ポリグラムは,UMIFに対する既存の負債である4億8292万3460ユーロ
を弁済し,UIMBVは,UMIFに対する既存の負債である4億0932万3499ユーロ及びヴィヴェンディ・グループの資金管理を行うフランス法人であるUMGTに対する既存の負債である6650万9535ユーロをそれぞれ弁済した。これにより,オランダ法人全体のUMIF及びUMGTに対する負債が軽減された。なお,オランダ法人間での貸借関係は発生するが,オランダ法人内において,連結親子会社間の貸借関係は相殺され消去されることになる。このように,結局のところ,本件組織再編取引とこれに伴う本件財務関連取引によって,オランダ法人全体の負債は,9億5875万6494ユーロ減少した。
ヴィヴェンディ・グループでは,本件組織再編取引当時から現在に至るまでCMS(資金集中管理制度)を採用している。ヴィヴェンディ・グル
ープが採用しているCMSは,大企業が一般的に活用しているものと同じ制度である。CMSを導入する経済的なメリットとして,親会社が一括して資金調達をすることで,グル―プ各社が直接行うよりも有利な条件で,機動的にかつ安定して借入れを行うことができることが挙げられる。ヴィヴェンディ・グループにおいては,グループ外部の銀行等から借入
れを行うのはヴィヴェンディのみであるところ,ヴィヴェンディは,ヴィヴェンディ・グループ法人(関連会社)全体の資産状況に基づくその信用力を活かして,有利な条件で,機動的にかつ安定して借入れや社債発行による資金調達を行うことができる。そして,ヴィヴェンディ・グループの財務力が高まれば,ヴィヴェンディの信用力もより高まる(信
用リスクがより低くなる。)ため,いわゆるリスクプレミアム(利息の利率が上がること)を抑えることができ,ヴィヴェンディの負債による資金調達力がより高まることになる。
他方で,ヴィヴェンディ・グループの財務力が高まることにより資金調達力が高まることは,ヴィヴェンディ・グループのCMSに参加してい
る原告を含むヴィヴェンディ・グループ法人が,市場の状況等にかかわらず,機動的にかつ安定して何らのリスクを負担することもなく自国の通貨でCMSに基づき資金を調達できることになるということを意味する。すなわち,原告にとっては,銀行等の日本の金融機関から借入れをする場合に比べて,市場の状況や個別金融機関の状況に応じた個別の与信審査や交渉,実務手続等の手間を一切かけることなく,機動的にかつ安定して何らのリスクを負担することもなく自国の通貨で資金を調達で
きるようになるということである。このことは,原告において,経営の3要素であるヒト・モノ・カネのうちカネの心配をしなくて済むということであって,原告にとっては多大な経済的利益である。この意味で,ヴィヴェンディ・グループの経済的利益は,最終的には原告の経済的利益と連動している。


日本法人の経営の合理化,資本関係の整理(目的②,③,⑥,⑦及び⑧)について
本件組織再編取引等の前,日本法人にはUMKK(UMPKK等のその子会社を含む。),MGBKK及びV2Jの3つの会社群があった。主要
なレコード音楽会社であるUMKKの親会社がオランダ法人であるUMTCであったのに対し,MGBKKは親会社がオランダ法人であるMGBBVである。またV2Jの親会社は英国法人であるV2であって,各社の親会社は異なっていた。このように本件各日本法人の間に直接の資本関係がなく,持株会社も存在しなかったため,日本における事業を統一的に管理
することが困難な状況であった。そのため,日本における事業を統一的に管理し,将来買収する会社の株式を統一的に保有するために,持株会社を設けてその傘下に他の日本の関連会社を子会社として帰属させることが必要であった。
また,本件各日本法人は,業務遂行の指揮監督を英国法人であるUMG
Iから受けていたが,上記のとおりUMKK及びMGBKKの親会社はオランダ法人であるUMTC及びMGBBVであり,オランダ法人と資本関係があったものの,英国法人とは資本関係がなく,資本関係と指揮監督関係に齟齬が生じていた。そのため,資本関係と指揮監督関係を一致させて日本法人を合理的・効率的に管理するために,UMKKとMGBKKについて,英国法人と資本関係を持たせる必要があった。
さらに,ヴィヴェンディ・グループは,買収により日本の音楽出版事業会社であるMGBKKを傘下に収めたが,ヴィヴェンディ・グループは既にUMPKKという音楽出版事業会社を有していたため,これらを合併により1つの法人とすることで,音楽出版事業会社として経営効率を高めることが必要であった。

