判例検索β > 平成31年(わ)第2号
殺人、死体遺棄被告事件
事件番号平成31(わ)2
事件名殺人,死体遺棄被告事件
裁判年月日令和元年7月12日
法廷名札幌地方裁判所
裁判日:西暦2019-07-12
情報公開日2019-08-16 12:00:07
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主文
被告人を懲役18年に処する
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
札幌地方検察庁で保管中のハンマー1本(平成31年領第276号符号4)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,別居中の妻であるAに復縁や子の引渡しを求めるも,これを拒否されたことなどをきっかけに,荷物を搬出するために被告人方を訪れる前記Aを殺害することを決意し,平成30年11月2日,北海道岩見沢市a町b番地被告人方居間において,前記A(当時36歳)に対し,殺意をもって,同人の背後からその背部を持っていた金属製のハンマー(重量約674グラム。平成31年領第276号符号4)で数回殴打した上,同人の背後からその頸部を持っていたハウスバンドで絞め付け,脱力して仰向けに倒れた同人の身体にまたがってその頸部を同ハウスバンドで絞め付け,さらに同ハウスバンドを頸部に一周させて縛り付け,よって,その頃,同所において,同人を絞頸により窒息死させて殺害した。

第2

被告人は,平成30年11月2日,北海道岩見沢市a町c番dの被告人所有の土地において,フレキシブルコンテナバッグに収納したA(当時36歳)の死体を貨物自動車荷台に載せ,同車を運転して同死体を同所から北海道三笠市内に所在する市道e川沿線まで運搬し,同所において,同死体を前記フレキシブルコンテナバッグから出してe川左岸法面に投棄し,もって死体を遺棄した。

(法令の適用)


判示第1の行為について

刑法199条
判示第2の行為について
刑種の選択
併合罪の処理

刑法190条
判示第1の罪につき有期懲役刑を選択
刑法45条前段,47条本文,10条(重い
判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限
内で法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条


刑法19条1項2号,2項本文(殺人の用に


供した物で被告人以外の者に属しない。)
訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件犯行において特に重要であると考えた点は,被告人が,強固な殺意に基づき,予め犯行態様,犯行場所及び偽装工作の方法などについて犯行計画を立てて,それを確実に実行したことである。
すなわち,被告人は,被告人方を訪れた被害者から,荷物の搬出を手伝うこととなっていた被害者の友人の訪問時間を聞き出し,犯行の時間的余裕があることを確認した上で,前日に立てた犯行計画に基づき,まず,被害者の動きを封じるために,同人の背部を金属製ハンマーで数回思い切り殴打して,同人が痛いと声を上げてうずくまったのに,躊躇することなく,背後からハウスバンドで被害者の頸部を強い力で絞め続け,最終的には,確実な死を期すために,ハウスバンドを動かなくなった被害者の頸部に一周させて縛り付け殺害し,その直後,被害者の携帯電話機から被害者の友人に対し,被害者を装ってメッセージを送信し,同友人が被告人宅を訪問しないように仕向けてから,被害者の遺体をフレキシブルコンテナバッグに収納し,その後,貨物自動車で山中まで運搬し,川の法面に投棄したほか,さらに被害者の生存を装うため,被害者の携帯電話機から知人らに対し,メッセージを送信するなど複数の偽装工作を行ったものである。
これに対し,弁護人は,被告人が本件犯行に及ぶ際にポケットからハンマーを何度か出し入れして犯行をためらう様子をみせていたことから,被告人に強固な殺意があったとはいえない旨主張する。しかし,本件犯行の一連の経緯に鑑みれば,弁護人の指摘する事情があったとしても,被告人に強固な殺意があったとの認定は揺らがない。
被告人は,本件犯行の2日前に,被害者から復縁と息子の引渡しを拒絶されたことや,同日に被害者が息子に中耳炎の薬を無理やり飲ませる様子を見て,息子が被害者から虐待を受けており,このまま被害者が息子を連れて被害者の実家に帰った場合,息子が被害者から更にひどい虐待を受けるのではないかと思い,被害者の殺害を決意し,また,息子との時間を作ろうと,犯行の発覚を遅らせるために被害者の遺体を遺棄したなどと供述する。
確かに,妻から離婚したい理由を教えてもらえないまま,妻が息子を連れて実家に帰ってしまうことや,妻の息子に対するしつけの方法に悩む心情は理解できる。しかし,息子に対する虐待に当たると被告人が考えていた出来事としては,被害者が息子に薬を無理やり飲ませようとしたことや,息子の行状に対して被害者が息子のお尻を叩いたり,大声で怒鳴ったりしていたということ以上の事情はなく,仮に,被告人が懸念する事情があるのであれば,関係機関に相談するなど,殺人以外の他の選択肢は多数あったはずであるから,それらを十分検討し,実行すべきであった。しかし,被告人は,そうした他の選択肢をとることなく,殺人死体遺棄という最悪の手段を選択し,計画を立ててこれを実行したのであるから,このような被告人の判断は厳しく非難されるべきである。また,被害者を殺害すれば,息子は,母親を失い,父親が殺人犯になるのであり,被害者を殺害することが真に息子のためにならないことは明らかであって,息子のためという被告人の考え方は独りよがりというほかなく,この点も厳しく非難される。
本件犯行により,被害者は36歳という若さで命を奪われたのであり,被害結果は極めて重大である。また,被害者の遺体は,被告人が山中に投棄したことにより,1か月以上にわたり放置され,その大部分が失われたもので,被害者は,死者としての尊厳も踏みにじられた。そして,前記のとおり,本件犯行が息子に与えた影響も極めて大きい。こうした本件犯行による被害結果等を考えれば,被害者遺族の処罰感情が峻烈であることも当然である。
以上によれば,被告人の刑事責任は重く,本件は,家族関係を動機として配偶者を殺害した殺人の事案の中では最も重い類型のものとして位置付けられる。そうすると,被告人には前科前歴がなく,事件後しばらく経ってからではあるが,本件犯行について事実を認め,事件について話をしたことが事案の解明につながった面もあることなど,被告人に有利に斟酌することができる事情を十分に踏まえても,被告人に対しては主文の刑を科すのが相当である。
(求刑

懲役20年,ハンマー1本の没収)

令和元年7月12日
札幌地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官

中川正隆
裁判官

向井志穂
裁判官

岩竹遼
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