本件組織再編取引の後,英国法人の最上位にあり,英国法人の持分会社であるCMHの傘下に日本法人を置くことにより,日本法人と英国法人との間の事業遂行上の指揮監督関係と資本関係の統一化を図ることができた。
その結果として,ヴィヴェンディ・グループは,事業遂行上の指揮監督
関係と資本関係が複雑に入り組んだ従前の体制に比して,経営の合理化・効率化を図ることができた。このように,事業遂行上の指揮監督関係と資本関係の統一を図ることにより,経営を合理化・効率化する(販売チャネルの獲得,営業ノウハウの共有,商品・サービス・価格支配力の向上,規模の拡大等による仕入,販売,物流,製造等に係るコストの
削減)という経済的利益を生じさせたのである。
本件組織再編取引等の前,UMOには約2億ポンドの余剰資金があった。UMOは,この余剰資金約2億ポンドをヴィヴェンディ・グループのCMSによってUMGTに預金していた。UMGTは,UMOから預かった余剰資金約2億ポンドを,ヴィヴェンディに貸し付け,ヴィヴェンディ
は,当該余剰資金約2億ポンドという貸借対照表リスク(貸借対照表に計上する外貨建ての金融資産に関する為替レート変動によるリスク)を有する外貨建ての金融資産を保有していた。ヴィヴェンディは,ヘッジポリシーに従い,約2億ポンドのポンド資金に係る貸借対照表リスクを為替ヘッジする(リスクを避けるため,ある通貨と逆の動きを示す通貨の取引をする)ため,ポンドとユーロを交換し,将来の一定の時点で反対の交換をする通貨スワップ取引(本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引)の付随するユーロ建て預金を行った。ところで,その当時,ポンドの金利(4.41%)とユーロの金利(4.33%)の差は0.08%と極めて小さかったが,将来,ユーロ及びポンドの金利が変動することによって,為替ヘッジのための費用が発生するリスクは残っており,ヴィヴェンディは,余剰
資金約2億ポンドのポンド資金に係る貸借対照表リスクを消滅させることにより本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を打ち切る必要に迫られていた。
もっとも,UMOの当該余剰資金は,英国法上の1事業年度における配当額の上限を大幅に上回るものであったため,約2億ポンドの余剰資金
を単純に配当によりヴィヴェンディに還流させて,ユーロに両替することで貸借対照表リスクを消滅させるには,一定の年月を要する状況であった。そのため,本件組織再編取引を実行するに当たり,ヴィヴェンディは,ヴィヴェンディ・グループ外に預金していたUMOの余剰資金に由来するユーロ建ての預金を引き出し,本件ポンド・ユーロ通貨スワ
ップ取引に基づき,ユーロ資金を渡し,ポンド資金を受け取った。ヴィヴェンディは,その結果入手した当該約2億ポンドのポンド資金を,CMHLの原告に対する295億円(約2億ポンド相当額)の出資の原資として使用した。これにより,ヴィヴェンディが本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引により為替ヘッジしていた分の約2億ポンドのポンド資
金に係る貸借対照表リスクは消滅し,ヴィヴェンディは,本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を行う必要がなくなった。一方で,本件財務関連取引の実行に必要であったポンドとユーロの両替により,ヴィヴェンディは,ユーロ資金と引き換えに,1億9995万4332ポンドのポンド資金を入手した。ヴィヴェンディは,入手した約2億ポンド(1億9995万4332ポンド)のポンド資金を,ユーロに両替して,ユーロ建ての負債を弁済した。
このような取引により,ヴィヴェンディ・グループ全体において資金調達費用の節約による財務上の利益がもたらされることが見込まれることとなった。
原告の間接的な完全親会社には米国法人であるUMGがあるところ,本
件組織再編取引により,原告を含む日本の関連会社を合同会社とすることで,米国税制上,構成員課税(事業体が稼得した所得を,当該事業体ではなく当該事業体の構成員に帰属させて課税する,米国法上の制度である。)を選択でき,その場合,原告は,UMGと法人格を同一とするUMGの支店として取り扱われることになる。これにより,UMGに対し,た
とえば米国税制上のいわゆるCFC税制が適用される等のデメリットを回避することができる。
また,本件組織再編取引により,原告を含む日本の関連会社を合同会社にすることで,柔軟かつ機動的な事業運営を行うことが可能となる。具体的には,合同会社には,機関設計に関する規制がないため,株式会社
と異なり,社員間の合意で業務執行を行い(会社法590条1項),必要に応じて業務執行社員(法人又は自然人)を選任することができ(同法591条,598条1項),株式会社におけるような株主総会及び取締役の設置義務(同法326条1項)はなく,また,大会社(同法2条6号)に相当する規模の会社であっても会計監査人及び監査役の設置義
務(同法328条,327条3項)がない点で,不要な機関設計に係る費用を削減しつつ,柔軟な事業運営を行うことが可能になる。そして,上記のとおり株主総会及び取締役の設置義務がなく,社員間の合意で業務執行を行い,必要に応じて業務執行社員を設置することができる点で,機動的な事業運営が可能となる。実際にも,UMKKは,本件組織再編取引等の前の最終事業年度(平成19年12月期)において優に5億円以上の資本金を有しており,大会社として,法律上の義務に基づき,監
査役及び会計監査人を選任していたが,原告は,会社法上の大会社に相当する規模の会社であるにもかかわらず,会計監査人及び監査役を設置しないことで監査費用を削減できた。また,原告においては,法人であるCMHLを業務執行社員とすることにより,機動的な事業運営を可能にしたものである。

本件組織再編取引当時,日本において,当時のヴィヴェンディ・グループ外の音楽会社の買収が検討されていた。このため,本件組織再編取引により,任意の時期にヴィヴェンディ・グループ外の日本の音楽会社を買収し,必要に応じて適切な時期に適切なヴィヴェンディ・グループの関連会社と合併させることを可能にする,受皿の機能を果たす統括会社(すなわ
ち本件組織再編取引後の原告)を設ける必要があった。実際に,このような買収に必要な体制を整えた後,平成25年4月1日に,原告は日本における株式会社EMIミュージック・ジャパンを吸収合併し,事業を拡大した。

ヴィヴェンディ・グループの財務の合理化(目的④及び⑤)についてヴィヴェンディ・グループが全世界で買収を繰り返して被買収企業の余剰資金を取り込んだことや,UMKKの堅調な業績を反映して,日本の関連会社には円余剰資金約300億円が生じていた。円余剰資金は,CMSに基づきUMGTを介してヴィヴェンディが保有しており,ヴィヴェンデ
ィは当該外貨建て金融資産の貸借対照表リスクをヘッジするために通貨スワップ取引を行っていたため,ユーロ建ての高い金利を享受できない状況にあった。また,オランダ関連会社は営業利益の水準に比して過大な負債を抱えていた一方,日本の関連会社は,やはりUMKKの堅調な業績を反映して営業利益の水準に比して負債が小さく,ヴィヴェンディ・グループ内部の負債純額もマイナス(純額で債権を持つ)という状態となっており,ヴィヴェンディ・グループからユーロ建てでみると,円建ての資産の存在により為替リスクが生じていた。そのため,円余剰資金を解消するとともに,日本の関連会社に負債を導入して,為替リスクをヘッジする必要があった。
円余剰資金の解消及び日本の関連会社への負債の導入を達成すれば,ヴ
ィヴェンディ・グループ全体の財務力が高まり,また原告が本件買収を行うための資金を調達することができるため,日本の関連会社の利益につながるものであった。
ヴィヴェンディにおいては,ユーロ建てで貸借対照表を作成しているところ,原則として,貸借対照表リスクの全てについて,為替ヘッジを行う
ヘッジポリシーを有していた。そして,UMKKは,ヴィヴェンディ・グループのCMSに基づき,余剰資金約300億円をUMGTに円建てで預金していた。UMGTは,UMKKから預かった余剰資金約300億円を,ヴィヴェンディに対して貸し付け,ヴィヴェンディは,約300億円の円資金という貸借対照表リスクを有する外貨建ての金融資産を保有していた。
ヴィヴェンディは,ヴィヴェンディ・グループ外の銀行にこの約300億円の円資金を預金するに当たり,貸借対照表リスクを為替ヘッジする必要があった。そのため,上記約300億円の円資金につき,円をユーロと交換し,将来の一定の時点で反対の交換をする通貨スワップ取引(本件ユーロ・円通貨スワップ取引)の付随するユーロ建て預金をした。通貨スワッ
プ取引では,異なる通貨の金利差が生じるため,これを調整するために,金利の高い通貨の元本を受け取った当事者は,低い金利の通貨を受け取った相手方にこれを調整するための支払をしなければならないから,本件ユーロ・円通貨スワップ取引の付随するユーロ建ての預金は,経済的には円建ての預金と同様の運用効果を有していた。すなわち,ヴィヴェンディにおいては,平成21年(2009年)における日本円の運用利率を年0.97%(運用期間6ヶ月の場合),ユーロの資金調達費用を年4.33%(調達期間6ヶ月の場合)と見積もっており,円及びユーロの金利に差異が存したため本件ユーロ・円通貨スワップ取引による為替ヘッジを継続すると,同取引の対象となる元本にユーロと円との金利差(3.36%)を乗じた額を基準とした費用を負担することとなり,ユーロ建ての預金の高
い金利(年4.33%に近似する利率)をそのまま享受することができなかった。もし為替ヘッジが不要となり,本件ユーロ・円通貨スワップ取引の付随しないユーロ建ての預金を行うことができれば,同取引に係る費用は不要となることが見込まれた。
そのためヴィヴェンディは,上記のユーロ建ての預金を引き出し,本件
ユーロ・円通貨スワップ取引に基づき,ユーロ資金を渡すことと引き換えに約300億円の円資金を受け取った。そして,ヴィヴェンディは,300億円の円資金を,原告に対する貸付け(本件借入れの一部)の原資として使用した。これにより,ヴィヴェンディが通貨スワップ取引により為替ヘッジしていた分の300億円の円資金に係る貸借対照表リス
クは消滅し,ヴィヴェンディは,本件ユーロ・円通貨スワップ取引を継続する必要がなくなり,その費用を節約することができた。一方で,本件組織再編取引の実行に必要であったグループ内の外国為替取引(円とユーロの両替)を行った結果,ヴィヴェンディは,297億2568万円の円資金を入手した。ヴィヴェンディは,入手した297億2568
万円の円資金を,ユーロに両替して,ユーロ建ての負債を弁済した。以上のとおり,ヴィヴェンディが,本件ユーロ・円通貨スワップ取引を終了させ,同取引に係る費用を節約した上で,ユーロ建ての負債を弁済することによって,UMOのポンドの余剰資金についての本件ポンド・ユーロ通貨スワップ取引を終了させ,ユーロ建ての負債を弁済した効果

と併せて,ヴィヴェンディ・グループ全体において平

成21年(2009年)には820万ユーロ,平成22年(2010
年)には810万ユーロの資金調達費用の節約による財務上の利益がもたらされることが見込まれることとなった。これにより,ヴィヴェンディの財務が強化され,その信用が大きく増したのであり,CMSに参加していた原告は,これによる経済的利益を享受することができたものである。


本件借入れは独立当事者間の取引と同じ経済条件でされた行為であること原告がヴィヴェンディ・グループに属さない独立した当事者である法人であると仮定した場合にそのような原告が本件借入れを行うことがおよそあり得ないか否かを検討するに,被告自身も本件借入れが独立当事者間の経済条
件で行われたことを争っていないように,原告が独立した第三者である法人であると仮定した場合であっても,そのような原告が本件借入れを行うことがおよそあり得ないとはいえない。
そもそも,本件組織再編取引の後の,本件利息を損金の額に算入したヴィヴェンディ・グループの日本における法人税の負担は,原告が独立当事者で
あるとした場合における法人税の負担と同額である。すなわち,被告が主張するとおり,経済的合理性の有無を内国法人についてのみ判断するとしても,原告は本件借入れと同様の利率,条件により借り入れて本件買収等を行うことができるから,その場合に利息を損金の額に算入することができるし,本件借入れの利率や条件が独立当事者間のそれと異ならない以上,本件借入れ
をするか否かは経営判断であって,法人税法132条1項の適否に際し,その経営判断の当不当に立ち入った判断をすることはできない。

独立当事者間の取引と比較しても原告は経済的利益を得ていること原告は,オランダ法人の債務の債務引受けをしたのではないし,本件買収によりUMKKの企業価値相当額の株式を取得したうえで,本件合併により同社を吸収合併して,その企業価値全体を承継したのであり,原告の
純資産全体を時価ベースでみれば,原告の企業価値は何ら損なわれていない。本件買収時に,UMKKは多額ののれんを有していたことから,原告は,のれんを含むUMKKの企業価値全体を把握することのできる鑑定評価を行った上でUMKK株式を取得している。のれんは,定量的には,ある企業の取得原価(すなわち,買収価額)と当該企業の貸借
対照表に計上されている純資産の時価との差額として把握される。かかるのれんを計上した貸借対照表を作成して資産の実態を把握しようとすると,原告のUMKK株式取得対価は1144億1800万円(取得に要した付随費用を含めると1144億3196万2396円)であり,またUMKKの平成20年12月31日時点での貸借対照表に計上されている
純資産の価額は315億3779万8166円であるから,これらの差額である828億9416万4230円がUMKKののれんを構成することになる。このように,原告は本件借入れにより増加した負債に対応する資産を有しているのであり,負債だけが増えたわけではない。さらに,当該のれんの譲渡は,通常の資産譲渡と同様に課税の対象取引となり
得るのであり,本件合併が適格合併に該当するため原告については課税が繰り延べられたものの,将来,原告が事業譲渡をした場合には,当該のれんは譲渡益として実現して課税対象になるのであるから,原告は,本件一連の行為によって不当に法人税を免れたものではない。仮に被告が主張するとおり本件一連の行為を否認しつつ本件において課税し,将来,原
告が事業譲渡した際には本件一連の行為により原告がのれんを取得したことを前提として課税するのは一貫しない。
いわゆるデット・プッシュ・ダウンの方式(第三者間で行われるデット・プッシュ・ダウンの方式による買収においては,買収のためのビークル〔受皿会社〕としての法人を実質的買収者が設立し,同ビークルが負債により調達した資金を対象会社の買収資金に充て,その後対象会社を吸収合併するという取引形式も一般的に取られる。)による買収について,被
告は経済的合理性があることを認めている。本件借入れ及び本件買収は独立当事者間の経済条件で行われたものである以上,本件買収及び本件借入れは,原告からみた場合,第三者間で通常行われるデット・プッシュ・ダウンの方式による買収と何ら変わりがない。被告の主張どおり不当性要件該当性の判断を内国法人のみを対象として行うのであれば,外国法人であ
るヴィヴェンディ・グループ法人は,原告からすれば別個独立の別法人なのであるから,買収のための借入れを,ヴィヴェンディ・グループからしたことをもって,経済的合理性を否定するのは一貫しない。
2
争点⑵(原告の本件各事業年度における欠損金額又は法人税額)について(被告の主張の要旨)


法人税法132条1項に規定する税務署長の認めるところによる課税標準等の計算方法

法人税法132条1項は,内国法人である同族会社等の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認め
られるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより法人税の課税標準等を計算することができる旨規定しており,同項の適用が認められる場合には,その法的効果として,税務署長は,自らの認めるところにより,法人税の課税標準等を計算して更正等の処分を行うことができる。すなわち,内国法人(同族会社)の行為又は計算を
容認した場合に,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,税務署長は,その不当な税負担減少結果を排除するよう課税標準等を計算する必要がある。
そして,不当な税負担減少結果を排除する方法については,法人税法132条1項の文理上,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,計算することができると規定されていることからすれば,同族会社の行為又は計算が私法上有効であるとしても,租税法上はな
かったものとして,その課税標準や税額等を計算し直すことをいうものと解される。ここで,同族会社の行為又は計算を租税法上なかったものとして計算し直すというのは,正常な行為又は計算に引き直すことであって,必ずしも,実際に行われた行為又は計算とは異なる行為又は計算(例えば,実際に行われた行為とは取引の経済条件を異にする行為)を新たに設定した上でそ
の新たに設定した行為又は計算を前提に課税標準等を計算し直す場合に限られず,経済的合理性を欠く行為又は計算が租税法上存在しないものとして,すなわち,当該行為又は計算がなかったことを正常な行為又は計算として,課税標準等を計算し直す場合も含まれるというべきである。

独立当事者間の通常の取引に引き直すことが著しく困難か又は不可能な場合について
一連の取引を組み合わせた複雑な行為により不当な税負担減少結果が生じた場合において,通常あるべき行為若しくは計算を観念できないものであったり,又は通常あるべき行為若しくは計算として,比較の対象とすべき一連
の取引を観念し得るものであっても,法人税法132条1項の法的効果として,常に,一連の取引に含まれる個々の取引全てを独立当事者間の通常の取引に引き直した上で課税標準等を計算しなければならないということになれば,その複雑さから,現実の行為形式とのかい離が余りにも大きくなるなどして,極度に複雑な計算を要することとなったり,合理的な課税標準等の計
算が困難ないし不可能になったり,その法人の後続事業年度の納税義務の適正な履行に支障が生じるような不合理が生じたりする場合も想定される。上記のような場合,独立当事者間の通常の取引に引き直して課税標準等の計算ができないからといって,不当な税負担減少結果を放置せざるを得ないとすれば,法人税法132条1項を設けた趣旨が著しく損なわれることとなる。同項は税務署長の認めるところによりとのみ規定しているところ,同項の趣旨に鑑みると,全てにおいて独立当事者間の通常の取引に全面的に
引き直して課税標準等の計算をしなければならないのではなく,そのようなことが著しく困難又は不合理を生じさせる場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果を排除するために必要な限度で合理的な方法によって課税標準等の計算を行うことにより,法人税の負担を不当に減少させる結果を排除することも許容されるというべきである。すなわち,法人税法132条
1項の適用において,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となる行為又は計算と,引き直し計算において否認される行為又は計算が異なる場合も認められるというべきである。

以上のとおり,法人税法132条1項の適用が認められる場合に,不当な税負担減少結果を排除する方法として,独立当事者間の通常の取引に全面的
に引き直して課税標準等を計算することが著しく困難ないし不可能である場合や,現実の行為形式とのかい離が余りにも大きくなって支障が生じる場合などには,税負担を不当に減少させる結果を排除する上で必要な限度において,合理的と認められる行為又は計算に引き直して計算することも,同項の税務署長の認めるところによる計算として許容されていると解される。


原告の本件各事業年度における課税標準等の計算

独立当事者間の通常の取引に引き直すことが困難な事情があること複数の行為から成る本件一連の行為全体が経済的合理性を欠くのであるから,本件一連の行為全体につき独立当事者間の通常の取引として具体的な取
引を想定することはできない。そうすると,本件一連の行為に含まれる各取引全てを引き直す場合には,本件一連の行為全体がなかったものとして課税標準等を計算し直さざるを得ないため,本件においては,原告が設立された事実(本件設立),原告が本件増資及び本件借入れによる融資を受けた事実,原告がUMTCからUMKK株式を購入したという事実(本件買収)及び原告がUMKKと合併したという事実(本件合併)のいずれの事実もなかったものとして否認し,課税標準等を計算することになる。

この場合,本件一連の行為が存在しないことを前提として厳密に計算を行うとすれば,原告が設立された事実やUMKKが吸収合併された事実を否定した形で課税標準等を計算することともなりかねず,実際に行われた行為形式とのかい離が余りにも大きい結果となり,かつ,本件各事業年度以降において,私法上有効に存在する行為形式を前提として行われる原告の納税義務
の適正な履行に支障が生じるおそれがある。
したがって,本件においては,本件一連の行為に含まれる行為全てについて通常あるべき行為に全面的に引き直すことが困難な事情ないし不合理が生じる事情があるといえる。

本件利息の額の損金の額への算入を否認することに合理性があること本件一連の行為を容認した場合,本件借入れにより生じる本件利息を損金の額に算入することにより原告の法人税の負担が減少することが法人税法132条1項にいう不当と認められるところ,かかる不当な税負担減少結果を排除する上では,本件借入れをなかったものとみて本件利息の額を
損金の額に算入せずに原告の本件各事業年度の法人税の額を計算することが必要であり,かつ,それで足りるというべきである。すなわち,かかる計算を行うことは,不当な税負担減少結果を排除する上で必要な限度において行うものであり,原告が実際に行った本件買収等の私法上の取引の結果生じた法的効果や経済状態には変更を生じさせず,本件一連の行為のうち不当な税負担減少結果に結び付く部分を必要な限度で引き直し,税負担を不当に減少させる結果を排除し得るものとして合理的なものというべきである。
したがって,本件各事業年度において原告が納付すべき法人税の額を算定する上では,本件利息の額を損金の額に算入せずに原告の本件各事業年度の法人税の額を計算することを,法人税法132条1項による税務署長の認めるところによる課税標準等の計算とすることには合理性があるというべ
きである。
(原告の主張の要旨)


計算方法に関する一般論
法人税法132条1項の適用に際して正常な行為又は計算への引き直しが要
求されるのは,納税者が実際に選択した行為を,純経済人の合理的な行為に置き換えた場合において,前者の行為によれば生じていた法人税の負担の減少が後者の行為によれば生じなくなるときに適用されるものであるからであり,また,引き直し後の純経済人の合理的な行為が想定できない場合には,納税者が実際に選択した行為と引き直し後の純経済人の合理的な行為を比較対照して法
人税の負担の減少が生じているか否かを判断することはできないからである。そして,引き直し後の純経済人の合理的な行為としては,納税者が実際に選択した行為とは別の私法上の法形式を特定して示したうえで,この法形式のとおりに引き直す必要がある。およそ租税法は私法上の法形式を前提に課税要件を定めており,租税は私法上の法形式に従って生ずるものであるから,引き直
し後の純経済人の合理的な行為が私法上の法形式を特定して示されていなければ,その行為を課税要件に当てはめることができないからである。講学上の租税回避行為の定義は,私法上の選択可能性を利用し,私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに,通常用いられない法形式を選択することによって,結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら,通
常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ,もって税負担を減少させあるいは排除する行為であると解されているが,ここにいう通常用いられる法形式に対応する課税要件が何かは,やはり引き直し後の純経済人の合理的な行為が私法上の法形式を特定して示されていなければ判断できないのである。被告の当てはめの誤り
本件借入れによる借入金は,原告に入金されており,現実の資金移動がある以上,本件借入れをなかったものとする場合には,当該資金移動について純経済人が選択したであろう法形式に引き直さなければ引き直し計算は完結しない。本件利息は法人税法22条3項2号の費用として損金の額に算入されているが,被告は,これを損金の額に算入しないとする根拠として本件借入れをなかったものとみるとしか述べていない。しかしながら,本件借入れをなかったものと
して否認するとしても,実際に資金移動がある以上,この現実に存在する資金移動はいかなる法形式によるものであるのか,それは損金の額に算入される支払利息が生じない有利子負債以外の法形式であるのか,そして,それは純経済人が選択したであろう法形式であるのかを明らかにしなければ,法人税法132条1項の適用要件を満たすことにはならない。

更にいえば,本件利息についても,被告が本件借入れを否認した結果として,借入金の利息以外の何に引き直されているのか,被告の主張からは全く不明である。仮に,本件利息の支払を否認するため,無利息貸付けとして引き直して計算するのであれば,同族会社間で無利息貸付けが行われたこととなり,独立当事者間の通常の取引とむしろかい離することとなるのは明らかである。被告
の主張する引き直し計算は,法人税法132条1項の引き直し計算の要件を満たしておらず違法であるから,本件各更正処分等には同項の解釈適用を誤った違法がある。
以上

(別紙9)

本件各更正処分等の根拠及び適法性

1
平成20年12月期更正処分の根拠


所得金額(別表2⑥欄)

△2262万5793円

上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算した金額である。

確定申告における所得金額(別表2①欄)
△10億7026万4862円
上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した平成20年12月期の法
人税の確定申告書に記載された所得金額と同額である。

法人税法132条による所得金額の加算額(別表2②欄)10億4763万9069円
上記金額は,原告が平成20年12月期の法人税の確定申告における所得金額の計算上,本件借入れに係る利息として損金の額に算入した本件利息の
金額であるが,法人税法132条により損金の額に算入されないことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。


翌期へ繰り越す欠損金(別表2⑩欄)

2262万5793円

上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した平成20年12月期の法人税の確定申告書に記載された翌期へ繰り越す欠損金額10億7026万486
2円(前記⑴ア)から,前記⑴イの金額を控除した金額である。2
平成21年12月期更正処分の根拠


所得金額(別表2⑥欄)

57億5067万6020円

上記金額は,次のアの金額にイ及びウの金額を加算した金額である。ア
確定申告における所得金額(別表2①欄)

2億9222万0389円

上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した平成21年12月期の法人税の確定申告書に記載された所得金額と同額である。

法人税法132条による所得金額の加算額(別表2②欄)44億1081万6562円
上記金額は,原告が平成21年12月期の法人税の確定申告における所得金額の計算上,本件借入れに係る利息として損金の額に算入した本件利息の
金額であるが,法人税法132条により損金の額に算入されないことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。

繰越欠損金の損金算入額の過大額(別表2③欄)
10億4763万9069円
上記金額は,平成20年12月期更正処分に伴って平成20年12月期か
ら平成21年12月期に繰り越す欠損金が減少したことにより,繰越欠損金の損金算入額が過大となったものであり,原告の所得金額に加算すべき金額である。


所得金額に対する法人税額(別表2⑦欄)

17億2520万2800円

上記金額は,前記⑴の所得金額(ただし,通則法〔平成22年法律第6号に
よる改正前のもの。特に断らない限り以下同じ。〕118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に,法人税法66条(平成22年法律第6号による改正前のもの。)に規定する税率(100分の30)を乗じて計算した金額である。


法人税額から控除される所得税額等(別表2⑧欄)
2479万8217円

上記金額は,法人税法68条(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)の規定により,原告の平成21年12月期の法人税額から控除される所得税等の金額である。

納付すべき法人税額(別表2⑨欄)

17億0040万4500円

上記金額は,前記⑵の金額から前記⑶の金額を差し引いた金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。
3
平成22年12月期更正処分の根拠


所得金額(別表2⑥欄)

53億5991万3714円

上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウ及びエの金額を減算した金額である。

確定申告における所得金額(別表2①欄)

18億8020万7363円

上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した原告の平成22年12月期の法人税の確定申告書に記載された所得金額と同額である。

法人税法132条による所得金額の加算額(別表2②欄)39億0648万3229円

上記金額は,原告が平成22年12月期の法人税の確定申告における所得金額の計算上,本件借入れに係る利息として損金の額に算入した本件利息の金額であるが,法人税法132条により損金の額に算入されないことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。

一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度超過額の過大額(別表2④欄)

800万4478円

上記金額は,原告が平成22年12月期の法人税の確定申告における所得金額の計算上法人税法52条2項(平成22年法律第6号による改正前のもの。)に規定する貸倒引当金の繰入限度額を超過した額として所得金額に加算した額が,繰入限度額の算定を誤っていたことにより過大となっていたも
のであり,原告の所得金額から減算すべき金額である。

損金の額に算入される事業税等の額(別表2⑤欄)4億1877万2400円
上記金額は,平成21年12月期更正処分により増加した所得金額に対応
する事業税及び地方法人特別税に相当する額として損金の額に算入されることから,原告の所得金額から減算すべき額である。


所得金額に対する法人税額(別表2⑦欄)

16億0797万3900円

上記金額は,前記⑴の所得金額に,法人税法66条に規定する税率(100分の30)を乗じて計算した金額である。


法人税額から控除される所得税額等(別表2⑧欄)1129万8608円

上記金額は,法人税法68条の規定により,原告の平成22年12月期の法人税額から控除される所得税等の金額である。


納付すべき法人税額(別表2⑨欄)

15億9667万5200円

上記金額は,前記⑵の金額から前記⑶の金額を差し引いた金額である。4
平成23年12月期更正処分の根拠


所得金額(別表4④欄)

48億3059万0635円

上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウの金額を減算した金額である。

確定申告における所得金額(別表4①欄)

9億2411万4407円

上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した平成23年12月期の法
人税の確定申告書に記載された所得金額と同額である。

法人税法132条による所得金額の加算額(別表4②欄)39億0648万3228円
上記金額は,原告が平成23年12月期の法人税の確定申告における所得金額の計算上,本件借入れに係る利息として損金の額に算入した本件利息の
金額であるが,法人税法132条により損金の額に算入されないことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。

役員賞与の損金不算入額の過大額(別表4③欄)

7000円

上記金額は,原告が平成23年12月期の法人税の確定申告において,損金の額に算入されない役員賞与として所得金額に加算すべき額を誤って記載したことにより,所得金額が過大となったものであり,原告の所得金額から減算すべき金額である。


所得金額に対する法人税額(別表4⑤欄)

14億4917万7000円

上記金額は,前記⑴の所得金額に,法人税法66条1項(平成23年法律第82号による改正前のもの。)に規定する税率(100分の30)を乗じて計算した金額である。



法人税額から控除される所得税額等(別表4⑥欄)
2419万2002円

上記金額は,法人税法68条(平成23年法律第114号による改正前のもの。)の規定により,原告の平成23年12月期の法人税額から控除される所得税等の金額である。


納付すべき法人税額(別表4⑦欄)

14億2498万4900円

上記金額は,前記⑵の金額から前記⑶の金額を差し引いた金額である。5
平成24年12月期更正処分の根拠


所得金額(別表6⑤欄)

46億6615万2157円

上記金額は,次のアの金額にイないしエの金額を加算した金額である。ア
確定申告における所得金額(別表6①欄)

4億3408万2724円

上記金額は,原告が処分行政庁に対して提出した平成24年12月期の法人税の確定申告書に記載された所得金額と同額である。

法人税法132条による所得金額の加算額(別表6②欄)38億1329万7033円
上記金額は,原告が平成24年12月期の法人税の確定申告における所得
金額の計算上,本件借入れに係る利息として損金の額に算入した本件利息の金額であるが,法人税法132条により損金の額に算入されないことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。

事業税相当額の損金算入過大額(別表6③欄)4億0401万6900円上記金額は,原告が平成21年12月期更正処分に伴う増加所得金額に対応する事業税額として納付し,仮払金として経理処理した後,平成24年12月期の法人税の確定申告において所得金額から減算した金額であるが,平成22年12月期更正処分において当該事業税額に相当する金額4億1877万2400円が既に損金の額に算入されているため,二重に損金の額に算入されていたことから,原告の所得金額に加算すべき金額である。エ
事業税相当額の益金算入額(別表6④欄)

1475万5500円

上記金額は,平成22年12月期更正処分において損金の額に算入されていた平成21年12月期更正処分に伴う増加所得金額に対応する事業税額に相当する金額4億1877万2400円と,原告が平成24年12月期において納付した事業税の金額(上記ウで述べた,原告が平成21年12月期更正処分に伴う増加所得金額に対応する事業税額として納付した金額)との差
額であり,平成24年12月期の益金の額に算入されることから,原告の所得金額に加算すべき金額である。


所得金額に対する法人税額(別表6⑥欄)

13億9984万5600円

上記金額は,前記⑴の所得金額に,法人税法66条1項(平成23年法律第82号による改正前のもの。)に規定する税率(100分の30)を乗じて計
算した金額である。


法人税額から控除される所得税額等(別表6⑦欄)
24万0695円

上記金額は,法人税法68条(平成23年法律第114号による改正前のもの。)の規定により,原告の平成24年12月期の法人税額から控除される所得税等の金額であり,原告が処分行政庁に対して提出した平成24年12月期
の法人税の確定申告書に記載された所得税等の額と同額である。


納付すべき法人税額(別表6⑧欄)

13億9960万4900円

上記金額は,前記⑵の金額から前記⑶の金額を差し引いた金額である。6
平成21年12月期賦課決定処分の根拠

2億4124万6500円

平成21年12月期の法人税につき,原告に対して課されるべき過少申告加算税の額は,平成21年12月期更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額16億3753万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に通則法65条1項の規定に基づく100分の10の割合を乗じて算出した金額1億6375万3000円に,通則法65条2項の規定に基づき,平成21年12月期更正処分により新たに納付すべきこととなった税額16億3753万6800円のうち,同条3項に
規定する期限内申告税額に相当する金額8766万5917円と50万円とのいずれか多い金額である8766万5917円を超える部分の額15億4987万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に100分の5の割合を乗じて算出した金額7749万3500円を加算した金額である。

7
平成22年12月期賦課決定処分の根拠

1億2838万3000円

平成22年12月期の法人税につき,原告に対して課されるべき過少申告加算税の額は,平成22年12月期更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額10億4391万円に通則法65条1項の規定に基づく100分の10の割合を乗じて算出した金額1億0439万1000円に,通則法65条2項
の規定に基づき,平成22年12月期更正処分により新たに納付すべきこととなった税額10億4391万1800円のうち,同条3項に規定する期限内申告税額に相当する金額5億6406万2008円と50万円とのいずれか多い金額である5億6406万2008円を超える部分の額4億7984万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額2399万2000円を加算した金額である。
8
平成23年12月期賦課決定処分の根拠
平成23年12月期の法人税につき,原告に対して課されるべき過少申告加算税の額は,平成23年12月期更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額11億7194万円に通則法65条1項の規定に基づく100分の1
0の割合を乗じて算出した金額1億1719万4000円に,同条2項の規定に基づき,平成23年12月期更正処分により新たに納付すべきこととなった税額11億7194万2800円のうち,同条3項に規定する期限内申告税額に相当する金額2億7723万4102円と50万円とのいずれか多い金額である2億7723万4102円を超える部分の額8億9470万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額4473万5000円を加算した金額である1億6192万9000円となる。

9
平成24年12月期賦課決定処分の根拠
平成24年12月期の法人税につき,原告に対して課されるべき過少申告加算税の額は,平成24年12月期更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額12億6962万円に通則法65条1項の規定に基づく100分の1
0の割合を乗じて算出した金額1億2696万2000円に,同条2項の規定に基づき,平成24年12月期更正処分により新たに納付すべきこととなった税額12億6962万1000円のうち,同条3項に規定する期限内申告税額に相当する金額1億3022万4595円と50万円とのいずれか多い金額である1億3022万4595円を超える部分の額11億3939万円に100分の5の割
合を乗じて算出した金額5696万9500円を加算した金額である1億8393万1500円となる。
以上

別表1~6添付
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